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2014年3月18日 (火)

死亡時画像診断(Ai)まずは小児から大々的な実施決まる

心が痛む子供の虐待報道が後を絶ちませんが、本日まずはこちらの記事から見ていただきましょう。

子供の死因をCTで究明 厚労省、春から試験実施(2014年3月16日日本経済新聞)

 親が目を離した隙に起きた不慮の事故や、原因がはっきりしない病気で亡くなった子供を対象に、厚生労働省が詳しい死因を究明する事業を始めることが、16日までに分かった。遺体をコンピューター断層撮影装置(CT)などで分析する「死亡時画像診断(Ai)」を活用し、今春から全国で試験的に実施する。
 正確な死因を特定し、医療の向上や事故の再発防止につなげるほか、虐待死の見逃しを防ぐのが狙い。厚労省は日本医師会(日医)と連携し、各地の医師に参加を呼び掛ける。

 犯罪の疑いが強い場合は司法解剖などの制度があるが、多くの遺体は解剖せず、体表面の観察や直前の病状で死因を判断している。そのため十分な調査がないまま「死因不詳」とされたり、暴行や虐待で死亡したのに病死と判断されたりするケースもある。
 Aiによる死因究明は遺体を傷つけず、比較的短時間で体内の異変を確認できる利点がある。
 厚労省によると、子供が死亡した場合、立ち会った医師がCTなどで画像を撮影。遺体の画像診断には特別な知識が必要なため、Ai学会が認定する病院・診療所や大学病院に撮影した画像を送信し、専門医が見る
 日医は小児科医や法医学者らでつくる専門委員会を設置。画像や診断結果の情報を各地から収集して分析し、Aiが有効だったケースをまとめて現場の医師に情報提供する。

 ベランダからの転落や浴室での水死など不慮の事故で亡くなる子供は後を絶たない。児童虐待の増加もあり、厚労省はAiを普及させる必要性が高いと判断した。効果を検証し、将来的には大人にも広げたい考えだ。〔共同〕

画像診断:死亡した子供を撮影 死因究明へ新年度から(2014年3月16日毎日新聞)

 子供の虐待死を見逃すな−−。死亡した子供を対象に通常は患者の診断に使う医療機器で遺体の画像データを残し、死因の究明に役立てようという取り組みが、新年度から本格化する。厚生労働省の旗振りで、全国各地の医療機関が死亡した子供全てに原則実施する。医療関係者は「虐待死の見逃し防止につながれば」と期待する。【一條優太】

 遺体の画像を撮影し、死因を探る取り組みは「死亡時画像診断(Ai)」と呼ばれ、成人の遺体では珍しくない
 死亡した子供のAiを巡っては、日本医師会の検討委員会や厚労省の研究会が過去、児童虐待や不慮の事故の防止に有効だとして例外なく実施すべきだと提言。背景には「病気であれ、事故であれ子供の死は常に異常」という考え方がある。
 各都道府県の委託でAi事業に取り組む大学病院などは、2014年度から、院内で死亡した全ての子供に、遺族から承諾を得てAiを実施。費用は厚労省と都道府県が負担する。対象年齢は15歳未満となる見込み。
 日本では幼児死亡率が他の先進国に比べて高いとされるが、明確な理由は分かっていない。子供の事故に詳しい横浜市の小児科医、山中龍宏医師(66)は「子供は死亡時の情報が少ない事例も多い。Aiで体内の情報が得られるのは利点だ」と評価。病院や児童相談所、警察などの連携が不十分な点を踏まえ、「Aiだけでは十分と言えず、情報収集・分析の体制づくりも必要だ」と話す。

 ◇増え続ける画像による死因の診断

 東京・銀座の雑居ビルにある「Ai情報センター」。約8畳のオフィスにパソコンが並び、インターネットを通じて全国から画像データが集まってくる。2009年に開設され、Aiの経験が豊富な医師12人が、他の施設で撮影された画像を診断している。
 センターで扱う件数は右肩上がりで、13年は160件。犯罪や医療事故が疑われる事例のほか、裁判所に証拠採用された画像の鑑定も請け負う。代表理事の山本正二医師(46)は「病院や警察、弁護士、保険会社のほか、死因に納得しない遺族からの依頼もあり、ニーズは高い」と語る。解剖と違って遺体を傷つけず、遺族の心理的な抵抗が少ないことも大きなメリットだ。
 国内の遺体解剖率は解剖医不足などから約2〜3%にとどまる。多くは医師が遺体を外から見るだけ。こうした現状がAiで改善すると期待され、本格的に取り組む医療施設は全国二十数カ所に増えた。警察も事件性の有無を確認するためにAiを活用する。警察庁によると、12年度に全国の警察がAiを依頼した件数は分かっているだけで5519件と、5年間で10倍だ。
 課題は残る。1件5万円程度の費用は病院や遺族が負担することも多く、Ai学会は「国が負担すべきだ」と主張する。捜査機関が依頼する場合は「捜査情報」として遺族への開示が制限されかねない。専門の医師の養成も必要だ。【一條優太】

制度的に日医が関わっていると言う点がいささかどうなのかですが、まずは子供からやってみると言うのはなかなか良い目の付け所だと思いますし、それによってシステム的な部分が確立すれば大人にも広げていくのはたやすいと言う点からも産科無過失補償と同様、まずは始めの一歩として妥当なのかなと言う気がしますがどうでしょうね?
ともかくこの死亡時画像診断(Ai)と言う話は以前にも取り上げたことがありますが、その場合の目的として何よりも医療過誤と言うこととの関わりが問われる場合が多く、それは医療に関わりのない大多数の一般的な市民にとっては死因が何だったかと言うことは正直さほど重要でもないのだろうし、仮に死因が判明したところでどんな疾患・病態かもピンと来ないだろうなとは思います。
こうした場合の「何故亡くなったのか知りたい」と言うのは亡くなるに至った病態を理解し今後の参考にしたいとか言うことではなく、ほぼ「お前達がミスして死なせたんじゃないか」と同義であると考えるべきだと思いますが、家族だけでなく場合によっては事件性の有無を確認したい警察であるとか、人手不足でなるべく解剖はしたくない病理医、法医などからも画像診断でやれるものならやって欲しいと要望があったわけです。
すなわち大人の場合はあちらこちらから要望があって行うことですからコスト負担以外に実施上の大きな問題はなさそうなんですが、今回言われているのはもちろん表向きそうした「何故亡くなったのか知りたい」と言う欲求からと言う理由もあるでしょうが、やはり記事からも見られるように本当のところは虐待の客観的証拠を見つけ出せるかどうかが問われていると言う点でいささか大人とは事情が異なると言えそうですよね。

その意味では実際に虐待をして子供を死なせた親がいた場合、果たしてこうした「白黒付ける検査」を受けることに同意するかどうかが最大の課題で、だからこその「病気であれ、事故であれ子供の死は常に異常」なのであり「例外なく実施すべき」との考え方はまことにもっともでもあるのですが、現実的に事件性が疑われるケースで強制性をどう担保すべきなのか、その場合の費用を誰が負担するのかです。
特にお金が絡んだ場合昨今ではモンスターペアレントなどと言う存在が色々と話題になるご時世でもあって、「義務教育なんだから給食費なんて払う必要ないだろう」と真顔で支払い拒否するような方が少なくないと言うのに不本意な追加検査で支払いを迫られるともなれば、ただでさえ子供の救急にかかりきりで疲れ切っているはずの医療現場にまたぞろ余計な物的心理的負担を増すことになるだろうことは想像に難くありませんよね。
こうした「全員にやるからこそ意味がある」類のものは全員にどうやってやらせるかを考えなければならないわけで、その意味ではまずAiの位置づけを明確にして受けることが義務である、あるいは受けなければ何らかのペナルティーなりがある方向に持っていく、なおかつ誰でも受けられるように少なくともその場での(実際には公費ともなれば別なところで税金が取られているわけです)支払いは無くすると言ったことが必要でしょう。
同時にお金の問題以上に難しそうなのが見るからに疑わしいケースで家族がAiを拒否したときにどうするかですが、本来的には犯罪が絡んでいる可能性もあることですから司法解剖などと同様、きちんと法的な裏付けの元にルールを定め行うのが筋と言うものでしょうが、何事も先送りしがちな日本の立法府のあり方を見ていますとこの問題に対する優先順位が高まっているようには到底思われません。

つまり厚労省の方針はどうあれ当面は拒否した家族にAiを強いる裏付けがない道理ですが、現場レベルで簡単に出来る対応としては死亡診断書を書く段階で「病死・自然死」ではなく「異状死」にチェックをつける、そして死因が判らない異状死であるからには警察なりしかるべき筋に連絡しなければならない云々として事後対応を丸投げしてしまうと言う手があるかと思います。
この場合医療機関側としては「後はその筋の人と相談で」と医療以外のどろどろした領域に深入りせずに済みますし、警察などももともとAiにはそれなりに利用実績があり慣れてもいる、そして何より事件性があるともなれば当然警察沙汰になるわけですから早期から関与していても別におかしくはないと言うことで、それなりに各方面が丸く収まる可能性がありますよね。
幸いなことに(?)今回の話には日医が制度的に関わってくるそうですが、各地区の医師会所属の先生などは日頃から検死検案などを通じて警察ともお付き合いの深い方が多いようですから、こうしたところでも病診連携でうまいこと業務分担が出来れば超多忙な小児救命救急の現場にさしたる追加負担をかけずに当面制度が回せるんじゃないかと言う気がします。
ちなみにもう一つAiの副次的な効果を言えば、こうした作業の結果として今まで以上に警察等が病院に立ち入ってくることを経験するようになるはずですが、何しろ医療訴訟や医療事故調などの絡みで警察や司法と医療とが緊張的な関係にある中で、直接の当事者ではなくいわば善意の第三者として関わり合うことの出来る機会は医療にとっても将来の全世代Ai導入に向けたよい慣らし運転にもなるかも知れませんよね。

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コメント

原則全例実施ってのが気になりますね。
それじゃどんな時に原則を外れるんだと突っ込みたくなります。
院内での病死の時だけとかだったらいいんですが。

投稿: ぽん太 | 2014年3月18日 (火) 09時12分

>どんな時に原則を外れるんだ
良心的に解釈するなら、白骨化した遺体が見つかったときはしないでしょうね・・・

「子供の死は常に異常」って発想でこの事業を実施するなら、異状死扱いで警察が主体となって遺族の同意無しで調べれば・・・とも思うのですけど、さすがにそれをすると別の問題が生じそうですね。

投稿: クマ | 2014年3月18日 (火) 09時47分

どのように全例実施を担保するのかも興味深いですが、ゴネた症例で誰がどう説得すべきなのか、説得に失敗した時にペナルティーなりあるのかどうかです。
まあしかし、ともかく全例やってみてAiで何がどう判ってくるのかというエヴィデンスが蓄積されていくことには期待したいですね。

投稿: 管理人nobu | 2014年3月18日 (火) 11時24分

ところで小児科の先生はもう説明文書とか用意してるんですか?
うちじゃぜんぜんこんな話出てないんですけど。

投稿: ポチ | 2014年3月18日 (火) 12時10分

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