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2013年12月 4日 (水)

不妊治療推進は「おめでたい話」なのか?

一説によると最近芸能界もなかなかの出産ブームであるとも言い、著名人の出産が続く都一般人にも同種の機運が波及するという話もありますからおめでたい話ではあるのですが、見ていますと中にはこんな記事も出ているようなのですね。

49歳のエド・はるみ、番組企画降板の理由を説明「子どもを作るということに、来年からは集中したいと思います」(2013年12月2日livedoorニュース)

11月29日放送のTBS系バラエティ番組「中居正広の金曜日のスマたちへ」(以下「金スマ」)で、お笑い芸人のエドはるみが、不妊治療のため番組企画を降板することを明かした。

エドは舞台女優として活動した後、コンピューターインストラクター、マナー講師などを経て、吉本興業の養成学校であるNSC東京に11期生最年長として入学した異色の芸人。NSC卒業後、バラエティ番組「エンタの神様」(日本テレビ系)「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)などに出演して人気となり、2008年には親指を突き立てて「グ~!」と奇声をあげるギャグが新語・流行語大賞を受賞。私生活では、2010年に一般男性と再婚している。

「金スマ」の「社交ダンス企画」に参加していたエドは、11月22日の放送で「第21回全国ダンススポーツ大会」に出場、激しく踊る姿が映されていた。しかし、結果は5位と好成績だったにも関わらず、エドはスタジオに現れず。代わりにと中居が読み上げたエドからの手紙には、「突然ですが、実は私、事情がありまして、年内いっぱいでダンスを踊れなくなってしまいます。今はまだ詳しいことをお話できないのが本当に心苦しいです。ごめんなさい」というメッセージがつづられていた。

翌週、11月29日の放送にVTRで登場したエドは「先日(22日)のスタジオには、仕事のスケジュールで伺えず、申し訳ありませんでした」とスタジオ出演できなかったことを謝罪。その後「実は私は、今年で49歳になるんですが、子どもをつくるというもうひとつの夢があります」「社交ダンスを始める前から続けていました『子どもを作る』ということに、来年からは集中したいと考えています」と語り、企画を降板するのは不妊治療のためだと報告した。

また同日にエドはブログを更新し、番組中の発言を補足している。「私の気持ち☆」と題したエントリーには、「ダンスをお休みさせていただく理由は、私が個人的に2年前からずっと続けていた『不妊治療』を再開するためです」と投稿されており、治療がかなり前から始まっていたことを告白。

さらに「この年齢で、子供が欲しいというのは色々なご意見もあるかと思います。皆様のお考えも、当然分かります」と高齢での妊娠・出産の難しさにも言及した。しかし治療については「でも、最近の不妊治療は目を見張る高度な医学の進歩で、その可能性がゼロではなくなりました」「私自身もこの2年間、主治医の先生と何度も御相談し、検査を重ねた上でまだ妊娠の可能性がわずかでもあるということだったので、そこに懸けてみようと思いました」と、前向きな姿勢を見せている。

エドはブログの最後を「これは引退や休業をするということではありません。激しい運動をしないだけです!」「どうかこれからもよろしくお願いいたします!!!!!」と締めくくっており、今回の降板はあくまで社交ダンスの企画のみとなるようだ。

もちろん世間では「色々なご意見」もあるどころではない状況なんですが、最近では卵巣機能の若返りだとか不妊治療の方も様々に進歩しているのは確かで、言葉は悪いですがこうした資金などに余力のある方々が進んで医学的進歩に貢献してくださるのだと言う考え方も出来るかなと言う気もします。
しばしば高齢出産で問題になるのが妊娠・出産自体の困難さという医学的側面とともに、子供が成長する頃には親はもう仕事もやめて扶養が出来ないんじゃないかという社会的側面も取り沙汰されるところですが、これまたこうした自営業的立場でそれなりに収入もおありになるでしょうから、いわゆる庶民的なサラリーマン家庭がそれを行う場合よりは子供さんも恵まれていると言ってよさそうですよね。
ともかくも若くピチピチの頃に産んだ方が絶対にいいというのはもちろん議論の余地はないのですが、初婚年齢が30歳に達する時代にあって理想論ばかり語っていても社会問題が解決するものでもないので、少なくないお金と貴重な時間も使ってでも自助努力で何とかしてくださる方々はむしろ国にとってもありがたいんじゃないか?と言う気がしないでもありません。
ただやはり大多数の一般国民にとってはそこまでのお金は到底かけられないのも確かで、そうなるといずれ日本では子供を産む権利は金持ちの特権化するんじゃないか?というSFじみた懸念すらないわけではありませんけれども、世を挙げて少子化対策だと長年言っている手前不妊医療に対しても全て個人任せと言うわけにもいかずで、先日はこんなNPOによる支援の記事が出ていました。

卵子凍結:不妊の可能性のある患者対象に費用助成(2013年11月30日毎日新聞)

 NPO法人「全国骨髄バンク推進連絡協議会」は、白血病などの治療で不妊になる可能性のある女性患者を対象に、卵子の凍結やその卵子を使った体外受精の費用の一部を助成する「こうのとりマリーン基金」を設立した。

 白血病などで造血幹細胞移植を受ける患者は、移植前の放射線照射により卵巣の機能が損なわれる可能性が高い。移植前に卵子を採取して凍結保存できれば、治療後、体外受精による出産の可能性が残せるが、過去には遠方の医療施設に通うなど費用が100万円を超えたケースもあったという。

 同基金は、趣旨に賛同した「東京マリーンロータリークラブ」からの寄付金1000万円を原資に運営。造血幹細胞移植や抗がん剤治療を開始予定の患者や、凍結卵子を使った体外受精を望む元患者に対し、所得など一定の条件を満たす場合に最大30万円を助成する。過去にさかのぼっての助成も可能という。

 自身も白血病の治療で不妊になった同協議会の大谷貴子顧問は「多くの女性に同じ思いをさせたくないと準備してきた。患者さんに明るい希望を持ってほしい」と話す。問い合わせは同基金(03・6693・2840)。【須田桃子】

化学療法などによる不妊の場合は生殖細胞はやられてしまうとは言え、年若い方であれば母体そのものはまだまだ元気なのですから卵子の手当てだけで十分妊娠が期待出来るし、不妊となることに躊躇して病気の治療そのものに二の足を踏んでいるような方々にとってはきちんと治療を受けてからでも妊娠出来るというのは福音ですよね。
逆にこうしたシステムが出来て来ますと臨床医にとっても「不妊の可能性が高まる治療を行う前にはまずこうした制度について十分に情報提供すべき」と言う流れになってくるかと思いますが、ある意味私費で行っている範疇であれば制度の趣旨に賛同するかどうかで話が済むことで、では不妊治療に関してどこまで公費支援をすべきかと言うことがこのところ盛んに議論になっているのは周知の通りです。
国や自治体も体外受精や顕微授精などに対してそれなりに補助制度を設けていて、これはこれでもちろんありがたい話ではあるのですけれども、今後議論していかなければならないこととして公的な補助をどこまで行うのが妥当なのかということで、これも一つには費用対効果の側面、そしてもう一つは社会的意義という側面から考えるべきかと思いますね。

費用対効果と言えば先頃も不妊治療への公費助成を43歳未満に限るべきだと言う、医学的に見ればごく常識的な話に対して社会的側面から大いに異論が噴出したことは記憶に新しいところですけれども、人間の一生で生み出す資産価値と言うものがおよそ限られている以上、一人の人間を生み出すためにどれだけのコストをかけることが妥当か?と言うことは国としては当然考えなければならない問題でしょう。
そもそも何故少子化対策だと言っているのかと言えば子供が増えれば生産年齢人口も増え税収も増えると言う、要するに多少お金を出しても最終的には十分ペイ出来ますよと言う前提があるからこそ行っていることであって、ぶっちゃけ社会的に持ち出しになることが確定しているのであれば最初から余計なことはやらない方がいいのでは?と言う考え方もあるだろうと言うことですよね。
その一つの目安として投じたコストに対してどの程度妊娠・出産という見返りが期待出来るかと言う単純比較が判りやすいかと思いますが、先の公費助成の件を見ても判る通り「医学的に成果が望みがたい」あるいは「経済的にペイしない」と言うことと「不妊治療を行ってはならない」と言うことはまた別問題で、これに対しては「それでも産みたいならどうぞ自費でご自由に」と言うことで決着しそうですよね。
それよりももう少し厄介なのが妊娠・出産という個人的な行為に対して公費を投じてまで支援することの社会的意義ですけれども、もちろん基本的に子供は沢山産まれた方がいいのだから多少の支出を伴ってでも支援すべきだと言われればその通りなのでしょうが、例えば「1億円の不妊治療を行って障害児が生まれた。この子の生涯支援に対して5億円かかる見込みだ」と言われるとどうでしょう?

ある程度以上の年齢になると子供に障害が発生するリスクが加速度的に高まることは医学的な事実であって、「親の勝手で子供に不幸を背負わせるのか」と言った意見から「確信犯なんだから一切の社会保障サービスを停止すべき」といった極論まで様々な意見があるほどに、「そんなリスクの高い行為を大金投じてまでやって誰得よ?」と世間では受け止められ始めていることは否定出来ないでしょう。
もちろんストレートに「わざわざ障害者を産むべきではない?」と言われれば正面切って産むべきではないと言える人はそう多くはないと思いますが、質問を変えて「高い確率で障害者が産まれるリスクがある不妊医療を巨額のお金を使ってまで行うべきか?」と問われれば、それはさすがにやり過ぎじゃないか、ほどほどのところであきらめてもらうのが当然だろうと言う意見が主流になりそうな気がします。
「命は平等であり選別するなどもってのほか!」と言う意見もありだとは思いますが、老人医療・介護に対する世論の移り変わりと政策の行方などを見ていますと社会全体の流れとしてそういう考え方は、少なくとも増え続ける社会保障のコストを説明する論拠としては支持を失いつつあるように見えますが、それでは社会の側から個人の自由に対してどこまで干渉すべきなのか、個人はどこまで社会的責任を考慮に入れるべきかです。
不妊治療助成などはしょせん一過性のコストですし、だからこそ産みたければ自費でやれも通用する範疇ですけれども、その後の養育までも含めたトータルで考えれば必ず社会との関わり合いと言うことが必要になってくるはずなのに、当事者が「とにかく子供が欲しい」の一念だけで突っ走ってしまうといずれ不妊治療そのものに対する社会からの逆風も強まるかも知れませんよね。

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コメント

子供を欲しい気持ちは理解出来ますが50歳になってから必死で努力するくらいならどうしてもっと早く…とついつい考えてしまいます。
日本でも養子制度がもっと一般的になれば少しは状況が変わってくるんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2013年12月 4日 (水) 08時53分

年齢はともかく、不妊治療がこれだけメジャーになって、敷居が低くなったのはいいことだと思います
どうしてもっと早くしないのっても、結婚してなくて子供を産むとけちが付きますしね
ほんで結婚すれば、何で子供がいないのってけちが付くからでしょ

投稿: | 2013年12月 4日 (水) 09時58分

ところでひたすら子供を産むだけの商売って成立しますかね?

投稿: 匠 | 2013年12月 4日 (水) 10時02分

思うに一部著名人のように大いにお金を稼いでいて、何をやってもきちんと人生収支プラスに出来る方々なら好きなことをやっても許されるのだと思います。
ただそれをマスコミが大々的に取り上げて一般の方々が「それじゃ私も」と言う流れになってくるとどうなのか、今の調子で選択枝ばかりが際限なく増えていくとトータルコストがどれだけに膨れあがるのかです。
公的に補助するのはここまで、この先は社会にとって損になるからやりたいなら自分の稼ぎでやってくださいという限度の設定は冷徹なようですが必要ですし、その制約にはコンセンサスが十分得られると思っています。

投稿: ぽん太 | 2013年12月 4日 (水) 10時59分

マスゴミが有名人の高齢出産を煽り、見識の乏しい一般人を勘違いさせるのは無責任きわまりない。
ギャラもらってそれに便乗しているタレントも無責任。
高齢出産化による出産前後の妊婦のリスク、産児のリスクやデメリットなどを堂々と啓蒙できないのは何故?
常識的に考えれば不妊治療や出産には年齢制限を設けるべきです。
リスクやデメリットなど不都合な事から目をそらさせる。まさに日本人の特徴。
養子制度を検討した方がよほどまだ建設的だと思えますが。
妊娠中は薬が飲めないのだといくら説明しても理解できなかった45歳の妊婦がいましたね。
エゴイズムと無責任をこれ以上肥大させてはいかんですね。

投稿: 逃散前科者 | 2013年12月 4日 (水) 11時25分

薬が飲めないことが理解できなかった妊婦がたまたま45歳だっただけでしょうに。
気に入らなかった例を都合よく使うのはどうなんだろ

投稿: | 2013年12月 4日 (水) 13時13分

高齢者の出産に税金でフォローするって意味ないのに何でやるんだろうか?
少子化対策にも大してならないし
多くの納税者にはメリット無いと思うけど
全部自費でやればいいんじゃないかな?

投稿: | 2013年12月 4日 (水) 13時27分

少なくとも不妊クリニックは儲かるよね
年齢制限とか言われ出したんで、次なるは卵子凍結なのかなと思ったけど

投稿: | 2013年12月 4日 (水) 13時37分

この数年やっとマスコミが報道し出したのだけど、女性の「卵子が老化するなんて知らなかった。」
という声が多いことにびっくりします。自分の体のことなのに。
少なくとも、昔から「若いときの子のほうが出来がいい」って言われてますよね。

基本女性は周りがいくら言おうと、その時自分に関心無ければ耳に入りませんから、
啓蒙するのも難しいでしょうね。
少なくとも今の20代なんて子どもが欲しいっていうことなんて頭にない人が多そうなので。

一番効果的なのは、早い目の結婚・出産が流行になれば、わたしも・・・なんて増えるかな?
そこはマスコミさんや広告屋さんの得意分野(無からのでっち上げ)ですから、頑張って欲しいもんです。

投稿: hisa | 2013年12月 5日 (木) 09時04分

35歳あたりからダウン症が生まれやすいことぐらい、まあおぼろげには知っているわな
ただ、それが卵子の老化によるものか、ホルモンなど他の要因によるものかなんてマニアックに知ろうとしてなきゃおかしいんですかね?
それを自分の体のことなのに知らなかったなんてえ、と驚いてみせる方が驚き

てか、男性のほうが無邪気じゃないすかね
女性が早くしなきゃと思っても危機感なかったりとか、親になる覚悟がなくて女性ががっくりする
女性だけ知識があってもどうなる問題でもなかろう

投稿: | 2013年12月 5日 (木) 09時40分

<卵子老化>子どもいない既婚女性「今すぐほしい」7割超す
 子供がほしいと考える既婚女性のうち、「今すぐにでもほしい」という人は7割超で、6年前を約13ポイントも上回っていることがベネッセ教育総合研究所の調査で分かった。「今すぐにでも」という女性は、基礎体温を記録するなど多くが妊娠に向け具体的に取り組んでいた。同研究所は「晩婚化に加え、『卵子の老化』など高齢になるほど妊娠しにくいことが一般に知られてきたため」と分析している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131205-00000021-mai-soci

投稿: | 2013年12月 5日 (木) 15時17分

> マニアックに知ろうとしてなきゃおかしいんですかね?

どこがマニアック?
おぼろげに知っていても、そのときになるまでは気に留めない?

> 男性のほうが無邪気じゃないすかね
> 女性だけ知識があってもどうなる問題でもなかろう

同い年当たりしか考えていませんか?
そら、仮に20代とすれば10歳近く精神年齢(といっていいのかな?)が男女で違いますよ。
昔から夫婦の男女差が数歳から10歳近くあったのは、そのくらい違わないと
釣り合わないっていうことからじゃないですか。
↑記事にもありますが、結構男性も知ってますよね。

まあ、個人的には、努力したがだめで30歳くらいから不妊治療は理解できるけど、
若いときに好きなことをして、やっと30後半になってから(結婚)不妊治療なんて
いうようなケースなんかは、自費でやって欲しいなあ。

投稿: hisa | 2013年12月 5日 (木) 16時26分

もう子供なんて、途上国から買ってくればいいんじゃない?w

投稿: | 2013年12月 5日 (木) 17時40分

今、そして将来の日本に必要なのは、モノよりカネよりヒトです。
正直たんなる加齢による不妊症に対する補償は個人の感情としては納得いかない気分ですが、
日本全体のことを考えれば一人でも多くのヒトが出産出来るようになること、
さらにそういう制度が周知されて、出産への意識が高まることは
日本にとり非常に有用だと思います。
少なくとも老人福祉をこれ以上充実させるよりは余程希望が持てる。

投稿: kam | 2013年12月 6日 (金) 09時19分

障害リスクも考えずに妊娠させればいいでは老人を際限なく長生きさせる以上に社会保障のお荷物になりかねませんけど?

投稿: たもやん | 2013年12月 6日 (金) 09時43分

>日本でも養子制度がもっと一般的になれば少しは状況が変わってくるんでしょうか?
虐待から子供を守る一般的な対策は貧弱極まっているくせになぜか養子縁組の承認だけが激シビアなんだよな日本

投稿: | 2013年12月 6日 (金) 12時46分

虐待から子供を守る一般的な対策が貧弱極まっているくせに養子縁組の承認を激アマにしたらもっとひどい事になりゃせんですか?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年12月 6日 (金) 14時47分

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