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2013年12月12日 (木)

超高齢化社会で高齢者の身体的負担が増加?

先日は医療・介護に年金なども含めた2011年度の社会保障給付費の総額が過去最高の107億円に達したという報道があって、そのうち医療が3.5%増の34兆円、介護が5.1%増の7.9兆円といずれも高い伸びを示していたと言うことから、またぞろ増え続ける医療・介護コストをどう抑制するかという議論に結びつくニュースなのは当然に予想されるところですよね。
ただし高い伸びだと言う点から言えば震災の影響もあったとは言え生活保護費の35.8%増を始め唯一減額となった失業関連以外の多くの分野が順調に?伸びていて、やはり久しく以前から言われているように社会保障体制全般の抜本的な改革が急がれる時期であると結論付けるのが妥当なのかなという気もします。
それはともかく、団塊世代の高齢化によって今後急増が予想されるのが高齢者関連の支出ですが、ちょうど二年ほど前から国と関連諸学会が両輪となって終末期医療のあり方と言うものを大きく転換しようとしている、特に高齢者を念頭に人工栄養などの中止もありだと言う方針を打ち出してきたのは、当然ながら来るべき時代を見越して国民の意識改革を進めていく意図があるのだと思います。
そんな国中に漂う危機感の中で医療のみならず介護も一体となった改革が必要なのは言うまでもないことですが、本日まずはこちらの記事から紹介してみましょう。

”介護ショック”が日本に襲いかかる どうするおカネと住まい(2013年12月9日東洋経済)

「2025年問題」。いずれ来るこの事態が日本を揺るがそうとしている。団塊の世代といわれる1947~49年生まれ、今65歳前後の世代が約10年後、大挙して75歳を迎えるという一大事だ。
実際にどれくらい増えるのか。12年における後期高齢者(75歳以上)は1511万人。これが25年には2179万人まで膨らむ。全人口に占める比率も18%と、5人に1人近くまで上昇する見通しという。
(略)
想像を超える高齢化のスピードを受け、「高齢者の介護を社会全体で支え合う」介護保険制度は、今や制度疲労を起こしつつある。
高齢者の絶対数が増えれば、介護サービスの給付(費用)も増える。介護保険の総費用は、制度の始まった00年度の3.6兆円から、13年度に9.4兆円へと増加。25年には約20兆円まで達する見込みだ。
介護サービスの9割は介護保険で、残り1割は利用者負担で賄っている。保険の財源は税金と保険料が半々。膨らむ一方の給付に対し、負担にも手をつけざるをえない。介護保険料は、00~02年度の1人当たり2911円から、12~14年度には4972円まで値上げされた。

介護保険の疲労は限界 求められる最期の住まい

さらに政府は今回、3度目の介護保険法改正で、抜本改革に着手。15年4月から、一定以上の所得がある高齢者を対象に、利用者負担を1割から2割に引き上げる方針だ。要支援者への介護予防サービスは市区町村に移す。「狙いは効率化と重点化。質が低下することはない」(厚生労働省幹部)というが、高齢者が利用を控えるなど、今後の懸念材料を指摘する声もある。
効率化と同時に政府が描くのは、住み慣れた地域で最期まで過ごす“地域包括ケア”だ。自宅に代わる新たな介護の住まいとして、近年注目されているのが、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)である。
サ高住が登場したのは11年10月。待機者が列を成す特別養護老人ホーム(特養)や、高額な入居一時金のかかる介護付き有料老人ホームと違い、安さと自由が売り。一時金なし、介護は外注で、月額費用が10万円を切る物件もある。1戸当たり最大100万円の補助金など国の政策誘導も奏効。今年10月までに13万戸を突破した。

従来の有老ホームも、一時金方式を月払い方式に変更したりと低価格化が進行、サ高住と区別しづらくなってきた。それでもターミナルケア(看取り)への注力などで、増える高齢者を取り込もうとしている。
「米国では健康時から介護時まで同じ敷地でケアを受けられるシニアコミュニティが2000カ所ある。日本でも高齢者への“施し”でなく、住民主導のモデルが必要」(松田智生・三菱総合研究所主席研究員)。
(略)

もちろん増え続けるコスト面の負担をどうするかという点もさることながら、すでに3kだ4kだと言われ「仕事がなくてもそこにだけは就職したくない」と言われるほどの不人気ぶりが完全に定着した介護業界において、それだけの介護を行うのに必要なマンパワーが確保出来るのかという点からも根本的な方法論の転換が必要となりそうですよね。
何の業務であっても民業である限り永続的にきちんとサービス提供が出来ることを担保するためには、まずはそれをやることできちんと商売になり仕事が回せスタッフも働いただけ相応に報いられるという体制が組めるかどうかですけれども、ご存知のように今の介護業界は多くの人々から忌避される仕事に対して報酬は全業種最底辺クラスと言いますからドロップアウトが多いのも当然です。
先の記事にもあるような財政上の難関もあって介護報酬が今後劇的に増えるとは思えない以上、離職者を減らすためには業務自体をもっと簡略化していくしかないのか?とも思われるところですけれども、そんな中でスタッフ確保の観点から先日興味深い記事が出ていたことを紹介してみましょう。

「まだ働きたい!」60歳以上の応募が増加 定年制廃止の介護大手(2013年12月10日産経新聞)

 60歳定年制の廃止を決めた介護サービス大手のケア21(大阪市)は10日、正社員とパートの求人に対し、60歳以上の応募が18件あったことを明らかにした。

 依田平社長が10日の決算会見で話した。他の会社で定年退職を迎えた人の応募があった。これまで60歳以上の応募はほとんどなかった。依田社長は「介護を第二の人生の生きがいにしたいという思いがあるのだろう」と指摘。「(サービスを受ける顧客と)年齢が近いため、意思疎通が取りやすい」と期待を込めた。

 ケア21は60歳定年制を平成26年4月から廃止し、希望すれば何歳でも働けるようにする。定年制廃止を見越し、採用は既に60歳以上も対象としていた。

 同時に発表した25年10月期連結決算は、最終利益が前期比24・4%増の2億円で、連結決算の開示を始めた19年10月期以降で最高だった。

年金支給開始の引き上げなどもあって高齢者の就労問題というのも近年大きく取り上げられるようになっていて、一つには雇用期間の延長が若年者の仕事を奪うことになるんじゃないかと言う懸念があり、また一方ではそもそも働きたいと思っても高齢者を雇うような職場があるのかという不安もあったわけですね。
しかしそもそも介護業界というところは慢性的な人材不足で若年者が来たがらないのですから競合することもないでしょうし、低賃金で将来展望も暗いとは言っても高齢者であれば退職金と近い将来の年金支給でそこまで好待遇でなくても働いてくれるという期待感があり、また何より記事にもあるように「決して他人事ではない」という感覚的距離感の近さが介護に対する抵抗感を薄めてくれるという可能性があります。
そもそも高齢者対策の一環として高齢者の生き甲斐ということが盛んに叫ばれ、シルバー人材センターなどに見られるように働ける高齢者はどんどん働かせた方が本人にとっても社会にとってもいいことなんだという考えはもともとあるわけですから、高齢者雇用先としての介護業界というものはもっと注目されてもいいように思いますね。

時代を遡ると二昔ほど前から老老介護と言うものが社会問題化していたと記憶していますが、三世代以上が同居するのが当たり前だった時代には若い者は外に働きに出ていき、介護と子守は年寄りの仕事という認識が当たり前だったわけで、家族内の誰もが自分に出来る仕事を分担してすることであんがいうまいこと回っていたのだと思います。
他に頼るべきものがない老人世帯が互い以外に頼る者がないというと悲惨な状況ですけれども、それなりに社会貢献する能力と意思がある高齢者が自ら社会の穴を埋めてくれるというのであれば非常にありがたいことでもあるし、高齢者に力仕事である介護が出来るか?と言う疑問にはようやく現場に導入が始まったパワードスーツの導入を促進させる政策誘導で対処出来る可能性がありますね。
何より期待される副産物として重要なのは日本人全般が病院で死ぬようになったことで死ということから間遠になり、どのような生き方、逝き方が望ましいのかということが実体験として具体的に見えなくなってきた時代にあって、最もそこに近い位置に立つ高齢者世代が自らそれを身近なものとして体験することが改めて死生観を問い直すことにつながるんじゃないかと言うことです。
しばしば高齢者医療の現場で言われるように「いつも身近で世話をしていた同居の親族が延命治療を拒否しているのに、顔も出したことがない遠い親戚が濃厚治療を希望する」と言う対処に困る現象がありますけれども、当事者が経験値を蓄積していくことでそうした行き違いを減らせると言うのであれば高齢者に限らずいっそ「一億総介護体験」もありかも知れませんね。

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コメント

いっそ自宅の畳の上で死んだら相続税優遇するなりの措置を講じてはどうだろう?
とりあえず救急車で病院に運び込んでくる家族がずいぶんと減るかも?

投稿: | 2013年12月12日 (木) 08時40分

ここまでやるのだから国もすなおに「お年寄りにかけられるお金はない」と言えばいいのに…
何かと言えば「質が低下することはない」ってやることがまるっきり変わるんだから同じサービスになるはずがないですよ。
国は現場の自主的努力に依存してないでちゃんと説明責任を果たしていただきたい。

投稿: ぽん太 | 2013年12月12日 (木) 09時39分

年齢と共に公的給付を削減(ただし食料だけは現物支給可)すればいいだけの話w

投稿: aaa | 2013年12月12日 (木) 10時26分

完全なねたきりの認知症高齢者に対する延命のための胃瘻や在宅IVHは最初から導入しない方向でコンセンサスを得ていくしかないでしょう。やりはじめてからの中止は難しいですし。
どうしてもやりたいなら保険適応外でお願いしたいです。
昔だったら老衰で天寿を全うしたとして畳の上で死んでいたような人が目的も不明瞭に延々と生き続ける場合がありますよね。。。
まあ100歳を目指すとおっしゃるご家族もいるのですがご本人はもう何がなんやらわからない状況でしょう。

投稿: 一般外科 | 2013年12月12日 (木) 11時06分

年齢や状態による差を無視して「患者は全て平等、命の価値に差はない」と言ってしまうとどんな末期症例にも若年者並みの濃厚医療をと言うことになってしまいます。
その意味ではまずは患者は皆平等ではないという逆説的認識を皆が持つことも必要なのかと思いますし、高齢者医療制度のように年齢別にシステムを変えるというのも方法論としてありだと思いますけれどもね。
ともかくも最近珍しく国が高齢者向け制度変更に積極的になってきている印象は受けています。

投稿: 管理人nobu | 2013年12月12日 (木) 11時08分

日本は「空気」で動くから、国としては堂々と「高齢者には金回せない」と言うより、増税ラッシュで貧乏国家を実感した社会の方が「高齢者に濃厚医療や福祉を望むのは非国民」という「空気」になってくれたら楽ですね。今後は少なくとも高齢者がもらう年金・年収<医療・介護の自己負担になるんでしょう。

投稿: | 2013年12月12日 (木) 12時26分

もう真っ当な勤労国民は海外移住したらいいと思う。

その為にTPPで各種制度の互換性や専門資格の相互認証は不可欠と思う。もちろん、それを実行できるための英語・中国語などの語学教育も必須。

ゴロツキ弱者様のために税と保険料を毟り取られ、既得権者からは経済活動を邪魔され、貧乏人には妬まれ、政府には増税され…

投稿: 記者 | 2013年12月12日 (木) 13時03分

まだいたのかよw

投稿: | 2013年12月12日 (木) 15時06分

元気でまだまだ働きたい高齢者、特に定年後の男性がたくさんいるのも事実だし、むしろ高齢者中心に介護施設での仕事をしてもらったほうがいいと思います。要介護者のほうとも世代が近く話も合うので。
体力に自身のある人は肉体労働、頭脳に自信のある人は管理職・事務職でいいんじゃないかと。
むしろ高齢者スタッフ中心でやったほうが離職率も低くなるのではないでしょうか?
ヘタに若い女性とかだと男性の要介護者セクハラとかパワハラの標的になるだけですからね。
精神科の病院に行くと半永久的入院の統合失調症の高齢者が経管栄養されている方がたくさんいました。
誰のための経管栄養なのでしょうか?欧米の方が見ると失笑するしかないでしょうね。
経管栄養に関しては本人の強い意志がない場合は原則中止、家族が希望する場合はすべて医療費を保険外自己負担にしたらどうでしょうか。

投稿: 逃散前科者 | 2013年12月13日 (金) 11時22分

精神科から身寄りのない患者の胃瘻依頼が来たとき、ついてきた役所の人間?が「我々は同意書などに署名は出来ないことになってる」とかゴネやがったからそのまま送り返してやったw

投稿: | 2013年12月13日 (金) 11時55分

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