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2014年2月 8日 (土)

同人活動はプロより自由で儲かる?

先日の北海道の少女監禁事件で容疑者逮捕につながった目撃証言が「何冊も少女漫画を持った不審な男がいる」と言うものだったと報じられたため、全国各地から「偏見だ!」と言う抗議の声が上がったそうですけれども、ひと頃は規制論も真面目に語られるほどだった漫画ブームも近年やや落ち着いてきた感があって、雑誌やコミックの実際発行部数などもピーク時の半分ほどにまで落ち込んでいると言いますね。
その一方で億の単位でバカ売れする漫画もあると話題になっているくらいですから売れない漫画がどれだけあるのかと言うことなのですが、先日漫画業界の厳しい内情を物語るこんな記事が出ていました。

編集者批判から金銭事情の暴露まで…ブログやツイッターの出現で変化するマンガ家と編集者の“力関係”(2014年2月4日オタポル)

「今思い出しても地獄の日々です。」「これは、作家としての誇りの戦いなのです。」――今年1月下旬、『ふしぎ遊戯』などのヒット作をもつマンガ家・渡瀬悠宇さんが自身のブログで、『アラタカンガタリ~革神語~』を連載している「少年サンデー」(すべて小学館)の編集部員に対し、激しい不満を表明して話題となった。『アラタカンガタリ』において、当初の編集者だった“Iさん”なる人物が作家の意向を無視し、自分勝手なストーリー展開を押し付けたため意気消沈。一時はマンガ家をやめようと考えるほどまで追い詰められた様子が克明に語られていた(※現在、当該ブログ記事は削除されている)。

 出版社とマンガ家のトラブルといえば、2008年に『金色のガッシュ!!』カラー原稿紛失について作者・雷句誠さんが小学館を提訴した話が有名だろう。本人の旧ブログには当時の記事がまだ残されている(外部参照)。何人かのマンガ家が雷句さんに同調し、新條まゆさんもブログ中で同社の傲慢なやり方へ不満を述べた(外部参照)。

 出版社がマンガ家を抑圧し、ときには消耗品のように扱う――そんな風潮は昔からあったはずだが、一般読者にまで広く伝わるようになった背景には、ブログやSNSといった“ITツール”の普及が無視できない。マンガ家たちが出版社のフィルターを通さず、読者にナマの声を届けられる時代になったのだ。
(略)
 ブログやツイッター、SNSの出現によって、作家と出版社の関係をめぐる問題は広く取り沙汰されるようになった。さらに、こうしたサービスは“出版社への反撃”や“業界への問題提起”ツールとしてだけではなく、マンガ家がファンへ直接的に自身と自身の作品を売り込む“セルフプロデュース”ツールとしても大きな役目を果たしている。新刊発売やサイン会を告知する場として、日常のあれこれや創作論を語る場として、落書きやラフ画を掲載するファンサービスの場として……ITツールはとても有用に機能している。

 自分自身の言葉ではっきりとファンに心情を伝え、編集者から理不尽な扱いを受ければ公表できるツールをマンガ家が持ちはじめたのは、一部の出版社にとっては面白くない事態だろう。しかし「週刊少年サンデー」を例にとれば、今の発行部数はピーク時(1983年)の1/4以下、雷句誠さんの訴訟でイメージダウンした2008年と比較しても約40%の落ち込みを見せている。これは出版市場全体の縮小より、はるかに大きな下げ幅だ。クリエイターと出版社との“パワーバランス”が着実に変わりつつある現在、描き手の気持ちを軽視するような出版社には、今後さらなるしっぺ返しが待っているかもしれない。

書き手の不満は大きく分けて編集者らからの過干渉と報酬面での冷遇に二分されるのだそうで、前者に関しては先日あれほど大きく取り上げられたSTAP細胞なども実際の論文掲載までには散々編集者らからの過干渉があったと側聞しますから、やはり雑誌掲載という「他人のふんどし」で勝負している限りは他人の注文にある程度応じる義務が伴うのは仕方がないのかなと言う気もします。
金銭面ももちろん同じ事で、何しろ就業希望者だけは掃いて捨てるほどいるという超買い手市場ですから「気に入らなければ他所にどうぞ」と言いたい放題だと思いますけれども、少なくとも商業的に掲載され出版社にも儲けをもたらしているものに対しては相応に報われるべきだろうし、様々な面での創作者の権利擁護ということは今後業界が解消していくべき課題なのかなと思いますね。
ただ面白いなと思うのは記事にもありますように昨今こうした一方的とも言えた関係にどうやら変化が起こりつつあるということで、それはいわゆるブラック企業などに絡んでの内部告発などを見てもブログやSNS等を介してのネタバレ度は大変なものがありますし、今までの一方的な関係に慣れている業界関係者にとってはずいぶんとやりにくくなったなと感じているのではないでしょうか?
同時に何もそこまで嫌な思いをしてまでも既存の出版社と結びつかなくてもいいんじゃないか?と言う考え方もかなり広まっているようですが、先日出ていたこんな記事を読むと「実は出版社に持ち込んで商業出版を目指すってもの凄く損なんじゃ…?」と思ってしまいそうですよね。

《前編》コミケバブルはいつ弾ける? 同人誌ブームに潜む真実(2014年2月4日ぶっちNEWS)

出版不況なのに好況な同人誌

 出版不況が叫ばれて久しい。かつては「若者の活字離れ」などがその理由として挙げられていたが、どうやらそれだけではなさそうだ。売れていないのは書籍だけではない。活字媒体ではない「漫画」も売れていないのだ。今年2月には、老舗漫画誌の『漫画サンデー』が休刊。出版科学研究所によれば、2010年には23点、2011年には10点、そして2012年には14点の漫画誌が消えていった。
 しかし、商業漫画業界が悲鳴を上げるなか、同じ漫画でも「同人誌」界隈はいたって好況の様子。毎年2回、「夏コミ」と「冬コミ」が開催される「コミックマーケット」。1975年の創設以来、その道の趣味人から「コミケ」の名で親しまれる世界最大の同人誌即売会だ。昨年12月29日から31日まで東京ビッグサイトで行われた「コミックマーケット85」。その85回は動員が52万人、昨夏の84回が59万人、一昨年冬の83回が55万人と記録的な来場者数が続いている

 過去に行われた調査によると、コミケ一般来場者の平均購入額は、男性が33,740円、女性が30,100円。コミケ全体では、3日間で150億円以上の経済効果があるとされている。オタクブームどころか、もはや市民権を得た感もある。同人誌市場は、今後ますます拡大していきそうだ。
「売れっ子漫画家になって豪邸を建てる」というジャパニーズドリームは、もちろん今でも存在する。しかし、アニメやゲームなどコンテンツビジネスでヒットを飛ばし、数千万円~億単位の年収を得ている作家など、ほんのひと握りだ。一般商業漫画誌における新人作家の原稿料は、少女漫画が4,000~6,000円、少年漫画やヤング・アダルトで5,000~8,000円。有名漫画誌に連載を持つ、多少は名の知れた作家でも、年収は200万円以下なんてのはザラ。家を建てるどころか、ほとんどワーキングプアだ。

「壁際」の一部では年収1000万の作家も

 そんな夢のない話の一方で、同人作家の一部には年間に1千万円以上を稼ぐ者も多い(※1)(店舗委託・ダウンロード販売を含む。地道に儲からない同人活動をやっている人が大半だが、出展者の僅かとはいえ人気作家もそれなりの数存在する)。彼らの強みは、「直売」に尽きる。印刷代や運送費などはかかるものの、出版社や取次を介さないため、売上から必要経費を除いた額のほとんどすべてが自分の懐に入る
 しかも、商業誌のように販売数や利益を公にする機会がないため、納税を「チョロまかしている」者もいる(※2)。実際、2007年には同人作家・S(仮名)の脱税が発覚。3年間で約2億円の所得があったにもかかわらず、約2000万円と過少申告。支払うべき所得税6,750万円を免れたとして在宅起訴された。
 単純計算で、彼女の1年間の所得は6,666万円。一流企業の社長でも、これだけの額を稼ぐ者はなかなかいない。(当然だが税務当局も十年以上前から目をつけており、同人作家向けの確定申告に関するHPはいくつもある。また最近は同人税務の書籍も刊行されている)。
 漫画誌が次々に消えていくなか、年に6,000万円稼ぐ商業漫画家がどれだけいるか。あえて商業誌デビューを目指さず、同人誌で生きていく作家が増えているのも当然だ。

以前にも取り上げましたが表向き同人作家を名乗っていても中の人は実はプロ作家と言ったケースも少なくない一方で、名の知れたプロ作家が自作愛読者に対する読者サービス的に番外編を同人出版すると言ったケースもあって、とにかく今の時代プロ作家と同人作家の垣根が酷く曖昧になっていますけれども、注目いただきたいのは同人活動はプロ活動と比べて何かと自由なのは当然として、一面でひどく儲かる(あるいは、より儲けを出しやすい)という点です。
昔ながらのコピー機と手作業での製本と言った少数部数の薄い本でも大量に売ればそれなりに儲けは出るでしょうが、昨今では商業誌並みにきちんと印刷されたものもある(すなわち、それだけのことが出来るほど数が出る)ようですし、名前さえ知ってもらえばほとんど手間賃だけで丸儲けになるダウンロード販売という手もある時代なのですから、それは人気作家ともなれば儲かるでしょうね。
この辺りの税金面での扱いがどうなっているのかは税務署の仕事なので何とも言えませんけれども、少なくとも一部の作家においては素人がちょっと片手間に小遣いを稼ぐと言ったレベルで収まらなくなってきているのは事実のようですし、こちらの方を生業にしている人間も出ていると言うくらいには採算が見込める商業活動になっていると言うのは大変なものだと思います。
出版社を介さず自由に出版できるというのはこうした売り上げが手取り収入に直結するうまみもさることながら、前述の課題に即して言えば編集者らに余計な茶々入れをされない自由も確保出来るということであって、そもそも編集者が正しかったのか自分が正しかったのかが売り上げと言う形で明確に示されるという点では、やはり書き手の側としてはダイレクトに手応え(あるいは失望)を感じられる利点もあるのでしょう。

もちろん同人活動の自由度というのも薄氷の上に立つようなもので、以前にも取り上げましたように同人活動の大きな領域を占めているいわゆる二次創作というものが多くは著作権者に無断で出版されているという限りなくブラックに近いグレーな活動である以上、他人の土俵に乗っておいしいところだけ取っていると言う批判にも甘んじなければならないはずです。
日本においては歴史的にもプロと同人との垣根が低い(と言うより、混在している)と言う事情があるせいか、なるべくこうした二次創作活動に対しても緩く広く認める方向で運用がなされてきましたけれども、TPPによる規制強化がと言わずとも年中編集者に追い立てられ安い原稿料で働かされているプロ作家の一人が「あいつら実はケシカランのジャマイカ?!」などと当たり前の権利意識に目覚めるだけでも一気に大騒ぎになりかねませんよね。
知的財産権の考え方からすると少なくとも他人の作品を下敷きにして商売をするのであれば、原作の著作権者に対して何かしらの支払いなりのルールがあってもいいんじゃないかと思いますが、他方ではこうした同人活動の興隆を見た出版社側にとってもアンソロジー本などと言う形で半ば公式に同人活動を表の商業ルートに乗せるという共存共栄的な道も存在しているわけで、決してwin-winの関係が見込めないわけではないと思います。
一番馬鹿馬鹿しいのはいたずらに両者が紛争化した結果同人側が著作権問題の回避を狙って誰が見てもあの商業作品のあのキャラまんまなのに名前やキャラデザ、設定が微妙に違っている…と言った不毛な逃げ道に走ってしまうことかと思うのですが、考えてみると電子配信が当たり前になれば表向き別作品っぽい体で配信しておいて隠しコマンド一発で「原作準拠モード」に切り替える、なんてことも出来ないわけではなさそうですよね。
世界に誇る漫画文化が衰退するのどうこうと大きな話をせずとも、こうした活動に染まるような人であれば誰しも子供の頃から数々の名高い作品の描き出す世界にどっぷりはまって生きてきたでしょうから、そうした素晴らしい作品とそれを生み出した作者に対する敬意は最低限忘れないでいただきたいものです。

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コメント

とりあえず脱税はやめとこうよ
それはグレーじゃなくて真っ黒だもん

投稿: | 2014年2月 8日 (土) 08時46分

非正規の商売でそんなに大儲けしてると認識されたら遠からず規制なりとあるかもですね。
でもほんとパロディー本あんなに売ってなにもおとがめなしなのって違和感はあります。

投稿: ぽん太 | 2014年2月 8日 (土) 09時54分

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