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2014年3月 3日 (月)

実はそう簡単な話でもない?ワタミの弁当宅配が訴訟沙汰に

先日も部屋で倒れているのが発見された高齢独居者がまだ生きていたのに救急隊から死んでいると判断された事件がありましたが、今や独居生活者が亡くなっている状態で発見されるということは決して珍しいことではなく、マスコミなどもその都度「またも発生した孤独死!現代社会の暗部解消を急げ!」などと取り上げますよね。
しかし独居生活者が気がついてみたら亡くなっていた、なんて事例は昔から別に珍しくもなんともない話ですし、人生最後まで誰の手を患わせることもなく畳の上で往生したなんて表現になればむしろ良いことであるとも感じられるわけで、本来問題にすべきは一人で死ぬと言うことそのものではなく死ぬ気がなかった人が一人であったために助けも得られず亡くなっただとか言った不本意なケースであるはずです。
そうしたケースをどの程度まで防げるのかと言う工夫の一端として各家庭に非常用の連絡手段を配布したりだとか、生活活動を遠隔監視する手段を用意したりだとか言ったことを行っている自治体もある一方で、やはり孤独の解消ということに焦点を置くと人間による巡回サービスと言うものに頼りたくなるのが人情と言うものなんですが、業務としてこれを行うということになると自ずから問題が発生する場合もあるようですね。

「宅配時に安否確認せず」ワタミを提訴(2014年2月26日日刊スポーツ)

 横浜市で1人暮らしをしていた女性(当時72)が死亡したのは、弁当宅配員が安否確認を怠ったのが原因として、長男(51)が26日、弁当宅配会社ワタミタクショク(東京)と、ワタミグループ創業者の渡辺美樹参院議員らに計2200万円の損害賠償を求めて横浜地裁に提訴した。

 訴状によると、長男は昨年2月、週5日の弁当宅配時に女性に異変があった場合、家族らに連絡する安否確認サービスの契約をワタミタクショクと結んでいた。

 不在時には専用ボックスを玄関前に出すことになっていたが、昨年8月12日、女性の応答がなく、ボックスも出ていなかったのに宅配員は長男に連絡せず、弁当を置いて立ち去った。女性は翌日、心不全で死亡しているのが発見された。

 原告側は「当日の横浜市の最高気温は約35度で、応答がなければ安否に配慮するのは当然。連絡していれば救助できた可能性は極めて高い」と主張。渡辺氏については、サービスづくりに関わったのに、宅配員に十分な教育をしていなかった過失があるとしている。

 長男は提訴後「渡辺氏らは家族の前で謝ってほしい」と話した。ワタミ広報は「訴状を確認していないためコメントは差し控える」とした。(共同)

「安否確認怠り母親死亡」 ワタミ子会社を提訴 横浜の男性(2014年2月26日産経新聞)

 弁当宅配の際に安否確認の義務を怠った過失で母親=当時(72)=が死亡したとして、横浜市神奈川区の自営業の男性(51)が26日、弁当宅配会社「ワタミタクショク」(東京)と、親会社の「ワタミ」創業者の渡辺美樹参院議員(54)や宅配担当者ら3人を相手取り、計2200万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。

 訴状によると、男性は平成25年2月、1人暮らしだった同市港南区の母親宅への弁当宅配と、母親に異変があった場合はすみやかに連絡するとの安否確認サービスを契約。しかし、同年8月12日、宅配担当者は母親宅の玄関チャイムを鳴らしたものの応答がなかったため立ち去り、翌13日、母親は自宅で死亡しているところを発見された。

 こうした経緯について男性側は、安否確認をしていれば死亡前に母親を発見できた可能性があると指摘し、背景に同社で宅配担当者への安否確認サービスの研修制度がないことなどを挙げた。

 男性によると、母親の死後、同社側から「宅配の翌日まで弁当に手が付けられていなかったら、異変として対応する」との説明を受けたという。

 ワタミは「現時点では訴状を確認していないためコメントは差し控える」としている。

なんでも当日は大変な猛暑の日であったそうで、全国的にも高齢者がばたばたと倒れていった時期だけに「隣のおばあちゃんの姿が見えないから家をのぞいてみたら」と言ったケースは多数あったんじゃないかと思いますけれども、ご近所さんの好意ならともかく業務契約として行っていた場合にそれが望ましくない結果を招いた場合にはこうしたトラブルに発展することもあり得る話ですよね。
実際に生存可能性が高かったのかどうかは情報がないのでここでは何とも判断できませんけれども、異変があった場合にはすみやかに連絡すると言うから契約したのに実は翌日まで放置されると言うのであれば話が違うと言いたくもなるでしょうし、そもそも何かあったと言う場合に翌日で間に合うものなのか?と言う素朴な疑問もあるところです。
と言った具合に考えていくと幾らでも突っ込みどころは見つかるもので、「さすがブラック企業大手w弁当配達のついでに安否確認するくらいのことも出来ないのかよw」とついつい厳しい声が上がるのもまあ理解はできるのですが、では本当にこのサービスが「それくらいのこと」なのかどうかですよね。
それはともかく、裁判沙汰になったからにはもともとこの事業がどういうしくみになっているのかと言うことがまず大事な点ですけれども、同社のHPから辿ってみますとこの安否確認サービスについてこういうことが書いてあるようですね。

・安否確認サービスを無料でご利用いただけます。

ご希望により「まごころスタッフ」が毎日のお届けの際にお客さまのご様子を確認するサービスを行っています。異変があった場合は速やかにご指定のご家族や医療機関などに連絡いたします。
※ご利用を希望されるお客さまは、事前に担当の「まごころスタッフ」へお申込ください。

ここでは何気なく書かれている「無料でご利用いただけます」の文言に留意いただきたいと思いますが、「弁当を配るついでに変わりがないか確認するくらいのことだから、そりゃ無料でやってくれてもいいだろ」と思ってしまうのが本当に正しいのかどうかが非常に重要になってきます。
もちろん大手のやることですから実際にはもう少し細かい契約文書も用意されているのでしょうが、これを読むと確かに「毎日の配達時に」顧客の状態を確認すると明記しているわけですから、その確認が出来なかった時点で少なくとも確認のための努力をするか、それとも異変として直ちに連絡するかどちらかの選択枝しかないように思えます。
ちなみに留守の時にはドアの外に鍵付きの保冷ボックスを出しておくルールだったのだそうで、これが出てもおらず呼びかけにも応答がないと言う時点ですでに通常の状態ではないわけで、平素からちょっと近所に外出するなどコンタクトの取りにくい顧客だったのかも知れませんが、そもそも夏の盛りの猛暑日に裸の弁当を屋外に放置と言う行為自体に利用者の身の危険を感じざるを得ず、スタッフ教育が問われますよね。
ただこのサービス、実際にどう行動するか定められたマニュアルなりの存在とその現場への周知徹底ぶりも裁判の争点になりそうですけれども、仮にそうしたものが存在していたとして実際現場にそれが実行可能なのか?と感じさせられるのは、この宅配事業自体が極めてハードである上に全くの安月給で、半ばボランティアだと割り切らなければ到底続けられるものではないという経験者の言葉からも理解出来ます。

それだけコスト的にも時間的にもぎりぎりの状況であったのに、「呼び鈴を押したら奥から身体の不自由なお年寄りがよっこらせと出てくるのをじっと待ち、ようやく出てきたら幾らか言葉も交わして異変がないことを確認する」と言った作業を各配達先で実際に出来るかどうかと言えば、たぶんそれを本当に毎日行えば弁当配送と言う本来の事業としては成立しないものになっていた気がします。
そしてまさかこれだけの手間暇も要し責任も求められる事業を無料でやっていると言うことも信じがたいところですけれども、それでは幾らくらいの付加コストを請求するのが妥当なのかと言えば実は微妙なところで、まともにコスト計算すれば利用者の多数を占めるだろうお年寄りからすればちょっと払えない金額になりそうですよね。
今回のような場合の訴訟リスクも含めて、結局このあたりは事業を計画した上の方の人間の見通しが完全に甘かったと言うことになりそうなんですが、そのしわ寄せが顧客と夏のさなかにも汗水垂らして弁当を配ってきた現場スタッフにかかっていたとなるとこれは何ともやりきれない話ですし、昔なら「配達のついでにちょっと見ておくよ」で済んだ話が実は業務としては大変扱い難いものになっていると言うことも示す実例でもあるわけです。

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コメント

安否確認サービスが無料だったとは思いませんでした。
たしかに手順と手間を考えたら簡単に引き受けられるサービスじゃなさそうですね。
それにしてもワタミって…
不幸にして亡くなられた女性の御冥福を祈ります。

投稿: ぽん太 | 2014年3月 3日 (月) 09時12分

企業側としては、「スマイル¥0」と同じ感覚だったのですかね?

投稿: JSJ | 2014年3月 3日 (月) 09時31分

ワタミw渡部もタダで働かせりゃいいってことだなw

投稿: aaa | 2014年3月 3日 (月) 09時44分

コストをぎりぎりまで削っているところでさらにサービスだけ充実させていくというのも無理がある話で、それを現場の努力で何とかしろと言うのはどうなのかです。
実際に利用者は今回のような独居老人が多かったようですし、きちんとした業務量評価が出来ていなかったんじゃないかと思いますね。
気になるのはこうして報道された後でもHPで特に状況が変わったようでもないのですが、このままで問題ないと考えているのであれば少し危ないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年3月 3日 (月) 11時05分

ワタミに頼むよりも毎日ホームヘルパーさんに来てもらって食事を作ってもらった方が安上がりじゃないかと思うのですが、どうなのでしょう?
もちろん、介護度が自立とか要支援とかならこの方法は使えませんけれども。

投稿: クマ | 2014年3月 3日 (月) 13時15分

「タダ」のサービスは所詮おまけサービスだと、他山の石といたします。

投稿: JSJ | 2014年3月 3日 (月) 16時25分

上は手渡しでやっているつもりだったのでしょうな
ところが下は弁当置いて帰るだけだったという

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年3月 3日 (月) 19時24分

 私の親も、玄関でぴんぽん鳴らしても出てきません。この前も出てこないから勝手にカギを開けて入ると、炬燵にもぐってテレビを見ていて「不法侵入者」に驚いてくれました。
 これじゃワタミの安否確認は使えねえ。

投稿: おかだ | 2014年3月 4日 (火) 15時08分

病院の在宅向け配食サービス“解禁”へ- 医療法人の附帯業務に追加
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/41490.html

投稿: | 2014年3月 5日 (水) 08時57分

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