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2014年5月 1日 (木)

「フクシマに行ったら鼻血が出た」の波紋

原発事故の影響で福島県産と言えば印象が悪くなっているようで、実際に産地偽装の一因となっているとも言われているようですが、基本的には低線量被爆のリスクに関してはあまりはっきりしないだけに、消費者各人が各人なりの判断で利用していくしかないと言うことなのだと思います。
ただ100%安全だなどと言い切ることは出来ないのも当然なんですが、はっきりしないリスクを根拠にはっきりした危険があるかのように言い立てるのもまたおかしな話であって、しかもそれによる風評被害が広がって実際的な悪影響が大きいとなればこれは社会問題ということですよね。
過去にはマスコミが先導しこうした風評の拡散に努めた結果、福島県民に大きな実害が及ぶと言った事例も少なからず発生しているようですが、先日以来新たな風評被害をもたらしかねないと騒ぎになっているのがこちらの話です。

「福島周辺で鼻血出る人が続出」 「美味しんぼ」で編集部コメント発表も炎上止まず(2014年4月19日J-CASTニュース)

   ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中の人気漫画「美味しんぼ」の内容がネット上で物議を醸している。福島には疲労感が強かったり鼻血が出たりといった症状の人が大勢おり、それらの症状と原発の放射線との関連を匂わせる描写があったというのだ。

    「今週の『美味しんぼ』、福島から帰ってきた山岡さんが原因不明の鼻血を出し、海原雄山も出たと話をして、最後に井戸川さんが出てきてこの有様でした。これは流石に福島県民として抗議の意を示したい。僕はこの三年間、鼻血なんか出たこと無いですが」

   2014年4月28日に画像つきでされたこのツイートは、29日夕方現在1万回以上リツイートされ、ネット上を騒がせている。

「福島では同じ症状の人が大勢いる」

   問題となっているビッグコミックスピリッツ22・23号(4月28日発売)では、主人公の山岡と海原雄山たち一行が福島第一原発を見学した。途中、一行は3号機の前で1時間当たり1680マイクロシーベルトを数秒間浴びた。すると帰宅後の山岡にひどい疲労感と鼻血の症状があらわれた。のちに同じ症状が雄山や同行者にもあったことがわかる。取材の過程で、前双葉町長の井戸川克隆氏と岐阜環境医学研究所所長の松井英介医師のもとを訪れた山岡は、町長の口から「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と告げられる。今週分の話はここまでで、欄外には「耐え難い疲労感と原因不明の鼻血―――!?山岡や雄山たちの体になんらかの異変があるのか?次号。」とのアオリがついていた。なお、山岡が訪ねた両名は実在の人物で、井戸川氏は放射性廃棄物中間貯蔵施設の受け入れを巡って町長職を辞任、松岡医師は『見えない恐怖 放射線内部被爆』などの著書がある。
   ネット上では症状と原発が結びつけられているように読めるとして、「そんな症状は聞いたことがない、風評被害では」「『山岡たちの体に異常が起きているのか!?』みたいなヒキで、 次回『異常は何も起きていませんでした?!』で済ますには苦しいと思うんだけどどうなるんだろう」などと疑問が出て、ツイッター上で「炎上」状態になってしまった。

放射線の影響によるものと断定する意図は無い

   実は、原作者の雁屋氏はこの取材体験について、作中とほぼ同様の発言をして話題になったことがある。その時はオーストラリアの情報を紹介している日本語ミニコミ紙「日豪プレス」に対して、現地の子供たちもだるさを訴えていたとし「あの周辺は人は住んではいけない所になってしまった」と漏らし、福島の食べ物を食べて応援することも疑問視、特に東北地方の海産物の多くについて「恐らく食べられなくなるでしょうね」と言っていた。こうしたことも騒ぎを大きくした要因とみられる。
   騒ぎを受けてスピリッツ編集部は28日夜、次のようなコメントを発表した。それによると、鼻血や疲労感が「放射線の影響によるものと断定する意図」は無く、「取材先の皆様の実体験や作者の実体験について、作中登場の実在の医師に見解を問う展開」だという。風評被害を助長する内容ではないかという指摘についても、そのような意図は無く、これまでの作中でも「きちんと検査が行われ、安全だと証明されている食品・食材を、無理解のせいで買わないことは消費者にとっても損失であると述べております」と説明した。
   こうした対応に、ネット上ではなお「風評被害に限らず、意図しているかどうか(要は主観)が問題じゃなく、実際に見た人がどう感じるかが肝心なんだと思うんだけどなぁ」という意見を中心に、批判が止まない。
   ただ、一部からは「この、作中の医師のお話がこの後続くんじゃないのかな。デリケートな問題の扱いで、掲載ページの割り振りを見誤った、ということで落ち着くと良いなぁ」など、今号だけを見て批判するのは早急だという見方も出ている。

「美味しんぼ」と言えばコミックスが百巻を超える長期連載で、根強い愛読者の間ではネタ漫画としてもつとに有名ですけれども、特にこの放射線被害に関しては原作者雁屋氏の注目を大いに集めるテーマであるようで、過去にはスパゲッティ対決の回においてチェルノブイリ原発事故との関連を取り上げ「ヨーロッパ産の食品は放射能汚染されているから食べてはいけない」と主張したことでも知られています。
当然ながら今回の震災に関しても「取材から帰って夕食を食べている時に、突然鼻血が出て止まらなくなった」「『福島の食べ物を食べて応援しよう』というキャンペーンもありますが、これもどうかと思います。」「取材時、米は確かに安全でした。ですが、汚染は広がる一方だと思いますので果たして今はどうなのか」等々、言論を通じて様々な啓蒙活動を行っていらっしゃるようです。
雁屋氏のこうしたスタンスを考えますと、むしろ編集部も主張しているように「作中でも、 きちんと検査が行われ、安全だと証明されている食品・食材を、 無理解のせいで買わないことは、 消費者にとっても損失であると述べて」いることの方が奇異な印象を与えるのですが、いずれにしても日本も雁屋氏在住のオーストラリアも言論の自由を標榜する国であり、自己責任において発言する自由は確保されているはずですよね。

雁屋氏に限らず世間的に関心と注目を集める問題で何かしら独自の見解に基づく意見表明を行った場合、ともすればそれが炎上と言う現象に結びついてしまうのが今の時代ですけれども、もちろん意見に賛成する、しないとは全く別の次元で意見表明自体の自由はあるべきだし、同時にそれに対する批判を表明する自由もあると言うのが現代社会の基本的お約束事だとされています。
ただ特定個人の持つ意見がいわゆる反社会的だとか道義的・倫理的に問題視されてしかるべきだった場合、この大原則がどこまで徹底されるべきなのかと言うことが昨今しばしば問われていて、中にはこうした意見は公的規制によって封殺されてしかるべきだと言う主張を持つ方々もいらっしゃるようですけれども、誰がその基準を決めるのかと考えた場合そこまで万人が認められる基準など存在し得るのかどうか微妙なところですよね。
ただやはり社会的約束として少なくとも公の場で表に出すことは適切ではないと思われる個人的見解と言うものはあるわけですが、長らく問題視されてきたこの種の問題の一つに対して、先日非常に興味深い手法で対抗している人々がいると言うニュースが出ていました。

D・アウベス:「バナナ? 馬鹿な奴らは笑ってやるべき」(2014年4月28日goal.com)

27日のリーガエスパニョーラ第35節、バルセロナは敵地エル・マドリガルでのビジャレアル戦で3-2の逆転勝利を収めた。DFダニエウ・アウベスは試合後、人種差別のバナナを食べた理由を説明している。スペイン『ムンド・デポルティボ』がコメントを伝えた。

この試合の75分、CKを蹴ろうとしたD・アウベスはファンによって投げられたバナナを拾い、皮をむいて身を口にほおばった。ブラジル代表DFは試合後、その行動について次のように話した。
「(人種差別行為には)あのような行動を取ってやらなければならない。このようなことはもう、僕たちに変えられはしないんだ。11年前からスペインにいるが、ずっと同じであり続けている。馬鹿な奴らは笑ってやらないといけない
(略)

リネカー氏 バナナ食べたアウベス絶賛「素晴らしい対応」(2014年4月28日スポニチ)

 元イングランド代表FWでJリーグ発足時には名古屋でも活躍したゲーリー・リネカー氏(53)が、試合中にバナナを投げつけられたバルセロナのダリエウ・アウベスの「大人の対応」に自身のツイッターで「差別主義者の愚行に対して本当に素晴らしい対応をした」と賛辞を送った。

 アウベスは試合中に観衆からバナナを投げつけられ、そのバナナを食べた後に何事もなかったかのようにプレーを続けた。試合後「スペインではたまにこういうことがある。ユーモアで対応すべき」と話した。
(略)

広がる人種差別反対“バナナの輪” ネイマール、バロテッリらも賛同(2014年4月29日スポニチ)

 27日のスペイン・リーガエスパニョーラ第35節ビジャレアル戦で、バナナが投げ込まれる人種差別行為に対して、バルセロナDFダニエウ・アウベスがバナナの皮をむいて食べた行動に、世界中のサッカー選手を中心に賛同の声が広がっている

 ブラジル代表でもチームメートのFWネイマールは、自身がバナナ、息子がバナナのぬいぐるみを持って写っている写真をソーシャルメディアを通じて掲載。ACミラン(イタリア)のイタリア代表FWバロテッリもバナナを口にしている写真を公表して、人種差別反対のメッセージを載せている

 12年マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)のDFエブラに対する差別発言で出場停止処分を受けたリバプール(イングランド)のウルグアイ代表FWスアレスは、ブラジル代表MFコウチーニョと2人でバナナを手にしている写真を、「We’re all the same.(僕たちはみんな同じ)」のメッセージとともに公表した。

 イタリア代表のプランデッリ監督は、同国のレンツィ首相とバナナを食べる姿をメディアの前で披露して、アウベスに賛同を示した。その他にもマンチェスター・シティー(イングランド)のFWアグエロ、パリSG(フランス)のMFルーカス、ゼニト(ロシア)のFWフッキらも同じように写真を掲載して、人種差別反対の声を上げている。
(略)

このバナナを投げるという行為は「お前は人間ではなく猿だ」と言う意味合いで近年散発的に行われているもので、記憶に新しいところですと2011年にロベカルがロシアリーグで観客席からバナナを投げつけられ、試合中にも関わらずピッチを去ったと言う事件がありましたが、ベルギーリーグの川島選手なども「カワシマ!フクシマ!」とやじられたことがあったように差別行為が無くなると言うことはなかなか難しいようです。
今回バナナを投げ込んだ観客に対してはすでに防犯カメラの画像によって特定され、クラブから生涯スタジアムに立ち入り禁止を命じられたようですが、個人の思想をコントロールすることは不可能である以上、興奮状態の中でそれが表に出てくるということも完全には阻止出来ないことは仕方がないことなのでしょう。
ただここで注目したいのは単に差別ケシカラン!そんな考えを持つ事自体が問題だ!と炎上させて終わりと言うことではなく、それをとっさの機転で返したアウベス選手の行動に賛同の話が広がっていると言うことで、どちらの方がよりスマートで格好いいかと言われれば断然アウベス選手らのやり方の方が格好いいですよね。
冒頭の記事にも登場する劇画原作者にしてもすでに久しく以前からむしろネタソースとしての評価の方が高くなっている人物ですから、いまさらたけしの爺婆ネタに誰も真面目に突っ込まないのと同様、これまた一種の芸風的に捉えておいた方がいいのかも知れません。

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コメント

カリーの場合ガチの反原発論者で使えるものならなんでも反原発に利用する人間なのに
いまさら風評被害の意図がないって言われても冗談はよし子さんだわなあ

投稿: | 2014年5月 1日 (木) 08時27分

バナナに差別的意味があるなんて日本人は知らないんじゃないですか?
プレゼントだって差し出されたらありがたく受け取っちゃいそうな気が。

投稿: ぽん太 | 2014年5月 1日 (木) 09時19分

話題の“バナナ男”逮捕…相手ユースチームのコーチ 禁錮の可能性
スポニチアネックス 5月1日(木)6時45分配信

 27日のリーガ・エスパニョーラの試合中にバルセロナDFダニエウ・アウベスにバナナを投げ込む人種差別行為を行った26歳の男が29日、スペインの警察に逮捕された。

 地元メディアは、男が対戦相手ビジャレアルのユースチームのコーチで、既に解雇されたと報じた。ビジャレアルは永久入場禁止などの処分を科した男の身分について明らかにしていない。人種差別行為で有罪となれば禁錮3年の可能性があるという。

投稿: | 2014年5月 1日 (木) 09時35分

フィリピン人留学生に、喜ばそうとバナナを買ってきたら
こんなものは自国ではサルの餌だ、これを食べろというのか?と怒ってしまったという話を聞いたことあるけど
都市伝説ですかね
フィリピン人はバナナ食べないなんてことは・・・ないですよね?

投稿: | 2014年5月 1日 (木) 09時53分

文化的背景の違いから思いがけない誤解を招くということはままあることですが、日本人は割合にそのあたりの問題意識に乏しい人が少なくないので要注意ですね。
しかしリーガのバナナ事件、相手チームの関係者であったと言うことであればこれまた別の問題で、差別や蔑視も含めて何でもチーム戦略の一つとして利用されてしまうと言う風潮もどうなのかです。

投稿: 管理人nobu | 2014年5月 1日 (木) 10時56分

チームに対するペナルティの悪寒w

投稿: aaa | 2014年5月 1日 (木) 11時53分

原発事故で頭のねじがとんでしまった連中の醜悪さには吐き気がします。まともな作品もある事は知っていますが私に出来る方法として抗議のために当分小学館の本は買いません。1年ちょっとしたらハーディーのリールが買える。

投稿: 放置医 | 2014年5月 1日 (木) 14時40分

雁屋哲 美味しんぼ 第604話についての小考察
http://linkis.com/togetter.com/li/idVi2

投稿: | 2014年5月 1日 (木) 16時09分

双葉住民「周囲にはいない」 美味しんぼ“鼻血”に批判
(2014年4月30日 福島民友ニュース)

小学館の漫画誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」の28日発売号に掲載された人気漫画
「美味(おい)しんぼ」の中に、東京電力福島第1原発を訪れた主人公らが原因不明の鼻血を
出す場面があり、同誌編集部に「風評被害を助長する内容ではないか」などとする批判が相次いで
寄せられていることが29日までに分かった。

双葉町からいわき市の仮設住宅に避難する直売所経営松本正道さん(50)は
「原発事故以降、双葉町には何度も入っているが、鼻血や体のだるさを覚えたことはないし、
周囲でそのようなことを訴えている人もいない」と指摘。「多くの人が読む有名な漫画だからこそ、
原因がはっきりしないことを書いてしまえば、あたかもそれが真実なのだと誤解される恐れがある。
一町民として、極めて遺憾に思う」と批判した。

また、福島市の派遣社員羽田利秋さん(64)は「作者は県民の意識をよく理解していない。
安易な取材で、このような表現をしてほしくない」と憤った。


↑の記事読んでて思ったんですが、
公害なんかじゃ補償の都合もあるんでしょうけど、ちょっとのことでも大げさに言い立てる人多いですよね?
原発事故じゃ逆で被害を小さく言ってるみたいなところがおもしろいなって思うんですが

投稿: 蒲池昭夫 | 2014年5月 2日 (金) 11時34分

原発事故による非難でどれほどの方が亡くなったことか。
放射線による鼻血などというありもしない妄想でキャッキャしている阿呆共は本当に度し難い。脱原発への障害になっているのが借家をはじめとするそんな連中。借家何とかは無知で悪意に満ちた風評加害者だと思います。

投稿: 放置医 | 2014年5月 2日 (金) 16時44分

非難→避難

投稿: 放置医 | 2014年5月 2日 (金) 16時45分

反論は、最後の回まで,お待ち下さい

「美味しんぼ 福島の真実篇」、その22で、鼻血について書いたところ、
色々なところで取り上げられてスピリッツ編集部に寄れば、「大騒ぎになっている」そうである。
私は鼻血について書く時に、当然ある程度の反発は折り込み済みだったが、
ここまで騒ぎになるとは思わなかった。

で、ここで、私は批判している人たちに反論するべきなのだが、
「美味しんぼ」福島篇は、まだ、その23,その24と続く。
その23、特にその24ではもっとはっきりとしたことを言っているので、
鼻血ごときで騒いでいる人たちは、発狂するかも知れない。
今まで私に好意的だった人も、背を向けるかも知れない。
私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った
真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。
真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。

「福島は安全」「福島は大丈夫」「福島の復興は前進している」
などと書けばみんな喜んだのかも知れない。
今度の「美味しんぼ」の副題は「福島の真実」である。
私は真実しか書けない。自己欺瞞は私の一番嫌う物である。

きれい事、耳にあたりの良い言葉を読み、聞きたければ、他のメディアでいくらでも流されている。
今の日本の社会は「自分たちに不都合な真実を嫌い」「心地の良い嘘を求める」空気に包まれている。
「美味しんぼ」が気にいらなければ、そのような「心地の良い」話を読むことをおすすめする。

本格的な反論は、その24が、発行されてからにする。

投稿: | 2014年5月 4日 (日) 20時36分

小学館発行『スピリッツ』の『美味しんぼ』(第604話)に関する抗議について| 双葉町公式ホームページ
http://www.town.fukushima-futaba.lg.jp/item/5924.htm

本日双葉町は、小学館に対し厳重抗議を行いましたので、お知らせいたします。
http://www.town.fukushima-futaba.lg.jp/secure/5924/20140507_kougibun.pdf

投稿: | 2014年5月 7日 (水) 22時06分

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