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2014年2月19日 (水)

保険指定取り消しとなった東朋香芝病院の代替病院はこれから建設予定

昨年10月に奈良県香芝市の東朋香芝病院が診療報酬不正請求により保健医療機関指定を取り消され、併せて勤務医3人も戒告処分を受けるという非常に重い処置が下ったのですが、先日その東朋香芝病院の病床再配分先が早くも決定したというニュースが流れていたことをご存知でしょうか?

東朋香芝241床 後継に藤井会…県「急性期医療に実績」(2014年2月18日読売新聞)

 近畿厚生局が香芝市の総合病院「東朋香芝病院」(288床)に対し、診療報酬の不正受給を理由に保険医療機関の指定を取り消す処分をしたことを受け、後継医療機関を再公募していた県は17日、県医療審議会を開き、大阪府東大阪市の医療法人藤井会が香芝市に新設する病院に241床を配分する方針を示した。近く決定する。

 最初の公募で、47床分の後継機関は橿原市の平成記念病院が同市に開設する「平成まほろば病院」に決まっており、今回の再公募には5医療法人が応募していた。藤井会は2017年4月、「香芝生喜(せいき)病院」(仮称)を開設する予定。県地域医療連携課は「これまでの急性期医療の実績のほか、多くの医師・看護師を確保している」と選んだ理由を説明している。

 近畿厚生局の処分を巡っては、東朋香芝病院側が求めた執行停止を大阪地裁が認める決定を出しており、病院側と国との行政訴訟の1審判決後の60日後まで執行停止となっている。

指定取り消し病院後継問題 病床配分すべて決定へ 奈良(2014年2月18日産経新聞)

 ■香芝の新病院に241床 審議会了承

 厚生労働省が東朋香芝病院(香芝市、288床)の保険医療機関指定取り消しを決めた問題で、県は17日の県医療審議会で後継の医療機関として、医療法人「藤井会」(大阪府東大阪市)が平成29年4月に香芝市に新設する病院に241床を配分する案を提出し、審議会の了承を得た。残り47床は、すでに社会医療法人「平成記念病院」(橿原市)の「平成まほろば病院」(同市)に配分することが決まっており、後継医療機関への病床配分はすべて決定する。審議会の了承を踏まえ、県は月内にも正式決定する。

 県が実施していた後継医療機関の公募には、今回の藤井会を含む5案が寄せられていた。
 県は、有識者もまじえて審査。藤井会以外の案では「計画の実効性に問題がある」「母体となる法人の経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)」などとして藤井会に決定した。
 藤井会の案では、香芝市穴虫に29年4月、病院を新設。藤井会のグループ病院からの異動や新規採用で医師を45人、看護師を140人確保する。
 29年度は150床で開設。診療科は東朋香芝病院の全科目を引き継ぐ。科目は、脳神経外科と内科、外科、整形外科、消化器外科、リハビリテーション科、皮膚科、形成外科、循環器内科、泌尿器科。
 開設2、3年目で241床に増やし、新たに眼科や小児科、婦人科、消化器内科、呼吸器内科、呼吸器外科、麻酔科を増やす。
 救急患者は29年度に年間1200人、2年目からは1800人程度を受け入れるとしている。

 この計画に対し、審議会側からは「新たに病院を開設する29年までの空白はどうするのか」との疑問も出された。県の担当者は「入院については県内外の4病院と連携して対応する。救急や外来については、周辺の公設、民間の病院に呼びかけて対応していく」と説明した。
 後継医療機関への病床配分は決定したが、東朋香芝病院は処分の取り消しを求めて大阪地裁に提訴しており、大阪地裁は判決の60日後まで処分の執行を停止する決定を下している。
 訴訟の行方次第では、東朋香芝病院と後継病院が併存する形となるが、県の担当者は「訴訟の結果を待って公募を始めたのでは医療に穴が空いてしまう。併存する形になってもやむを得ない」としている。

念のために申し上げて置きますと、保健医療機関の指定を取り消されるということは保健医療を行えなくなるということであって、直ちに病院として存続出来ないと言うものではないにせよ一般に保健医療機関は収入の大部分(同院の場合97%だと言います)を保険診療に頼っている訳ですから、よほどの事がない限り早晩経営が立ちゆかなくなることは想像出来ますよね。
この診療報酬不正請求問題の詳細はこちらの記事を参照いただければと思うのですが、看護師の月当たり夜勤時間制限(72時間制限)を満たさないまま2年間で1千万円弱の入院基本料不正請求を行ったと言うことで、その後72時間ルール違反は解消され不正請求分も全額返還予定であるにも関わらず取り消し処分まで受けたというのは、正直罪状として上げられる不正に対してかなり厳しい処分であったように感じます。
もともと2006年の診療報酬改定で導入されたこの72時間ルール自体、例の7:1看護基準による全国的な看護師不足と相まって現場では対応に四苦八苦していた経緯があり、同病院でも様々な苦労をしながら何とか対応しようと苦慮していた形跡がうかがわれますけれども、最終的には内部告発に基づく監査が引き金になったと言うことです。
興味深いのは同院は年間2200人の救急を受け入れる地域の中核病院であり、法人としても近隣府県で3病院他を経営しており今回の処分も何とか乗り切れる可能性があったと思うのですが、同院存続に向けて他法人に経営権譲渡を図るも奈良県がこれを認めなかっただとか、処分理由は72時間ルール違反のみであるにも関わらず他の罪状も考慮された形跡があるなど、何としても潰したかったのか?と言う印象も受ける点です。

この辺りは医療紛争で有名な井上清成弁護士が代理人について引き続き法廷闘争を行っていく予定であるということなのですが、ともかくもそうした争いが続いている最中にさっさと病床再配分を決めてしまったと言うのは何とも性急な印象を受けるところで、しかも病床譲渡先が実績もありすぐ稼働できる既存の医療機関というならまだしも、平成まほろば病院にしても香芝生喜病院(仮称)にしても今後改めて新設する予定だと言います。
医療に穴を空けるわけにはいかないと言うのであれば現病院の存続を第一に考えるのが無難であり、仮に施設が老朽化しているだとかスタッフが不足しているだとか言う場合にも新病院が出来るまでの一時的な処置としてでも現病院譲渡運営が早道だったと思うのですが、記事からうかがう限りでも病院譲渡案に対する冷遇ぶりのようなものがうかがわれ、何かしら深い事情でもあったのかと気になるところですね。
いずれにしても他施設から異動し現病院スタッフも受け入れるとは言え、このご時世にしかも聖地奈良で常勤医45人、看護師140人を擁する新病院がそう簡単に実現するものだろうか?と言う疑問も感じるところなのですが、あるいは係争中を口実?に実際には処分が実施されないままで新病院が出来上がるまで現病院の運営が続いていくという展開も、全くないと言う訳でもないのでしょうか。

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コメント

2200人の救急を受け入れていた病院をつぶしたら周囲も大変でしょうに。
金額的にもさほどでもないのに何がどうかんに障ったんでしょうね?

投稿: たま | 2014年2月19日 (水) 08時32分

勢いで取消処分は出しちゃったけど影響が大きいから実際の処分は延び延びになってるとか。
でもリンク先の記事を読むとたしかになにか釈然としない処分に思えますね。
ここから逆転で処分取り消しになったら新病院は取り消し??

投稿: ぽん太 | 2014年2月19日 (水) 09時01分

井上氏の言うように表向きの処分理由と異なるものを考慮し重い処分を課したと言うのであれば、やはり社会ルール上少し逸脱しているのではないかと感じます。
ただ本件に関してはあまり生情報も出てきていない様子ですから、あるいは内外に全く別な事情が存在しているということなのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2014年2月19日 (水) 10時48分

 実際には提供していないサービスを提供したと偽り、介護報酬を不正受給したなどとして高松市は、「アイニー」(高松市)が運営する訪問介護事業所「アイニー介護サービス」(同)の指定を取り消すと発表した。取り消しは28日付。併せて介護予防訪問介護の指定も取り消す。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140221-00000001-cbn-soci&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

年中不正ばかりのダニみたいな業界w

投稿: | 2014年2月22日 (土) 07時41分

 四国厚生支局は24日、看護師の人数を実際より多く届け出るなどし、診療報酬を不正に受給していたとして、香川県高松市番町2丁目の五番丁病院(河野研一理事長)の保険医療機関指定を取り消すと発表した。不正に受け取った報酬は4900万円に上り、同局は今後の調査でさらに増える可能性があるとみている。

4900万で取り消しって
全国的に厳しくなってる?

投稿: | 2014年2月27日 (木) 08時54分

>全国的に厳しくなってる?
まあ、病床の再編(削減)策としては強力ですわな。

投稿: JSJ | 2014年2月27日 (木) 09時24分

基準として厳しくなっているのかどうかはデータがないので何とも言えませんが、何と言いますか病院お取りつぶしということに対して前ほど躊躇がなくなってきたのかな?と言う印象は持っています。
近年指定取り消し件数は年々減少を続けていたのですが、昨年は一気に増えて過去三番目の件数だったと言いますから、内部的に何らかの合意なり了解事項なりがあったのかも知れません。
http://www.bizup.jp/sol_i/kaizen_navi_pdfdata/risk_management_04.pdf
http://medicalcarenews.net/2014/01/31/4821

投稿: 管理人nobu | 2014年2月27日 (木) 11時19分

なかなか興味深い現象ですな
査定にかかる率を考えればいくらでもやりようはあるわけで

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年2月27日 (木) 17時47分

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