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2014年1月14日 (火)

女医が増え続ける時代にも減らない女医の悩み

総じて医療現場が多忙であることは最近世間でもそれなりに知られるようになってきて、医者は外来だけしていればいいものだと思い込んでいる患者から「先生は週三日しか働かなくていいから楽ですね」などと言われて殺意を覚えた、などと言う声もそれほど聞かなくはなった気がしますが、それでもやはり急性期の基幹病院などは盆暮れ正月もないほど多忙だという場合も決して少なくないと思います。
ある種怖いもの見たさ的な感覚もあるのでしょうか、そうした医療現場の状況が昨今ではマスコミでも売れるコンテンツと認識され取り上げられる機会も多くなってきていますけれども、先日こんな記事が出ていたのをご存知でしょうか。

残業続きの正月に定時きっかりに帰るママ看護師に女医が憤慨(2014年1月14日NEWSポストセブン)

 お正月でも休む暇のない病院。猫の手も借りたい状態だが、そんな病院で勃発する「医師」VS「パート看護士」の内部事情を41才の女医が明かす。

 * * *
 年末は暴飲暴食で、胃けいれんとか、大腸カタルとか胃腸の患者さんか増え、年明けは慢性疾患の患者さんがわれ先にと駆け込んでくる。風邪で耳鼻咽喉科にかかる人も多いし、アトピーの患者さんとかで皮膚科も激混みするよね。

 そんなわけで“おとそって何だっけ”ってくらい、お正月は残業続きが当たり前なのに、パートの看護師ママさん連中ときたら、涼しい顔して5時キッカリに帰っていく

 それで子供が小さいから夜勤はムリと言いながら、ママ友と飲み会に行った話をいつまでもされるとムカーッよ。

 仕事にさし障るから、出勤して来ないで、と言いたいのをグッとこらえて患者さんを診察しているツラサ。

 何かといえば「ドクターと私たちは身分が違います」なんて、ほんとよく言うわ

ま、多忙な職場で猫の手も借りたいほど忙しくしているのに同僚が暇そうにしていれば一言あってしかるべきと考える人も少なくはないでしょうが、面白いのはこの腹が立つポイントと言うのでしょうか、正直男であれば同じ不満を抱くにしてもちょっと違った感じを持つのではないかなという気がするのは自分だけでしょうか。
一般的に医師と言う職業は長年大多数が男の手によって運営されてきた、一方で看護師という職業は逆に今もってほとんどが女性であるという状況にありますが、職種の差に加えてそうした性差の故もあってか多くの男性医師は看護師と医師は別種の生き物であるという感覚を何となく抱いているのではないかと思います。
それ故に一部の女医さんなどが看護師詰め所に当たり前に座り込んで一緒にお菓子をつまみながら世間話に講じていたりするのを見ると非常に不思議な感じもするところがありますが、逆に男と比べて差異が少なくなると水平目線でこうした不満を抱きやすくなると言うことなのでしょうかね?
世間一般でも女同士の確執が一番恐ろしい、などと言う人がいるようですけれども、数ある研修医の中でも女医だけは送別会で看護師から花束一つもらえなかった、などと言う話を聞くに及んでは本当に女の恨みは恐ろしいと感じてしまうところで、事実当事者の弁によってもやはり同じ医師という肩書きがついてはいても男とはまた違った対人関係の難しさがあるようです。
先日外科系研修医である女医の安川佳美氏が医療現場の実情を描いた『東大病院研修医』なる著書を出したそうですが、著者がビジネスジャーナルのインタビューに答えて女医であることの難しさについてこんなことを言っています。

研修医が明かす、過酷な医療現場(2013年12月15日ビジネスジャーナル)より抜粋

(略)
--精神科の研修も壮絶なようですね。

安川 私はもともと精神科に進もうかな、と思っていましたが、研修を経験してみて「自分には一番向いていない」と思いましたね。病気なので仕方がないのでしょうけれど、「正論の通じない人」と日々接するのが仕事です。独特のこだわりがあって、こっちの話に聞く耳を持たない、などというのはザラですね。統合失調症を患っているある女性からは、「胃が痛いから痛み止めをくれ」と繰り返し訴えられました。でも、胃痛に対しての胃薬はちゃんと飲んでいて、それ以上は処方できないわけです。私がどんなに説明しても聞き入れてくれず、ものすごい剣幕でまくし立てる。ところが、男性の上級医が出てきて説明すると、すんなり受け入れるのです。

●難しい病院内の人間関係

--医師で、なおかつ女性であることでの不条理ですね。

安川 そうですね。現場では、患者さんだけじゃなく、看護師たちの対応も男性医師と違うなぁと感じることもありますよ。なんというか、男性医師より許容される範囲が狭いのですね。「ちょっと電話の切り方がそっけない」と指摘されたり、病棟で雑談しないでいるのも無愛想だと思われたりします。私、もともと人間関係では悩まないほうだったのに、かなり気を遣っていますよ。看護師は人数も多いので。でも、若い看護師はみんな同じような化粧で、髪型もおだんごにしていて、見分けがつかないこともあります。名前を覚えるのが大変です。
(略)

安川氏は男性医師との関わり方についてはあまり深く言及していませんけれども、外科系であれば単純に身体的精神的なタフネスさも問われるだけにとりわけそうした問題も生じやすいのはないかと想像しますが、それよりも何よりも医療の世界では未だ駆け出しである安川氏をしてここまで言わせる男女格差というものが看護師にも、そして患者にも存在しているということですね。
ここで例示されているように「電話の切り方を云々される」というのは非常に興味深い指摘で、今時どこの病院でも接遇教育というものは非常に熱心にやられていて、電話の側にも電話応対のマニュアルが掲示されているというのは珍しくないと思いますが、見ていますとたまに間違って男医が電話を受けていい加減な対応をしていても恐縮されこそすれ、「先生その応対の仕方はなってないね」なんて言われることはまずないですよね。
好意的に解釈すれば安川氏が研修医であるということでことさらに厳しく教育するという意図が看護師側にもあったのかも知れませんが、いずれにしても男医者であれば同じ厳しくするにしてももう少し別な方向で指摘が為されていただろうところを、仕事上の不手際で幾らでも突っ込みどころがあるだろう研修医に対してまずこうした部分からツッコミが入ると言うのは面白い現象だなと感じます。
逆に言えば看護師との人間関係に悩み気を遣うと言った女同士のつきあい方をしているからそうしたツッコミが入るのかも知れずで、男の研修医であれば看護師について区別すると言えば使えるか使えないかだとか、せいぜい若くて美人かどうかだとかいったあたりに興味が向くのがせいぜいで、あたら女同士の間に存在するという人間関係の面倒くさそうな領域にまでわざわざ頭を突っ込みたいとは思わないでしょう。

ともかくも医学部の女性比率が年々高まり、学校によってはまさに男女同数も達成されているという時代ですから、これからも女医比率は当面高まり続ける一方であることは間違いありませんけれども、現場の側でも今までのように「女医は実質戦力1/2人前だから」などと愚痴っているばかりではなく、どうやってこれを活用するかに頭を悩ませる必要がありそうです。
その意味で女医にも働きやすい職場環境というものは一つにはこうした周囲目線の男女格差の是正という観点からも改善が求められるでしょうし、さらに言えばいわゆる奴隷労働的な職場環境の是正という点からも「体力的に決して人並み外れて優れていない女医でも十分働ける環境」を目指すというのは重要なことでしょうが、その環境改善と言う点でこうした精神面でのプレッシャーも少なからずあるということですよね。
田舎病院にやってくる老人患者などは特に男尊女卑傾向の根強く残っている方も未だに少なくないといい、そこらの女医など看護師扱いをされてまともに相手にされないなどと言う話も聞きますけれども、確かに周囲目線で見て男であるか女であるかということは一つの判断材料であり、優先順位こそ違うとは言え誰にとっても全く無視して良いファクターというわけではないでしょう。
ただそのファクターとしての重要性の置き方が「結婚するのに相手が同性でもいいかどうか?」という人生の大決断レベルなのか、それとも「本屋でちょっと人目をはばかる本を買うのにレジ係は男と女のどちらがいいか?」といった笑い話レベルなのかということですが、女医であることが眼鏡派かコンタクト派かくらいにはどうでもいい話題になる頃には医師の職場環境もそれなりにゆとりあるものになっていそうな気はします。

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コメント

研修医が看護婦の人間関係にまで気を遣うって正直ちょっと気にしすぎ?みたいな気もします。
自分達の研修医時代は鈍感力って言うのか他人のことまで構ってられないって感じでしたけどね。
それだけ研修医もいろいろと考え込んでしまう時間が持てるようになったってことでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2014年1月14日 (火) 09時30分

>残業続きの正月に定時きっかりに帰るママ看護師に女医が憤慨

好きでやってるんだから文句を言うな、で終了かと。
*好きでやってるんじゃない?だったらただの莫迦なんだからやっぱ文句をいうなで終了ですね莫迦が搾取されるのは当然の事w

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2014年1月14日 (火) 09時53分

>お正月は残業続きが当たり前なのに、パートの看護師ママさん連中ときたら、涼しい顔して5時キッカリに帰っていく。
定時帰宅を非難する心性こそが自らの首を絞めているんだけどね。

てか、この記事は例によって記者の脳内再現ドラマでしょ。
休日なのに通常勤務があったうえに残業しているように誤解させる意図がありませんかね。
入院中の容態のわるい受け持ち患者がいて連日休日出勤したとしても、普通は半日も働けば十分ですわな。
(休日なのだから1分1秒働いたって残業には違いないけれど)
看護師が5時に帰宅したのが分かるってことは、その女医さんその日は午後から病院に来たんだなと、私なんかは思うだけですが。

仮に記事が正しい事実を伝えていたとしても、
看護師が定時帰宅できるような病院で残業続きってのは、
自分の無能を曝す行為だと思います。

投稿: JSJ | 2014年1月14日 (火) 10時10分

無能の妬みほど情けないものはない罠ww

投稿: aaa | 2014年1月14日 (火) 10時31分

ま、それを言っちゃあ(rというところではあるんですが、男医であればこういう場合ついつい「医療崩壊という現象とは」なんて大上段に語ってしまいそうではあります。
その意味でこういう場でこういう語り方をしてしまう(できてしまう)というのもまた男女間の差異と言うものではあるのかなと、その点は興味深く拝見しましたね。

投稿: 管理人nobu | 2014年1月14日 (火) 12時46分

安川先生、トップ女子校の桜蔭から東大理3現役合格でストレート卒業の秀才女子。
東大合格体験記も出版されて、結構、売れたでしょう。
東大医卒の女医さんて、医者のなかでもエリートだから、どうなん?って感じで関心あります。
うちの病院は高偏差値国立医卒2名、駅弁国立医4名、あとはボンクラ3流未満私立医卒30名以上っていう医者の構成だから、ボンクラ私立医大卒医師の生態はよくわかる。
ちなみに病院のトップと跡取り息子は5流私立卒。

投稿: physician | 2014年1月14日 (火) 14時09分

気になるんですが、学歴と医師の能力って比例するものなんですか?
やっぱり一流大卒の先生が優秀?

投稿: てんてん | 2014年1月14日 (火) 14時37分

>管理人さん
登場した女医さんの気分は実感がわかないので想像するだけですが、
こうやって女医は”悪い意味で”鍛えられていくんだろうな、という話ではありました。
まあでも真っすぐにスクスクと成長した女医もいますからね。

>学歴と医師の能力って比例するものなんですか?
どこにでも例外はいるもので、個人の経験では何とも言えないのではないかと。
わたしはどちらの例も知り合いにいます。
それに知能の問題というよりも対人スキルの問題のほうが大きいような気がします。

投稿: JSJ | 2014年1月14日 (火) 16時14分

日本語難しいです。
上記コメントは
「登場した女医さん達の気分は実感がわかないので想像するだけですが、
私から見て”悪い意味で”鍛えられた女医というのは こういうふうに成長してきたんだろうな、という話ではありました」
と修正いたします。

投稿: JSJ | 2014年1月14日 (火) 16時28分

>やっぱり一流大卒の先生が優秀?

偏差値というのは主に記憶力に依存するようなので、判断がいいとかいった医師適正とはまた別物でしょうな
ただ偏差値50の医学部卒と70の医学部卒ではやはり後者の方が教えたことに対する覚えはいい印象がありますが
ちなみに東大医学部くらいになると時に常人と通じ合わないほど頭が良すぎて臨床向きでない先生が多くなるという説もw

投稿: 元僻地勤務医 | 2014年1月14日 (火) 17時42分

学力と医師の適性はまた別ということでしょうか。
たしかに頭はよさそうだけど苦手な先生っていますよね。

投稿: てんてん | 2014年1月14日 (火) 18時45分

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