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2014年2月 6日 (木)

携帯の危険性が叫ばれる中で例外的に規制緩和に動き始めた医療業界

ネタのような本当の話と言うのでしょうか、先日こんなびっくりするような事故が報道されていました。

深夜の飲食店、携帯見ていて階段から転落、町長死亡 北海道・むかわ町(2014年1月31日産経新聞)

 31日午前0時半ごろ、北海道むかわ町末広2丁目の飲食店ビルで、2階から1階に下りようとしていた同町の山口憲造町長(65)=同町福住=が階段から転げ落ちた。頭を強く打ち、病院で死亡が確認された。死因は急性硬膜下血腫だった。

 道警によると、山口町長は知人らとビル内の店で飲食していた。携帯電話を見ながら階段を下りていたという。消防によると、約2メートルの高さから転落した。

 山口町長は平成11年から旧鵡川町長を2期務めた後、合併後の18年、むかわ町長選で無投票当選し、現在2期目。

ともかく携帯電話のながら使用というものの恐さを改めて思い知らされたような気がしますが、携帯電話の場合昨今何かと話題になる使用マナー上の問題もさることながら、昨秋にも歩き携帯による踏切での死亡事故が報じられたようにこういう物理的危険の原因ともなりかねないというのは改めて認識しておくべきですよね。
統計によると交通事故が年間14000~15000件程度、そのうち携帯電話の絡んだものが50件程度と言いますから決して圧倒的に多いという訳ではないのですが、特徴的なのはその大多数を追突事故が占めているという点で、一般事故における追突の占める割合が4割程度に留まることを考えると前方不注意に大きく関与する因子となっているように思えます。
今回の事故もまさに前方不注意が事故原因と考えていいと思いますけれども、アメリカなどでは事故を起こした運転手の携帯を没収出来るという法案が出されたり、事故を起こした運転手にメール等を送っていた側にも損害賠償が求められたりと言ったケースもあるようですので、今後日本でも場合によっては民事上の争点としてもこの携帯電話というものが浮上してくる可能性もあるかも知れませんね。
ところで携帯と言えば医療機器の誤作動を招く可能性があるということで、長年「医療機関では携帯の電源を切る」というルールが広く知られていましたけれども、実はこちらの方では世間の流れとは逆に規制緩和が進み始めているというニュースが最近出ています。

病室・診察室、携帯OKに…誤作動の恐れ低く(2014年2月3日読売新聞)

 病院などで携帯電話を使うことを認める新たなルール作りが産学官で始まった。

 電波環境協議会(会長=上(かみ)芳夫・電気通信大名誉教授)が6月をめどに新たな指針を医療機関に周知する。現在、病院内では携帯電話の電源を切ることが求められる場合が多い。新ルールでは、医療機器から離れた病室や診察室などでの携帯電話の使用は認める方向だ。

 協議会には総務省や厚生労働省、有識者、通信・医療機器業界が参加し、携帯電話の電波が与える影響などを検討している。1997年には「携帯電話の電波が医療機器の誤作動を招くおそれがある」として、手術室などに限らず、診察室や廊下など病院内では電源を切るべきだとの指針をまとめた。指針に従う義務はないものの、現在も多くの医療機関は当時の指針に基づいてルールを作って運用している。

 協議会がルールを見直すのは、携帯電話の電波は以前より弱くても、遠くまで届くようになったほか、人工呼吸器や、人工透析などに使う医療機器も、電波の影響を受けにくくする対策が進み、誤作動が起きる恐れが低くなったためだ。

すでに数年前から医療現場では(少なくとも部分的な)携帯解禁が進んできたという事実もあるのですが、一体にこの携帯電話の医療機器に与える危険性というものがどの程度のものなのかと言う点は平静24年に開かれた第一回の「電波の医療機器等への影響に関するWG」でも言及されていて、「国内でも国外でも携帯の電波による干渉事例は確認されていない」と結論が出ています。
携帯の普及期には電波によって輸液ポンプの設定がリセットされるだとか様々な危険性が言われていましたが、実際には密着した状態で電波をがんがん送信でもしないことには問題になるような影響はないようで、そうした干渉が起こるような条件で携帯を使用するというのもまず考えられない以上、機器側の対策も進んできた現在ではほぼ問題なくなったと考えて良いのでしょうね。
現実的にもっとも接近して使用される可能性があるのはペースメーカー等埋め込み型機器の場合だと思いますが、海外における一般的な指針である「15cm以上離して使用する」という条件でも全く問題なかったと言うことであれば実際の使用上はまず問題ないと思われますし、WGにおいても過去の過剰とも言える規制は科学的根拠に基づくものではなく患者団体側の申し入れによる「社会的規制」であったと認めた格好です。
「それでも不安が」という声もあるのは理解出来ないことではないにしても、例えば先日も病院待合室の椅子の下から旧軍の爆弾が見つかると言うびっくりニュースがありましたが、だからと言って「万一に備えて病院の椅子の下に爆弾を置けないよう対策を求めるべきだ」などという規制論が出てこないように、社会的に見て無視してもいいほど小さなリスクに万人を巻き込む公的規制という方法論は適当でないと言うことでしょう。
その上でどうしても個人として心の平安を求めたいと言うのであればいたずらに社会全体に不毛なゼロリスク追求を強いるのではなく個人防衛によって行われるべきでしょうし、「放射能汚染が怖いから海外移住する」などと言う話が実際にあることを見ても個人の選択の自由として十分それは行えるものではないかと思いますね。

つまるところ純科学的に見れば通常使用するようなやり方で医療機器に悪影響があるということはまず考えられず、まして電話使用時には病室から離れると言った一般的なマナーを守っていれば何ら支障はないと言っていいと言うことなんですが、他方で積極的に携帯使用を認めるメリットというものも近年注目されるようになってきているところですよね。
一体に現代の若者は新聞やテレビのような一方的な受信型メディアには重きを置かず、ネットやSNSと言った双方向型メディアに注力しているのは周知の通りですが、彼らにとってはメールやメッセージのやり取りが外部との重要なコミュニケーション手段である以上、病院内で物理的に外部環境から隔離された上にさらに電子的にも隔離されるということは非常なストレスをもたらすということです。
ヒキヲタにとってはネットさえつながれば家にいるのも病院にいるのも同じ、などと言うケースはさすがに極端な例ですが、娯楽と言えばネットゲームやソーシャルゲーム、ニュース等の情報はBBSやまとめサイトで収集し友人とのやり取りはメールにSNSと言ったタイプは昨今決して珍しくないだけに、環境が激変しやすい入院生活においてこれらを維持させることは非常な安心感につながることは容易に理解出来るところです。
また昨今では医療現場においても個人端末使用が当たり前になってきましたが、患者にとっても医師ら専門職からの説明でちょっと理解出来ないことをネットで情報を仕込むと言ったことはごく当たり前に行われていることであって、こうした相互意志疎通の手段としてもそれがあるのとないのとでは大違いですし、医療側にとっても説明に余計な手間暇をかけるよりは勝手に自習してもらった方が都合がいいという側面もあるでしょう。
要するにそれが可能であるならなるべく病院内でも普段通りの快適な生活を送ってもらった方が患者の精神衛生上良いという当たり前のことが、ごく小さな道具一つでそのかなり大きな部分が済むようになったのですから全く良い時代と言えますが、無論使用可能になったからと言って病人の集まる場所で大声で話すなどマナー面は全くの別問題であり、未だ「社会的規制」の対象となっているのは変わらないと言えますね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

もうずいぶん前から実質解禁になってた気がしますけどね。
おかげでPHS使ってて「先生だって携帯使ってるじゃないか」って言われなくてすみます。

投稿: ぽん太 | 2014年2月 6日 (木) 08時59分

てっきり実験の結果かなにかで言ってるのかと思ったら単に怖いからってだけだったとは・・・
国のルールがそんないい加減なことでいいんだろうかと思うの自分だけ?

投稿: bon | 2014年2月 6日 (木) 10時17分

逆に当時は安全であるという明確なエヴィデンスもなかったということなのでしょうが、およそ規制と言うのはこうしたもので、最初は根拠がなくとも厳しめに行っておく方が後日のトラブルが減るものです。
現状でそれに相当するものと考えられているのが原発事故に関わる放射能汚染問題ですが、著明な劇画原作者の方のように熱心に危険性を主張されている方もいるのを見ると規制緩和はずいぶんと先になりそうですね。

“美味しんぼ”作者・雁屋哲 福島関連の放言で県民から非難の嵐
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20140205/Asagei_20023.html
〈取材後にすごく疲労感を感じるようになった。取材に同行したスタッフも双葉町の村長(原文ママ)も、鼻血と倦怠感に悩まされていましたよ。低線量だから被害はないと言いますが本当でしょうかね。子どもたちは学校でも塾でも、ぼーっとして何もできない、スポーツもしたくない、動きたくないと言っていました。残酷な言い方になるけど、あの周辺は人は住んではいけない所になってしまった〉
〈『福島の食べ物を食べて応援しよう』というキャンペーンもありますが、これもどうかと思います。仮に市場に出回る食品自体は大丈夫だとしても、土の汚染はすごいですから。農作業中は、土が肌に触れたり、気管から吸い込んでしまったりします。そういう意味では農作業に携わる人の被曝量はものすごいものになります。(中略)僕は福島で一番問題なのは漁業だと思いますね。これから先、何十年経っても漁業復活は無理なのではないかと思います〉

投稿: 管理人nobu | 2014年2月 6日 (木) 11時00分

福島ネタでさんざん儲けておいて恩を仇で返すカリーマジパねえww

投稿: aaa | 2014年2月 6日 (木) 11時37分

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