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2014年1月 9日 (木)

朝日がまたも医療の無駄遣いをスクープ?!

朝日新聞と言えば昨夏には施設入居者の往診に絡んだ「高齢患者紹介ビジネス」をすっぱ抜いたことで話題になりましたが、先日はまた新たなネタを見つけたようでこんな記事が出ていました。

歯科医院でもポイント還元 患者集め?規制に二の足(2014年1月7日朝日新聞)

 歯科医院で治療を受けると、商品券などと交換できるポイントがもらえるしくみが広がっている。国民の医療費が、治療とは直接関係ない患者集めに使われている可能性がある。患者にポイントを与えることで実質的な値引き競争につながり、全国で一律であるはずの医療の価格に差ができ、質の格差も生まれかねない。厚生労働省も、対策を慎重に検討している。

 歯科ポイントのしくみは、東京都渋谷区の歯科コンサルタント会社が2006年から運営を始めた。同社によると、全国約6万9千ある歯科医院のうち、加盟しているのは約400。加盟医院で治療を受けた患者は、同社のウェブサイト上で治療や設備の満足度について6問のアンケートに答え、歯科医院の口コミを書き込むと、治療内容によって100円~1万円相当のポイントをもらえる

 ポイントの付け方は、歯科医院に任せられているため、患者の勧誘に活用できる。1回の治療で100ポイントをつける医院が多く、初診時や検診1回につき500ポイント、患者を紹介すると1千ポイントをもらえる医院もある。500ポイントたまると1ポイント1円として、商品券や電子マネーに交換できる

 「1万ポイント=1万3千円」などと、歯科医院は運営会社からポイントを事前に買い取る。または患者が口コミをした後、例えば100ポイントにつき300円を支払う方法もある。いずれも保険料や税金からなる診療報酬が使われているが、歯科医院は支払った金額を取り戻すために不必要な治療をして医療費の無駄につながる恐れが指摘されている

しかしウェブでの書き込みにポイントを出すというのが何とも今の時代だなと思うのですが、歯科の場合とかく近年急速に進むワープア化が話題になっているところですから、何としてでもあの手この手で集客を図らないことには経営が立ちゆかないということは容易に想像出来るところですよね。
歯科がどの程度儲からないかという資料は色々とあるようですが、比較的判りやすいと感じたのがこちらで考察されている歯科医療の国際比較なんですが、医科と同様にやはり患者の過剰通院が目立つ(受診回数が多い)ことと並んで特徴的なのが、治療費そのものが諸外国と比べて極端に安い(診療報酬+窓口負担との比較で1/8、3割の窓口負担では1/25~1/30)ことです。
要するに医科においても同様の傾向が指摘されているように公定価格で全国一律に定められた日本の医療費の「定価」は極めて安い、その結果まともに経営を回そうと思えば現場は薄利多売に走らざるを得ず、諸外国よりも圧倒的に多い患者数を捌かなければ潰れるしかないということですが、医科のようにその結果現場の過重労働から逃散だ、医療崩壊だと言われるようになるのでは何のことやらですよね。
歯科の場合は近年の歯科医大量養成政策によって歯学部の定員が埋まらないほど過剰な供給が行われた結果ワープア化が進んだと言われますが、注意いただきたいのはそれでも諸外国と比較して歯科医師数が別に多い訳ではないということで、それはこれだけ客単価が低く薄利多売を強いられているのに患者数が諸外国並みでは経営が成立しないのは当然だと理解出来るところです。

歯科医の場合は保険外診療も多いんじゃないか?と言う人もいるでしょうが、歯科の自費診療率は平均的に1割強と言ったところで実際にはあまり高いものではなく、もちろん様々な手法を用いて患者をより多く自費診療に誘導し安定的な経営を行っている歯科クリニックも少なからずあるでしょうが、全体的に見ると伸び続ける医療費総額に対して歯科医療費はすでに久しく以前から横ばいになってきています。
要するに歯科とはすでに成熟市場であって、医師の判断によって医療が行われる医科と違って患者側たる国民の判断でコスト的に妥当な範囲内で行われるものとなっていると言えますけれども、歯科医療費総額が伸びていないのですから稼ぎの中でサービスを付加するほど個々の歯科医が身銭を切るだけで、国民は得をすることはあっても損をすることにはならない理屈ですよね。
ところが朝日が嬉々として報じたこの医療費の無駄遣いにつながる大問題(苦笑)にさっそく厚労省が飛びついたというのですから、これは何かしら裏の意味・意図が隠されているんじゃないかと気になってきます。

歯科医院のポイント導入を調査へ、厚労相- 「禁止事項に該当するか、理屈を 整理」(2014年1月7日CBニュース)

 田村憲久厚生労働相は7日、一部の歯科医院で、治療を受けた患者がウェブ上 で口コミを書き込むと、商品券などと交換できるポイントがもらえる仕組みが導 入されているとの一部報道に関連して、こうした仕組みが省令の禁止事項に該当 するかどうか調査する考えを示した。保険医療機関のポイント付与については過 去に、保険調剤の一部負担金を患者が支払う際にポイントを与えるサービスが、 調剤料や薬価などの公定価格に付加価値を付与することに当たるなどとして問題 化したため、厚労省は省令を改正し、原則禁止とした経緯がある。【丸山紀一朗】

 田村厚労相はこの日の閣議後の記者会見で、歯科ポイントについては報道で把 握したと説明した上で、「(この事例が省令の禁止事項に)該当するかどうか分 からないので、しっかり調査していきたい」と述べた。さらに、「(何が禁止な のか)理屈をきちんと整理しなければ、新しい技術やサービスが出てきたとき に、どれが良いのか悪いのかという問題にもつながっていく」と話し、今回の ケースを含めて、今後改めて対応を考えるとした。

 調剤ポイントをめぐり、同省は2012年10月1日に省令を改正し、保険医療機関 が、値引きなどの経済上の利益を患者に提供して、診療を受けるように誘引する ことを禁じた。これにより、調剤薬局を含めた保険医療機関のポイント付与が原 則禁止となる一方で、クレジットカードや一定の汎用性のある電子マネーでの支 払いで生じるポイント付与は事実上、容認していた。

CBニュースの記事では「一部報道」云々に関してはあまり詳しいことを書いていませんけれども、想像するに朝日が自らのすっぱ抜き記事をソースに厚労相にコメントを求めた、これに対してよく事情を承知していない厚労相が一般論的なコメントを出したといった形なのではないかと思われ、今後官僚などを交えて検討した結果がどうなるかは現段階では何とも言い難いと思われます。
ただこれまた一般論として考えてみれば、医療費抑制がこれだけ言われている中でこの上どこが削れるかということを国としては鵜の目鷹の目で探しているわけですから、「そんなポイント付加出来るほど儲けが出てるのであればもっと診療報酬も削れるよね」と難癖を付ける格好のネタが見つかった形だと言えなくもありません。
時期的に見ると今春の診療報酬改定には直ちに反映されるようなものではないのでしょうが、今後こうした歯科の「営利主義」に対して何らかのペナルティが検討されていくようなことになるとすれば、歯科経営はますます厳しくなることはあっても競争が減って楽になるということは考えにくいのかなと言う気がします。
その結果国民の利益につながるのかどうかですけれども、例えば診療報酬が切り下げられれば一見患者支払いが減って良いように思えますが、すでに歯科は成熟市場である以上保険診療分が安くなればその分を保険外に回せるというだけで、案外歯科医療に費やす国民の支出はさしたる変化がないように予想しますがどうでしょうかね?

こうした記事を見て個人的に思うことですが、医療機関においては以前からクレジットカード決済が何故出来ないのか?と言う疑問が多くの患者から寄せられていて、何しろ入院などとなればそれなりの金額を支払わなければならない(かつ、医療機関ではあらかじめ見積もりを出すことが一般的ではないため支払い金額がその時にならないと判らないことも多い)のに現金一括のみと言うのは単純に不便ですよね。
もちろん最近は大病院を中心にしてカード払い可と言うケースも増えては来ましたけれども、何故そういうことになっているのかと言えば根本的にはカード会社に支払う手数料分ほどの利益が出ないからというのも大きな理由だと思われ、一般企業に比べて総じて利益率が低くそもそも病院の1/3は赤字である(それでも経営を続けているのも面白いところですが)ということが運営上の自由度を大きく束縛していそうですね。
マスコミなどは何かと病院の画一的な対応に批判的で、もっと個々の患者それぞれの要望に沿った医療をしろなどと気楽に言いますけれども、薄利多売のファーストフード店と高い料金を取る高級レストランでどちらが顧客それぞれに対応した懇切丁寧な接遇を行えるかと考えると答えは明らかで、要するに効率第一主義を否定するならそれ相応の遊びやゆとりが確保出来る程度には儲けがなければならないということです。
儲けた結果がろくでもないことにばかり使われるのであればこれまた多大な公金を投じている産業としてどうなのかですが、基本的にワーカホリックの多い医師という人種は仕事と趣味とを混同しているような輩が少なからずですから、「保険診療の儲けをこんなことに使ってけしからん!」とお叱りを受けるようなことには案外ならないんじゃないかと言う気がしますけれどもね。

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コメント

黒字化だ経営改善だといったって要するに医療費どんどん無駄遣いしろってことですよね。
けっきょくは病院がもうけちゃいけないのかって話になるんですけど。
混合診療導入したらあれやこれやと工夫してもうけても批判されなくなるんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2014年1月 9日 (木) 08時52分

新聞記者 ハイヤーで合コンの女の子送って帰るのは当たり前

新聞記者の仕事は“激務”というイメージがあるが、最近はそうでもないらしい。彼らの待遇は読者とはかけ離れている。
「給料は朝日と読売、日経がほぼ同水準で、毎日と産経がその半分。共同は8~9割と言われています」(産経の若手記者)

世代にもよるが、”高収入組”の朝日などでは20代後半で年収1000万円の大台を超え、
30代半ばで1200万円、40代前半で1300万~1400万円もザラだ。

最近では若手の給料は減り、30代前半になって1000万円を超えるケースが多いようだが、
それでも同世代の平均年収の倍以上である。

縮小傾向だが、さらに社宅や家賃補助があるケースも。そんな中、最高の特権と言えば、「ハイヤーでの送り迎え」だ。

「合コンで飲んでいる間、何時間も近くで待たせておいて、女の子を送って帰るのは当たり前。
運転手は原則的に守秘義務があるから、遊びで使ってもよほどのことがなければ会社にチクられない」(全国紙政治部記者)

そのためか、完全な公私混同の事例も。

「ある記者は、ほぼ毎日ハイヤーで子供を保育園に送ってから職場に来ていた。自分の結婚式で花嫁と移動するために社のハイヤーを使った強者もいます。
呼ばれたらすぐに駆け付けるためという建前ですが、その記者は普段から”呼んでもなかなか来ない奴”として有名です(苦笑)」(同前)

黒塗りがあるのは”高収入組”の社の政治部、社会部が中心。産経や毎日は自家用車で現場に駆けつけるなど、格差も大きくなっている。
http://www.news-postseven.com/archives/20140109_231466.html

投稿: | 2014年1月 9日 (木) 09時41分

大儲けの朝日記者に儲けすぎと叩かれるワープア歯科医w

投稿: aaa | 2014年1月 9日 (木) 10時18分

まあ新聞記者だろうと歯科医だろうと別に儲けてはいけないというわけでもないはずなので、創意工夫に基づいて利益を得ることは別に悪いことじゃないだろうと言う気はします。
明日にでもまた取り上げるつもりですが、診療報酬の無駄遣いというのであればこんな小さな話よりもずっと大きな問題が全国各地で当たり前にあるわけですしね。

投稿: 管理人nobu | 2014年1月 9日 (木) 10時36分

歯医者は内科医のように過剰投薬して医療費を浪費するようなことはしないので、ワープアになっていくのはかわいそうな気もしますが、町中にコンビニ以上にあちこちに歯科医院があるのを見たら、競走が大変だなと感じます。歯医者はほとんどが開業してますからね。最近病院勤務医〜開業に逃げて困るとかいうけど歯科医院の数に比べたら医院の数など全然少ないですからね。

投稿: 逃散前科者 | 2014年1月10日 (金) 10時47分

新聞記者は市場原理で儲けているだけ

開業医は共産主義的、悪平等的な税金による儲けだから悪なんです

わかります?

投稿: | 2014年1月17日 (金) 10時49分

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