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2014年2月17日 (月)

医者と患者の関係 主治医制導入を前に

患者から見て困った医師というのは様々なタイプがあるのでしょうが、そのうちの重要な部分を占める要素の一つとして診療の能力が低いということが挙げられるんじゃないかと言う気がします。
先日海外から出ていたのがこちらのニュースですが、確かにこうして記事にしたものを読む限りではあまり担当医と患者という立場で接したいタイプの方には見えませんよね。

誤診繰り返した元医師に禁錮3年、オランダ(2014年2月12日AFP)

【AFP=時事】オランダの裁判所は11日、患者への誤診を繰り返し、うち1人を自殺に追い込んだとして、元神経科医に対し禁錮3年の有罪判決を言い渡した。同国のANP通信によると、医師が誤診で有罪判決を受けるのは同国で初めてという。

 同国東部アルメロ(Almelo)の地裁が出した声明によると、エルンスト・ヤンセン(Ernst Jansen)被告(68)は、1997~2003年の間に「患者8人の命を意図的に危険にさらした」罪で有罪とされた。

 声明によれば、被告はアルツハイマー病や多発性硬化症、萎縮症などの重病について誤診を繰り返し、「患者8人にの診断を誤り、不適切な治療を行った」という。

 国内メディアによると、実際にはヘルニアだった男性患者は多発性硬化症と診断され、車椅子での生活を強いられていた。また、2つの病気の末期にあると誤診された女性患者について、裁判所は「治療が原因で自殺したと判断した」という。

記事からは「意図的に」と言う状況がもう少し判らないのですけれども、刑事罰まで出ていることを考えるとよほどに問答無用レベルの誤診であったということなのか、ともかくもあまり見かけない類の病名を持ち出してしまうと後日外したと判明した時に言い訳が効きにくいんじゃないかなと言う気がしますがどうでしょうか?
こういう「誤診の繰り返し」を云々する話になると決まって話題になるのが「何を以て誤診と言うのか?」と言う問題ですけれども、例えば初診でかかった場合に処方された薬が全く効かず、別な医者にかかったところまるで別の薬を処方されよく効いた、これは誤診ではないか?と言うことを感じる人は世の中少なくないようです。
もちろん「後医は名医」と言う言葉通り、初診においてはまず最も可能性の高そうな疾患を選んでひとまず一般的な治療を行ってみるということが妥当であるだろうし、その治療効果によって診断が固まるだとか次の治療法が判ってくるだとか言うことはままあることですから、別に初診で外したからと言って恥じる必要などないですけれども、特に高い薬をやって大外れとなると患者の側からは「金返せ」と言いたくもなるのでしょう。
このあたりは医療というものが診療契約で依頼された通りの結果を出す、出さないに関わらず診療行為そのものに対して報酬を受け取る準委任契約に相当するということがその理由でもあるわけですが、近年いわゆる「医療=サービス産業」論と言ったものが一定の勢力を得るに至った結果なのでしょうか、「希望通りの結果が出ていないのに金を取るのはおかしい」と主張する顧客の方も一定数いらっしゃるようです。
無論こうしてこじれたケースからはしばしば未収金問題にも結びついてくる訳ですが、金銭トラブルに限らずこうした「医療=サービス産業」論の普及が全般的な患者の行動を変質させつつあるということなのでしょうか、このところ困った患者が増えてきたのではないか?と感じる先生方も少なくないんじゃないかという気がします。

医者が語る「困った患者」とは?(2014年2月9日産経新聞)

(略)
匿名を条件に6人の医師に「困った患者」の特徴を聞いたところ、「絶対に腸炎、などと病名を決めつけてくる」「診断に対して、この病状は○○病では? など聞きかじりの知識を振りかざす」といった態度が挙げられた。なかでも困るのは、「風邪と診断しても、空腹時の胃痛や疲労時の頭痛など、様々な症状を相談される」ことだとか。

『患者トラブルを解決する「技術」』の著者、尾内康彦氏によると、「テレビの健康番組で病気を取り上げると、その病気を疑って診察を受ける患者が増える」とのこと。また、ネットで調べて、症状から病気を推察して相談する人も増えているそうだ。しかし、「様々な症状について質問攻め」は、患者の気持ちとしては理解できるような気も。

「患者は一人だけではありません。ひとりにかける時間が延びると、診察できる人数は減ってしまいます。ほかの患者の待ち時間も長くなるし、極論をいえば、病院経営が成り立たなくなることも理解してほしいですね」

不安な患者心理からすれば、医師は親身に寄り添うのが当然、と思いがち。だが、症状が軽い患者に対しては、そうも言ってられない現実があるようだ。

「“困った患者”の増加は、消費者意識の肥大が原因のひとつ。特に、2001年の厚生労働省による“患者には様をつけるのが望ましい”という指針以降、患者は消費者で病院はサービスを提供する店、と意識する人が増えた気がします。ただ、医師も人間。わざわざ、医師を困らせるような態度で診察を受けるのは得策ではないと思いますよ」
(略)

世の中には「み○も○た症候群」だの「た○してガッ○ン症候群」だのと言う言葉もあるくらいで、衰えたりとは言えマスメディアの影響力は未だ小さからざるものがあると見るべきか、あるいはそうしたものに過剰に影響されてしまうタイプの方々こそがマスメディアの主要な利用者であるのかは何とも言い難いのですが、ともかくも病院受診の理由の一つに「テレビで見て気になった」と言った理由を挙げる人は少なくありません。
マスメディアの大きな特徴の一つとして針小棒大に小さなボヤを大きく延焼させることを得意技にしているということもあってか、こうしたタイプの方々のほとんどがいわゆる不定愁訴を訴えて来院されるわけですが、当然ながらそうした不定愁訴の多くはどんな病気でも起こりえるものであり、さらにその大多数は多くの医師の本音として「大したことじゃないんだからもう少し様子を見れば?」と言いたくなるものでもあるでしょう。
無論そうした中に一定数の重大疾患持ちが隠れている場合もありますから、少なくとも患者がそれを求めて来院した際には一通りのチェックは行うべきと言うのが現在一般的な考え方だと思いますが、意見が分かれるのはこうした場合に行う諸検査のコストを保険診療に回していいものなのか、それとも自費診療でやるべきなのかということですよね。

特に問診等であまり問題がなさそうだと見極めがついた場合「全額自費診療になりますがよろしいですか?」の一言を切り札的に使っている先生も少なくないと思いますが、一般論として患者の求めに応じて医学的に必要性が乏しい診療を行うとなれば自費扱いが妥当であって、そんなものを全部保険扱いにしていれば後日査定で切られ最悪マスコミから「不必要な検査でボロ儲けの悪徳医師」と叩かれるのがオチでしょう。
保険財政上ももちろん許容される行為ではなく、そして現場の医療従事者からも評判が悪くなり不要な患者-医師対立を招くとなれば全面禁止にしても良いくらいだと言う意見もあるかも知れませんが、他方ではこうしたささやかな訴えからマイナーな病気を見つけ出すことに大いなる喜びを感じているタイプの先生もいらっしゃるわけで、こうした先生方に言わせれば除外診断は医学上全く適正な行為だとなるのでしょう。
最近では家電を修理に出すにも昔のようにパーツコストだけを取るのではなくて、「どこが悪いかを診断するのに幾ら」とコストを取る場合が増えているようですが、本来的には患者の訴えから判断をし何が必要なのかを考えると言う医師の頭の中で行われている作業にこそ価値があるのであって、検査や投薬などはその結果発生するあくまでも二次的なものであるはずです。
ところが日本では検査やコストをしなければ医師の判断という部分だけではろくにお金が出ないと言う奇妙な診療報酬体系になっているだけに、優秀な医師が十分な時間をかけた丁寧な問診で診断をし患者の手間暇や余計な出費を抑えると言ったタイプの診療のやり方は全く経営的には大赤字でもあるし、下手をすれば「あの先生は検査も治療も何もしてくれない」と患者にも見放され閑古鳥が鳴くということにもなりかねません。

今春の診療報酬改定で主治医というものの評価がより大きくなされるようになると言うことも一つのトピックスになっていて、何しろ一定の条件を満たして主治医として登録されれば黙っていても毎月患者一人あたり1万5千円という金額が入ってくるというのですから、「今どき主治医かよ」と言う話は別にしても先日話題になった訪問診察料ボッタクリ問題のようにまたぞろ悪用されるのではないか?と言う懸念がないわけではありません。
ただ本来的に主治医となれば複数の診療科にまたがった疾患を抱える患者にどの診療科に相談するのがいいかとアドバイスしたりだとか、先に挙げたような延々と不定愁訴を言い立てる患者に対してきちんと話を聞き適切な鑑別診断も行うと言った多大な労力もかかる地道な作業をすることも期待されているはずですし、そうした作業を真面目にすると1万5千円では割りに合わないと言う考え方もあるかも知れませんよね。
このあたりは誰がやりたいやりたいと主治医として手を挙げ、誰がそんな面倒くさいことは御免だと主治医を押しつけようとするかを見ていくのも面白いんじゃないかと思いますが、一つには患者が希望する主治医と実際になってくれる主治医とが割れてしまうケースと言うのも当然起こりえるはずで、この場合注意すべきは「引き受けた医者=良い医者」「断った医者=悪い医者」的な割り切りをすべきではないということです。
開業医はもちろん勤務医であっても経営上なるべく主治医となるよう要請されるはずですが、それでも自分の能力や専門の方向性、あるいは実際に主治医としての対応が出来るか否かをきちんと見極めた上で出来ないと判断すると言うのはそれなりに冷静に自己評価が出来ているんじゃないかとも思えるところで、案外そういう先生の方が自分の能力の範囲内ではきっちりした仕事をしている場合も多いんじゃないかという気がします。

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コメント

患者が多すぎて大変だからなるべく病院に来ないで欲しいです
医療費も節約できて税金保険料も安くなるから一石二鳥ですよ

投稿: まもる | 2014年2月17日 (月) 08時35分

特定の病気を疑ってくる患者さんはそれだけ鑑別すればいいので楽っちゃ楽なんですけどね。
やっぱり訴えに一貫性がなくて後から後から色々言ってくる患者が一番イヤですよ。
なにしろ後から言ってきた症状の方が気になるような場合も少なくないですから。

子供のころから病院のかかり方をもっと学んでおいたらいいんですけど教える人材がいないんですよね…
看護師や救急隊だって医師からしたら報告のやり方が悪いって突っ込まれる立場だし。
かといって開業医の先生に教えさせたら「ちょっとでも気になったらすぐ受診を」なんてやりかねないし。

投稿: ぽん太 | 2014年2月17日 (月) 08時53分

開業医が主治医加算だけとって何かあれば病院に丸投げって未来図が見えるw

投稿: aaa | 2014年2月17日 (月) 09時49分

主治医が丸投げしてきた場合後医は「主治医の先生がもっとちゃんと診てくれていたらこうはならなかったんですけどね~」と言う殺し文句が使えるようになりますので、案外悪くないことなのかも知れませんけれどもね。
むしろ気になったのが現段階では200床未満の中小規模施設で認定される制度で、施設規模を絞り込むことで患者誘導の機能も期待しているものでもあるようですが、これが思惑通りに機能するかどうかです。
診療報酬による誘導には共通の課題ですが、患者側からすればせっかく「大病院の偉い先生」に診てもらっているのに、いまさら余計なお金を払ってまで小さな病院や開業医に移るメリットがあるのかどうかですよね。
今後専門医資格が改定され基幹病院クラスの勤務医でなければ維持出来ないということになれば、これと絡めて非専門医ないし総合医が主治医を務めるという制度的な分業体制が生まれるかも知れませんが。

投稿: 管理人nobu | 2014年2月17日 (月) 11時23分

主治医は身近な開業医の先生でいいと思うのですが、夜間休日にちゃんと対応してもらえるか気になります。
でも夜間の対応を義務づけても一人で毎日対応するのは体力的に無理ですよね。
カルテを電子化してデータを病院と共有できるようにしたらいいんじゃないでしょうか?

投稿: てんてん | 2014年2月17日 (月) 13時37分

天ぷら安倍に非難殺到。

口だけで国民の生命財産を蔑ろにするか。自民党永久解体しかない

投稿: | 2014年2月17日 (月) 14時12分

オランダでは珍しい判決ですね。こういうケースでは、医師資格の停止で再教育なんですが。
判決を受けてオランダ医師会や、専門医団体がどういう声明をだし、どう動くか注目しています。
オランダでは国家レベルで5年各の医師資格の更新制度(書類審査で更新を決める、専門医団体ごとに更新条件が異なる)を導入しました。更新時に警告を無視した結果かもしれません。

投稿: physician | 2014年2月17日 (月) 14時13分

日本も医師免許更新制にすればいい
教師だって免許更新制になったんだから
医師だけいつまで既得権益にしがみついてるつもり?

投稿: amamin | 2014年2月17日 (月) 17時15分

医師資格の更新制度は米国、英国、オランダ、シンガポールなど少数の国だけです。
先進国のなかでは、やっているところは少ないです。
英国は昨年から開始し、5年ごとです。
ただし、医師生涯教育の講習会への出席点数も含めた書類審査で更新となります。
4年ごとから5年ごとと、期間は国によって異なります。
日本でも、海外の先進国でも、専門医資格の方はすでに以前から、更新制です。
日本では、新・専門医制度が導入されることが決まっていますが、従来よりも更新要件が厳しくなります。

投稿: physician | 2014年2月18日 (火) 12時33分

教師の5年おきの再教育も形骸化してるみたいだし。「むにゃむにゃ評価機構」はまともに仕事をしている人の雑用を増やしつつ、無駄な仕事を創生して食い扶持を作り出してる人間のためになるってるな。 既得権益の意味わかってます?

投稿: 節穴 | 2014年2月18日 (火) 15時38分

主治医報酬を取るためには原則院内処方が必要らしいですね
どうしてこんな妙な条件が入ってるんでしょうね?

投稿: 鎌田 | 2014年2月20日 (木) 08時48分

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