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2014年2月28日 (金)

田舎にも立派な病院を!?

全国どこでもありふれていると言えばありふれている話題ですけれども、和歌山の方からこんな話題が出ていました。

医師不足で診療に苦慮 市立病院 和歌山(2014年2月27日産経新聞)

 有田市立病院が深刻な医師不足で患者が減少し、平成25年度決算で6年ぶりに赤字の見込みとなることが26日、分かった。退職や異動で内科医と産婦人科医が減少し、十分な対応ができていない現状で、望月良男市長は「非常に困っている」と述べた。

 同病院医務課によると、内科では昨年4月時点で5人だった医師が3人に減少。現在は週3日しか診療できず、入院や外来の患者数が減少した。また産婦人科では医師2人が異動になり、昨年10月以降は常勤医がゼロ。これにより、同市と有田郡内で分娩(ぶんべん)できる医療機関は有田川町内のクリニックだけとなり、公立病院では県立医大付属病院(和歌山市)か国保日高病院(御坊市)まで行くしかないという。

 同課は「4月から毎日診療できるよう、他府県の医大も含めてお願いしているが、深刻な事態」としている。

 市は今年度一般会計3月補正予算案で2億7千万円を市立病院事業会計に繰り出し、赤字圧縮を図る。26年度当初予算案にも、5億7260万円の市立病院繰出金を組み込んだ。

内科医が3人いるのに診療が週3日ってどういうことだ?と思ってHPを見てみましたら本当に週3日で3人の医師が入れ替わりで診療しているようで、非常勤と言うわけでもないようですからどういう業務分担になっているのか判りませんけれども、高齢患者が多いという地域の約150床の公立病院で内科医が3人ですから様々な仕事があるだろうとは思うところですし、スタッフ不足の状況でも無理はしないという方針なのかも知れません。
同病院の収支報告が公表されているのですが、ざっと見てみる限りでも病床利用率は6~7割と安定的に低い一方で職員給与比率は6割超と健全経営水準を上回っているという、いわば典型的な田舎公立病院と言った状況が読み取れるのですが、「地域で唯一急性期病床を有する公立病院」と言うことでまあ、一部の方々にとっては最後の砦として何としても死守すべき病院ではあるのでしょう。
すでに約1/4の病床を削減していると言うことですから基本的に身の丈にあった規模に縮小していくのが正しいのでしょうが、当然医師数や病床数の減少に見合った程度にコメディカルスタッフらも削減するということにはならないでしょうから、今後はますます人件費率も向上して自治体財政における不良債権化が進行していくのではないかと言う気もするところです。

有田市立病院もかつては25床の小さな町立病院だったそうですが、20年ほど前から大幅な増改築が行われ200床弱(現在は一部病棟閉鎖)の立派な病院に生まれ変わったそうで、もちろん地域の基幹病院として立派なものが欲しいという気持ちは理解できないわけではないにしても、県庁所在地の和歌山市からそう遠くない地域だけに必ずしも必要不可欠かと言われると微妙なものがありそうですよね。
別にこれは有田市だけが分不相応に過剰な贅沢をしている!ケシカラン!と言う話ではなく、ひと頃はどこの田舎町にもあった「おらが町の病院」すなわち地方自治体病院も平成の大合併や近年のいわゆる医師不足問題の影響もあってかかなり統廃合も進み、かつさらにその流れを推し進めていかなければならないとは言われているところで、いわば世に言うところのキトクケンエキ打破の側面もなきにしもあらずです。
効率や費用対効果として考えるならばあちらこちらに中小病院を無秩序に乱立させているよりは、一定医療圏毎に基幹施設に医師を集約し周囲に外来等を担うサテライト施設を整備すると言うスタイルの方が明らかに有利なのですが、日本ではもともと民間病院主体で統合となると経営権の問題も出てくることに加え、各地の中小自治体病院が消えるとなれば当然ながら選挙対策としてもよろしくないと言う話になってきます。

消化器内科医、郡部への派遣要請 知事、偏在解消へ秋田大に(2014年2月26日さきがけweb)

 

消化器内科の医師が秋田市に集中しているとして、佐竹敬久知事は秋田大医学部に対して郡部への医師派遣を強く要請したことを25日、明らかにした。知事が特定の診療科名を挙げて医師派遣を求めるのは異例。同日開かれた県議会の一般質問で答えた。

 厚生労働省の2012年調査によると、本県の病院や診療所に勤務する消化器内科医は179人。人口10万人当たり16・8人で全国トップだ。ただ、市町村別では秋田市が101人と突出して多く、同市以外は0〜18人と著しい偏在が生じている

 県内で消化器内科の患者は多いが、中核病院では湯沢市の雄勝中央病院に常勤医がいないほか、秋田市以外の病院の多くは秋田大ではなく他県の大学からの派遣に頼っているという。

 一般質問では小松隆明県議(自民)が偏在の原因について「医師派遣を担う秋田大の消極的な対応にあるのではないか」と指摘。「医学部付属病院のホームページを見ると、消化器内科には多くの医師が名を連ねているが、郡部の病院では医師不足が著しい」と述べた。

 佐竹知事は今月、自ら秋田大幹部に医師派遣を強く要請したことを明らかにし、「大学側も問題意識を持っており、地域医療確保のための医師派遣に一層努力するという回答を得た」と答弁した。

秋田市にだけ偏在していると言うことはそれはそれで問題なのでしょうが、大学病院に集まっている消化器内科の医師をあちらこちらに派遣するというのが本当に県民の利益拡大につながることなのかどうかです。
外科や産科、消化器、循環器と言った手技中心の診療科をあちらに一人、こちらに二人と分散配置することの無意味さはようやく知られるようになっていて、何しろ24時間365日いつ緊急処置が入るか判らないわけですからどうしても複数医師による交替勤務制が必要ですし、手技自体も複数医師の協力が必要な場合もありますから分散配置は無駄が多いどころか明らかに不利益です。
昨今医学部新設で話題になっている仙台厚生病院なども医師を3人一組で地域の病院に派遣するシステムを提唱していますけれども、消化器内科なども医師1人の病院を沢山作るよりは医師5人、10人をまとめた基幹施設を作っておいた方がより高度な処置にも対応出来るし、年々高額化する高い医療機械を導入しても元が取れるというものですよね。
ただ理屈の上ではその通りなのですが、住民にしてみれば「なんでポリープ一つ取るのに隣の街の病院まで行かなきゃなんねえんだ」と言う話でもあって、未だに全国各地で医師分散配置を求める住民(及びその代弁者たる議員さん)が「なぜここの病院には医師派遣できないんだ!」と大騒ぎしているのが現状でしょう。
考えてみると日常的に行う買い物などでも近所の古い小売り店がどんどん潰れて隣町の大きなショッピングモールに行くようになったのを「なんでも揃っていて便利になった」と喜んでいるのに、それよりもはるかに利用頻度が少ない医療の分野でその真逆のことを期待していると言うのは何とも奇妙な現象にも思えますが、やはりそこには「隣町にもあるものが何故おらが町にはないんだ」と言う対抗意識もあるのでしょうか。

もちろん田舎町の住人ばかりが悪者と言うわけでもないのは当然で、根本的な問題としては大病院に医者を集めるのはまあ仕方がないと受け入れるとしても、何故そうした大病院が揃いも揃って大都市部にばかりあるのか、田舎は医者も引き抜かれ病院も潰され損するばかりではないかと言う不平不満があるのではないかと言う気がします。
もちろん人口分布の重心ということを考えると都市部の真ん中にあった方が患者のトータル移動距離が少なくなると言う理屈は判りますが、都民ならともかく地方都市では例え数ブロック先だろうが歩いて行くと言う選択枝はほぼ排除されるので、その意味で郊外や田舎の何もない場所に基幹大病院を建てても別にそう困らないはずではあるのですよね。
実際に亀田のように僻地にありながら全国に名の知られた大病院もあるわけですが、田舎に大病院を配置することの意味として前述の地域間の不公平感是正に加え地価が安く減価償却がしやすいこと(特にもともと都心に自前の病院を持っていた施設なら土地代差額だけでもかなりの利益になるはずです)、空間設計に余裕が出て利用者の利便性が向上することなど、決して少なくありません。
そして最も重要と思われる副次的効果として近隣住民が「ちょっと具合が悪いから」とコンビニ受診をすることに対して物理的アクセスの低下が抑制的に働く可能性があるかと言う期待なのですが、もちろん近隣に大した一次救急施設がない地域であれば大病院であっても一次救急的役割も果たさなければならず、この辺りは併設診療所を設けるなどの工夫は必要になるかも知れませんね。
ともかく医師の偏在解消も含めて様々なメリットがあると思われるこの「ド田舎に大病院を作ろう」計画(仮称)ですが、勤務する医師らスタッフにしてみれば田舎暮らしは嫌だと言う忌避要因にはなるでしょうから、それを上回る吸引力を施設として発揮出来るかどうかが一番の課題で、とりあえず黙っていても医師が集まる医大などから率先して都市部脱出を図っていただくとよろしいんじゃないかと言う気がします。

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コメント

>医大などから率先して都市部脱出を図っていただく
新設医大なんて、設立当初からこの状態じゃないですか?
昔は、「こんな郊外にあってもロクな患者は来ない。やっぱ研修は都市部の基幹病院じゃなきゃ」と言ったもんですが、
状況は変わったのでしょうか。

投稿: JSJ | 2014年2月28日 (金) 07時47分

 佐竹敬久知事から消化器内科医の郡部への派遣を求められている秋田大医学部の内科学講座(消化器内科・神経内科学分野)のホームページ(HP)から、教員(教授、准教授、講師、助教)7人以外の医師の名前が削除されたことが26日分かった。

 同日の県議会福祉環境委員会では、近藤健一郎氏(自民)が「(HP上の)人数が減っているのはなぜか」と質問。県医師確保対策室は「25日に閲覧した際にはたくさんの名前があったが、その後修正されたと思う」と答弁し、大学に確認するとした。

 同室などによると、25日午前には講座HPの「スタッフ紹介」欄に教授以下37人の医師名があったが、26日に確認した時点では助教以上の7人しか掲載されていなかった。

 秋田大医学部は「講座のホームページの管理は各講座が行っており、今回なぜ更新されたのかは分からない」としている。
http://www.sakigake.jp/p/akita/politics.jsp?kc=20140227b

投稿: | 2014年2月28日 (金) 08時12分

我が母校は街中にあるので敷地も狭く立て替えにもひと苦労です…
宮城の新設医大も今のままだと街中になりそうですね。
ところで大病院が田舎に移転すると基準病床オーバーになりませんか?

投稿: ぽん太 | 2014年2月28日 (金) 08時20分

個人情報垂れ流しの田舎大学がいまさら大慌てしても遅いってw

投稿: aaa | 2014年2月28日 (金) 09時14分

37人全員が大学で勤務していると思ったのね。ご愁傷様。>近藤健一郎氏、県医師確保対策室

投稿: JSJ | 2014年2月28日 (金) 09時21分

同門OBの業績なんか書き連ねてる大学も要注意だなこれ

投稿: | 2014年2月28日 (金) 09時46分

まあ今回の県側の動きに対する大学医局側の対応はなかなかに面白くて、半ばコントのようにも感じられますね。
基準病床数は今のところ単に病床の固定化、既得権益化と言う程度の役にしか立っていないように思えますが、うまいこと活用できるように制度改定をすれば何かと役立つシステムではあります。
今回の文脈に沿って言えば例えば都市部では厳しく田舎では緩くと言う係数を設定すれば、規模拡大に熱心な勢いのある病院ほど田舎に出て行くということになるかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2014年2月28日 (金) 10時41分

新研修医制度導入で大学から派遣医師が田舎から引き上げて、田舎の病院が医師不足で崩壊という流れになってから。もうすでに何年も経ちますので、何を今さらという感じですかね。
病院だけでなく、たぶん開業医の消化器内科も秋田市に偏在しているとのでしょうね。
消化器内科は内視鏡で高額な点数が取れるので内科では圧倒的に人気が高いですし、医者の数も多いです。
秋田市以外の人口の少ない地域では患者が何かあったときに紹介できるスタッフや設備の整った病院も乏しいわけですし、人口が少ないですから、内視鏡の件数も稼げないので、開業時の多額のコストをペイできる環境にないわけです。
大学病院や大病院は県庁所在地の都市に存在するわけですから、必然的に市内で開業する医者が増えるのは当たり前で
大学から「田舎の病院に言ってくれ」と言われても「じゃあ辞めて開業します」となるだけで。
たとえ田舎の病院に行っても2〜3年で辞めて、さっさと都市部に戻りたくなるのが普通で。
日本の社会構造的により大きな都市に人口が集約するような流れになっているストロー現象なわけで
自ら率先して経営リスクが高く生活インフラも乏しい田舎に行くようなマゾ的な医者は稀少ではないでしょうか?

投稿: 逃散前科者 | 2014年2月28日 (金) 15時19分

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