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2014年3月12日 (水)

在宅訪問診療料の大幅減額が波紋

少し前に高齢者紹介ビジネスとも呼ぶべきものが流行していると話題になったことがありましたが、何故そうした商売が成立するかと言えば在宅患者の訪問診療に対して非常に高い診療報酬を設定したからに他ならないわけですよね。
国としても幾ら在宅医療推進を国策として掲げた手前のこととは言えさすがにやり過ぎたと反省があったのでしょうか、今度の診療報酬改定でこの部分がばっさりカットされることになりそうだと話題になっています。

大幅減算中止を、同一建物への在宅医療で- 保団連が厚労相などに要請書(2014年3月10日CBニュース)

 2014年度診療報酬改定で同一建物居住者への在宅患者訪問診療料などが引き下げられることを受け、全国保険医団体連合会(保団連)は10日、田村憲久厚生労働相らに対し、減算実施の中止を要請する文書を送付した。保団連は要請で、同一建物居住者への大幅減算は、中央社会保険医療協議会(中医協)で実態を踏まえた十分な議論がなされていないと指摘。これらの減算が、患者紹介ビジネスなどを禁ずる目的ならば、「業者への指導・監督を強化するなど、診療報酬以外で対応すべき」とした。【丸山紀一朗】

 厚労省は14年度改定で、保険医療機関などが経済的誘引による患者紹介を受けるなど、在宅医療での不適切な事例を閉め出すため、同一建物居住者への在宅患者訪問診療料を半分程度まで引き下げる。併せて、在宅療養患者のかかりつけ医機能を評価する在宅時医学総合管理料と特定施設入居時等医学総合管理料も、同一建物居住者の場合に4分の1程度まで減額する。

 これに対し、保団連は「地域医療を担う保険医の団体として、到底容認できない改定内容が散見される」と主張した。会員からは、「これでは訪問診療を行えば行うほど赤字となってしまう」「もう施設からの在宅医療の要請には応えられない」などの悲痛な声が大量に寄せられているとして、9日の理事会で、大幅減算の中止を要請することを決定。10日に、厚労相を含む政務三役と中医協委員に対して同要請を送付した。

 要請では、厚労省が5日に通知で示した、減算対象としない患者や診療形態について、「この内容では在宅患者から次々と寄せられる医療要求に応じることは困難で、実態に合わない運用規定と言わざるを得ない」と反発。今回改定で在宅医療の厳格化を急速に進めたい意図が垣間見えるとして、「このような急変をこのまま実施すれば、医療現場は対応できず、混乱を引き起こすことは必至」と強調した。保団連は13日に国会内で開く集会で、これらの内容について意見交換する予定。

個々の患者の自宅を回って往診するというならまだしも、大勢の患者が入所している施設に出かけていってみてまわるだけで大変な金額が入ってくるわけですから相次いで往診に参入するクリニックが続出したというのも理解出来るのですが、実際にやること(と言うよりも、やれること)もさしてないだろうと想像出来るだけに、ほとんと患者にとっての安心料にお金を出しているようなものだとも言えるかも知れません。
ともかく月二回の往診で安心を買う代償として一人当たり約6万円という報酬が高いのか安いのかは立場によって意見が分かれるところでしょうが、うまいこと施設一つに何十人かの往診患者を囲い込んでいれば毎月毎月固定収入として幾ら入るか…と考えた場合に、やはりこのご時世にそれは濡れ手に粟過ぎるのではないかと言う意見が世間的には大勢を占めるのだろうと思います。
実際の診療報酬改定による各医療機関の金銭的な影響がどれほどかと言うことを保団連が調査しているのですが、確かに小規模施設も多いだろうに一気にこれだけの減収ともなれば大変だろうなと思う反面、逆に言えば往診一つでこれだけ稼いできたと言うのは世間的には同情の余地があるかどうか微妙なところですね。

在医総管見直す影響調査、2千万円減収の声- 保団連が撤回要望(2014年2月27日CBニュース)

 全国保険医団体連合会(保団連)は、同じ建物に住む患者複数人を同じ日に訪問する場合(同一建物居住者)の「在宅時医学総合管理料(在医総管)」などが2014年度の診療報酬改定で4分の1程度に減点されると医療経営に大きな影響があるとして、医療機関のアンケート調査を進めている。24日からの4日間で寄せられた回答数は300を突破。担当者によると、回答の中には年間2000万円近い減収を見込むとの声もあったという。保団連の住江憲勇会長らは27日、赤石清美厚生労働大臣政務官と面会し、アンケート調査の回答用紙と、在医総管などの見直しの撤回を含む14項目の要望書を併せて手渡した。【佐藤貴彦】

 厚労省は、医療機関がマンション業者との間で居住者の訪問診療の独占契約を結び、見返りに診療報酬の一部を支払うといった「患者紹介ビジネス」を問題視。こうした事例を防ぐために在医総管などの同一建物居住者の評価の引き下げを提案し、中央社会保険医療協議会がまとめた14年度の改定案に盛り込まれた。

 こうした改定案を受けて保団連は、医療機関を対象とするアンケート調査を開始。この中で、改定前後での在宅医療収入への影響(概算)を尋ねたところ、「月100万-200万円」「年1900万円」といった回答が見られたという。自由記述には、同一建物居住者かどうかで点数が異なる状況は「一物多価」で患者側の理解を得られないなどと撤回を求める声が上がった一方、同一建物居住者以外への訪問に特化している医療機関からは、「患者紹介ビジネス」の対策として合理的との意見もあったという。
(略)

ほぼ元手不要で2000万もの収入があったのか!と言われそうですが、高齢者医療というものはもともとcareに関わる人件費の割合が大半を占めるわけですから、医師らを往診に出向かせると言う人材拘束に対するコストを考えると決して元手不要というわけではないでしょうし、そもそもこうした在宅医療へ医師を誘導させるために敢えて高めの報酬でスタートするというのは規定の方針であったわけです。
その意味では今後仮に往診に従事する医師が減ることになれば、初期設定としての診療報酬を誤り妙なビジネスの横行を招いたことと併せて厚労省の失態だとも言えますし、こうして大々的な方針転換を強いられたのは厚労省が自ら失敗を認めた形とも言えますけれども、当然ながら政治的に見ても失点と取られかねない事態で、先日の衆院予算委員会で維新の会所属の松田学議員が田村厚労相にこんな突っ込みを入れたと言うことです。

在宅医療を潰すな!衆院予算委員会で厚生労働大臣に質す(2014年3月9日医療ガバナンス学会)より抜粋

(略)
(松田)政府は、今国会に「地域医療・介護確保法案」を提出し、地域の医療連携の強化・拡充を図っているが、今回の診療報酬改定の中には、本法案の「入院中心から地域医療へ」という考え方に沿ったものなのか疑われる事例がある。
すなわち、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム等の施設向けの訪問診療に関して「同一建物」の項目が新設され、従前より報酬が大幅に、科目によっ ては4分の1まで引き下げられた。これにより在宅医療に関連する業界は大きな打撃を受けるとの声が出ている。これでは現実問題として、例えば24時間対応 の医療サービス付の有料老人ホーム、グループホーム、高齢者向け集合住宅などへの在宅医療サービスの担い手医師が集まらなくなる。約束した医療サービスを つけられなくなることから、高齢者向け住宅の業界側からも、約束違反といわれて困っているとの声も出ているようだ。事前に関係者からの意見聴取はしたの か。なぜ、このようなことが突然決定されたのか。

(田村大臣)新聞報道等で、医者と施設を紹介して手数料ビジネスのようなことが行われているという話があり、色々と調べてみると確かにそういう事例があ り、短時間のうちに何十人も診療して荒稼ぎをするような形態がある。しかも、それを手数料としてバックしているという報道もあり、国会でも色々なご指摘を 頂く中において、中医協の中でご議論を頂いて、その方針にのっとって決定をさせて頂いた。
確かに、言われる通り大きな変化なので、これからも丁寧に関係者の方々にお話をお聞かせ頂いて、場合によっては見直しも含めて検討させて頂く

(松田)不適正事例があることは承知している。集合住宅で訪問診療をしている方々の中には、志が高く、住民である患者のニーズにもきっちりと応えている医 師も多い。不正は不正としてきちんと摘発していくことは必要だが、根っこからこれができなくなってしまうことについては、ご配慮を頂いた方がよいのではな いか。
外来患者が在宅医療に奪われているという開業医からの声が背景にあるのではないかという見方もある。ビジネスというと語弊があるかもしれないが、新しいビ ジネスに対して既得権益の壁ができる一つの例だということになってはいけないと思う。不正事例があるのは事実だが、一方で真面目にやっている人たちもい る。こういう関係者からも意見をお聞き頂くと大臣におっしゃって頂いたので、ぜひ、しっかりとお聞き頂いて、必要な措置を取って頂くよう要請する。
(略)

こんなところにも開業医とのしがらみがあるのかと思うところですが、実質的に診療所としての機能を持たない往診専門クリニックのようなものが成立し得ない程度の報酬にまで切り下げれば、当然新規参入してきたこれらは経営が立ちゆかず撤退するしかない理屈ですから、好意的に考えればうまく報酬を加減をして地域医療にきちんと根を張った施設だけを残したいと言うことなのでしょう。
本来的にこの辺りの報酬は例の主治医制と絡めてもう少しうまく制度設計できなかったか?と言う疑問は残るのですが、その主治医報酬に関しても算定すると言っている医師が2割に留まると言うのは、結局のところ国策として進むこうした在宅中心の医療と言うものがいわゆる高度医療などアクティブな医療をやりたいと思っている大多数の医師にとってはあまり魅力的ではないと言うことなのかとも思います。
国としては当然ながらこうした方面に喜んで従事してくれる人材として総合診療医と言ったものを今後は大量養成したいのでしょうが、今どきの学生は自分の進路についても醒めていて昔のように妙なロマンや男気で人生の一大事を決めると言うわけでもありませんから、人に誇れる専門性も身につかない(すなわち潰しが利かない)上に収入的にも恵まれないとなれば人材の吸引力が弱まるのは避けられないでしょう。
田村厚労相としてもそうした事情も勘案して反響が大きければ見直しも考えると言った含みを残しているのでしょうが、そうなってしまうといよいよ何も考えずにただその場の雰囲気で診療報酬を決めているのかと感じられてしまうでしょうから、この道で食っていこうと考えている真面目な先生ほど「ふざけるな!こっちは人生かけてんだ!」と怒りも収まらないんじゃないかと言う気がします。

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コメント

2000万円減収ももともと普通の診療もしていたならまだしもなのでしょうけどね。
往診収入だけをあてこんで開業した先生はさっそく廃業の算段がいるでしょう。
医療も投資かなにかのように大穴狙いの仕事になってきましたか?

投稿: ぽん太 | 2014年3月12日 (水) 08時57分

2年おきにどうなるかわからないのが日本の医療制度ですからしょうがないと言ってしまえばそれまでです。そういう計算が出来る医者は文句言わずに次の手段を考えていることでしょうし。
あと以前から気になっているのですが、この同一建物ルールって、診療報酬の明細を読んだら同じアパートに別の患者がいるってばれちゃうような気がするんですけど、プライバシーの問題は発生しないのでしょうかね?

投稿: クマ | 2014年3月12日 (水) 09時07分

これで悪徳クリと優良クリのどちらにダメージが大きいかってことでしょ
どうせ悪徳クリってろくに初期投資もしてなさそうだから勝ち逃げするんだろうけどね

投稿: | 2014年3月12日 (水) 10時19分

>この同一建物ルールって、診療報酬の明細を読んだら同じアパートに別の患者がいるってばれちゃうような気がするんですけど、プライバシーの問題は発生しないのでしょうかね?
何号室の誰さんか、までは分からないからそれだけで問題になることはないでしょうけれど、
急に支払いが減ったので理由を尋ねられて、「○号室の××さんのところにも訪問するようになったんですよ」なんて答えたらマズいでしょうねぇ。

ところでそのうち生活アドバイザーか何かを称する人が、「在宅診療を受けるなら、一戸建てよりもマンション居住が有利?」なんて新聞のコラムあたりに書くんでしょうな。

投稿: JSJ | 2014年3月12日 (水) 10時23分

施設のような大人数であれば無理ですが、例えば同一マンションに患者が2~3人と言った場合には診療所同士で患者を融通し合えばお互い助かるというケースはあるかも知れません。
ただこの場合は患者にとっては担当医も変わり支払いも多くなって別にメリットがないのが難点ですが。

投稿: 管理人nobu | 2014年3月12日 (水) 10時31分

まさに金儲け主義ですね!!

投稿: | 2014年3月12日 (水) 12時26分

まあ診療報酬による誘導などそんなもので、医者の金儲け主義に期待するからこそ成立するのですな

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年3月12日 (水) 18時11分

金儲け主義。。。これってDisってるんでしょうね、多分。
この手の言に遭う度に、いつも興味深いのは発言者の自称する立ち位置。
なに主義なんだろう、博愛主義者?共産主義者?

投稿: | 2014年3月13日 (木) 07時45分

赤ひげ主義(ただし原作は読んでいない)。

投稿: おかだ | 2014年3月13日 (木) 22時52分

>赤ひげ主義
=金は、あるところから(どんな汚い手を使ってでも)ふんだくる

投稿: JSJ | 2014年3月14日 (金) 09時04分

小説版か映画版かでぜんぜん印象が違う言葉ですね。>赤ひげ主義

投稿: ぽん太 | 2014年3月14日 (金) 09時36分

まず24時間365日電話対応をまじめにやっている在支診の医療機関がどれほどあるのか?という事です。
現実的には1人だけでそれをやるのは無理でしょ?ということです。高額報酬は24時間365日対応が前提なのです。
ホームや施設の詰所に行って熱型表とか状況確認だけで部屋を回らず診察もろくにせずに帰るという、到底訪問診療とは言えない行為を容認していたのがまずいわけで、これは診療の開始と終了を明記させる事で淘汰できると思います。
常勤医3人以上できちんとした設備でまじめに時間外対応している医療機関には相応の診療報酬を与えるべきだと思いますが、1人でアパートの1室借りて何の設備も置かずに時間外対応もろくにせず外来もせずに施設まわりだけで荒稼ぎしているような輩は廃業に追い込まれても仕方がないと思いますがね。
今回の一律減額改定だと施設から訪問診療医が続々と撤退してホームや施設側が青ざめるのではないでしょうか?
最悪、ホームや施設の崩壊もあり得ると思いますね。厚労省は痛くも痒くもないでしょうが。

投稿: 逃散前科者 | 2014年3月14日 (金) 15時04分

施設から依頼が来て忙しい勤務医が往診に駆り出されるんじゃないかとちょっと心配

投稿: 鎌田 | 2014年3月14日 (金) 16時24分

>1人でアパートの1室借りて何の設備も置かずに時間外対応もろくにせず外来もせずに施設まわりだけで荒稼ぎしているような輩は廃業に追い込まれても仕方がないと思います

廃業に追い込まれても痛くも痒くもなさそうなのがまたなんとも…

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年3月15日 (土) 11時13分

たしかにそうですね。彼らは初期投資など全くかかっていないですからね。廃業したら次何をやるのか気になりますが。

投稿: 逃散前科者 | 2014年3月15日 (土) 16時03分

医療課長「裏かかず趣旨くみ取って」-14年度改定を解説
医療介護CBニュース 3月17日(月)19時12分配信

 厚生労働省保険局医療課の宇都宮啓課長は16日、病院経営セミナー(キャリアブレイン主催)で講演し、2014年度診療報酬改定について「社会保障・税一体改革、地域包括ケアシステムというあるべき姿に向け、医療界全体で進んでいただきたいという改定だ」と述べ、その趣旨をくみ取って機能分化などを進めるよう促した。さらに「裏をかくようなことをすると、どこかで絶対にうまくいかなくなる」と強調。「今回の改定でも、本来の趣旨と違うと気付いたところは一部修正した」として、救急医療管理加算などの要件を見直したことを例示した。【佐藤貴彦】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140317-00000002-cbn-soci

投稿: | 2014年3月18日 (火) 09時34分

>24時間365日電話対応をまじめにやっている在支診の医療機関がどれほどあるのか?という事です。

真面目にやってるところもあるんだ。
そもそも、悪徳だの言っている輩は、訪問診療と往診、強化型、強化型以外の在支診、在支診以外の施設基準も
正しく理解してないね。
24時間365日の対応だって、電話対応でOKじゃないんだけどねぇ・・・この程度しか診療報酬の解釈していない
輩に、在宅の点数を云々いわれる筋合いはないな。


>部屋を回らず診察もろくにせずに帰るという、到底訪問診療とは言えない行為を容認していたのがまずいわけで・・・

それを言うなら、診察もせず処方箋を出す輩はどうなん?

点数が高いか低いか・・・在宅に参入してから言えよ。


投稿: TED | 2014年3月24日 (月) 12時47分

これ訪問する側も大変だけど、ほんとはお医者さんが往診してくれますって売り出しちゃった施設の側が一番困ってんじゃないのかな?

投稿: こんちゃん | 2014年3月25日 (火) 12時12分

>>部屋を回らず診察もろくにせずに帰るという、到底訪問診療とは言えない行為を容認していたのがまずいわけで・・・

>それを言うなら、診察もせず処方箋を出す輩はどうなん?

いいねえ
どんどん叩き合ったらいい

投稿: | 2014年3月25日 (火) 13時18分

スタッフが入所者引き連れて外来受診ツアー組めば問題ないでしょ

投稿: | 2014年3月25日 (火) 14時16分

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