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2014年2月12日 (水)

試験に悩まされる大学生

この時期入試に追われ受験生の方々は大変な思いをしているでしょうが、大学に入学しても未だに試験に追われた人がいるとニュースになっていました。

東京外大の成績盗み見、男子学生を書類送検 「正当に評価されているか見たかった」(2014年2月10日産経新聞)

 東京外国語大(東京都府中市)の学内のシステムが昨年10月、不正アクセスされて学生の成績が盗み見られた事件で、警視庁サイバー犯罪対策課は10日、不正アクセス禁止法違反容疑で、同大国際社会学部2年の男子学生(20)を書類送検した。

 サイバー課によると、「自分の成績に不満があった。正当に評価されているか確かめたかった」と容疑を認めている。

 男子学生は昨年10月24日、成績や講義の時間割などを閲覧できる同大のホームページ上のシステムに偽装したフィッシングサイトを作成。同大名義で学生222人に「不具合が生じた」とメールを送ってサイトに誘導し、入力されたIDとパスワードを自分のメールに転送させていた。

 送検容疑は同月26~28日、学内のシステムに学生55人分のIDとパスワードを入力して不正アクセスしたとしている。

ネットなどでみますと「他人の成績を見たところで何の役に立つ?」と言う意見も多いようでまあごもっともなんですが、こういうことを考えちゃう人というのは基本的に真面目に考え込んでしまうタイプなんだろうなとは思いますから、その才能をもっと有意義な方向に活かしていればこんな騒ぎになることもなかったでしょうにね。
ともかくも日本では大学と言えば入試が全て、入学後はとりあえず馬鹿でも卒業は出来るかのように言われてきましたし、実際に企業側でも大学名は気にしても学生時代の成績はほとんどスルーなどと言う話もありましたけれども、最近ではさすがにあまりに学生の質がどうなのかと言う問題もあるようで一部では入学後ももっと学生に勉強をさせるべきだと言う話にもなっているようですね。
以前に定員数激増の影響もあって学生のレベル低下著しい某歯学部で学生カリキュラムに分数の計算だとか一次方程式の解き方などと言う義務教育レベルの内容が組み込まれていると大騒ぎになったことがありますが、未だそこまではレベル低下を来していないにしても伝統的に進級が極めて緩い(学部が多い)と言われるのが全国国公立医学部です。
学生時代はバイトと部活三昧でも卒業できるなどと言われた(一部)医学部もさすがに最近ではもう少し厳しくしようという風潮があるやに聞きますが、その一環と言うわけでもないのでしょうが先日知らない人が聞けばびっくりするようなニュースが出ていました。

広島大医学部、追試の120人全員不合格 試験内容変更(2014年2月7日朝日新聞)

 試験をパスしたのは6人。追試験も120人全員が不合格――。広島大医学部の講義「神経解剖学」で、こんなことが起きた。例年、本試験とその後の追試験は同じような内容だったが、今年は担当教員の判断で変更されたという。ネット上で話題となっている。

 大学によると、1月11日に試験があり、2年生126人が受けた。パスしなかった120人は同月31日の追試験に挑戦したが全員が不合格だった。

 大学は神経解剖学など5科目の成績を総合して「人体構造学」の単位を決めるため、不合格でも留年するとは限らない。大学側は「本試験と追試験で似た内容を出題することは以前はあったが、見直している」としている。

広島大医学部 追試受けた120人全員不合格(2014年2月7日スポニチ)

 広島大医学部の2年生120人が神経解剖学の追試験で全員不合格だったことが7日、大学関係者への取材で分かった。大学側はこの試験結果だけで落第するわけではないとしているが、「全員に補講を行い、学力の向上を図りたい」と頭を抱えている。

 大学関係者によると、神経解剖学の試験は5科目あり、そのうちの一つを1月11日に実施。2年生126人が受けたが、合格したのは6人だけだった。その後20日間の猶予があったのに、31日の追試では残らず落ち、担当官は掲示板に反省を促す文面を添えて「不合格」を通知したという。

 掲示後、落第を危ぶむ学生らから不安の声が相次ぎ、大学側は「他の科目との総合点で判断するので即留年ではない」とメールで連絡し、対応に追われた

 医学部のある幹部は「神経解剖学は複雑で膨大。(今回の)テストは毎年、本試験と追試験で同じような問題が出ていたが、今年は違う問題が出たのではないか」と分析している。

大学と言うもののシステムを知らなければ「何だこれは!」というニュースなのですが、もともと教授の気分次第で単位認定のハードルが高くも低くもなるという一面があって、過去にも何度か同種の大量落第事件が発生しているという点を見ても今回も比較的マレではあっても起こりえる事件ではあると言えそうですが、問題は何故今回こういう事件が発生したのかということです。
風の噂によればもともと同大神経解剖の試験はひどく難問で知られていて本試験ではほとんど合格者が出ないような内容だった、一方でその救済措置と言うことなのか追試の問題は本試験のものがそのまま出るという「伝統」があったのだそうで、これに対して多くの学生が本試験には全く勉強せずに臨むと言うことが常態化していたのだそうです。
ところが今年に限って何故か追試験で全く別の問題が出たことから要領よくやろうとしていた方々がそろって討ち死にしたということらしいのですが、この場合考えてしまうのはこういう事態に至ったことについて結局誰が悪いのかで、「そんなもの勉強していない学生が悪いに決まってる」で済ませてしまっていいのかどうかです。

例年においても本試験ではほとんど通る学生がいなかったと言うのですが、学生のうちでも追試験でいいやと最初から本試験を投げてしまう者ばかりではなく、当たり前に本試験で通ろうと真面目に勉強している学生も少なくないはずなのですが、そうした学生も含めてほとんど通らないレベルの試験を出すことが果たして教育的に妥当なのかどうかで、しかも何しろそれをやっているのが神経解剖学ですからね。
そもそも追試で毎年同じ問題を出すと言うのは教授の側にも本試験の内容に問題があるという認識があったのかと推測させるのですが、好意的に考えればそれだけ試験に出る範囲は是非とも覚えて欲しいと考えているのだとすれば毎年二回も試験を受けていれば必ず記憶に残っていたでしょうが、そういう狙いであれば追試で全く違う問題を出すのではなく同方向で掘り下げた問題にするといったやり方もあったでしょう。
学生も毎年のことだと慣れきってまともに勉強をしなかったのも事実でしょうが、別に学生といえども暇を持て余している者ばかりというわけでもないでしょうから重要性の低いものに無制限に時間をつぎ込むよりは大事なところに出来るだけ時間を使いたいと考えるはずで、その意味からするとやはり神経解剖学などはあまり学問的魅力がないと言いますか、最低限通ればいいと思われがちな領域の筆頭ではあると思います。

面白いのはいずれにしても学生の生殺与奪を握っているのは教授であるわけですが、その教授の権限で出来の悪い学生を落第させたという(少なくとも形式的には)全く正当な行為を行っただけにも関わらず、大学側がむしろ釈明に追われているかに見えるという点で、このあたりは学生気質の変化とも親対策とも何とも言えませんけれども、案外大学内部でもやり過ぎだと言った批判も出ているのかも知れませんね。
すでに補講が決まっているということですが、学生側にしてみれば他講座のようにごく普通に講義をしごく普通の試験をしていてくれればこんな面倒なことにもならなかったのにと言う思いはあるはずで、その意味では来年以降の試験のやり方がどうなるのかは何とも言えませんが、「どうせ神経解剖を落としても留年しないんだから」と好き勝手にやるというのではそれこそ教育的効果が怪しいというものですよね。
解剖学領域などは多くの学生の目から見ると何十年も昔に終わっている学問と見なされがちで、アカデミックな興味を元に勉強に励むタイプの学生にも医師という目標を目指して一直線というタイプの学生にも正直あまり魅力あるとは言えませんけれども、それだけに試験のあり方についても昔ながらの方法論をただ踏襲するのではなく、「あの講座は講義も試験も面白い」と言われるくらいに工夫を凝らしてもらいたいと思います。

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コメント

いくらなんでも皆が皆不勉強じゃないだろうから難しい試験だったんでしょうね。
マイナー領域で意地になったみたいに誰も知らないような問題ばっか出す先生っていましたけど…
けっきょくは最初からごく普通の試験してたら何も問題なかったんじゃないですか?

投稿: ぽん太 | 2014年2月12日 (水) 08時56分

テストに通りさえすれば手段を選ばないってものでもないでしょう
そんなお医者さんにかかるのは正直不安です

投稿: | 2014年2月12日 (水) 09時44分

>そんなお医者さんにかかるのは正直不安です

大丈夫ですよぉw(マジキチスマイル)

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年2月12日 (水) 10時01分

こちらの内容を読む限りは学生の中に不届きものがいたということのようですが。
天漢日常
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/122126/109312/78893129

因みに部活バイト三昧でも進級できたなんて昔の話です。
今の学生の方が進級や出欠は厳しく、CBTという壁もありますので大変そうです。
かつてはザル進級と言われた某国立大におりますが、底辺学生だった私より余程勉強していますし優秀ですよ。
追試で通してもらえる試験は後回しにして別の試験に注力する手、自分も良くやっていたのは白状します。

投稿: もるー | 2014年2月12日 (水) 10時43分

科学の一領域たる医学においては理論通りにいかなければ理論を再検証すべきでしょうが、臨床医療については多くの場合理屈よりも何よりも治した者勝ちと言う側面がありますからね。
その意味で実のところ最小限の労力で最大限の成果を得る要領の良さというスキルこそ、臨床医にとっては最も重要なものであると言えるかも知れません。
もちろん今回の試験に関しても「今までこれでうまくいっていたから今回も大丈夫だろう」と言う思い込みがいかに危険であるかを思い知るという点で、非常に有意義な経験になったんじゃないかとは思います。

投稿: 管理人nobu | 2014年2月12日 (水) 11時13分

たしか再試験になったら評価が下がるんじゃなかったでしょうか?
奨学金審査にも影響するはずですけど医学部の学生さんはあまり関係ないですか?

投稿: てんてん | 2014年2月12日 (水) 11時31分

しかし、あまりにも不合格者が多すぎますね。国試なら不適当問題ですね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2014年2月12日 (水) 11時33分

本試験を出題した先生はおやめになって、準教授が出題、らしいです。スムースに昇任してないですね。第二解剖の主任はいまだ空席。
>不適問題
 大学の面子にかけても留年にはしないでしょう。 伝統を崩す時にはあり勝ちなことと思います。が、伝統を崩して以前より良くできるかどうかは、、、

投稿: 20年前は中の人 | 2014年2月12日 (水) 12時48分

いつの時代も学生って「昔よりずっと厳しくなってんですよ!」って言ってた気がするな〜

投稿: | 2014年2月12日 (水) 13時55分

試験として適当であったかはともかく、二回も試験をして6人しか合格しなかった事実は重いかと
長々と講義をしても学習の実はまったくあげられなかったと評価されるもやむなしでしょうな

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年2月12日 (水) 15時38分

 文部科学省は12日、新設の大学や学部などの運営状況を調べた2013年度の調査結果を発表した。

 中学校レベルの英語の授業で単位認定を行っていたり、教員数が大学設置基準を満たしていなかったりした266校に改善を要求した。

 調査は、卒業生がまだ出ていない新設の大学や短大、大学院を中心に、全国528校が対象。学生数が定員と大幅に異なったり、
定年に達した教員を雇い続けたりする事例が目立ったほか、ヤマザキ学園大(東京都)では、必修科目の英語で、
be動詞の使い方などを教える授業が行われており、同省は大学教育にふさわしい水準に改めるよう求めた。

 仙台青葉学院短大(仙台市)では、新設の学科で専任教員の7割以上が大卒や専門学校卒の資格しかなく、
教育を行う体制が不十分とされた。聖隷クリストファー大(浜松市)では、新設の学科で大学設置基準上8人必要な専任教員が、
調査時に6人しかいなかった。中部大(愛知県)の新設学科でも、設置基準上、
教授4人が必要だが、2人しかいない時期があり、現在も3人にとどまっている。

読売新聞 2月12日(水)20時59分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140212-00001253-yom-soci

投稿: | 2014年2月14日 (金) 00時20分

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