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2014年4月23日 (水)

高齢出産社会と障害児誕生のリスク

これも様々な解釈の余地がある記事だと思いますが、先日こんな話が出ていたことをご存知でしょうか。

ダウン症児の出生、過去15年で倍増 全国調査から推計(2014年4月19日朝日新聞)

ダウン症で生まれる赤ちゃんの数が過去15年間で約2倍に増えているとする推計が、日本産婦人科医会の全国調査の分析をもとにまとまった。高齢妊娠の増加に伴い、ダウン症の子を妊娠する人が増えていることが背景にあるという。同医会が全国約330病院を対象に毎年実施している調査結果を、横浜市立大学国際先天異常モニタリングセンターが分析した。

 ダウン症で生まれた赤ちゃんの報告数は1995年が1万人あたり6・3人で、2011年は13・6人と倍増していた。

 また、ダウン症を理由に中絶をしたとみられる数も推計。95~99年の中絶数を基準とすると、05~09年は1・9倍に増えていたという。妊娠を継続していれば生まれていたとされるダウン症の赤ちゃんの数の推計では、11年は1万人あたり21・8人だった。調査では実数を出していないが、11年の人口動態統計の出生数に当てはめると、ダウン症の赤ちゃんは約2300人生まれるはずだったが、実際に生まれたのは約1500人となる。差の約800人の一部が中絶されたとみられる。

 この15年間で超音波検査による出生前診断などが広がっている。昨年4月には、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断が導入された。半年間の集計では、異常が確定した56人のうち9割以上が中絶を選んでいた。センター長の平原史樹教授は「今後、中絶数がどう変化するか、注意深く見守っていく必要がある」と話す。結果は19日、東京都内で開かれる日本産科婦人科学会学術集会で発表される。(岡崎明子)

ご存知のようにダウン症は出産年齢が高まるにつれて劇的にそのリスクが上がることが知られていて、20歳で約1700人に1人なのに対して40歳では100人に1人と言いますが、平均初産年齢が30歳を過ぎると言うほど出産年齢の高齢化が進んでいる時代にあってダウン症に限らずこうした先天異常が増加してくることは当然に予想されることだとは言えそうです。
そうした背景に基づいてか昨年から始まった妊婦の血液で先天異常の検査が出来ると言う新出生前診断の利用者が1年間で8000人近くにのぼり、うち141人が陽性と判断されたと言うことなんですが、もちろんこの検査で陽性であることがすなわち胎児異常であるとは言えないとしても、前半期半年間の追跡結果では検査陽性だった人の9割が中絶に至ったと言うのですから極めて深刻に受け止められていると言えそうです。
この検査自体そうそう気軽に受けるべきものではなく、事前にカウンセリングも行い十分に知識も持ち意味を理解した上でなければ受けるべきではないと言うほど抑制的に運用されているわけですが、それでも実施する側では2/3の妊婦の知識が不十分だと感じ、逆に十分な知識を持っていると感じた妊婦はわずかに4%だったと言いますから、今後さらに検査が広まった場合結果の判断に迷う妊婦も増えてくるかも知れません。
そしてもう一つ、ダウン症のみならず最近新たな問題として認識され始めているのがこちらの話題なのですが、まずは記事から紹介してみることにしましょう。

高齢出産がリスクに? 自閉症の子どもが急増している2つの理由(2014年4月18日アメーバニュース)

【ママからのご相談】
高齢出産をした友人の子が自閉症と診断されました。高齢出産と自閉症は関係があるのでしょうか?

●A.親の年齢と自閉症は、何らかの関係がある可能性があります。

こんにちは。ご相談ありがとうございます。ママライターのmomoです。
自閉症の原因はハッキリとは分かっておりませんが、親の年齢と関係しているかもしれない、という研究結果が最近発表されました
今回は、実際の研究結果をもとに、ご紹介します。

■家族の自閉症に関する意識が高まっている

アメリカ疾病予防管理センターでは、アメリカに住む子供の68人に1人が「自閉症スペクトラム障害」と診断したと発表しました。これは2008年に発表したときよりも約30%高い数字だといいます。
自閉症の子が急増している原因のひとつに、「家族の自閉症に対する意識が高まっているから」というものがあるようです。確かに、周りを見ると、「うちの子は言葉が遅い」「人の目をあまり見ない」などと、少しでも不安があると、すぐに専門の先生に相談することが多いように見受けられます。
昔に比べて自閉症の早期発見が増えて来ているのは、親の関心が高まって来ているからということも関係しているようです。

■高齢出産は自閉症と関係ある?

親の年齢が上がると自閉症の子が生まれる確率が上がる、ということは最近よく言われています。
米カリフォルニア大学デービス校の調査によりますと、母親の出産年齢が5歳上がるごとに、子供の自閉症リスクは18%ずつ上昇することが明らかになったそうです。一方、女性の年齢だけではなく、40歳以上の父親から生まれた場合、30歳未満の父親と比べると約6倍リスクが上がるそうです。
(略)

この自閉症と言うものも一昔前には教育論と絡めて非常に話題になったことをご記憶の方も多いかと思いますが、基本的にはかつて言われていたような親の教育方針が間違っていたからと言った環境要因から出来上がる心の病気といったものではなく、脳の性質の違いによって外部からの情報入力を正しく処理できなくなっている発達障害であると言うのが現在の疾患概念であると言うことです。
以前はせいぜい5万人に1人程度にしか認められないレアなものとされていた自閉症ですが、今や軽症のものまで含めると100人に1人くらいはいるとまで言われているのは記事にもあるように周囲の関心が高まった結果診断に至るケースが増えてきたからだとも言えますが、注目すべきはこの自閉症に関して言うと母親の高齢化もさることながら、父親の高齢化が非常に大きな影響があるのではないかと考えられている点ですよね。
女と違って男は何歳になっても子供を産ませられるなどと考える人もまだいるかも知れませんが、ちょうど先日獨協医大から出ていた調査結果によっても35歳以降精子は老化していくとされていて、人にもよりますが45歳以上では卵子に受精し細胞分裂をさせる活性化能力が若年層の半分にまで低下すると言いますから、精子量など他の条件も含めて実際の妊娠可能性と言うことで考えると相当に下がっているものと推定されます。
それ以上に深刻なのが精子の老化によって子供に各種疾患が発症するリスクが高まることが知られてきている点で、およそ40歳頃を境に自閉症や統合失調症、小児癌や糖尿病のリスクが高まってくると言う報告もあるようですから、出産年齢の高齢化問題とは母親の年齢ばかりを気にしていれば済むと言う問題でもなさそうですし、昨今増えていると言う歳の差婚なども子供に関しては相応のリスクがあるということですよね。

ちなみに現状の新出生前診断に関してはダウン症を始めとする染色体異常や先天性代謝異常などは判りますが、自閉症や統合失調症のようなものは現状ではそもそも血液検査でぴたりと診断出来るようなものではないだけにノーチェックであって、結局のところ出生前診断で陰性だったから健やかな子供が産まれると言う保証書付きであるかのように捉えるのは間違いであるわけです。
ダウン症など一部の染色体異常だけを目の敵にするかのような現在の出生前診断にどれほどの意味があるのかと言う人々の論拠の一つはこうした点にもあるのだと思いますが、一部領域に関して特別な能力を示すサヴァン症候群などはむしろもてはやされる傾向にもあるように、結局は介護要求度など周囲の必要とする養育、介護の労力がどの程度なのかと観点で言えば、やはり知的障害の有無は小さくはないとも言えますよね。
理念的にかくあるべしと言う議論ももちろん大事なことですし、ダウン症患児なども傍目にはかわいいものじゃないか、一方的に間引くのはどうなんだと言うのも判るんですが、結局のところ現代日本では家族単位で養育の責任を負わなければならない現状にある以上、高齢出産の親が多いと言うことは自分達の死んだ後に我が子がどうなるかと言う懸念を抱かざるを得ない親が多いと言うことでもあります。
その意味では露骨な言い方をすれば親にとっての養育の負担と、国や社会にとっての非生産的人口増加による負担とが真っ向からぶつかり合っていると言うことでもあって、こうした個人と社会との関係が少なくとも対立的なものでなくならない限りは親としても個人防衛に走らざるを得ないのは残念ながら当然ではあるかも知れません。

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コメント

>親の年齢と自閉症は、何らかの関係がある可能性があります。
ま、可能性はありますわな。
でもパニックを起こすのは、もう少し研究がすすんでからでいいでしょう。

自閉症スペクトラム障害というくらいで、どこで線引きするかで有病率は大きく変わりうるわけで。
特に米の国の発達障害の診断は、他の報道をみても、(これとかhttp://www.j-cast.com/2013/04/05172534.html「米高校男子5人に1人は「ADHD」 過去10年間で4割増の衝撃」)
過剰診断の感が拭えないんですよね。

そもそも、発達途上にある子供の発達がバランスよくすすむのが普通なんて幻想もいいところで、
成長過程の任意の断面で切ったら、大なり小なり発達度合の凸凹はあるものですよ。

投稿: JSJ | 2014年4月23日 (水) 08時48分

自閉症もうつと同じでためにする診断みたいなのがあるんでしょうか。
でも何の障害であれ社会生活も営めるのであれば個性の範疇でいいような。
診断する精神科医だって完璧な人格精神の持ち主ばかりじゃないでしょうにね。

投稿: ぽん太 | 2014年4月23日 (水) 09時22分

自閉症と診断されると教育面で配慮されると聞きました
ほんとだったらお得じゃないですか?

投稿: | 2014年4月23日 (水) 10時41分

結局のところはお産や養育もまたある種の経済活動であって、メリットとデメリットを勘案しながら大衆の行動は決まっていくと言うことなのだと思います。
その意味で医学的診断基準がどうこうと言うよりもその結果社会的対応がどうなるかの方が重要であって、その割り振りにおいて必要とされる範囲で医学的判断も求められると言うことになるのでしょう。
この辺りは高齢者の介護認定が純粋医学的判断と言うよりも介護サービス上の必要性ベースで行われる側面があることと少し似ていると思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年4月23日 (水) 11時56分

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