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2014年4月 3日 (木)

食材偽装事件の思いがけない余波

食材偽装事件と言うものが続出して世の中が騒然としたことは未だ記憶に新しいところで、当「ぐり研」としても当然ながら無視出来ない問題なのですが、基本的にこういうものは肩書きよりも味に対して各人が納得して対価を支払えるかどうかが重要で、安い食材を使っても料理の腕で高級なものに仕立て上げられると言うのであればこれはこれでお金が取れる仕事ですよね。
もちろん露骨な詐欺行為を働いたことに対しては組織として個人として真摯に反省すべきですし責任も取るべきでしょうが、食材にしろ料理にしろ値段が高い安いと言うのは味ではなくあくまでも経済的理由によって決まっていることですから、肩書きを有り難がってさしてうまくもないものに高いお金を出すのも馬鹿馬鹿しいことだし、安ものだからとおいしいものを見下して扱うのももったいないことだと思うのです。
いささか脱線しましたけれども、これだけ広汎に食材偽装が明らかになりますとどうしても公的対応が必要なのではないかと言う声が上がるのも無理からぬところなのですが、いわゆる詐欺的な偽装とはまた異なった領域で思いがけない余波が及んでいるという話をご存知でしょうか。

業界「おいしい名前認めて」 サーモントラウト→ニジマスの指針案見直しへ(2014年2月24日産経新聞)

 外食メニューの表示偽装問題を受け、消費者庁がまとめた外食メニュー表示のガイドライン(指針)案で、反発を招いた「サーモントラウト」の表示。「ニジマス」と表示するよう求めていたものだが、反発の大きさに同庁は指針案を見直す方針という。すしネタの「サーモン」は生で食べられるサーモントラウトによって定着した。業界関係者は食品の特性を踏まえたルールを考えてほしいと訴えている。(平沢裕子)

 ◆養殖だから生食可

 ニジマスはサーモントラウトの標準和名。指針案ではサーモントラウトをサーモンと表記した場合、「標準和名はニジマスなのにサケと認識され、問題」としている。
 食の安全・安心財団の中村啓一事務局長は「トビウオは標準和名がトビウオだが、九州や日本海側ではアゴと呼ばれるように、市場に流通する名前と標準和名が異なる魚は多い。食材としての名前と標準和名が異なることが必ずしも消費者を偽っていることにはならない」と指摘する。
 サーモントラウトはニジマスを海面養殖(沿岸の海水を使った養殖)で大きくしたもので、ニジマスであることは間違いない。ただ、淡水魚のニジマスは寄生虫の心配から生で食べる習慣は一般的でなく、同様に天然のサケも刺し身で食べる場合は凍らせたルイベにする。すしネタの「サーモンにぎり」は、養殖のサーモントラウトが日本で安定的に供給されるようになったことで定着したメニューともいえる。
 「サーモンにぎりとしてサケ科の魚を生で食べることができるのは、寄生虫の心配がない養殖のサーモントラウトならでは。多くの人が淡水魚と認識する『ニジマス』の呼び名ではすしネタで食べたいと思う人はいなくなるのでは」(中村事務局長)

 ◆アブラガニは減少

 標準和名の表示しか認められなくなったことでスーパーなどで販売が減ったものにアブラガニがある。タラバガニと外見が似ているアブラガニは、かつて「タラバガニ」「アブラタラバ」の名前で、タラバガニより2割程度安い値段で販売され、「安くておいしい」と人気があった
 しかし平成16年、アブラガニをタラバガニの名前で売ることが景品表示法違反(優良誤認)となり、これをきっかけに標準和名のアブラガニの名前でしか売れなくなった。スーパー関係者は「タラバもアブラも味はそれほど変わらない。でも、アブラガニの名前では聞こえが悪いので売りにくくなった」と打ち明ける。消費者からすれば、安くておいしい食材を買う機会が減ってしまった。
 サーモントラウトなどを海外で養殖し、輸入販売しているカマンチャカ(東京都中央区)の三橋平典代表は「事業者は消費者がおいしく感じるような名前をつけて販売してきた。嘘の名前はだめだが、食材としての魚の名前は文化に属するものだけに食品の特性を踏まえたルールを考えてほしい。また、一度決めたものに対しても異議を述べたり再検討したりする場も設けてほしい」と話している。

 ■アレルギー表示 トラウトはサケ

 サケは食物アレルギーを起こす物質を含む食品の一つ。原材料として使ったとき、アレルギー物質として表示義務がある「特定原材料」ではないが、準ずるものとして消費者庁は通知で表示を推奨している。昨年9月に同庁がまとめたQ&Aでは、サケの表示は「海から取れるもの」を対象としており、ニジマスやイワナなど淡水でのみ生活しているものは対象外とした。
 サーモントラウトをニジマスとみなすならアレルギー物質としての表示はいらないが、実際はサーモントラウトも他のサケと同じくアレルギーの原因となる。中村事務局長は「消費者庁内で魚の表示ルールをめぐって整合性が取れていない。食物アレルギーは命にかかわることもあるだけに、指針内容を丁寧に検討してほしい」と話している。

あからさまに偽物を本物と偽って出すような確信犯的なケースばかりが取り上げられたせいか、食材偽装=問答無用で悪と言う図式が世の中に認知された結果こういうことになったと言うことなんですが、標準和名でなければ認めないと言った厳格なルールを徹底しすぎると回転寿司などは聞いたこともないような魚ばかりと言うことにもなりかねず、庶民の楽しみが大きく減弱してしまうでしょうね。
こういう話を聞きますといわゆるあやかり鯛を鯛と称して出すのは偽装なのかとか、全くししゃもではないものをししゃもと称して出すのは詐欺じゃないかとか色々と考えてしまうのですが、すでに長年その名前で流通しているものを今さら本当はこうだ!と訂正して回ると言うのも「ホッチキスじゃなくステープラーだ」などと主張するのと同様に何やら不毛な気がしないでもありません。
当然ながら食品関連業界としても何が何でも標準和名通りしか認めないのでは商売あがったりだし消費者利益にも反すると主張してきたわけですが、先日それに関して消費者利益を守る立場の消費者庁からこういう続報が出てきたようです。

トラウトでサケ弁OK 外食表示の指針を修正(2014年3月29日スポニチ)

 消費者庁は28日、食材虚偽表示問題を受けてまとめた、外食メニュー表示に関する景品表示法のガイドライン(指針)を公表した。昨年12月に示した指針案には「実態に合わない」と批判が相次いだことを踏まえ、サーモントラウト(ニジマス)を使って「サケ弁当」と表記してもよいとするなど修正を加えた。
 指針案は「サーモントラウトをサーモン(サケ)と表示すると問題になる」と指摘していた。弁当や茶漬けにサーモントラウトを使うことが多いため、「サーモントラウト弁当」「ニジマス茶漬け」に変更する必要があるのか、と関連業界などに混乱を招いていた。

 指針は「社会的に定着したメニュー名は問題でない」として、サケ弁当などは景表法に違反しないとの解釈を示した。同様に、カモでなくアイガモの肉を使った「鴨南蛮」も問題ないとした。
 解凍した魚を「鮮魚」として提供することは、指針案では「表示の仕方によって問題」としたが、分かりにくいとの意見が寄せられたため、「特に新鮮さを強調しなければ問題にならない」と付け加えた。
 一方、違反例としては、特定の産地の野菜使用をうたいながら多くは産地が違ったり、外国産伊勢エビに三重・伊勢志摩地方の写真を付けたりしたケースを挙げた。

 指針は今後、都道府県に配布し、業界団体の講習会などで活用する。
 消費者庁は今年1月、外食業者や消費者団体との意見交換会を開催。指針案に対する意見公募には515件が寄せられた。

まあ産地問題も遠い漁場の魚を有名産地で水揚げして出荷するだとか、外国産の貝を国内の浜に一度放って国産として出荷するだとか色々とやり方はあるのだそうで、やはり結局は肩書きではなく味で判断するしかないと言うことになるのでしょうか。
それはともかく消費者の利益を守るための省庁であるはずの消費者庁が産業界の既得権益を代弁するのか!とお叱りを受けかねない話でもあるわけですが、それでは何でも本当の名前でしか売れないことにすれば消費者の利益になるかと言えばそんなわけでもないのであって、今晩の食材を買いに出かけても何が何やら判らず買い物も出来ないと言う不測の事態すら発生しかねないわけです。
一応今回の指針では社会的に長年定着している呼称に関してはそのまま認めましょうと言うまずまず妥当なものだと思うのですが、しかし実際には何を以て社会的に定着しているかを判断するのは非常に難しいものもあって、「国内一部方面では長年イノシシは山クジラと呼ばれているからクジラ肉として出荷しました」式で全部認めていたのでは消費者としても何を信用していいのか判らないですよね。
ただこうした指針によって最も悪質な意図的偽装に関しても一定の歯止めがかかるものと期待したいところですが、実際にはこうした場合標準和名がどうとか世間で定着しているかどうかではなく単に似ていて割安なものを代用しているわけですから、結局は流通から消費に至る各段階で自主的な誠意をどれほど維持出来るかと言うことに尽きるかと思います。

本来的には正しい名前と通称とを併記して徐々に本当の名前を滲透させていくと言った気の長い作業が求められるのでしょうが、一般的に本当の名前は聞き慣れ なかったり長かったりで表記も理解も難しいと言うこともあって(本日は子持ちキャペリンが特価でなどと言われてもぴんと来ませんよね)、一足飛びに強要す るのではなくまずは食材に関心を持ってもらうことが結局は偽装を減らしていくことにもつながるのかなと言う気がします。
その意味で時折見かけますが「サーモントラウトはサケ属サケ科の魚で」云々とわざわざ言い訳がましく表記してある商品などは「へえ?どういうことだろ?」と考えるきっかけになると思いますし、昨今ではスマホなどもあるのですから買い物の時にはまず原材料表記を確認するだとか、知らない魚は取りあえず調べて旬や調理法、選び方を知ると言うのもいいかも知れません。
もちろん何かの偽物、代用品のように言われている食材であってもその食材にとっては本物なのですから、名前がどうあれそれなりにちゃんとした味のものをお値打ちの値段で出せると言うのであれば消費者の利益でもあり、場合によっては本物の資源保護などの観点からも代用品利用の必要性が高いと言うこともあり得るでしょう。
ただこうした似て異なるものばかりが流通するようになって本物の味が忘れ去られていくというのであればこれはこれで悲しいことですから、流通や小売りに関わる人々には効率が悪くなってもなるべく本物と偽物を並べて売ってもらいたいし、消費者の側も本物偽物のそれぞれに関する知識を持つと共に折々には本物も買ってその味を忘れないようにしてもらいたいものだと思いますね。

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コメント

けっきょく味音痴が騙されたってことでしょ?
ものの価値が判らない人は損するでFA

投稿: | 2014年4月 3日 (木) 08時19分

どう言い訳してもお客を騙して儲けたってのはダメだと思いますよ。
でもサーモンってサケとは味が違うとは思ってたけど違う魚だったんですね。
こういうのはテーブルでうんちく的に張り出しといてもいいんじゃないですか?

投稿: ぽん太 | 2014年4月 3日 (木) 09時03分

もちろん社会的に詐欺が許されざる行為なのは言うまでもないのですが、食材偽装の罪は本来Aと言う食材はAとして高く評価されていたかも知れないのに、Bと偽られたばかりにBとして不当に低く評価されたということです。
特に資源枯渇から極端な値を付けている食材は幾つもあって、冷静に考えればこの味でこの値段は高すぎると言うことは幾らでもありますし、ほとんど同水準の味がリーズナブルに食べられるなら本来福音ですよね。
その意味で安くてうまいが知名度はないと言う食材をきちんと宣伝してこなかった関係者ももっと反省し努力すべきだと感じさせられた事件だったと思いますね。

ちなみに近年の個人的なヒット食材として近所のスーパーで売っていたスジガツオ(歯ガツオ)の叩きがありますが、見た目も味もカツオとは似ても似つかず食べても思わず「サワラの取り違えか?」と思ったものです。
http://www.zukan-bouz.com/saba/saba/hagatuo.html
実際のところサバ科の魚ですからサワラと似た系統の味になってもおかしくないのでしょうが、せっかく知名度を上げるチャンスなのに何の説明もなく単なるカツオみたいに売られているのはもったいないと思いましたね。

投稿: 管理人nobu | 2014年4月 3日 (木) 10時01分

もう中国とか笑えないんじゃないの

もともと高級食材なんて縁がないから、これもおいしいって言って試食でもさせてくれれば買うのに

投稿: | 2014年4月 3日 (木) 10時17分

個人的にはカラフトシシャモをシシャモと表記するのは詐欺だと思ってますけれど・・・

投稿: クマ | 2014年4月 3日 (木) 13時21分

でもカラフトシシャモ使わないと需要全然捌き切れないです。。。

投稿: | 2014年4月 3日 (木) 14時27分

素直にカラフトシシャモかカペリンって表記すれば良いと思うよ・・・

投稿: クマ | 2014年4月 3日 (木) 15時30分

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