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2014年5月29日 (木)

マイナンバー制度と未収金問題への応用

本日の本題に入る前に、国民皆保険制度が実施されている日本においても無保険者は一定数存在するのが現実ですが、先日民医連の調査でこうした無保険者の医療費に関わるこんな調査結果が出ていました。

受診遅れで死亡:無保険で医療費払い困難…13年は56人(2014年05月19日毎日新聞)

 全日本民主医療機関連合(民医連)は19日、無保険で医療費の支払いが難しいというような経済的理由で受診が遅れて死亡した人が、2013年は56人だったと発表した。前年比2人減で高止まりが続いているといい、岸本啓介事務局長は「医療にアクセスする権利が全ての人に保障されるべきだ」と話した。

 調査は、民医連に加盟する143病院と509診療所で、医療費の支払いが難しいために治療が遅れて死亡したケースを調べた。都道府県別では福岡の9人が最多、北海道(6人)、埼玉(5人)なども多かった。男性が77%を占め、年齢別では60歳代が45%だった。無保険あるいは資格証だけの無保険状態が46%、国民健康保険に入っていても、窓口負担に耐えられず治療を中断して死亡したようなケースも約3割に上った。

 民医連に加入している病院数は全病院の約1%。【東海林智】

男性で60歳代が特に多いと言うのが社会の谷間をうかがわせる話なのですが、さてこの数字を多いと見るか少ないと見るかです。
民医連加盟の施設における調査と言うことでなにがしかのバイアスがかかっている可能性ももちろんあって、単純にこれを100倍した数字が日本の現状を示しているとは言えないでしょうが、2009年にも同じく民医連の調査が行われた際には死亡者が33人であったと報告されていますから、景気が回復基調にあると言われる中でも必ずしも経済的貧困者の医療面ではそれが実感されていないと言う形になるのでしょうか。
個人的には皆保険制度を今後も大前提として堅持するのであれば保険料徴収の手間暇や無保険者出現のリスク等を考えても、保険ではなく税金による公的サービスに移行することを検討するのもあっていいんじゃないかと思いますが、医療費がこれだけ巨大になってくるとその保険負担分を税金に移行すると言うのも現実問題大変な騒ぎになりそうだと言う気もします。
現状では無保険者の医療問題は規模や頻度としてはまだ大したことはないと言うのが社会の側での受け取り方であるようで、医療機関側にとっても未払いに関しては緊急の生活保護導入等で対応できるケースが大半だと思いますが、そもそも無保険であるから医療受診を控えている人も多いだろうと想像すれば、お金の有る無しに関わらず誰にでも平等な医療給付をと言う建前はすでに崩壊していると見なしてもいいのでしょうね。

医療に関する意識もすでに一回りも二回りもしていて、それこそ江戸時代を舞台にした「赤ひげ」のように金持ちからは容赦なく大金をせしめ貧乏人に安く医療提供することが許された時代から、とにかく後で回収の見込みがなかろうが医療はただ全力で目の前の患者を治すのみと言う時代を経て、今では末端スタッフであれ経営について常に考えを及ぼすことが求められる時代となりました。
「医は算術であってはならない」などと言う一方で「医療もコスト意識を持て」なんて矛盾したことを言うのが世の中の面白いところで、そもそもコスト意識も何もなしにタダだろうが持ち出しだろうが医療をやってしまうような野放図な病院はさっさと潰れるか議会で放漫経営を叩かれるかですから、真面目に医療提供の永続性を考える施設ほどどうしても経営面でも締めるべきところは締めていく必要があると言うことですよね。
そんな中でしばらく前から医療機関の未収金問題と言うものも大きくクローズアップされるようになったと言うのは幾つかの理由があって、一つには医療機関の利益率が悪化して未収金が経営的に悪影響を及ぼすようになったこともあるでしょうし、また長期的な経済低迷により支払えない人が増えてきていると言うこともある、そしてモンスターと言われる類の患者が増えたことも未収金増加に関係しているかも知れません。
この未収金問題に関してはかねて国や保険者などは非常に冷淡な(はっきり言えば病院が負担すればいいじゃないかと言う)態度を続けていて、辛うじて外国人無保険者などを想定した緊急避難的な支払い制度が各地で整備されはじめていると言う状況なのですが、ここで話は変わりますが以前から進められているこんな話がいよいよ実現するようだと言うニュースを紹介してみましょう。

「マイナンバー」カード、クレジット機能も 政府検討 (2014年5月24日日本経済新聞)

 政府は2016年から配り始める社会保障と税の共通番号(マイナンバー)を利用するための個人カードに、金融機関のクレジットカードなどの機能を持たせる方向で検討を始める。
カードの利便性を高めることで、マイナンバー制度の普及を促す狙いがある。

 マイナンバーは年金保険料の納付状況や納税記録などを1つの番号で管理する制度で、16年から始まる。これに合わせ、市町村が希望者にカードの配布を開始。
カードを使えば、所得証明書や住民票を申請するとき、行政窓口で住所や年齢を書類に書き込まなくてもすむようになる。

 政府は18年からこのカードと、銀行のキャッシュカードやクレジットカードなどを一体にすることを目指す。すでに健康保険証や印鑑登録カード、地方自治体の図書館カードの機能を
加えることは固まっている。使い道をもっと広げることで、利用者を増やす。

マイナンバー中間案、医療・介護など利用範囲拡大(2014年5月19日日本経済新聞)

 IT(情報技術)総合戦略本部の新戦略推進専門調査会「マイナンバー等分科会」(座長=金子郁容慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)は、2014年5月16日開催の会合で示した「中間とりまとめ(案)」を公表した。それによると、2018年までのロードマップとして「マイナンバーの利用範囲の拡大」を掲げたほか、申請に基づく個人番号カードの普及策や、法人番号の「法人ポータル」の構築などを検討。非公開で行われた分科会では、中間とりまとめ案への意見集約を座長に一任したという。

 利用範囲の拡大では、関係府省の具体的検討課題として2018年までに検討し、番号法改正法案の提出など必要な制度改正などを行うロードマップを提示。マイナンバー(社会保障と税の共通番号)制度の取り組みに「近接し、公共性が高く、国・地方・民間の情報連携などによりさらなるメリットが期待される事務」として、戸籍や旅券事務、預貯金付番(ペイオフ時の名寄せ、口座名義人の特定・現況確認など)のほか、医療・介護・健康情報の管理・連携、自動車登録事務などを列挙。「積極的かつ具体的に検討を進め、今秋ごろをめどに、検討状況を政府CIO(内閣情報通信政策監)に報告する」としている。
(略)

マイナンバー制度に関してもかねて反対論も根強い中で、医療分野においても処方歴や検査データの共有化など様々なメリットが予想されることは記事にもある通りですが、基本的に「使って便利」なものだと言う利便性を実感させるべく一気に広範な利用を図っていくと言う方針であるようで、そうなりますと医療分野においてもあれやこれやと様々な応用技が考えられますよね。
特にお金の出入りに関わる部分を一枚に集約化することも可能であると言うことで、診察券から直接支払いが行われるとなれば患者の利便性も高いでしょうし、口座引き落としあるいはクレカ払いによって未収金リスクを軽減させることも可能になってくるかと思うのですが、ただクレカ払いは未収金のリスクを引き受けてくれる一方で、当然ながらその代償として手数料支払いと言う余計な支出を求められるデメリットもあります。
実は一般的にクレカ手数料は医療機関の利益率を上回っている場合が多いのが痛し痒しで、現実的にカード払いを認めていない医療機関が多いと言うのもこの辺りに理由があると言えますが、少なくとも支払いを渋るタイプの患者に関してはカード(保険証兼診察券)さえ受け取ればそこから請求も可能であり、またカード提示すら渋るのであればそもそも診療契約拒否と見なせるという点でメリットは大きいかと思います。
もちろん本当に無収入の人間は口座もなければクレカも停止されているんじゃないか、と言う可能性もあるわけですが、文字通り無収入であるなら生保等を受けている場合が多いでしょうから、個人のお金の出入りを一元管理することで入金次第優先度の高いものから引き落としていくと言うことも可能ではあるだろうし、むしろ生保費の入った封筒を手にパチンコ屋に急ぐなんて行為を防ぐ効果も期待出来るかも知れません。
ともかくも未収金がこれだけ膨れあがってきている中で、医療機関側も請求書を示せば黙ってお金を支払う顧客ばかりではないと言う前提で動くことが必要であって、そのために使えそうな制度はどんどん利用法を工夫していくと言うのが国や保険者の言うところの果たすべき自助努力と言うことなのでしょう。

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コメント

>マイナンバー制度
名称を変えてほしい。
ああでも慣れとは恐ろしいもので、初めて目にした時ほどの忌避感はなくなりました。

>政府は18年からこのカードと、銀行のキャッシュカードやクレジットカードなどを一体にすることを目指す。すでに健康保険証や印鑑登録カード、地方自治体の図書館カードの機能を加えることは固まっている。
文字通り、一枚のカードに機能を統合していくとしたら、特に金が絡む機能の場合 カードを紛失した時の影響が大きくて嫌だなぁ。
逆に既存のカードそれぞれにマイナンバーカード機能を持たせるということになると、暗証番号の管理が大変ですな。結局全部同じ、という人も多いのでしょうけど。(運転免許証の暗証番号を覚えている人います?)
そのへんの所を、自由に選べるようにしてくれればよいのですが。

投稿: JSJ | 2014年5月29日 (木) 08時37分

素朴かつしょうもない疑問ですがカード機能を入れるとしたら一社限定なんですかね?
あのカード会社のロゴ?ってけっこうスペース取るから何社も入らない気が。
でもそもそもが任意発給じゃどれくらい普及するか様子見しないことにはなんとも。

投稿: ぽん太 | 2014年5月29日 (木) 08時48分

カードの支払いはほんとに認めてもらいたいです!
入院になったらかなり高額なのに現金払いだけって困るんです。
それに事前に見積もり?も教えてくれないとこが多くて。

投稿: tom | 2014年5月29日 (木) 09時19分

クレジット会社に医療機関にいくら払ってるか把握されるなんてまっぴら

投稿: | 2014年5月29日 (木) 10時04分

大病院を中心にカード払いは可能な施設も増えてきているのですが、外来だけの診療所はやはり現金払いでないと経営的にもきついんじゃないかと思いますね。
いずれにしても当面のところ任意だと言うことですから、まずは普及がどれほど進んでいくかと言うことが注目されるところです。
免許を持たない人も増えているようなので身分証明書的に使われるようになれば話は早いのではないかと思うのですけれどもね。

投稿: 管理人nobu | 2014年5月29日 (木) 11時28分

トラブル起こす連中はそもそもこんなもの持たない悪寒w

投稿: aaa | 2014年5月29日 (木) 12時23分

マイナンバーって国民に背番号が割り当てられるってことですよね。
でも国民じゃない人にも社会保障が行われてるわけですよね。
まさに○○特権ですね。

投稿: 嫌われくん | 2014年5月29日 (木) 12時23分

こと医療においては国民か否かに関わりなく皆が保険の範疇にあった方がトラブルは少ないと思われ

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年5月29日 (木) 14時31分

>マイナンバーって国民に背番号が割り当てられるってことですよね。
>でも国民じゃない人にも社会保障が行われてるわけですよね。
マイナンバーの対象者は、「行政手続における特定の個人を識別する ための番号の利用等に関する法律」と「住民基本台帳法」によって定義づけられるようですが、
要すれば、
「対象者:住民票コードが住民票に記載されている日本の国籍を 有する者、中長期在留者、特別永住者等の外国人」http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/symposium/akita/siryou3.pdf
ということのようです。

投稿: JSJ | 2014年5月29日 (木) 15時56分

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