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2014年3月25日 (火)

噴出する生保利権 受給者ばかりが悪と言うわけでもなく

年度末と言うことであちらこちらから細々とした話も出てきていますけれども、先日は会計検査院からまあそうなんだろうなと思わされるこんな発表があったようです。

4300人重複処方=向精神薬、生活保護受給者に-検査院(2014年3月19日時事ドットコム)

 1カ月間に複数の医療機関から向精神薬を処方された生活保護受給者が約4300人いたことが19日、会計検査院の24都道府県の抽出調査で分かった。20カ所から処方を受けた人もおり、医薬品添付文書の用法用量で計算すると、3分の2が投薬限度を超える量を受け取っていたことになるという。

 受給者の医療費は原則として医療扶助で賄われ、自己負担はないが、転売目的で大量に向精神薬の処方を受けるなどの問題も出ている。検査院は生活保護の実施状況の実態把握と対策の検討を厚生労働省に求めた

生保受給者に限らずかねてこの向精神薬の大量(過剰)処方と言うものは問題視されていて、そのためもあってか処方日数が原則自由化された今の時代にあっても未だに制約が残っているわけですが、当然ながら複数医療機関を掛け持ち受診して多重処方を受けていたのでは限度も何もあったものではなく、さてこれだけあからさまな過剰処方を受け取って何をどうするつもりであるのかです。
もちろんこうした行為は生保患者に限らず一般患者でも行われていることですが、一般患者であれば20カ所も回ればその都度初診料なり再診料なりと処方箋料で相応のコストもかかる、そして何よりまともに仕事をしていればそんなに回るほど暇ではないと言うもので、どれだけ医療を利用しても支払いゼロと言う生保受給者の強みが発揮されたと言えそうですよね。
以前から生保受給者に関しては全国自治体首長の過半数、医師の7割以上が医療費自己負担を導入すべきだと考えていると言う話がありましたが、大阪などで議論されていたように生保患者の受診医療機関を原則固定化すべきだとか、あるいはかかりつけ薬局制度を導入すべきだと言った話に理がありそうだと思えるところですし、国が何故同様の対策を講じないのかと疑問にも感じます。
今回会計検査院から厚労省に対策が求められたと言うことですけれども、実はこうした問題に関しては生保受給者だけで終わる話ではなく、言ってみればその共犯にも対策を講じなければならないんじゃないかと言う記事も併せて紹介しておきましょう。

生活保護受給者:転院繰り返し 医療費過大支払い横行(2014年3月19日毎日新聞)

 生活保護受給者が病院間で不自然な転院を繰り返し、公費から初診料などが過大に支払われる事態が横行していることが、会計検査院の調査で分かった。1年間に20回近く転院する受給者もおり、検査院は厚生労働省に是正を求めた。

 検査院が、2011年度に3カ所以上の病院や診療所に入院した生活保護受給者1373人を抽出して調べたところ、約1割の132人が10回以上転院していた。生活保護受給者の医療費は公費で賄われ、転院を繰り返せば、初診料のほか、短期間入院した場合に加算される診療報酬などが医療機関に支払われる
 1年間に18回入退院した受給者のケースでは、1回の入院期間は5~49日で、計7カ所の医療機関を行き来していた。同一の医療機関に入院した場合に比べ、初診料など計約136万円が過大に支払われていた。
 また、生活保護受給者を100人以上受け入れていた医療機関が8カ所あり、特定の医療機関の間で転院を繰り返す受給者が多かったという。

 1973年の旧厚生省通知では、生活保護受給者が転院する場合、医療機関は自治体に連絡するとされているが、大半のケースで連絡がなかった
 厚労省保護課は「医療機関などへの指導を着実に行うよう、改めて自治体に周知したい」としている。【古関俊樹】

生活保護1199人、入院不要でも退院せず- 受け入れ先なく、会計検査院調べ(2014年03月20日CBニュース)

 生活保護の実施状況について会計検査院が調査したところ、2010-11年度の医療扶助受給者で、180日を超える長期入院患者のうち、少なくとも延べ1199人が、入院を必要としない状態に回復したにもかかわらず退院していないことが分かった。そのうちの過半数が、退院に至っていない理由を受け入れ先がないためとした。検査院はこれを受け、厚生労働省に対し、患者の病状把握や退院後の受け入れ先確保などのための施策を検討するよう求めた。【丸山紀一朗】

 医療扶助は、指定の医療機関における受給者の診療などの費用について行われ、医療保険の加入者を除き、原則として自己負担はない。検査院は、24都道府県の事業主体における11年度の生活保護費を主な対象に、実地検査や関係書類の確認などを行った。その結果、主治医などが入院の継続を不要と判断したものの、医療扶助を受け続けている長期入院患者が、少なくとも延べ1199人いて、そのうちの過半数が「精神及び行動の障害」に分類された。
 また、退院に至っていない人を入院期間別に見ると、5年以上入院している割合は10、11年度のいずれも5割近くを占めた。さらに、退院できていない理由を見ると、「福祉施設などへの入所が適切と考えられるが受け入れ先がない」(延べ662人)が最も多く、次いで「適切な退院先が分からない」(同133人)、「退院に当たって導入する介護・福祉サービスの調整ができていない」(同129人)、「福祉施設などに受け入れが決定しているが、日程が未定」(同119人)などと続き、退院後の受け入れ先への移行がスムーズに行われていない実態が浮き彫りになった。

■1年間で3医療機関以上に入院、1373人

 このほか、11年度中に、転院するなどして延べ3医療機関以上に入院した受給者は、少なくとも1373人いた。このうち132人は、受給者の入院が多かった8医療機関に10回以上入退院を繰り返していた。そして、8医療機関のいずれかに1回以上入院した人の中に、福祉事務所による転院の要否の判断が事後的に行われたり、転院の必要性を判断した根拠が不明とされていたりした事例があった。さらに、転院の度に、初診料や検査料など同種の診療報酬が算定されている事例も多数あった。
(略)

なかなかに解釈の微妙な話で、毎日の記事を見ていますと特定施設が生保患者を相互にやり繰りして不当に診療報酬を得ているという、いわゆる生保ビジネスの類に見えるのも事実ですし、実際にそうした側面が否めないことをやっている施設もいるのでしょうから、記事中にあるような特定施設に関しては今後厳しく監査なりで対応していただくのが筋だとは思います。
ただCBニュースの記事の前半部などを見てみますと判ります通り、そもそも生保受給者の大前提として扶養・支援してくれる親族身よりのないことが挙げられているわけですから、老健などに入れないような若年層が単独での生活が不可能な状況ともなれば現実的に病院で引き受けるしかないと言う状況もまたあるわけで、しかもこうした方々の場合そもそも退院が困難なのですから長期入院とならざるを得ませんよね。
近年一般病院においても平均在院日数の短縮が強いられていて、2ヶ月も入院していると出て行ってくれと迫られるのは当たり前になってきていますけれども、今や社会生活が困難な生保受給者を引き受ける受け皿となっていた精神科病院ですら長期入院は人権侵害だと言った表向きの理由のもと(無論本音は別にあるわけでしょうが)1年以内に退院させなさいと言われるようになっているご時世です。
当然入院が長くなるほど診療報酬も割安になって損ですから、各施設ともなるべく短期間で患者を出したいのは当然であって、やたらとあちらこちらに転院を繰り返している患者が増えてきていると言うのも生保患者に限らず社会的事情、もっと言えば厚労省の定めた診療報酬の結果やむを得ざるところもあるとは言えるでしょうね。

もちろん全例が全例そういう制度の谷間に落ちた症例ばかりではなく、グループ施設間でうまく患者をやり繰りすることでそれこそ不正な利益を得ている施設も一定数存在するのだろうし、記事に老いてもそうした施設が特定されてきていると受け取れるわけですから、そもそもそうした施設は本当に必要なのか?と言う点にまで立ち戻って考える必要もあるでしょう。
ただこの辺りは需要と供給の一致が見られるからこそと言う側面もあって、今どき空きベッドが埋まらない病院からすればどんな患者でもいいからとりあえずベッドを生めなければ赤字になってしまうと言う事情があるでしょうし、人生の全てをアルコールとパチンコにかけているような生保受給者にとっても「金が無くなったから今月末まで入院させてくれ」と言える病院があることは大いにメリットがあるのも道理です。
要するにお互いにとって無駄に入院すること・させることが得になるという利害関係の一致があることが根本原因なのであれば、それを防ぐためにはやはり抜本的な制度改革が必要であると言うことになりますけれども、少なくとも入院中は日数割りで保護費を差し引くだとか、余計なことに無駄金を使わないよう食料など現物給付を増やすと言ったことは以前から言われていながら一向に実現する気配がないのは問題ですよね。
ともかく向精神薬過剰投与の問題にしてもそうなんですが、生保受給によって明らかに得になると言うシステムを放置しているのが現状の問題であって、生保からの離脱を促進するためにも最低限の衣食住は担保するにしても、汗水垂らして働いている人がうらやむような生活を送れるような特権化は阻止しなければ社会の根本が立ちゆかないことになりかねませんね。

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コメント

ナマポ診療はお断りしております

投稿: | 2014年3月25日 (火) 08時52分

生保に切り込むことがタブーでなくなってきたんでしょうね。
制度の濫用は医師の責任も決して小さくはなく襟を正すべきです。

投稿: ぽん太 | 2014年3月25日 (火) 09時38分

生活保護の患者で儲けてるくせに差別するなよ

投稿: | 2014年3月25日 (火) 11時15分

CBニュースの記事はちょっと判りにくくなっていて、身寄りがなく社会生活を送る能力もない生保受給者の引取先問題と、いわゆる生保利権に絡んだ過剰医療問題とがごちゃごちゃになってしまっているわけですね。
前者の方もこれだけ数が増えてきますと、いわゆるリビングウィルなどとも絡めてなかなかにこじれそうな難題になってきているわけですが、後者の方こそ社会道徳上もどうなのかと言う意味で緊急の課題だと言えそうです。
その意味で真っ当な生保受給者といわゆる生保利権を享楽する「ナマポ」とも呼ばれる方々とは、差別ではなく区別して扱う必要はあるかと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2014年3月25日 (火) 11時56分

大阪の生保改革はおもしろそうだったのに、その後の続報を聞きませんな
変な反対にあって有耶無耶になっていなければよろしいのだが

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年3月25日 (火) 16時08分

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