« 自転車事故賠償も自動車事故並みの時代に | トップページ | 著作物出版にまつわる最近の話題 »

2014年1月31日 (金)

全国に先駆けて栃木で大規模な病床再編開始

いよいよ今年から始まる例の病床区分と絡めて地域医療の再編が大いに期待されているところですが、先日は栃木県で早々とかなり大がかりな病床再編が始まったというニュースが出ていました。

初の大規模病床再編 栃木県が8病院に288床再配分(2014年1月18日下野新聞)

 県が脳卒中などの高度医療や救急医療を担う8病院に対して、病床(ベッド)計288床を再配分することを決めたことが、17日までに分かった。公的医療機関での削減分を充てる初の大規模再編となる。再配分で本県で死亡率が高い脳卒中や救急医療への対応力を向上させる。特に全県からのアクセスがよい宇都宮市の宇都宮脳脊髄センター病院には計100床を配分し、脳卒中治療を担う基幹病院に位置付ける。

 本県では、脳卒中などの脳血管疾患による死亡率は2011年で、10万人当たり122・8人と全国ワースト水準。しかし、脳卒中の専門病室(SCU)は、那須赤十字病院と足利赤十字病院の2カ所しか設置されていなかった。

 再編では、宇都宮脳脊髄センター病院に加え、池田脳神経外科病院(鹿沼市)、藤井脳神経外科病院(宇都宮市)の3病院にSCUが設置される。

 大幅に増床される宇都宮脳脊髄センター病院は、急性期からリハビリまでを担う機能を持たせる。県保健福祉部は「リハビリ機能を持たせることで、在宅まで切れ目のない医療が提供できる。リハビリで体の機能が回復すれば健康寿命の延伸にもつながる」と期待を寄せている。

 救急医療では、救急搬送で4回以上受け入れ先を探すケースなどが増えていることなども加味し、3病院に計74床を配分する。また、在宅復帰までの療養場所が課題となっていた新生児医療では、国際医療福祉大病院(那須塩原市)に、集中治療室の後方支援をする病床を15床充てる。

初の大規模病床再編、救急や脳卒中に重点(2014年1月27日CBニュース)

 脳卒中や救急などの医療機能の拡充を目指し、栃木県が大規模な病床再編に乗 り出す。県は公的な病院の病床を288床減らし、患者数が増加傾向にあった救急 や脳卒中などに対応可能な8病院に、この病床を再配分することを決めた。こう した試みは県内で初めて。県は「救急搬送時の病院選定や搬送時間の短縮、病院 の機能分化などにつなげたい」としている。【新井哉】

■「全国値よりも高い」脳血管疾患の死亡率

 県は、昨年まとめた保健医療計画でも、脳卒中や救急、周産期の医療提供体制 の整備を重点項目として提示。特に脳卒中などの脳血管疾患の死亡率について は、「全国値よりも高い状況が続いている」とし、専門治療が24時間受けられる 体制の構築などを目標に掲げていた。  また、救急医療についても、医療機関に4回以上受け入れの照会を行った事案 と、現場滞在時間が30分以上の事案が「いずれも全国平均を上回っている」と指 摘。二次救急医療機関の機能として、24時間365日、救急搬送が受け入れられる 体制の確保などを挙げていた。  こうした目標の実現を図る観点から、県は昨年1月から3月まで、県北や県西、 両毛などの医療圏の医療機関を対象に、一般病床の増床を前提にした整備計画の 公募を実施。13医療機関から計566床の応募があり、医療審議会での意見聴取な どを踏まえ、配分する医療機関や医療機能、病床数を決めたという。

■公的4病院の病床削減、再配分の病床確保

 県は、喫緊に必要とされる医療機能の確保を優先。公募では、▽脳卒中専門病 室(SCU)や心筋梗塞専門病室(CCU)などの高度専門医療▽救急医療▽地域療養支 援施設や医療的ケアに対応可能な療養介護サービスといった療養・療育支援 (NICU後方病床)―の3分野を提示した。  ただ、県内の療養・一般病床は、基準病床数の約1万2100床を大幅に上回る約1 万6200床と“オーバーベッド”だったことから、県は病床を確保するため、上都賀 総合病院や足利赤十字病院など4病院の計288床を削減。この288床を国際医療福 祉大病院など8病院に再配分することを決定した。県は「今後、配分した病床に 基づいて、病院などの新設・増床、病床の運営が着実に実施されるよう指導して いく」としている。  増床が決まった医療機関は以下の通り。▽国際医療福祉大病院=脳卒中・急性 心筋梗塞など55床▽菅間記念病院=周産期医療20床▽池田脳神経外科病院(仮 称)=脳卒中36床▽宇都宮脳脊髄センター病院(仮称)=脳卒中・急性心筋梗塞 100床▽宇都宮記念病院=救急43床▽藤井脳神経外科病院=脳卒中3床▽芳賀中央病 院(仮称)=救急15床▽本庄記念病院=救急16床。

もともと栃木では2011年頃から栃木市内の3病院を統合して栃木メディカルセンター等に再編するという計画があったようですが、今回はさらに全県的な医療再編を行うという中々に壮大な計画で、この時期こうした大がかりな計画が出てくるというのは例の地域医療再生臨時特例交付金を当てにしてのものであるようです。
記事にもありますように栃木県ではすでに国の基準を上回る病床過剰にあることから単純に増床は認められず、再編のためにはすなわちどこかで病床を削らなければならなかったわけですが、公的医療機関が病床を削減した分は基準超過していても他施設の増床に回すことができるという特例を使って今回の再編を実施するということで、当然ながら事前の慎重な議論や周到な根回しも必要になったことでしょう。
全国的に見るとすでに基準病床数を上回っている都道府県の方が多数派ですが、基準病床というものは診療科全部をひっくるめての規制ですから需要のない施設や診療科が多数のベッドを抱え込んでいるのは非効率なのは判るのですが、現実的に公的病院ならともかく民間病院がひとたび確保した病床を手放すかと言えば非常に難しいだろうなとは誰しも想像がつくところだと思います。
その意味で今回公的病院のベッドを削って民間病院に回したというのは現実的だったと思いますが、地域によっては多くの民間病院が過剰なベッドを抱え込んで無駄な入退院を繰り返しながら見かけの病床稼働率と平均在院日数を稼いでいるというケースもまま見られるだけに、今後の病床再編にあたってはどれだけ公平な基準で病床の過不足を判断出来るかということも問われそうですよね。

こうした問題は国の方でも当然ながら把握していて、都道府県が策定する地域医療ビジョンに従って病床を管理する方法論としては主に財政的な誘導によるとされていますけれども、公的病院のみならず民間病院に対しても病床の削減や別な医療機能への転換を都道府県が指示できるようにしようという話もあるようで、当然ながら関係各方面から「勝手に決めるな」と反対意見も出ているという状況です。
現実的には各施設が及び腰なのは病床削減なり転換なりによってコストもかかれば儲けも減る可能性があるという経済的要因が非常に大きいわけで、近く提出される予定の医療法改正案では地域ニーズに沿った医療を提供するための設備投資や人件費を補助する基金を設けると言う仕組みが盛り込まれると言います。
ただこれと同時提出されるいわば本題とも言うべき医療と介護を一本化するという部分の方が「全くの別物を一緒に扱おうとはどういうことだ!」と早くも野党から批判が出ているようで、仮にこちらの方が焦げ付けば煽りを食って基金云々の話も流れてしまう公算が大となりますが、そうは言っても病床再編はすでにスケジュールも決まり動き出した話であるわけです。
国が本気で政策的誘導を行うつもりであれば、民間病院も先を争って我も我もと志願するほど魅力的な支援策を用意するくらいの方が長期的に見るとお得になる可能性もあるかと思うのですが、個人的に懸念されるのは政策的誘導を行うのは良いとして、その誘導する先のビジョンについて「これなら間違いない」と言えるだけのものを厚労省などが持っているかどうか大いに疑問符が付くという点でしょうか。

社会的な要因に着目すると出生率低下に伴い人口現象に転じつつある日本のご多分に漏れず、栃木県も関東地方の中ではすでに人口が横ばいから減少に転じつつある県と言えますが、東北や日本海側諸県など更に大幅な人口現象が予測される地域では病床の振り替えというより病床をどれだけ削減できるかということも問われそうですよね。
特に震災の絡みもあって今後も長期的な人口現象傾向が続きそうな東北諸県ではほぼ本決まりになった新設医大の話題で賑わっているとは言え、そもそも需要が減っていく地域にどれだけ医師が残るのかも疑問ですし、地域性に配慮して計画的に施設を調えたはいいが需要がなく遊んでしまうと言う可能性もあるだけに、医療計画を策定する側がどれだけ突き詰めていけるかが最大の課題となってきます。
ちなみに今現在震災復興の絡みもあって建設資材は高騰するわ、業界の人材不足が深刻化し需要に十分応えられない状況になるわで正直病院の建て替えなどに好適な時期とも言い難いところがありますが、逆に耐震化だとか防火対策だとかで病院も緊急に対応すべきだと叫ばれている折でもあり、どうせ建て替えるならついでに医療再編に震災復興も絡めて…と二兎、三兎を追いすぎるのは悪い意味でのフラグになりかねません。
ともかく医療とは結局医師や看護師といったマンパワーがどれだけ集約できるかによって提供出来る内容が変わってくるものですから、いくらハコモノばかり整備しても人が揃わないのでは仏作って魂入れずになりかねずで、今回の計画でも病床数を動かす話ばかりでマンパワーの再編には触れられていないようなのがいささか気になるところで、激務の施設がより一層激務になり集団逃散を引き起こすような事態だけは避けたいものです。

|

« 自転車事故賠償も自動車事故並みの時代に | トップページ | 著作物出版にまつわる最近の話題 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

>大幅に増床される宇都宮脳脊髄センター病院は、急性期からリハビリまでを担う機能を持たせる。県保健福祉部は「リハビリ機能を持たせることで、在宅まで切れ目のない医療が提供できる。リハビリで体の機能が回復すれば健康寿命の延伸にもつながる」と期待を寄せている。

こういうのはリハ病院に任せておけばいいことなんじゃ?
センターで在宅まで面倒みるのは無駄でしょ

投稿: tama | 2014年1月31日 (金) 08時50分

これって今後は全国で大々的に病床再編がなされることになるんですかね?
見るからに余ってそうなベッドってどこにでも掃いて捨てるほどありそうなんですが。
でも急性期はベッド減らしていくって言ってたのにこれじゃ増えちゃいそうですけどいいんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2014年1月31日 (金) 09時20分

効率性を高めるならむしろ中小病院の整理と統廃合の方がよほど有効そうに思えるのですが、それぞれの経営母体が異なる以上よほど行政が強力に推し進めない限り現実的には難しいでしょうね。
また一部中小病院においては医療従事者にとっても様々な事情で他では就労困難な方々の就職先として機能しているという一面もあって、仮に統合した場合には一気に離職者が増える可能性もあります。
考えてみれば産業界においても日本は中小企業、町工場が多すぎると言われながらも、それはそれで良い面もあるなどと称揚もされているわけで、長年続いているシステムはそう簡単に割り切れるものではないのでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2014年1月31日 (金) 12時19分

ベッドが余っているといっても、それはミクロで見た場合であって、社会全体で「医療・介護」のベッド数を考えたら不足しているわけです。
今後老老介護や、お一人様世帯の急増により、施設介護自体は増やさなくてはなりません。

一方で、介護士は、医療職の給料を諸外国以下に押しとどめるために、序列上ワープア水準にならざるをえないという根本矛盾から、施設介護・在宅介護とも、人手不足は火を見るより明らかです。

そのため、病院のベッドを減らせば良い、という単純な話ではなくなります。介護のベッド(ここでいうのは、在宅の「ベッド」の意味も含んでいるつもりです)が足りないので、本来介護に出すべき慢性期病院のベッドが足りなくなり、慢性期病院のベッドが足りないため、急性期病院のベッドが足りなくなる、というドミノの構図ですから。

投稿: おちゃ | 2014年1月31日 (金) 14時13分

ERみたいにとりあえず救急車を全部受けてくれる施設をつくって、そこから地区内のふさわしい病院に割り振りすれば効率的に思えるんですが難しいんでしょうか?

投稿: てんてん | 2014年1月31日 (金) 14時52分

実際そういう方向で整備を進めてる地区もありますよ。>ER型救急
ただ24時間救急応需ってことになると医師看護師だけでなくて裏方も24時間必要なんですよね。
患者も来るときは救急車で来るけどERから近くの施設に回そうとしたら消防救急は関わるの嫌がりますから自前で送らないといけなかったり。
そういう裏方仕事もきちんと整備できてないと機能するERにならないですよ。

投稿: らんらん | 2014年1月31日 (金) 16時54分

病院のスタッフだけでやろうとするから無理があるし、医師逃散してスタッフ不足になればERやめるしかないということになる。
病院勤務以外の医師や看護師なども病院のERのヘルプ要員として輪番で活用してそれなりの日当を払えばいいと思います。
たぶんERでは全く使い物にならない医師や看護師もたくさんいると思いますが。
これからは高齢者の急変がすごく増えるわけですから、後期高齢者専用のERとかを開業医や訪問看護師に輪番でやらせたらどうでしょうか?
いずれにしても地域の病院もオープンにして外部の人間も出入りできるようにしないともたないのでは。

投稿: 逃散前科者 | 2014年1月31日 (金) 17時27分

ふさわしい病院→病状が落ち着いているから人でをしくなくしても大丈夫、コストがかからないだろう、とお役人は考えるわけです。

実際には、様々な病態、合併症、元々の持病などが絡んでくるので、きっちりした治療をしようと思えば、それなりの人員が必要で。それは即ち、急性期病院の体制なわけで、割り振りと言っても、急性期病院同士のたらい回しを誰が望むかということになりますし、急性期→慢性期のロードマップに乗らないと赤字になるように財政誘導している制度とは相入れないわけです。

結局、急性期病院に入院している方が一番費用負担が少なく、望むだけの医療、介護をしてもらえるという、患者、家族側の事情をどうにかしないかぎり、退院を迫る急性期病院、なんて酷いんだ、という社会風潮は変わらんでしょうな。

投稿: おちゃ | 2014年2月 1日 (土) 12時43分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/59032105

この記事へのトラックバック一覧です: 全国に先駆けて栃木で大規模な病床再編開始:

« 自転車事故賠償も自動車事故並みの時代に | トップページ | 著作物出版にまつわる最近の話題 »