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2014年2月 1日 (土)

著作物出版にまつわる最近の話題

電子出版と言えば最近は個人による出版の敷居が大いに下げられると言う点でも注目されていて、中には月々百万円を売り上げた猛者もいると言いますが、書籍というハードに依存せずコンテンツの電子化が推進される時代になるといわゆる自炊行為などは元より、大手検索サービスによる著作権者に無断での書籍電子化などモノを伴わず情報がやり取りされることによる問題が多々続発しています。
特に著作権者の権利保護ということは非常に注目されていて、無断流通される海賊版対策は元より電子化も見込んだ出版契約のあり方など時代に即した著作権法の改正案が近く文化庁から出される予定だと言われていますけれども、本来的に書籍というモノにまつわる制作・流通コストが不要になるだけ著作権者の手取りも増える可能性がある出版方法であるとは思います。
ただ利用者の側にとって手元にモノがないということによる思わぬ弊害もあるようで、先日はこんな「あるある」な記事が出ていました。

買ったはずの蔵書が消える 電子書籍、企業撤退相次ぎ(2014年1月30日朝日新聞)

 せっかく買い集めた蔵書が消える――。電子書籍の世界で、紙の本ではありえない事態が起こり始めた。電子書籍は買っても「自分の物」にならない契約が多く、企業の撤退などで読めなくなるケースがあるからだ。電子書店は乱立状態で、「撤退は今後も続く」(出版関係者)可能性がある。事業者に説明責任を求める声も強まりそうだ。

 電子書籍事業から撤退するローソンの異例の対応が話題になっている。2月下旬のサービス終了に伴い、これまでの購入者全員に対し、購入額の相当分を、ローソンなどで現金と同じように使えるポイントで還元すると発表したからだ。

 同サービスは、ネットを通じてサーバーに置かれた書籍を読むという仕組み。どこでも「購入」した書籍を読めるのが利点だったが、サービスが終了すると書籍は消えてしまう

すでに電子書籍がかなり広く普及しているアメリカなどと違って日本では普及が未だに進んでいない、むしろ商業的にはちょっとどうなのかと危惧されているというのは、一つには元々狭い国土で身近な店で現物を容易に入手できるという環境が購買行動に表れていたのかとも思うのですが、これも近ごろではネット通販の発達で街中の本屋が次々と廃業していっている事から少し状況が変化してきていますよね。
コンビニ等で未だに容易に入手できる雑誌類に関しての電子出版のメリットとしては、一つには地方にあっても発売日に確実に入手できるという迅速性、そして手元にモノがないことと裏表の関係ですが読み終わった後の始末に困らないという点にあるかと思いますけれども、逆に多少時間はかかってもじっくり読みたい、手元に置きたいという類の書籍に対してはこうした点は特に長所にはならないわけです。
もちろんそうしたケースでも「お気に入りの本を何十冊もスマホ一つで読めるのは便利」と言ったヘビーリーダー(と言うのでしょうか?)の声もあったのは事実なのですが、そうした人にとってこそこのようなリスクが存在するというのは非常に困ったことであって、やはり手元にモノがなければ不安と感じさせることになりかねませんよね。

単純にオンライン閲覧などやめて全部ダウンロードさせればいいじゃないかと言う考えもありますが、当然ながらひとたびファイルとしてダウンロードされてしまうと書籍という現物に縛られることがないだけに複製されてしまう可能性はあるというわけですから、売る側としてはなるべく紐付きでやりたいというのも本音なのでしょうか。
他方で利用者側にとっても複数端末で読みたいとか、端末に余計なファイルが貯まっていくのはありがたくないと言う意見もあるはずで、基本的にこうしたオンライン閲覧式の場合支払後の利用期限を切るなりして、読み捨て需要にのみ対応すると言うのが本来的なのかも知れません。
ただ素朴な消費者心理としては紙の書籍と同様お金を出した以上いつでも読み返せる状況に置いておけと求めたくなるはずで、例えば廃業するにあたっては記事にあるようにある程度金銭的な還元を行うか、あるいは希望により手元にダウンロードできるようにすると言ったことはできないものかと思いますが、元より廃業するほど収支が厳しい時にそうしたコストをかけられるかどうかです。
業界団体なりが管轄して後始末を義務づけるようなやり方も考えられるかとも思うのですが、実際ほとんどの利用者が読み捨て前提で利用しているとすれば双方にとっての壮大な無駄手間と言うものですから、最初に読み捨てか保存用かを選んで契約させるというのが現実的なのでしょうか。

電子出版に関するもう一つの話題として、今や個人が簡単に創作物を出版してお金を稼ぐチャンスを手に入れたという肯定的な面もある一方で、どこまで個人出版が許されるべきか非常に悩ましい問題となっているのがコミケ等でも大きな部分を占める二次創作物への対応で、先日も「著作権違反のものを売るコミケに行くなどケシカラン!」と内定取り消しになったというネタ記事が事実化と勘違いされ話題になりましたよね。
この辺りは未だに試行錯誤が続いている段階で、大手検索サービスによって原作者にも利益還元を行う二次創作出版サービスが開始されると言う発表が話題になっていたように、利益配分や作品世界観をどう守るか、そして原作者に二次創作出版の拒否権はあるのかどうかと言った点で様々な考え方があるといった状況です。
先日も紹介したように最近では原作者の許諾を示す「同人マーク」と言ったものも制定され、基本的にはなるべく自由な活動を認めようと言う方向で話が進んでいるように見えるのは同人作家諸氏にとっては朗報ですけれども、これまた別方向から強力な規制がかかるようになる可能性があると言う点は知っておくべきかと思います。

TPPでコスプレに紛争? 著作権厳しく(2014年1月29日東京新聞)

 政府間交渉が進む環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、コスプレや同人誌といったサブカルチャーの盛り上がりに水を差される懸念が広がっている。いまやクールジャパン戦略や地域おこしの起爆剤としても期待されるサブカルだが、著作権法上はグレーゾーンも残る。TPPの知的財産分野では著作権侵害を厳しく捉える方向で議論されているといい、関係者は「活動が萎縮しかねない」と心配している。 (原昌志、石原猛)

 「ルールが決まれば従わざるを得ないけれど、窮屈になるのは困りますね」
 二十六日に浜松市内で開かれたコスプレイベントに参加した市内の男性会社員(44)は苦笑した。コスプレは、アニメやゲーム、特撮映画などのキャラクター衣装を身に着けて楽しむ。“聖地”とされる東京・秋葉原は有名だが、コスプレイベントは全国に広がる。「四~五年前から流行し始め、今では全国各地で商店街や自治体が支援してイベントを開くケースも増えている」(浜松市でイベントを開いた運営会社代表)。
 だがこうしたイベントは実は著作権法上あいまいな点も多い。原作者らの許可を得た衣装ではなく、自作だったり無許可の衣装を購入したりして参加するケースも少なくない。その場合、たとえば譲ったり売ったりした側は、法で許されている「個人で楽しむ範囲(私的使用)」を超える可能性がある。イベントそのものも「仮に許諾なしに利益をあげれば、厳密には著作権法上アウト」(アニメ業界団体関係者)というのが一般的な見方だ。非営利をうたっても、線引きは難しい
 それでもほとんど問題化しなかったのは、日本では著作権侵害は「親告罪」と位置付けられている面が大きい。原作者ら著作権者が、被害を訴えない限りは刑事罰に問われない。
 「大方は黙認してくれている。ファンが盛り上がれば原作の利益にもつながる。新たなクリエーターを生む場という考え方もある」と広島県でコスプレイベント「コスカレード」を主催する河口知明さん(63)は解説する。ある地方の主催者は「許諾を得ようと版権元に問い合わせたら、『聞かれたらダメと答えざるを得ない』と言われたことがある。知らんぷりをさせてほしい、ということでしょう」と明かす。
 これに対し、TPPでは「非親告罪化」が検討されている。告訴がなくても捜査当局が「違法」と認定して摘発することが可能になる制度だ。ファンや関係者の間では「すぐに取り締まりが厳しくなるとは思わないが、第三者の告発が増えれば警察も動かざるを得ないこともあるのでは」といった声も。コスプレ以上に、アニメや漫画の原作を基にして物語などを「二次創作」する同人誌の世界でも懸念は強い。

◆二次創作 萎縮させる

<著作権問題に詳しい福井健策弁護士(第二東京弁護士会)の話> TPPの知的財産分野で交渉が緊迫しているのは、著作権の保護期間延長と非親告罪化をめぐる議論だ。著作権侵害が非親告罪になれば、二次創作の担い手が萎縮し、クールジャパンの文化全体が打撃を受ける。
 原作者の立場からすると、あらかじめ明確な線引きをし、二次創作に許可を出すことは難しい。どうしても許せない悪質なケースには告訴可能で、作品を盛り上げるファンたちのコスプレや同人誌活動を黙認できる現行の制度は、双方にメリットがあると言える。
 第三者が告発できるようになると、原作者の意図とは関係なく、原理原則に基づいて著作権侵害が問題化する。法令順守が求められるイベント主催者も、活動しづらくなる。実際に逮捕されるようなケースは少ないと考えられるが、二次創作活動を萎縮させるには十分だ。海外に売り込める日本の武器を失いかねない。
 現在のTPP参加国で、非親告罪化に反対しているのは日本とベトナムの二カ国だけ。交渉が妥結すれば、さまざまな懸念が現実化する可能性は高いだろう。

<コスプレや同人誌をめぐる主な著作権事件> 1999年、アニメ「ポケットモンスター」のキャラクターを使って、アダルト漫画を描いた同人誌作者の女性が京都府警に逮捕された。2007年には漫画「ドラえもん」の最終回と称する物語を勝手に描いて販売していた男性が、出版元などの警告を受けて謝罪し、売り上げの一部を支払った。13年9月にはテレビ番組の特撮ヒーローのコスプレ衣装を無許可で販売した会社社長が、広島県警に逮捕された。いずれも販売して利益をあげたことが悪質とされた。

もちろんこうした活動は今や海外にも熱心なファンが多いことではあり、二次創作で存在を知り気に入ったからと原作に手を伸ばすという人も少なくないほどですから、そう簡単に規制はされないと言うより規制強化で誰得?となりかねないものではあるのですが、原作者の権利保護と言う錦の御旗を前面に押し出されてくると現状よりは相当厳しめにならざるを得ないところですよね。
前述の大手検索サービスのように原作者にも利益還元をと言うのは商業的活動に対する原作者の感情好転には一定の効果が見込めると思いますが、むしろ泥沼の紛争化しやすいのは作品世界観を壊すようなものを出しやがって!と言った類の感情的な反発であるかも知れずで、非親告化すればむしろ原作者よりも熱心な原作ファンからの告発で厳しい取り締まりが行われるようになるのかも知れません。
日本の場合は原作者と二次創作作家の距離感が例外的に近く、プロと言えども別な顔で同人活動もやっているというケースがまま見られるだけにそうそう深刻な対立関係には陥りにくいとは思いますが、世界的に見るとそうした良好な関係は実は例外的ではあって、TPPのように多国間に共通するルール作りとなると日本のような例外的ケースを基準に行うわけにもいかないのは当然ということでしょう。
もちろん各国の当局者がどういう基準で対応するかが最も重要なのは言うまでもないことで、例えば性風俗関連のコンテンツに関しても時代時代でどこまでが有りでどこからは駄目と言う基準が大きく変化していたり、事実上の賭博行為である賭け麻雀がほとんどの場合黙認されているように、実際にどこまで黒と見なされるかはその時々の判断による部分も大きいはずです。
逆に言えば往年のファイル交換ソフト騒動のように当局者に「昨今の風潮には問題がある。一罰百戒の効果を示すためにもここは厳しく対処せねば」と考えさせるような活動を行っているようでは必要以上に厳しい対応を呼び込んでしまうことになるわけですから、特にお金の関わる活動を行っている各位には自主的に時代の空気を十分に読んでいただかないことには、自分だけの問題で終わらないということですよね。

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コメント

先進国と発展途上国で知的財産権保護のあり方ってずいぶんと違いますよね。
ふつうはもっと厳しくやってもらわないと困るみたいな感じなのに今回逆なのがちょっとおもしろいって言うか。
このあいだの黒子のバスケの事件がありましたけどこれからは気に入らなければ告発合戦みたいになるんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2014年2月 1日 (土) 10時14分

無節操なエロパロも腐女子もイラネ

投稿: | 2014年2月 1日 (土) 11時20分

たまに「これで腐はさすがに無理だろ」と思ってた顔合わせで腐られたときの敗北感といったらもうね・・・・

投稿: たまごん | 2014年2月 1日 (土) 12時29分

 少女漫画を持った不審な男を逮捕

 買い物に行くと言って家を出た後、行方がわからなくなっていた札幌市在住の小学3年の
 女児(9)を北海道警が2日夜、札幌市白石区東札幌3条4丁目のアパートで保護し、
 このアパートに住む無職松井創(はじめ)容疑者(26)を監禁の疑いで現行犯逮捕した。
 道警の説明では、松井容疑者は容疑を否認しているという。
 女児は1月27日午後から行方不明になり、道警が写真などの情報を公開して捜していた。

 道警によると、女児は2日午後10時半すぎ、松井容疑者宅の居間で座った状態で発見された。
 女児は泣いていたが、目立った外傷はないという。松井容疑者は帰宅途中の女児を駐車場で
 待ち伏せて、「ちょっときて」などと声をかけた。ビニールテープで拘束していたという。
 松井容疑者は1人暮らし。女児とは面識がなかった。近所の住人から「少女漫画を持った
 不審な男がいる」との通報から浮かんだ。これまでの捜査による不審者の容姿などとも一致。
 捜査員が松井容疑者宅前で職務質問して、「(女児は)いない」と答えたが、室内で女児を
 確認したという。
 容疑者宅の近くの防犯カメラに容疑者とりなさんが歩いているとみられる姿が映っており、徒歩で
 自宅に連れて行ったとみている。(抜粋)

 2014年2月3日01時31分朝日新聞
 http://www.asahi.com/articles/ASG1Z7HMJG1ZIIPE032.html

投稿: | 2014年2月 3日 (月) 12時58分

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