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2014年2月10日 (月)

非常勤医はまともな戦力にならない?

医学部学生の男女比が限りなく半々に近づきつつある現在、医療資源有効活用の観点からも女医というものの扱い方には誰しも注目せざるを得ませんけれども、特に女性特有の妊娠・出産という現象に前後してそのキャリアが大きく分断されるということが昔から大きなハードルとして扱われています。
特に子供がいるともなれば未だ日本ではどうしても女性の側に育児負担が多くかかるためフルタイムの勤務は難しいというのももちろんなんですが、使う側にとってもこうした女医ならではの特性に留意すべきことも当然ながら、女医の側にとってもそれなりに不自由を感じているというのが現状であるようですね。

女性医師の「マミートラック」、どうなってる?(2014年2月6日日経メディカル)
より抜粋

(略)
 Aさんは、循環器科医としてキャリアを積んでいたが、出産して職場復帰した後、経皮的冠動脈形成術(PCI)を担当できなくなったという。「24時間オンコールで働けない私には担当させてもらえなかった」と憤っていた。

 別の日に出会った女性医師Bさんも循環器科医。子供がまだ1歳足らずで、「いま就職活動をしているけれど、第一線では働けないな……」とのこと。

 産後、職場復帰は果たしたけれど、キャリアアップとは無縁の仕事内容で働く母親専用のキャリアコースを「マミートラック」という。社会全体に目を向けると、35~44歳の働く女性の割合は今や71.3%と過去最高であり、子供を持ちながら働く女性はかなり増えてきた。
 そんな時代になって、産休・育休から復帰することから復帰後の仕事内容に関心が移り、マミートラックという言葉を新聞などで見掛けるようになっている。
 医師業においては「キャリアアップって何?」という部分からして様々な意見があるだろうが、お二方の場合、「(24時間オンコールでは働けないものの)それなりに長い時間を割いてしっかり仕事をしたい」という気持ちは滲み出ていて、仕事の特性、職場の文化、周囲の人の考え方、個人的な環境などから、満足のいく働き方をするのは難しいと考えているようだった。

 民間企業でも模索中の「働く母親活用策」、医師業界ではどうなっているのだろうか。十分戦力になる女性医師を戦力外にしてしまっている事例は少なくないのだろうか。
 「イクメン医師」の実情を伝える特集記事(Cadetto2013年秋号「イクメン医師、増加中!」)で行った医師対象のアンケート調査(有効回答数1276人)では、「育児と両立できるほど医師の仕事は甘くない」「育児は女性の仕事」といった自由意見が散見された。24時間365日働いてこそ、という職場の雰囲気が透けて見えるようだ。
 とはいえ、「イクメン医師、増えている?」という質問には、「増えている」「どちらかといえば増えている」合わせて45.6%と、半数近くの人がイクメン医師の増加を実感していた。(パートナーが医師で子供を持つ)女性医師に「ご主人(パートナー)はイクメン医師?」と聞くと、「はい」が46.4%に上った。医師業界でもイクメンは存在感を増していそう。
 徐々に若い医師の意識は変わってきたものの、主治医制が根強く残り、医師は一般的に長時間労働だ。AさんやBさんのように感じる女性医師は少なくない、というのが実態ではないかと思う。

 あるセミナーで厚労省事務次官の村木厚子氏は女性医師の活用に触れ、「(費用を投入して)育てた女性医師の4分の1が厳しいところから離れている。何とか活用してほしい」と言っていた。医師として一生涯働く女性が増えた今、女性医師のキャリアパスについていつかきちんと取材してみたいと思っている。

こういう話を聞くといささか本題と離れることは承知の上で、日本の医療現場もいつまで主治医制を続けるのだろう?と思わされるのですけれども、しばしば臨床現場でも見られることに能力も意欲も十分にあるが24時間365日の体制で働くことだけは出来ないと言った先生に、まさにそれが理由で誰にでも出来るような片手間仕事しかさせていないという職場がありますよね。
その結果として能力も意欲もまともに問われることなくただ24時間365日働けるというそれだけのファクターで連日激務を強いられている先生がいるというのもどうなのかですが、医療リソースの有効活用という点からもさることあがら、こちらで能力の高い先生が手が空いているのに向こうで見るからに一杯一杯になっている先生の手が空くのをじっと待たされる患者にとってもつらいものがあるでしょう。
こういうことは本来管理職の先生方がうまいことスタッフをやりくりして仕事を均等に割り振りしておけば誰もが幸せになれると思いますが、これが頭の硬い先生が上に立っていると「あの先生は非常勤だから外来でもやっててもらおうか」と患者も来ない診察室に一日押し込めて終わりと言うこともままあることで、その結果常勤医が未だに不平等とも言える長時間労働を強いられているのですから不平不満も貯まろうと言うものです。

激務変わらぬ勤務医 研修医「時間外が月200時間」(2014年2月7日中日新聞)

 病院勤務医の過労死裁判で、医師の過重労働が社会問題になったのは一九九〇年代後半。それから十数年もたつのに、労働環境の改善が一向に進んでいないことが、全国の勤務医労働実態調査で浮き彫りになった。当事者の話を聞くと、勤務医不足の中、懸命に診療にあたる姿が浮かび上がる。背景には、日本の医療の非効率な仕組みがあるとの指摘もある。

 「こんなふらふらの状態で患者さんを診て、本当に大丈夫なのか」。愛知県内の二十代男性の初期研修医は、研修先の病院で何度もそう思ったという。
 通常の診察に加え、症例報告会や勉強会、雑用で勤務はいつも深夜まで。帰宅後も救急などで頻繁に呼び出される。当直日は朝から通常勤務をこなした後、翌朝まで救急などの対応にあたる。引き続き昼間の勤務があり、夜の勉強会まで重なると帰宅は深夜になる。四十時間に迫る連続勤務。月五回の当直時間を含めると、ひと月の時間外労働は二百時間近くになった。
 研修医は過労で顔がむくみ、吐き気、しっしんなどに悩まされるように。指導医に相談したが「皆やってるんだから」「休めば病院が回らない」と人手不足を理由に取り付く島もない
 精神的にこたえたのは同僚研修医の態度。感染症をこじらせて休んだのに、「ばか、出てこい」と、携帯電話の向こうからなじられた。「こんな働き方、患者さんのためにならない。医師として成長できるとも思えない」

 二〇〇九年に医師らが結成した全国医師ユニオン(東京都千代田区)などは昨年、一二年に全国で実施した「勤務医労働実態調査2012」の報告をまとめた。回答した勤務医(研修医も含む)は二千百八人。それによると、「業務負担がこの二年間で変わったか」という質問に、「減った」と答えた医師が16・3%なのに対し、「増えた」は41・6%に達した
 七割の医師が当直を担い、うち八割は三十二時間以上の連続勤務をしていた。「多くの病院で労働時間が適切に管理されておらず、長時間労働や残業代不払いなどの労働基準法違反が起こる原因となっている」とユニオンの植山直人代表。勤務医の離職率は高く、慢性的な人手不足で過重労働が常態化し、医療事故が起こりやすくなるのを懸念する。アンケートで勤務医が答えた医療事故の原因の多くが、労働問題に関わる内容だった=表。
 調査結果からユニオンは、主に労働基準法順守の徹底や医師養成数の増員を厚生労働省に求めている。こうした課題は以前から認識されてきたが、その背景には、日本の医療の非効率な仕組みが問題という見方がある。

 社会保障に詳しい経済学者の八代尚宏・国際基督教大客員教授は「医療サービスの公平性を建前に、診療報酬が決められているが、価格が低く抑えられているため、病院事業者は患者数をこなして稼ぐようになりやすい」と指摘する。
 さらに本来は専門医療を担うはずの大病院に、軽症患者が自分の判断で受診できる仕組みが非効率を助長。かかりつけ医の紹介で大病院を受診したり、夜間当番医制度を活用したりするよう求めても、患者の行動を変えるのは難しい
 八代さんは「欧州では、救急を除き、患者は事前に登録した家庭医(総合診療専門医)を受診し、必要に応じて専門病院を紹介してもらわなければならない。こうした仕組みでマンパワーを有効活用すれば、過重労働を防ぎながら医療の質も高めることができる」と主張する。鍵を握るのは、病気を総合的に診断できる家庭医の育成。しかし、日本の医学界は臓器別の専門診療科教育を重視してきたため、医師に占める家庭医の比率はごくわずかだ。

面白いのは年々これだけのペースで医師が増えていて、しかも国策もあってか病院数は過去20年間で10数%も減ってきているのですから施設あたりの医師数はどんどん増えていてもおかしくないのですが、その割に仕事の割り増しが以前より増えたと答える勤務医が多いというのは医療需要そのものの伸びもさることながら、非常勤医やマイナー科医の伸びも大きな影響を与えているのではないかという気がします。
特に非常勤医と言えば近年そのあり方が大きく変わったものの一つで、かつてであればどこかで常勤をしたり大学で研究をしたりしている医師が医局人事で人手の足りない病院に週一回のアルバイトに出かけるといったスタイルが当たり前だったものが、今現在では麻酔科などを筆頭にどこにも常勤として勤めず非常勤だけで暮らしている先生が話題になったりしていますよね。
もちろん手に職を持ってどこに行ってもバリバリ仕事をこなす先生もいらっしゃいますが、一方でただ新聞を読んだりテレビを眺めたりでひたすら勤務時間が過ぎるのを待つだけという先生も未だにいらっしゃるようで、もちろんそもそもそうした職場に非常勤医が必要なのかどうかという議論もさることながら、非常勤でも出来る仕事をわざわざ常勤にやらせているのであれば人使いが下手だと言われても仕方がない気がします。
このあたりは使う側にも色々と意見があるようで「何かあったら来なくなるかも知れないから責任のある仕事は一切させない」などと公言する先生もいらっしゃるようですが、医者という仕事の場合世間一般とは逆に時間あたり賃金では非常勤の方がずっと高いということも決して珍しい話でもないだけに、一生懸命働いている常勤の先生からすると不平不満の貯まらざるを得ないところではあるでしょう。

記事にもあるようにいわゆるコンビニ受診に代表されるような医療需要の伸びも大きな問題ですし、何をするにも長々とした説明と同意がいる、書類仕事がやたらと増えた云々と昔と違ってとにかく医療が手間暇かかるものになってきたのも事実ですが、そうであるからこそ医師は医師でしか出来ない仕事に専念するのが最も効率よく病院経営に貢献できる道であるはずです。
全く同じように常勤医は常勤医にしか出来ない仕事に専念するのが(以下略)と言う理屈になるはずなのですが、どうもここで妙に昔気質の「患者は一人の主治医が責任を持って最初から最後まで担当すべき」などと言う考え方がそれを邪魔しているというのであれば、そもそも患者が入院を要するほど重症であった場合に加療に当たれない非常勤医に外来をさせたりするのもおかしいという話になってしまいますね。
もちろん実際に非常勤にも色々と面倒で手のかかる仕事をしてもらうためには、病院毎に全く違ったやり方で行われている医療環境や治療方針を共通のものとしていかなければ妙な事故が起こってしまう可能性が高まるでしょうし、逆に言えば他病院なりのやり方であってもそれを理解し受け入れる柔軟性が医師の側にも求められるということになりますが、そのためには非常勤の先生にも相応に努力も勉強も求められるはずです。
もちろん中には「俺は気楽なアルバイトのつもりで来たのに、そんな面倒なことを言うならもう来ないよ」と言い出す先生もいるでしょうが、逆に非常勤であっても勤務時間以外はしっかり頑張りたいという先生もいるはずですし、手術やカテ、内視鏡といった手を動かす系の仕事は続けなければせっかくの技術も忘れてしまうだけに、むしろ可能であればどんどんやりたいという先生は少なからずいるように思いますけれどもね。
その結果何か問題が起こった時に非常勤医がどう責任を取るんだ?と言う声もあるかも知れませんが、そもそも今の時代に何かあったときに医師であれ何であれ現場のスタッフ個人が責任を取らされるような病院は到底時代に追いついているとは言えないわけですから、この機会に組織内における事後対策方針の大々的な転換もあわせて図っていただいた方がよろしいのではないかと言う気がします。

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コメント

逆に言えばおいしいところだけ持って行かれて地味仕事ばかり常勤医がこなすって展開もあり得るのでは。
手術がうまくいったら執刀医の手柄で失敗したら主治医の責任みたいなことになるかも知れないです。
誰もやりたがらない仕事だけどんどんやってくれる先生がいたら神なんですけど…

投稿: ぽん太 | 2014年2月10日 (月) 08時49分

カテやってあとで問題起こったときに出てきて対処してくれるんだったら構わないんじゃないですか?

投稿: | 2014年2月10日 (月) 10時09分

>「育児と両立できるほど医師の仕事は甘くない」

医師と両立できるほど育児は甘くないよねえ…w

>一生懸命働いている常勤の先生からすると不平不満の貯まらざるを得ないところではあるでしょう。

今時一生懸命働いている常勤のセンセイのクセして奴隷医道不覚悟!!!!

>カテやってあとで問題起こったときに出てきて対処してくれるんだったら構わないんじゃないですか?

つそもそも今の時代に何かあったときに医師であれ何であれ現場のスタッフ個人が責任を取らされるような病院は到底時代に追いついているとは言えないわけですから

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年2月10日 (月) 10時44分

色々な考え方が当然あるところだと思いますが、まずは時代に即して働き方にも様々なバリエーションが出てきているということが一つ。
そしてそれに対応して働かせ方も変化しなければならないはずが、どうも未だ現実に追いついていないように見える点が一つ。
このあたりを改善するだけでもずいぶんと職場の回り方が違ってくるんじゃないかという気がするのですが、結局現場の医師達の感じているものを各職場の管理職がどう扱っているかということになるのでしょうね。
ただ非常勤医にとっても働きやすい病院というのは一般的にスタッフに評判の良い病院という印象があります。

投稿: 管理人nobu | 2014年2月10日 (月) 11時46分

ろくに診断もつけられないまま患者大勢抱え込む○医者センセの方が使い勝手が良かったりしますよね。
「とりあえず面倒くさそうな患者はあの先生の外来にまわしとけ」でカタがついちゃうから。
医局長が「何とかとハサミは使いようだよ」と言ってたのを思い出します。

投稿: 小松 | 2014年2月10日 (月) 15時30分

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