« 今日のぐり:「スシロー 倉敷店」 | トップページ | 死亡時画像診断(Ai)まずは小児から大々的な実施決まる »

2014年3月17日 (月)

看護師も逃散が常態化 もはや看護業界も崩壊寸前?

しかし個人的には詰め将棋をする程度のド素人なのですが、ちょうどプロ棋士と将棋ソフトが対戦する電王戦が今年も始まっていて第一局はPC側が取ったのですけれども、前回の最終局における600台以上のPCをつないだ「GPS将棋」の圧勝劇があまりに衝撃的だったせいか、今回はクラスタ制限がかけられPC一台きりでの対局となっていることに反対する声は根強くあるようです。
その理由としてPC側に余計な制約を課すのはすでに公平な対局とは言えない、前回トッププロを含む現役プロ棋士が太刀打ち出来ず惨敗したこともあって興行的に成立するようPC側に足かせをはめる意図があるのではないか?と言ったことが挙げられていて、「もはや真剣勝負ではなくプロレスである」と言い切る人も少なくないようです。
こういう考え方の人は概念的なコンピュータ対人の勝負を見たいんだろうなと思うのですが、もともとこの種の対決は対局を通じてPC側のアルゴリズムを改善すると言う目的が本来あったそうですし、極端なことを言えば将来的にコンピュータの能力が劇的に向上するなり超並列処理なりで何百手も先まで一瞬で全検索して最善手を指せるようになったとして、それが意味があることなのかと言う気がします。
もちろんコンピューターの演算能力が高まればあるいは必勝の手筋と言うものが見つかってしまうのかも知れず、それはそれである意味将棋というゲームが終わるということですから大いに意味があることでしょうけれども、ハードウェア依存の棋力向上ではなくソフトウェアの改良進歩を通してPC技術者対プロ棋士の真剣勝負を見てみると言うのも非常に興味深いことではないかと言う気がしますけれどもね。

いきなりスレタイから全く話がずれましたけれども、前世紀末頃から様々な要因が複合した結果医療崩壊と言ったことが言われるようになり、こんな激務やっていられるか!と切れてしまった勤務医達が10年ほど前から集団で離職していくと言う、小松先生の言うところの「立ち去り型サポタージュ」あるいは俗に「逃散」とも呼ばれる行動が見られるようになったのは周知の通りですよね。
ちょうど先日はお隣韓国で全国的な医師のストが行われたという話を紹介しましたが、日本では医師会(日医)などの医療系団体がこの種の医師(特に勤務医)労働問題に無関心であった、あるいはより積極的に医師労働環境悪化に積極的に貢献してきたようにも受け取られている面があるせいか、特定の核を持たず各人が勝手に逃散する「嫌なら辞めろ」式のやり方が主流です。
基本的に医療系専門職は慢性的な超売り手市場であり、またとりわけ医師の世界では興味深いことに長年「仕事が楽で給料が良い」職場ほど人が集まらないという不思議な現象があったわけで、結果として激務が続く急性期の病院から従来的な価値観で見るところのドロップアウト先と呼ばれる職場に医師が移動していくと言う傾向が続いています。
その結果医療体制を維持出来なくなった急性期の病院でもようやく医師の労働環境改善に目を向けるようになったのですから、結果として逃散という個人的な労働環境改善を追求した行動が医師全体の労働環境をも改善し得ると言う予想外の有効性が確認されたとも言えますけれども、先日は北海道から出ていたニュースで看護師も逃散をするようになったと言う記事を紹介してみましょう。

看護師24人、今月末に一斉退職へ 北海道・浦河赤十字病院「人手不足で仕事つらい」(2014年3月12日北海道新聞)

 【浦河】浦河赤十字病院で3月末、看護師24人が一斉退職する見込みであることが分かった。退職者の多くは、同病院付属の浦河赤十字看護専門学校を卒業してすぐに就職し、奨学金返済が免除される3年間の勤務を終えた20代の若手看護師。4月に新規採用する20人では間に合わず、同病院は道内外の赤十字系列病院に計10人の応援を呼び掛けるなど、看護師の確保に頭を悩ませている。

 同病院では一昨年3月末に20人、昨年3月末にも32人の看護師が退職し、人手不足が慢性化。すでに系列病院から計28人の応援を受けている。退職者は、都市部にあり、給与や勤務条件の良い脳外科や循環器科など専門病院、出身地の病院に転職する例が多いという。

 大量退職を受け、同病院は1年目の看護師と管理職との面談を増やしたほか、昨年12月に現役看護師と看護学生の交流会を初めて開催。退職回避への努力を行ったが、昨年12月末に今春の退職希望を受け付けたところ、34人から希望があった。病院側の慰留により、このうち4人はその後退職を取り下げた。6人は退職時期を4~12月まで先延ばしすることに応じた。

 3年間勤務し、3月末で退職する20代女性は「人手不足で仕事がつらく、休みが取りにくいため、毎年多くの退職者が出る状況だった」と打ち明ける。森田優事務部長は「(奨学金の返済が免除される)3年間の勤務が終わっても、そのまま勤務してもらえる魅力ある職場にしたい」と話すが、有効な手だては見つかっていないのが実情だ。(五十地隆造)

見てみますといわゆる御礼奉公問題的な側面もあるようで、昨今医師の世界でも蔓延し始めている地域枠などもそうですが奨学金等で人の人生を縛ることが時代に合っているのかどうかも疑問ですし、それに対して実際の経験者がこうした形で明確にNOを突きつけたと言う事実を、後に続く看護学生も真剣に考えてみなければならないと言えそうですよね。
ともあれ実際にひとときにこれだけの専門職が離職したのでは現場はとても回らないだろうなと言うもので、場合によっては一時なりとも診療の縮小も考えなければ人材が減っているだけにますます残った者が激務に追われさらなる集団離職を促すという、過去にも医師の世界で何度も見かけた負のスパイラルに陥ってしまう可能性もあるかと思います。
医療系専門職として看護師もかねて人材の不足が大いに言われていて、しかもなんだかんだで(研究職などを除けば)医師免許と言う資格を活用して喰っている人が大多数の医師と比べると免許所持者の1/3が看護師として働いていない計算だとも言い、その理由としてもちろん女性が大多数であることに由来する出産、育児に伴う離職も多いですが、看護師としての仕事自体への不安・不満が理由という場合も少なくないようですね。
その不満として実際にどのようなものが挙げられているのか、こちら同じく北海道から看護師への調査結果が出ているのですが、驚くべき事にと言うべきなのか実に全体の7割が辞めたいと考えていると言うのですからこれは雇用する側としても相当な危機感を抱くべき状況ですよね。

北海道内の看護職員 7割以上「辞めたい」 激務 仮眠とれず 道医労連調査(2014年3月13日北海道新聞)

 「辞めたい」と答えた看護職員は全体の70%以上―。こんな労働実態が、北海道医療労働組合連合会(道医労連、23組合約6千人加盟)による看護職員への調査で分かった。全国的には改善傾向が見られる中、道内では職場環境の悪化を訴える声が多い。道医労連は看護職員を大幅に増やし、悪循環を断ち切るよう求めている。

 道医労連の上部団体の日本医労連がほぼ5年に1回行う全国調査の一環で、今回は2013年9~11月に行った。道内の看護職員(保健師、助産師、看護師、准看護師)の2%にあたる1556人から文書で回答を得た。
 それによると、「仕事を辞めたい」と思っている人は74・2%で、全国平均とほぼ同じだった。
 辞めたい理由(複数回答)として「人手不足で仕事がきつい」を挙げた人は52・3%で、前回09年調査より5・8ポイント増えた。
 勤務状況で、仮眠がとれるかどうか聞いたところ、「全くとれない」と「あまりとれない」で計27・1%と、ここでも前回調査より4・1ポイント増え、職場環境の悪化が浮き彫りとなった。

 道内では、仕事に「不満、悩み、ストレス」があると答えたのは66・8%で、何らかの薬を飲んでいる人は約60%。中にはわずかだが「抗うつ薬」を常用している人もいた。
 一方、「この3年間でミス・ニアミスを起こしたか」の問いに86・1%が「ある」と答えた。

しかし辞めたい人の比率が全国平均並みと言うことは全国どこでも同じような状況と考えるべきでしょうに、「看護職員を大幅に増やし」などと気安く言っているのは一体何をどうしろと言うことなのかと非常に気になりますけれども、これまた先の浦河日赤の例にも見られる通り現状では下手な理屈をこねるよりも「嫌なら辞めろ」式の対応こそが即効性をもって労働環境改善に効くと考えられるでしょうか。
ちなみに元記事に添付の表を見ていただきますと辞めたい理由として挙げられている第2位に「賃金が安い(36.6%)」が挙げられていることに注目していただきたいと思いますが、率直な言い方をすれば金を出せば1/3は思い直してくれるのならさっさと出せやと言うことなんですが、実は医療機関はどこも厳しい経営を強いられている中で、特に公立病院においては人件費が高いことが構造的赤字の原因であるとも目されています。
もともと公立病院赤字の理由として民間病院に比べて2倍にも及ぶと言う建設費の高さと、特に非医療専門職(要するに事務方)の人件費が高すぎると言うことが言われていますけれども、相対的に見ると看護師給与も民間よりもそれなりに高く、しかも年功序列でどんどん高くなる一方ですから民間でやっていけない自信のある(つまり能力的にアレな)看護師ほど決して辞めたがらないようです。
もちろん公立だから全部が全部ダメ看護師ばかりと言うわけでもないでしょうし、民間病院にしても安月給で激務に追われている現状がある以上全般的な(業務削減も含めた)待遇改善は必要なはずですが、一部なりとも(言葉は悪いですが)無駄に金を支払っている病院が余計な看護師を抱え込んだ結果全体の不足につながっているなら、こちらへの対策も必要ではないかと思いますね。
この点では国も例の悪名高き7:1看護など制度面に問題があることは承知していて、今までのように患者受け入れや医療内容で実のない名前だけの急性期病院が加算を得たいがために無駄に看護師を囲い込むことを改める方向で話が進んでいるようですけれども、医師をあれだけ強制的に配置せよ!などと言うのであれば看護師に関しても同様の議論があっておかしくないはずです。

ところで興味深いことに近年これだけ医師・看護師不足が言われるようになり、そのおかげでと言うべきかかれこれ30年も横ばいが続いていると言われてきた医師の収入もこのところ1割程度は伸びたようですけれども、看護師の方は良く言えば安定的、普通に言ってきれいに横ばいが続いていると言う状況で、国民平均よりも少し高いあたりでずっと変わらないでいるようです。
前述の通り1/3の看護師が給料が安すぎる!と言って辞めようとしているのですからもっと高くして引き留めたい、しかし医師以上に看護師は数で勝負と言うところがあって全員一律で好待遇と言うことになるとそれこそ人件費率上昇から慢性赤字一直線と言うことにもなりかねませんけれども、それでは各人それぞれの働きに応じてきちんと報いると言うことが出来ないのかどうかです。
これは別に職員間に無用の格差を設けると言う意味ばかりではなく、勤務が続けられない事情として出産や育児が大きく取り上げられることからも判るように女性スタッフが大半を占める職種だけに夜勤も込みでのフルタイム勤務ばかりでは続けられないと言う人も増えるでしょうし、またもともと交替勤務制を敷いている看護師であれば医師などよりもよほど自由な働き方を追求出来る利点があるはずですよね。
実際に昨年暮れに藤田保健衛生大学看護部が看護師勤務体系に様々なバリエーションを認め「仕事と生活の調和の推進に積極的に取り組んでいる」として顕彰されていましたけれども、例え1時間だけの勤務でもいないよりはいた方がいいだろうと考えた場合に、全てのスタッフが公平に業務を負担していると言う前提での給与体系はむしろ使い勝手が悪いように思います。
とかく医療の世界は今時珍しいほど旧態依然の労働敢行がまかり通っていて、他業界であればとっくにもっと違うやり方を採用しているのに…と言うことが幾らでもあるわけですが、時代もこれだけ変わってきているのですから医療の内容ばかりでなくその提供する主体に関してももう少しアップデートがあってもいいような気がしますね。

|

« 今日のぐり:「スシロー 倉敷店」 | トップページ | 死亡時画像診断(Ai)まずは小児から大々的な実施決まる »

心と体」カテゴリの記事

コメント

普通に雇った人じゃなく付属看護学校上がりなんですねこれ。
自前で育てて安くこきつかってたとしたら逃げるのは当然だと思うのですが。
現役の人が看護学生を相手に何を語ったのか聞いてみたいですね。

投稿: ぽん太 | 2014年3月17日 (月) 09時04分

日赤はモチベーションそれなりだと思ってたが病院によって違うのか?
待遇もよくて好きなこと出来る病院があったらそっちいけばいいわな

投稿: gon | 2014年3月17日 (月) 10時55分

医師も看護師も医療の本質と関係ない仕事、医療のアウトカム(疾病の治癒)にほとんど寄与しない仕事が増えてるんですよ。

投稿: hhh | 2014年3月17日 (月) 11時43分

全くご指摘の通りだと思います。
特定看護師制度や救命救急士の業務拡大などが図られていますが、専門職全般に業務を非専門職に委託するほど加算が増えるような報酬体系を早急に整備するべきではないかと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2014年3月17日 (月) 12時39分

素人が手を出して万一のことがあったらどう責任取るつもり?

投稿: | 2014年3月17日 (月) 13時12分

ぽん太様

>普通に雇った人じゃなく付属看護学校上がりなんですねこれ

そうでもなければあの街で看護師は集められないでしょう.
医師だって居ついていませんし.

投稿: 北の医師 | 2014年3月17日 (月) 13時37分

>素人が手を出して万一のことがあったらどう責任取るつもり?

責任はもちろん組織としてしかるべくと言うことになるかと

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年3月17日 (月) 14時56分

>責任はもちろん組織としてしかるべくと言うことになるかと
現実は、当事者を司法・マスコミ・大衆への人身御供として献上ですから。
そんなことに関わらずにすむよう、毎朝お天道さまにお祈りするくらいが、唯一の対策かと。

投稿: JSJ | 2014年3月18日 (火) 09時08分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/59303969

この記事へのトラックバック一覧です: 看護師も逃散が常態化 もはや看護業界も崩壊寸前?:

« 今日のぐり:「スシロー 倉敷店」 | トップページ | 死亡時画像診断(Ai)まずは小児から大々的な実施決まる »