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2014年5月20日 (火)

医薬分業かで薬剤師の役割が徐々に拡大中

先日は日本薬剤師会会長と言う要職を務める児玉孝氏が、こんなショッキングなことを言っている?!と話題になった記事があるのですがご存知でしょうか?

【参考】日本薬剤師会会長(児玉孝氏)が決意の告白「患者よ、クスリを捨てなさい」(2014年4月22日現代ビジネス)

実際にはセンセーショナルなタイトルほど内容はぶっ飛んだものではなく、現代日本では薬を沢山使いすぎているため飲み合わせ問題など思いもかけないトラブルが発生する可能性も高い、そのためかかりつけ薬局によるチェックなど薬剤師に求められる役割がますます重要になってきているという、役職を考えるとごくごく一般的な発言であったと言う気がしますがどうでしょうかね?
同氏が主張したかったこととしてはこちらのコメントに要約されるのだと思いますが、本来的に医薬分業と言うものは薬剤師が医師とは独立して専門職として機能するべきものであって、医師の処方通りに単なる調剤係として機能することを求められているわけではないと考えると、医師はもちろんですが薬剤師側にも役職を理解した仕事ぶりが求められるのではないかと言う気がします。

クスリの重複や飲みあわせによる副作用を防ぐために「お薬手帳」がありますが、それだけでクスリを管理するのは、現実的には限界があるかもしれません。

それに代わる方法としては、「かかりつけ薬局」を持つことも有効です。複数の病院にかかることがあっても、自宅の近くなどにかかりつけの薬局があれば、そこで一括してクスリを処方して管理もしてもらえます。患者さんから「このクスリは効かない」「このクスリを飲むと湿疹が出るから替えてほしい」といった相談があれば、薬剤師は処方した医師に確認する義務(薬剤師法に定められた「疑義照会」というシステム)があるのです。

薬剤師というと、処方箋に従ってクスリを出すだけの専門家という印象が強いかもしれません。ですが、クスリに関することは何でも訊いていただいていいんです。処方薬をもらう際、市販薬やサプリメントなどとの飲みあわせの相談でもいいですし、ご自身の体調のことを気軽に相談できる薬剤師を見つけていただきたい。

まあしかし病院でもらう薬が多すぎるとは当の医師ですら感じているところで、患者にしても「ちょっとした風邪でも近所のドラッグストアなら一つで何でも効く薬があるのに、病院に行くと何種類も薬を出される」なんてことを言う人は多いのですが、それだったら近所のドラッグストアの売薬で済ませていればいいですよね?と言うと「いや保険が使えて安いし、何となく不安だし…(ごにょごにょ)」と妙に弁解めいたことを言われがちであるようです。
ただこれも先に児玉氏の言う問題の裏返しで、どんな薬であれ副作用等のトラブルが起こりえる以上医者としては必要のないものは出したくない、それ故に患者個々の症状に応じて「この人には咳止めと熱冷ましを」と言った具合に最小限のものだけ組み合わせて使えるよう、基本的に一つの成分ごとに一つの薬となっていると言うことが理由として挙げられます(もちろん場合によっては、病院においても総合感冒薬を出すことはあるわけですが)。
また同じ効果であってもそれぞれの薬によって「飲めばすぐに効果が出る切れ味の良い薬」だとか「一日中しっかり症状を抑えてくれる薬」と言った具合に求められる性能によって薬の作りが異なっていたりもしますから、同じような効果の薬を二種類処方された、これは無意味で無駄じゃないかと思えても実際には理由があって行っていることが多いはずです。
ともあれ風邪一つでもそうした処方の思惑の全てをいちいち説明していたのでは医者も仕事になりませんから、現在薬の説明は医薬分業で独立した薬剤師が行うと言う流れになってきていると言うことなのですが、実はこの6月から薬事法と薬剤師法の同時改正が行われる、そしてその結果薬剤師の役割にも大きな変化が起こりそうだと言う気になる記事が出ています。

「薬事法の改正で、患者から十分な情報が得られない場合は、調剤薬を交付しないという判断も薬剤師に求められます」(2014年5月19日日経メディカル)より抜粋

(略)
──改正薬事法では、第9条の3に新設された第2項で、調剤薬を交付する薬剤師に患者から情報を聴取・確認させることが薬局開設者の義務となりました。第9条の3では、他にどのようなことが規定されているのですか。

 第9条の3には、「調剤された薬剤に関する情報提供及び指導等」に関する条文がまとめられています。第1項から第4項まであります。その第1項では、調剤薬を交付する薬剤師に、情報提供と必要な薬学的知見に基づく指導を行わせることを開設者の義務としています。第2項は、先ほど述べた情報聴取の義務。そして第3項は、これも新設の項目なのですが、非常に興味深い条文になっています。

改正薬事法 第9条の3第3項

 薬局開設者は、第一項に規定する場合において、同項の規定による情報の提供又は指導ができないとき、その他同項に規定する薬剤の適正な使用を確保することができないと認められるときは、当該薬剤を販売し、又は授与してはならない

 これは、情報提供と指導を薬剤師にさせることを開設者の義務としたことと関連する条文です。情報提供または指導ができないときは、その薬剤を販売または授与してはならないと書いてあるんですね。つまり、処方箋があっても、薬剤師の判断で患者に情報提供や適正な指導ができないと考えられるときは、調剤薬を渡してはいけないということが明確に記されたのです。

──それは、調剤を拒んでもよいという意味でしょうか。薬剤師法第21条で、薬剤師には調剤の応需義務が課せられていると思うのですが。   

 確かに、薬剤師法第21条にある通り、薬剤師は、調剤の求めがあった場合は、正当な理由がなければ拒むことはできません。しかし、「正当な理由」があれば拒むことができる。すると、患者から併用薬などの情報を聴取できなくて、そのために薬剤を適正に使用するための情報提供や指導が行えないと判断される場合を、この正当な理由に該当すると考えることができるわけです。
 今までは、「調剤薬を渡さない」という判断は現実にはなかなかできなかったと思うんですね。例えば、患者さんが何も話してくれないような場合でも、薬剤師は、適正な使用のために必要な情報をできるだけ提供した上で薬を渡してきた。
 しかしこれからは、患者から何も情報が得られない場合に、調剤薬を渡してはいけないという場面が出てくる。薬剤にもよりますが、患者情報がない状態で交付することに危険がありそうだと薬剤師が判断したら、調剤薬を渡してはいけないという場面が、法律上の義務として出てくるということです。
(略)
 まず、誤解をしないでいただきたい点として、改正薬事法第9条の3第2項の「情報聴取・確認の義務」は、あくまで薬局側の義務であって、患者には情報を提供する義務はないということを押さえておいてください。
 そのため、薬剤師が確認しようとしたけれども患者から情報が得られないという場面が出てくるわけですが、改正薬事法施行規則で定める項目をすべて聴取できない場合でも、例えば「併用薬はありません」「他の医療機関にはかかっていません」ということは教えてくれるような場合にどうするか。情報の一部しか得られない場合には、決して渡してはいけない薬なのか。あるいは、注意事項を伝えて渡すことができる薬なのか。これはもう、個々の薬剤師の判断になると思うんです。
(略)
 そして、改正薬事法第9条の3の最後の項目(第4項)は、以前からあった項目ですが、調剤薬を交付する患者との「契約」の解釈に関わるものです。これも、法律家として非常に興味をそそられる条文です。

改正薬事法 第9条の3第4項

 薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を購入し、若しくは譲り受けようとする者又は当該薬局開設者から当該薬剤を購入し、若しくは譲り受けた者から相談があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。

 患者と薬局の契約が「どの時点で始まり、どの時点で終わるのか」にはいくつか考え方がありますが、その一つに「患者が薬剤師に処方箋を渡した時点で始まり、薬剤師が患者に調剤薬を交付した時点で終わる」という考え方があります。しかし、第9条の3第4項には「調剤薬を渡した人から相談があったら応じなさい」と書かれているわけですから、薬を渡して、情報提供や指導をしたら、契約は終わるとは言い切れなくなる。渡した薬を飲み終わるまで、契約関係は続くととらえられるわけです。
 日本薬剤師会が2011年11月に改訂した『調剤指針13改訂』では、「患者に薬剤を交付した後も、経過の観察や結果の確認を行う」ことが調剤という概念に含まれるとしています。第9条の3第4項は、この新しい調剤概念を踏まえた規定と見ることもできます。経過観察義務とまでは読み込めないかもしれませんが、調剤は薬を渡したら終わりではないことが示された。
 薬というのは、ただ渡せばよいわけではなくて、患者さんが実際にどうやって飲むのか、飲ませるのかということを考えた指導が薬剤師には求められるし、飲んだ後のフォローも必要になる。これからは、薬をそのようなものとして見ていきましょうという姿勢が表れた条文なのではないかと思います。
(略)

今回の改定の目玉として以前から一部で問題が発生している薬のネット販売への対応と言うことがまず第一に挙げられていて、その文脈で見ますとこの条文変更も「売りっぱなしではいけませんよ。ちゃんと問診も行いフォローアップも出来る状況でなければ売ってはいけませんよ」と言う改訂であるようにも見えるのですが、いずれにしても薬剤師がこれまで以上に判断を求められる局面が増えたと言えそうです。
別記事によれば薬剤師法大25条の2において今まで薬剤師には薬に関する「情報提供の義務」が課されていたものが「情報の提供と指導の義務」に変更された、この結果今までであれば「この薬は眠くなるので注意してください」で済んでいたものが、相手の仕事内容や生活スタイルまできちんと把握した上で服薬方法をどう工夫したらよいかだとか、場合によっては医師に処方変更を求めることまでも要求されると言います。
薬学部も今や6年制となりカリキュラムも充実しているでしょうから、今後はこうした役割拡大に対応出来る医療各分野の横断的知識を持ち総合的判断力をも備えた人が増えてくるのかも知れませんが、今まで単なる薬詰め作業に徹していただとか、個々の薬剤の副作用や相互作用と言った個別的知識を持つだけだった方々が果たしてこうした役割変化に対応出来るのかどうかと、現場レベルでの実施にやや危惧も覚えるところですよね。

医療の世界では従来から医師を頂点とするピラミッド型(縦型)の組織構造があって、医師が判断し他職種はその判断の実行面を補佐すると言う形での仕事が行われてきたわけですが、近年言われるところの特定看護師のような「準医師」的資格創設の問題であるとか、あるいはこうした薬剤師に総合的な判断を求めるような法改正の行方を見ていますと、判断を下す司令塔役が多極化していくのかなと言う気もしてきます。
巷間言われるところの「船頭多くして船山に上る」ではありませんが、古典的医師像を持つベテランの先生方を中心にやはり医師の裁量権を侵害すると言うことへの抵抗感は非常に根強くあって、そうした背景事情もあってか医師会なども医薬分業にも特定看護師制度にも反対してきたと言う長年のしがらみもありますけれども、(控えめに表現しても)必ずしも日医の考え方が医師達の総意というわけでもないでしょう、
例えばチーム医療が当たり前の時代に育った先生であれば各職種も含めて大勢でディスカッションを行い方針を決めると言う作業も当たり前のものとなっていると思いますが、判例上も生半可な知識で医療を行ってはならないと言うことが定着している現在、あまりに膨大なものとなりすぎた医療の全側面を1人の人間が判断し責任を負うことなど不可能であるのは当然と言えば当然ですよね。
結局のところ医療の全体像を把握した上で個別の内容を判断出来る人間が多くなれば、少なくとも問題点の洗い出しという点では今まで以上に強力なチェック機能が働くようになるはずで、それを裁量権を侵害し医療を萎縮させる余計な横やりとネガティブに捉えるばかりではなく、医療崩壊の原因とも言われるほど重くなりすぎた医師の責任を分散負担してもらえるありがたい助力と捉えられればいいのだと思います。

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コメント

薬剤師の機能強化に否やはない(病院薬剤師が病棟に「服薬指導」をしに来るようになったことは評価しています)のですが、
「地域包括診療料」(主治医制)算定要件とからめて考えると、
厚労省の思惑としては、院外薬局のハードルを高め、消費者からの院外処方忌避の声も高めるための陰謀ではないか、という気もします。

投稿: JSJ | 2014年5月20日 (火) 08時36分

薬剤師にあまり多くを期待しても
CCBとARB同時処方したら「同じ血圧下げる薬重複処方してますがよろしいですか?」って疑義照会されんだぜ

投稿: | 2014年5月20日 (火) 08時37分

薬剤師は薬剤師で医師のことをいろいろ言ってるみたいですけど。
どの職種に限らず使える人は使えるしそうでない人は…ってことでしょ。
院外処方である限り薬剤師にもそれなりに責任があるってのは妥当な法改定じゃないですか。
責任を負うのが嫌だったら医師の指示のもとで薬詰めだけやればいいので。

投稿: ぽん太 | 2014年5月20日 (火) 08時58分

患者が本当のことを言ってるかどうか判らないんだからきちんと情報提供してくれてるかも判断しようがないのでは?
糖尿高血圧その他諸々かかえていながら「病気?ないない何もない」ですませてる患者なんていくらでもいるでしょ

投稿: たまごん | 2014年5月20日 (火) 10時00分

院外処方もうまくやれば薬剤費を切り離して医療費削減に有利に働いていたはずなのですが、現状ではどうも今ひとつ機能しているようには見えません。
その一因として勝手に薬を変えるなと処方の裁量権を主張する医師の思惑も働いているかと思いますが、仮に薬剤師が勝手に薬を出さなかった場合医師との間でまた一悶着あるかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2014年5月20日 (火) 11時23分

先生よりは薬剤師さんの方が遠慮なしで話はできますかね。

投稿: てんてん | 2014年5月20日 (火) 13時30分

この前ある講演会で演者の弁護士さんに『薬の副作用が出た時に、処方時の説明責任は医者と院外薬局のどっちの責任が重いですか』と質問したら『圧倒的に医者の責任が重いです』と言われました。

投稿: | 2014年5月20日 (火) 23時17分

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