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2014年4月28日 (月)

介護のディスカウントは結局利用者利益になっていない?

先日認知症老人が徘徊中に線路に入り込み列車にはねられた事件で、JR側から介護を行っていた妻への損害賠償請求を認めた高裁判決が出されたことが大きな話題となっています。
国策として病院から介護施設へ、さらには在宅へと医療・介護領域でのコスト削減を大々的に強いられる中で、頑張って自宅で介護を行ってもこうした結果になるのであればやはり施設なり病院なりに預けておいた方が楽であり安全でもあると考えるのは当然ではあり、またそもそも列車事故の場合に遺族へ巨額の損害賠償請求を行うと言う慣行がどうなのかと言う議論もかねてあるところですよね。
そんな中で今後ますます需要が増えると予想される一方で深刻な人手不足が解消しないままだとされる介護業界に関して、確かにこれでは人手不足にもなるだろうなと思われる報道が相次いでいます。

介護職の賃金 平均より約9万円低い(2014年4月23日NHK)

介護施設で働く人の賃金について労働組合が調べたところ、月額の平均で20万円余りと全産業の平均より9万円近く低いうえ、サービス残業をしていると答えた人が半数以上に上りました。
組合は「このままでは人手不足がさらに深刻化する」と指摘しています。

この調査は労働組合の全労連が全国の介護施設で働く人を対象に調べたもので、6300人余りから回答を得ました。
それによりますと去年10月の時点で正規職員の賃金の平均は月額で20万7795円と、すべての産業の平均(29万5700円)よりおよそ8万8000円低かったことが分かりました。
また、サービス残業をしていると答えた人が61%に上り、月に10時間以上、サービス残業をしているという人も23%を占めました。
さらに、去年3月までの1年間に有給休暇を取得できたか聞いたところ、21%の人が「全く取得できなかった」と答えたということです。
全労連の根本隆副議長は「賃金や労働条件が低いままでは離職者がますます増え、人手不足が深刻化する。国は介護報酬を引き上げるなど処遇改善を図っていくべきだ」と話しています。

<介護職>低い賃金で疲弊 相次ぐ離職「仕事夢ない」(2014年4月27日毎日新聞)

 過酷さの割に賃金が低いと指摘される介護職。政府も手は打ってきたものの、依然、他業種との格差は埋まらない。人材確保には、賃金アップか外国人の活用か--。ここへきて国の姿勢も揺れている。【遠藤拓、佐藤丈一、中島和哉】 

 常夜灯がぼんやり照らす廊下を、おむつやタオル、ごみ箱を積んだ台車が行き来する。11日深夜。東京都葛飾区の特別養護老人ホーム(特養)「葛飾やすらぎの郷」に勤めて3年目、生活援助員の宮崎梓さん(22)の夜は長い。
 1フロアには約40人が入居する。大半は80~90歳代で7割は認知症だ。同僚と2人、一晩で4回は巡回し、おむつを替え、トイレを介助し、体位を変える。消灯後も徘徊(はいかい)する人はいるし、繰り返し呼び出しボタンを押す人もいる
 ひと息つけるのは午後11時の食事と2時間の仮眠の間だけ。「朝方トイレに行きたくなりそう。でも、呼ばないようにする」。そう気遣う女性入居者に、宮崎さんは「気にしなくていいんですよ」とほほ笑んだ。
 月4~5回の夜勤日は、午後5時前から翌朝10時前までの勤務。しかし、この日は引き継ぎ書類の記入やシーツの交換に追われ、朝食にありつけたのは昼近くになっていた。

 ◇平均を9万円下回る

 正規職で介護福祉士の資格を持つ宮崎さんの月給は、手取りで約18万円。15万円を切るという同業の友人よりは「恵まれている」と感じる。とはいえ、介護労働者の賃金は他業種に比べて低い。全国労働組合総連合のアンケート調査(昨年10月)では、手当を除く正規職の平均賃金は20万7795円。厚生労働省調査の全産業平均(29万5700円)を約9万円下回る。
 長らく介護は主婦による家事労働とみなされてきた。職業としての確立が遅れ、低賃金から抜け出せない。介護労働安定センターによると、介護職の離職率は17.0%(2011~12年)で、全産業平均(14.8%)を上回る。求職者1人に働き口がいくつあるかを示す2月の有効求人倍率は2.19倍。全産業平均(1.05倍)の2倍だ。
 「家族を養えないからな」。首都圏の介護施設に勤める30代の男性介護福祉士は、結婚を機にそう言って「寿退社」していく仲間を大勢見送ってきた。この道7年目。専門学校の同期80人のうち、続けているのは十数人。自身の手取りは初任給から2万円ほど上がり、ようやく月約23万円となった。が、同業の妻は初めて産んだ子の育休中。共働きでなければ生活は成り立たず、保育所を確保できるかが不安でならない。
 「仕事に夢を見られない。このままなら、なり手はどんどんいなくなる」
 日本海に臨む金沢市郊外の特養「やすらぎホーム」。入居する母(83)の昼食介助に隣の石川県野々市市から訪れる主婦(64)は通ううちに介護職員の疲弊を知り、入居者の家族と職員の処遇改善を求める署名に取り組むようになった。
 母親が入居したのは06年10月。脳梗塞(こうそく)で半身不随となり、食事、排せつなどすべてに介護が必要だ。感情が高ぶるとパジャマを歯で切り裂く。そんな母をてきぱき世話してくれる職員たちも、入居当初からの顔なじみは3人に1人ほど。慣れた頃にはいなくなるからだ。この主婦は訴える。「親の面倒を見るかのようにしてくれた職員が、どんどん辞めている。専門職にふさわしい給料が必要です」

介護業界などもしばしば3Kだ、4Kだと言われますけれども、責任感もあり仕事に熱心な人ほどより多くの仕事を抱え込み身動きも取れなくなってしまい、結局仕事を続ける事が出来なくなると言うことがままあるようで、離職者が続出しても給料が安い以上新たな新規採用をかけることも難しく、ますます一人あたりの負担が増え離職者が増えると言う悪循環に陥っているようです。
基本的に医療と同様に介護も公定価格でやっている業界ですから、介護報酬による限られた収入の中で運営コストを捻出し設備投資等も行いつつ人件費も賄わなければならない以上給料の上げ下げもそう任意で行えるものではないのでしょうが、国としても過去に幾度か介護報酬を上げているにも関わらず未だに低賃金が横行しているというのは、適切なフィードバックに基づく報酬設定が行われていないせいでしょうか。
介護も国家資格職としての側面があって、今後明らかに就職先としての魅力に乏しい状態が続くということであれば資格を取ろうというモチベーション自体が下がっていくでしょうし、また有資格者が幾ら増えても実際には就業していない人ばかりが増えてくるのでは意味がないことで、今後ますます増えていく利用者にとっても何とも不安な状況であると言えるでしょう。

公定価格によって報酬が決まっていると言う点では医療もそうなのですが、基本的に月々決まり切った介護を行い定額の報酬を得ると言うスタイルの介護と違い(それはまあ、毎月施設の支払いが激変していたのでは利用者も大変ですからね)、医療の場合は出来高報酬であってその気になれば原理的に幾らでも収入を増やすことも出来るし、実際に数々の厳しい診療報酬改定を経ても各医療機関はしぶとく生き残っています。
医療の世界においても昨今定額払いシステムが取り入れられてきていますが、これも当然ながら不確実性や多様性の高い医療という行為に対応出来るよう様々な抜け道があって、うまくやれば出来高払い以上の収入を得ることも出来るわけですから、やはり自分達が何をどれだけやるかを自分達で決めることが出来る医師最強と言うことですよね。
介護の側ではこうした自由度はあまりないでしょうが、実は混合診療が未だ原則的に認められていない医療と違って介護保険による以外のサービス提供も認められていて、こちらでは全額自己負担の収入が得られるわけですからうまく行えばスタッフの待遇改善にも役立てらる理屈なんですが、問題は付加的サービスに対する付加的コスト負担を利用者がどれだけ受け入れるかですよね。
実際にお金持ちに対して高負担高サービス提供を行っている施設もありますが、一般にはこうした施設への利用者はそうそういない一方で付加的コストの少ない施設は入居待ちの行列が出来ていると言う状況であって、要するに業界全体で利用者のためによかれと思って安売りをしていることが結局は適正な利益を上げられず自分の首を絞め、利用者にも不便を強いることになっていると言ってもいい状況です。

行列待ちが出来るほど需要があるのだから売り手優位であるはずだ、それなら介護事業の永続性を担保するためにももっと業務に対する適正なコスト負担をお願いしてもいいんじゃないかと言う考えは妥当ではあるのですが、この点で日本では介護施設よりも病院に入れている方が家族にとっては安上がりかつ安心出来る、そして病院側も「施設が一杯だから」とついつい空きが出来るまで引き受けてしまうと言うことがありがちですよね。
介護施設利用のコストが引き上げられれば当然この傾向に拍車がかかるはずで、幾ら厚労省が長期入院お断りと言ったところで引受先の施設が見つからないのだからと言う話になりかねませんが、このあたりはやはり医療と介護を別々のものとしてしまったことが話をややこしくしている一因でもあって、患者の全人生においてトータルに医療・介護のコスト負担をしていただくと言う考え方の方が妥当なのかも知れません。
ただ介護コストの増大は社会保障支出の削減を図りたい国としてはおいそれとは飲めない話であることは過去の介護報酬のしみったれた上がりっぴりを見ても明らかで、そうなると介護報酬が上がり提供側の体制が充実しても無制限にそれを使ってしまうと言うことのないよう、一定の歯止めが必要になってきそうですよね。
海外などでは一人あたりに使える生涯の医療サービスの総額が決められていて、使わずに亡くなった分は家族へ譲ることが出来ると言ったやり方で医療需要を抑制している国もあるようですが、例えば総額年間幾らのポイントを急性期で使えば数ヶ月で使い切ってしまうが、療養型から介護施設と下がっていくに従いポイント消費が減って翌年以降に貯めておくような制度なども考えられるのでしょうか。
その場合ポイントが切れたから直ちにこれ以上は入院させられませんと強制的に放り出すのはさすがに現代日本ではやりにくいでしょうが、例えばポイント消費に連動して医療費自己負担分が増減するなり経済的な面でのインセンティブがあると言うことであれば多くの海外諸国と同様、「いやこれ以上は自分達には負担できないから」と自らサービス提供を抑制する動機付けにはなっていくかも知れません。

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コメント

お金を出す方もあまり無制限には出せないのだから難しいですね。
質的低下が問題化しない限り誰も本気では考えなさそうです。

投稿: ぽん太 | 2014年4月28日 (月) 10時26分

少し前の医療と同じ事で、いろいろとやらない言い訳をしながらじり貧になるくらいならさっさとやってみた方が案外うまく行くということはあるかなと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年4月28日 (月) 12時06分

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