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2014年4月21日 (月)

自宅介護推進に伴い意外なリスクが増大?

超高齢化社会到来に伴い必然的に発生する可能性のあることですが、過去になかなか報道されることのなかった類の問題が発生していると言うニュースが出ていました。

認知症男性:仮名2年、身元不明のまま 大阪の路上で保護、届けなく(2014年04月19日毎日新聞)

 2年前に大阪市の路上で警察に保護されたが、名前や住所など身元が全く不明のまま、仮の名前が付けられ介護施設で暮らす重い認知症の男性がいることが分かった。男性は自分の名前が分からず、該当する行方不明者届もない。専門家は「高齢化が進み、今後このような人が増えていくのでは」と危惧している。

 大阪市は男性に対し、保護された場所にちなんだ名字に「太郎」という仮の氏名を付けた。福祉の保護を受ける手続きなどで必要なためだ。容姿などから70歳と推定して仮の生年月日も決めた。現在推定72歳になったが、入所する同市内の介護施設の職員には「実際はもう少し若いかもしれない」との見方もある。
 記者は4月上旬、介護施設を訪ねた。「お元気ですか」と声をかけると、太郎さんは「ああ」とうなずき笑顔を見せた。判断能力が不十分な人を守る成年後見人に、市長申し立てで選任された山内鉄夫司法書士らによると、太郎さんの要介護度は3。言葉を発するのが難しくトイレも介助が必要だが、足腰は丈夫でひとりで歩くことができる

 2012年3月11日午前8時前、日曜の朝だった。同市西部にある住宅街の歩道でしゃがんでいたところを警察に保護された。水色のダウンジャケットにグレーのスエットズボン、黒の運動靴。身なりに汚れはなかった。お金や所持品はなく、名前を尋ねても「分からん」と答えた。
 保護された際にはズボンの下に介護用の紙パンツをはいており、保護前に介護を受けていた可能性がある。介護施設の職員も「介護なしで生活ができるレベルではなかった」と話す。
 その日のうちに大阪市による緊急一時保護の手続きが取られ、太郎さんは市内の保護施設に入所した。規定の保護期間(14日間)を過ぎても身元が分からず、同年3月末から現在の介護施設に入った。
 介護施設は通常、本人の経歴や病歴、家族構成などを踏まえてケアにあたる。例えば夕方に歩き回る人がいれば「子供の夕食を作るため家に帰ろうとしているのか」と理由を推測し、不安を取り除くよう努める。だが、太郎さんには保護前の情報がない。山内さんによると、30ほどの施設が入所を断り、受け入れ先は容易に見つからなかった

 太郎さんは特殊なケースなのか。認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長は「超高齢社会では人ごとでなく、同様のケースが身近で増えることは確実だ。これまでも太郎さんのような存在と対面しているが、実態把握も対応も進んでいない。一刻も早く本名を取り戻し家に戻れるように、国や自治体が本格的に対策に乗り出すべき時期だ」と話している。【銭場裕司、山田泰蔵】

明らかに独立生活不能の要介護状態、かつ長期間放置されていたわけでもないと推定される状況で発見されているわけですから、普通に考えれば誰か家族なり介護スタッフなり世話をしていた人がいるはずですし行方不明になったと騒ぎになっていてもおかしくはないのですが、何ら音沙汰がないと言うことから色々と想像が膨らみますよね。
着衣等の状態から直前まで介護を受けていたと予想されること、所持金もなく遠出できるとも思えない状態であることを考えると通常なら発見地点周囲に居住していると考えるべきで、それでも身元が判明していないのだとすると意図的に判明しがたい状況に置かれていたと言う可能性もありそうですが、万一にもそうなるとますます身元が判るとは考えがたくなってきます。
時折孤独死のニュースなどが配信されることから考えると、おそらく要介護状態で放置されると通常は短期間で生命の危機に陥るのだと思いますけれども、こうした身体年齢よりも精神年齢の老化が進んでしまったケースでは思いがけない行動に出る場合もままあって、時に徘徊の最中に交通事故などに遭遇していることも報道されますが、こうした徘徊のケースは全国的に見ても決して少なくはないようです。

認知症で行方不明後に死亡 約3割が独居(2014年4月17日NHK)

認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明となる人が年間1万人近くに上っている問題で、NHKが、行方不明となり死亡した人の家族などを取材した結果、1人暮らしの人が全体のおよそ30%に上ることが分かりました。
専門家は「認知症になっても自宅で暮らし続けられるようにしようという、国の政策が実現されていないことを示すもので、早急な対策が必要だ」と指摘しています。

認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明になったとして、警察に届けられた人は、おととし1年間に全国でおよそ9600人に上り、このうち351人の死亡が確認されています。
NHKは詳しい実態を調べるため、過去5年間に全国で行方不明になったとして警察や自治体に届けられた、およそ400人について取材しました。
このうち死亡が確認された112人について、家族や介護関係者などから当時の状況を詳しく取材した結果、1人暮らしの人が33人と、29%に上ることが分かりました。
なかには、症状から1人暮らしが困難だと介護関係者が判断したものの、すぐに入所できる施設が見つからず、そのまま自宅で暮らした結果、行方不明となり死亡した人もいました。

国は、認知症になっても精神病院に入院せず、できるだけ自宅で暮らし続けられるよう、訪問介護や訪問看護のサービスの充実や、グループホームなどの施設の整備を進めていますが、こうした国の対策が、増え続ける認知症の人を十分に支えることができていない実態が浮き彫りになりました。
これについて、認知症の問題に詳しい本間昭医師は、「国の政策を実現するための手立てや資源が不足し、現場が追いついていないことを示している。早急に対策を考え、問題を解決していく必要がある」と話しています。

もちろん独居老人がかなり多くを占めるというのは当然なのですが、家族がいても24時間365日監視するというのは事実上不可能であり、また家庭介護の場合こうした徘徊をする老人に対応した家屋構造になっておらずいつでも勝手に出て行けるわけですから、運良く見つかり事件にならないまま連れ戻された人はこんな数では済まないだろうとは推定できますよね。
ちなみに冒頭の記事にあるような身元不明のまま暮らしている要介護老人もNHKの調査によれば少なくとも全国に4人は確認されているということなのですが、介護疲れから家庭内で修羅場に至るといった悲しむべき事例の報道が決して珍しくないことを考えると、むしろ今後同様のケースは増えていくと言う可能性もあるわけです。
介護保険の認定においては基本的に身体的活動度を中心に評価していて、身体は元気だけれども認知症が著しいと言った場合にはなかなか十分な認定が取れないと言う問題が言われていますけれども、栄養確保や褥創等に留意しておけばある程度計画的に介護が行える寝たきり状態に比べて、いつ何をするかも判らない認知症の方が厄介で目が離せないと言う考え方もあるでしょう。

当然ながらこうした問題が掘り起こされるようになると、政府がこのところ進めている「入院・入所から在宅へ」と言う流れで大丈夫なのか?と言う疑問が出てくるところですけれども、もちろん大原則として認知症患者に限らず一カ所にまとめて複数のスタッフが交代で対応した方が間違いはないし、介護としての永続性も得られやすいのは当然ですよね。
それでは何故在宅移行なのかと言えば自宅で高級レストラン並みの凝った料理を作る人が少ないのと同様、自ら手を動かして行い手間暇を経験することで介護に対する要求水準を下げ結果的に介護コストの引き上げを図っているからだと言えますが、問題はそうした必ずしも最善最良とは言い切れない自宅介護によって何か問題が起こった場合に誰の責任になるのかと言う点です。
もちろん寝たきりの方が自宅介護中に誤嚥性肺炎になったと言った場合には本人と家族だけが関わることで、基本的には当事者が納得していられればそれで済む問題とも言えますが(もっとも、時にはそれが受け入れられない方もいらっしゃるようですが)、徘徊老人が思いがけないところから飛び出して車にひかれたと言った場合、これは家庭内に留まる問題ではなく社会的な問題ということになってきますよね。
赤信号では止まるだとか、道路に急に飛び出さないと言った基本的ルールを皆が守っている前提で社会が回っている時、そのルールを超越した存在が紛れ込んでくれば大混乱が起こるのは必至ですが、それでも「あなたが前をしっかり見ていないから事故になったんでしょ?」で済まされてしまうのだとしたら、おいおい勘弁してくれよと言いたくなる人も増えてくるかも知れません。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

爺ちゃん's軽トラの高速逆走も勘弁な

投稿: | 2014年4月21日 (月) 08時58分

たま~に深夜にふらふら歩いてる人みますけどね。
酔っ払いがいきなり道路の真ん中に寝てるのも怖いです。

投稿: ぽん太 | 2014年4月21日 (月) 09時58分

真っ黒なスーツを来た人が雨の日に歩いていると見えにくいくらいで、まして予想外に道の真ん中で寝ていたら見落としてしまう可能性は高いでしょうし、正直それで事故を起こしてしまうのは同情いたします。
高速道路と言えば逆走もさることながら、SAで休憩中にお年寄りが本線に迷い込んで重大事故発生と言うケースが今後起こらないものかと心配しているのですが、ともかくご家族にも十分気をつけていただきたいと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年4月21日 (月) 11時38分

新たな老人換金商売か

投稿: | 2014年4月21日 (月) 17時54分

そう言えば失踪者扱いの期間には年金等は支給されるのかどうか?

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年4月21日 (月) 22時35分

 愛知県大府市で2007年、徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡した認知症の男性=当時(91)=の妻や長男らに、JR東海が運行遅れの損害約720万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は「監督義務の履行に努めていた」として、全額の支払いを命じた一審名古屋地裁判決を変更し、妻のみに約360万円の支払いを命じた。

 長門裁判長は判決で、重度の認知症だった男性の配偶者として、妻に民法上の監督義務があったと認定。外出を把握できる出入り口のセンサーの電源を切っていたことから、「徘徊の可能性がある男性への監督が十分でなかった」と判断した。
 一方、長男の妻が横浜市から転居し、共に在宅介護していた点を評価。JRが駅で十分に監視していれば事故を防止できる可能性があったとも指摘し、賠償責任を5割にとどめた。(2014/04/24時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014042400715

投稿: | 2014年4月25日 (金) 09時20分

列車事故の賠償に関しては基本的に個人請求ではなく保険においてまかなうべきものだと考えます。

投稿: 管理人nobu | 2014年4月25日 (金) 11時36分

保険会社が認知症で損害を与えた場合に保証する保険を売り出したりしませんかね
もうあったりするのかな

投稿: | 2014年4月25日 (金) 11時57分

保険だと誰が保険料払うかで問題になりません?
受益者=家族
保険料負担=鉄道会社(実際には乗客)

投稿: 鎌田 | 2014年4月25日 (金) 12時30分

子供のいたずらや、普通の自殺でも遺族に運行遅れの損害を請求しているなら、
認知症を完璧に監督するのは難しいから請求するなというのもおかしいですか
むしろ、これで介護から解放されたのだから・・・いやいや

投稿: | 2014年4月25日 (金) 13時57分

>むしろ、これで介護から解放されたのだから・・・いやいや

それは言わないお約束w

投稿: aaa | 2014年4月25日 (金) 14時03分

鉄道乗客に対する事故遅延時の損害賠償費用にもあてると言うことであれば、運賃に保険料を上乗せすることは可能かも知れませんな

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年4月25日 (金) 18時37分

この事件、確か職員専用通路が誰でも通れるようになっていて、そこを通った認知症の男性が電車に轢かれた事故だったはずです。
認知症で無い人が勘違いでこの通路を通っていたらJRの方が損害賠償支払わないといけない事故のような気がしますけど、どうなんでしょう?

投稿: クマ | 2014年4月26日 (土) 09時34分

認知症老人ではなく子供が入り込んで引かれていても損害賠償請求してたのかな?>JR
イメージダウンしても競合企業もないから無問題って感じ?

投稿: | 2014年4月26日 (土) 10時53分

認知症の人 鉄道事故で64人死亡
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140423/k10013971131000.html
NHK 4月23日 17時59分

NHKが鉄道会社が国に届け出た鉄道事故の報告書を情報公開請求して分析し
た結果、「認知症」ということばが使われるようになった平成17年から去年
までの8年余りの間に認知症の人が徘徊するなどして起きた事故は、少なくと
も76件に上り、このうち64人が死亡していたことが分かりました。

さらに死亡した人の遺族を取材した結果、少なくとも9人の遺族が事故のあと、
鉄道会社から振り替え輸送などの名目で数万円からおよそ720万円の損害賠
償を請求されていたことも分かりました。このうち、愛知県で起きた事故を巡
っては、JR東海が死亡した認知症の男性の遺族に賠償を求めて裁判を起こし
1審は去年、家族が注意を怠ったなどとしておよそ720万円の支払いを命じ、
認知症の人の家族などの間には「24時間見ていることはできず、実態を理解
していない」などという波紋が広がっています。

これについて東北大学の水野紀子教授は「家族の責任が問われると認知症の人
を外出させなくなるおそれがある。社会全体の問題としてどう負担するか考え
ていく必要がある」と話しています。

投稿: | 2014年4月27日 (日) 08時25分

◇群馬県館林市も苦慮

 東京都台東区の認知症の女性(67)が2007年に群馬県館林市内で保護され、今月
12日まで身元不明のまま民間介護施設に入所していた問題で、女性の7年間の生活費が
、市から家族に請求される可能性のあることが分かった。7年間の生活費総額は1000
万円を超えるとみられ、市は国や県と協議し慎重に対処するとしている。

 館林市や介護施設によると、07年10月に女性が保護されてから数週間は、一時的な
保護措置として市が費用を全額負担した。その後、施設を居住先として仮の名前で市が住
民票を作成、生活保護費を支給した。収入や資産、年金給付、親族による援助はいずれも
ないとみなした。

 女性は保護当時は「要介護3」で、約4年前から寝たきりになり、現在は最も重い「要
介護5」と認定されている。しかし介護保険は適用されず、介護費用の全額が生活保護の
介護扶助として施設側に支払われてきた。

 関係者によると、女性の生活にかかる費用は保護当初より増え、現在は月額30万円近
くとみられる。7年間では総額1000万円以上に上る見通しという。

 館林市の担当者は「本人や家族に資産があることが判明した場合、市が立て替えた費用
の返還をお願いするのが原則」と説明する。一方で「前例がなく、我々の対応が今後のモ
デルになり得る。県や国の指導を仰ぎ、どのように対処すべきか慎重に判断したい」と話
している。

 田村憲久厚生労働相は13日の閣議後会見で、この女性の生活費の負担について「どう
いう解決方法があるのか検討する」と述べた。群馬県内のある行政関係者は「今回のケー
スを知って『認知症の家族を見捨てても、行政が金を出して施設が世話をしてくれる』と
考える人が出てこないか心配だ」と話す。
http://mainichi.jp/select/news/20140515k0000m040142000c.html

投稿: | 2014年5月15日 (木) 13時32分

これ年金は受け取ってたんだろうか?

投稿: | 2014年5月15日 (木) 17時50分

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