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2013年12月27日 (金)

「女医が増えたのに現場はますます大変」?

タイトルに偽りありと言うのでしょうか、先日見ていてちょっと「?」な記事が出ていました。

女医は「5人に1人」に増えたのに現場は人手不足の大混乱(2013年12月20日日刊ゲンダイ)

 医師全体に占める女医の比率が19.7%と、過去最高になったことが厚労省調査でわかった。昨年末で登録医師は全国に30万3268人。うち女性は過去最高の5万9641人で、5人に1人が女医になっている。

 女医は人当たりもいいし、婦人科系の女性患者にとっては、同性という安心感もあるが、その一方で女医が増え過ぎたことによる弊害も囁かれている。そのひとつが、医師の人手不足だ。医学博士の米山公啓氏がこう言う。

「日本医師会も問題点を指摘していますが、女性医師には出産と子育てという時期が来ます。その際、産休中の女医の穴埋めで、ただでさえ医師不足の現場が大混乱しているという話を聞きます」

 5人に1人が女医と言ったが、出産適齢期の若い世代ほど比率は高い。日本医師会によると、70~79歳で女医は8%だが、30~39歳は29%、29歳以下に限れば36%に跳ね上がる

 さらに大学医学部の女子比率は、東京女子医大の100%は別にし、佐賀大49%、兵庫医大43%、聖マリアンナ医大41%など4割を超す大学がゾロゾロ。あの防衛医大ですら38%だ。

■眼科と皮膚科に偏る傾向も

 また、女医は眼科(約10%)と皮膚科(約7%)に偏る傾向があり、肝心の産婦人科も約5%と、男性医師と比率はさほど変わらない。

救急救命や夜勤などハードな職場は体力が持ちません。必然的に眼科になりました」(都内の女性医師)

 実際、医師数は過去最高なのに、外科は2年前の前回調査に比べて753人減、小児科も489人減っている。

 さらに都市部への一極集中の問題もある。東京都や神奈川県の女医比率は20%を超えているが、逆に青森県や北海道は13%ほど。地元の医学部を出たのに、就職は東京が圧倒的に多いのだ。

「女医が増えたことは喜ばしいが、産休中の医師不足も考慮した定員増が必用です」(米山氏)

 女性登用は安倍内閣の成長戦略の要だが、単純に喜んでばかりではいけないようだ。

確かにマイナーに偏っている、テレビや雑誌で見かける女医は美容形成ばかりじゃないか、というのはまた別なバイアスがかかっているせいだとしても、全体の文脈を見るとそもそも「女医が増えたのに」というタイトル自体がおかしいというもので、記事の内容が本当なら「女医が増えたから」と書くべきでしょうに、何かそう書けなかった事情でもあるのかと思わず深読みしてしまいます。
そう言えばとにかく医師を増やせ、どんどん増やせと連呼している某先生はあれだけ医師不足で現場は大変だと叫んでいるのに女医問題には言及していた記憶がないなと思って少し調べてみましたら、やはり直接的な言及というのは見つからず、むしろ文科省の医学部入学定員に関する検討会に参加された際も目の前で女医増加についての問題提起が出ているのに華麗にスルーを決め込んでいらっしゃるようですよね。
このあたりは先生個人のポリシーの問題なのか、それともマスコミ慣れした方々に共通する作法のようなものがあるのかとこれまた勘ぐってしまいたくなりますけれども、昨今どこの業界でもこうした問題はなかなかに微妙なものがありますから、取り上げ方に注意を要するということなのでしょうか。

ともあれ医師の養成数というものが医学部定員という形で上限が決まっている以上、ハードワーカーの方が使う側にとっては使い勝手が良いのでしょうが、そもそも基本的に労基法無視のオーバーワークが問題になる職場で「知力体力ともに並外れた人間にしか来ないでくれ」と現状維持的に動くするよりも、むしろ女医も含めてごく普通の体力しか持たない人間にもやれる職場環境を目指した方が建設的かなと言う気がします。
また医師同様に激務が問題になりがちな看護師などもあれだけ力仕事も多いにも関わらず男性看護師が未だに少数派として肩身の狭い思いをしているという点を考えると、結局女性は男より体力がないからだとか餐休で職場を離れるからと言うよりも、医師の職場環境が根本的に男向け(それもかなりマッチョな体育会ノリの)になっていると言う理由の方が大きいんじゃないかと思いますね。
ともかく多忙な現場では女医だろうが老医だろうがいないよりはいた方が断然良いのは確かで、むしろ問題になるのは各人の労働量に差があるのに報酬にそれが反映されないという点ではないかと感じますが、もともと医師給与は年俸制に近く常勤の残業当直に対する報酬など雀の涙と言う病院が多い以上、毎週の居残り当直をこなしている医師から見て残業当直完全拒否の人間が同じ給料をもらっているとなればそれは面白くないですよね。
ただ逆に給料は少なくてもいいから絶対残業当直はしたくないという人もいるわけで、そうした人に無理強いをして休職に追いやるよりは出来る仕事をしてもらった方がいいのは当然ですから、この辺りはどちらが正しい、正義だという問題ではなく、全ての医師が奴隷労働を当たり前にこなすべきいう画一的考え方しか許容してこなかった医師業界側の問題とも言えそうです。
この辺りは以前から交替勤務制を導入している看護業界の方が考え方が進んでいるようで、先日はこんな記事が出ていました。

藤田保健衛生大病院が優秀賞 ワーク・ライフ・バランス大賞(2013年12月25日中日新聞)

 仕事と生活の調和の推進に積極的に取り組む企業や団体を公益財団法人日本生産性本部が顕彰する「第七回ワーク・ライフ・バランス大賞」で、豊明市沓掛町の藤田保健衛生大病院看護部が優秀賞に選ばれた。子育て中の母親も独身者も、それぞれが働きやすいよう配慮していることなどが評価された。

 同病院では、子どものいる看護師の夜勤を免除したり、保育園に送っていけるように朝の出勤時間を通常より遅らせるのを認めたりするなど、子育てに配慮した職場環境づくりに努めている。

 脳外科病棟の看護主任桜木千恵子さん(36)は小学六年生の娘がいるシングルマザー。夜勤除外で勤務を続けてきて、「当初は辞めなきゃいけないかも、とも思っていた。ここまでやってこれたのは、ここが働きやすかったから」と感謝する。

 一方で、夜勤免除者のしわ寄せで独身者の負担が大きくならないように昨年九月から、一カ月間は夜勤だけをする「夜勤専従制度」を導入した。勤務日は月の半分ほどになる。この制度を選べば、連続しての休暇を取りやすい

 独身で脳神経外科病棟に勤務する鷺坂美岐さん(32)は、制度をよく利用する。「夜働くことが苦痛ではないし、これまでと違う働き方を試してみてもいいかなと思った。休みの日数が増えるのも魅力的です」と話す。

 制度の利用は一カ月単位で選べるので、そのときの都合に合わせて利用できる。夜勤をめぐり、子育て中の母親と独身者の双方にメリットがあり、互いに支え合う形だ。

 とはいえ、子どもの病気などで急に早退するなど、子育て中の母親は独身者に負い目を感じる場面もある。しかし、看護長山崎富善さん(42)は管理職として「独身の人には、職場の対応を示すことで将来、安心して働ける場所と思ってもらえると思う」と話す。

 現在千二百五十三人の看護師が勤務するが、看護部の平均勤続年数は二〇〇七年の五・三年から一三年は七・四年に伸びた。真野恵子看護部長は「性別や結婚、子育てをしているかに関係なく働きやすい場所であることが大切」と話し、今後も職場環境の改善を図っていく。

看護師なども夜勤は出来ないだとか、週に何日かは働けないだとか色々と個人の事情があるでしょうが、「うちは残業も当直もバリバリこなせる人しかいらない」などと言う(言える)病院はよほどに少ないでしょうし、ましてや「フルタイムで働けない人材が少ないのは看護学生の男女比率に問題があって」などと言う人はまずいないんじゃないでしょうか。
女性の社会進出と並ぶ近年の労働関連のキーワードとして多様な働き方という言葉がありますが、考えてみると連日深夜まで過酷な労働をこなし週一回の当直をノルマとする働き方しか認めてこなかった医師業界などは多様な働き方の対極にある何とも不自由な業界であったと言えるし、早い話がその画一的な価値観に従える人材の供給が男女を問わず減ってきているということでしょう。
それは若年世代がゆとりだ、草食だと言われるようになった世相の変化とも関連があるのかも知れませんけれども、古来伝統の価値観を共有出来る人材が減ってきているからとにかく人材供給をとことん増やして下手な鉄砲数撃ちゃ当たる式で使える人材を拾い上げるよりは、変化した価値観に合わせて業界の伝統を変えていった方が効率的かつ安上がりではないでしょうか。
もちろん伝統文化と言われるもののように古いやり方を踏襲すること自体に意義があるといった場合もないではないでしょうけれども、果たして当事者である医師自身が「24時間365日奴隷のように働き続けられなければ医者ではない」などという価値観を未来永劫続けていくべき重要な伝統だと感じているかと言えば、これははなはだ疑問ですよね。

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コメント

私はむしろ、女医が増えてくれたからこそ、人が人らしく働けない業界に楔を打ってくれた、と思います。結局は、医者の仕事で、遺棄される部門は肉体労働ばかりのところ、そこに人が集まらないのは、男女関係がなく、女なら、なおさらです。介護ヘルパーを賃上げして年収800万にしたら、すぐ人が集まります。外科系含めたワースト科目を最低2000万にすれば、まずは、男衆から来るか?それでも開業医のほうが、おいしそうですね(苦笑)

投稿: striker | 2013年12月27日 (金) 08時03分

>>女医が増えたのに現場はますます大変

出産、子育てがありますからどうしても男性より「生産性」が低くなるのは仕方ないかと。

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年12月27日 (金) 09時05分

当直はみんな嫌なんだからもっと金出してほしいですね。
バイトで行ったときの給料と差がありすぎです。

投稿: ぽん太 | 2013年12月27日 (金) 09時20分

きのう金融の人と飲んで「医者の世界ってね、仕事が厳しい病院は安月給で仕事が楽な病院ほど給料いいんですよ」っていったら「非常識ですね」っていわれた
「最近社会人入学の人が多いんだけど、その人たちはみんな仕事が楽で給料いいとこばっかり行っちゃうからみんな社会人組は使えないって言ってるよ」っていったら「そりゃあたりまえですねw」ってわらわれた
医者の常識は世間の非常識

投稿: たまごっち | 2013年12月27日 (金) 10時17分

「女医が増えたから」と書くべきでしょうに、何かそう書けなかった事情

図星でしょう。あとは察してくれ、かな。
人口の半分は女性なのですし、
ストライカー先生のおっしゃるように
>増えてくれたからこそ、人が人らしく働けない業界に楔を打ってくれた と思いますよ。

投稿: 感情的な医者 | 2013年12月27日 (金) 10時19分

>>医師の職場環境が根本的に男向け

 看護師とか極一部の女性がメーンの職場を除けば、日本の職場のすべてがそうなってるかと。

投稿: む | 2013年12月27日 (金) 10時39分

医者不足だ医者不足だと大騒ぎしているのですからこの際医者の仕事が楽になるように動けばいいのに、どんどん医者を増やしてまで仕事をなお抱え込もうとするのはおかしいんじゃないか?と思います。
9時5時でしか働けない医者が増えたなら9時5時で終われるように業務を改めていけばいいのに、最初から残業前提にスケジュールを組み立てるから急患が一人入っただけで寝る間もないまま奴隷労働と言うことになるのです。
パイロットやトラック運転手などは法的規制もあるそうですが、イレギュラーな業務が発生する可能性が高い職種なんですから最初から体力の限界まで働かせているのは危険極まりないですよ。

投稿: 管理人nobu | 2013年12月27日 (金) 10時40分

田舎勤務はのんびりと女医さん向きだと思いますが住民感情的に女医や若手は嫌がられやすいのは否めないですな
僻地診療所が高齢男性医ばかり雇用しているのも住民受けがいいからということもあるのかもしれず

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年12月27日 (金) 15時41分

病院勤務医は全員外来/入院/当直/時間外休日診療何でもやれというから女医は結局病院やめるしかない。
病院でもパートタイムで日中の外来と救急だけ月曜から土曜まで毎日半日やってもらえばいいのではないか?
一方男性医師は入院/時間外休日をメインにして日勤の外来と救急業務は大幅に免除(時には休み与える)
出産/子育てと無関係の体力・気力に自信のある女医は男医と同じでよし。老医師は女医と同じでよし。
もちろん給与体系はそれぞれ別で。
変に男女平等にしようとするから結局有効な人材活用ができないだけでしょ。
どんな分野の仕事も適材適所の人事配置があるはず。
女医が増えたから人材不足というのはあまりに短絡的すぎで応用力がなさすぎで恥ずかしい戯言。

投稿: 逃散前科者 | 2013年12月27日 (金) 15時45分

おはようございます.

>逃散前科者様

私は公立病院勤務ですのでわかりませんが,現在よりも人件費が増えませんか?
私立病院にそんなに人件費予算の余裕ってあるのかしら?
たとえ休日が増えるにしても,現在の給与を引き下げることに同意する常勤医ってどれほどいるのかしら?
診療報酬増額に賛成する国民ってどれほどいるのかしら?

投稿: 北の医師 | 2013年12月28日 (土) 08時30分

はっきりいって爺医が取り杉w

投稿: aaa | 2013年12月28日 (土) 08時43分

北の医師さまへ
公立病院の場合、人件費よりも昔々に決めた「定員」をかたくなに守ろうとする問題があります。
夜勤の出来ない医師がいても、その分医師を多めに雇うといった柔軟な対応がとれません。結果、他の医師の負担が増えてしまって問題が大きくなります。
さらに言えば、公務員に与えられている福利厚生を、医師に対して利用するなとは「心の中では思っていても」口が裂けても言えないため、最近はフル活用する医師が少しずつ増えていてそれも問題を大きくしています。

投稿: クマ | 2013年12月28日 (土) 09時12分

待遇改善一つも議会の承認を得ないといけないからね
公立病院のお産費用が不当にダンピングされてるのと同じ理由です

投稿: green | 2013年12月28日 (土) 12時19分

>北の医師さま
15年前に勤務した民間病院では上記に近いスタイルで女医を雇っていましたが、公立はまず無理でしょう。
仰るように雇用医師数が増えると人件費がかさみますから医師数は増やしません。
夜勤や当直をさせない代わりに月曜から土曜日まで毎日救急と外来を4時間程度やってもらえばどうかと。
病院の働かない爺医は高給取りが多いのでやはり極力リストラしたほうがいいでしょうね。例外的に働く爺医は残していいと思います。最近は爺医の新規開業が多いみたいで驚かされますが。
医師を病院で定員以上に雇えない以上、開業医ばかりが増えるだけです。
極論をいえば金の回せない自治体病院は全部売却して民間に買収してもらったほうがいいと思います。

投稿: 逃散前科者 | 2013年12月28日 (土) 15時40分

この問題含めての、医師のみなし公務員制廃止の決定でしょうね。

やはり、待遇に差をつける他はありません。
時短常勤も本質的にはいい制度ですね。

投稿: おちゃ | 2013年12月29日 (日) 18時02分

こんばんは

>病院の働かない爺医は高給取りが多いのでやはり極力リストラしたほうがいいでしょうね。
15年後がどうなっているか,大変に興味深いですね.誰だって爺医,婆医になりますのでね.
医師は増えるが雇用医師数は増えない.人口は減少に転じる.
国の経済状況も今とはおおきく変化しましょうしね.

投稿: 北の医師 | 2013年12月29日 (日) 21時59分

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