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2013年12月30日 (月)

医師の自律のためには強制性を持つ全員加入の組織が必要?

日本医師会(日医)と言う組織がかねて医師全員の強制加入を目指していることは知られているところですが、全医師を強制加入させることで組織力を向上させた結果何をしたいかと言えば、自分達の意図するところを実現するための政治力向上という目的があることは否定出来ません。
その日医傘下の広島県医師会に絡んで先日こんなびっくりするようなニュースが流れていたのですが、さすがに非民主的組織運営で知られる医師会らしいやり方だとは言えるでしょうか?

返信なければ「自民入党」 広島県医師連盟、会員に要請(2013年12月27日朝日新聞)

 【清水謙司】広島県医師会の政治団体、県医師連盟(委員長=平松恵一・県医師会長)が、自民党への入党を要請する文書を会員の医師らに送っていたことが分かった。業界団体の「自民回帰」が相次ぐ中、県医師連盟の場合、返信しなければ自動的に「入党」となる仕組みで、そのやり方に一部会員からは否定的な意見が出ている。

 連盟関係者らによると、文書は12日付。平松委員長名で、「自由民主党への入党について(お願い)」と題し、医療政策を実現するために、設置を検討中の自民党県連の職域支部への入会を促す内容。党費の年額4千円は県医師連盟からの寄付金で支出し、新たな負担はない、としている。

 また、入党に同意しない場合のみ、別紙に医療機関名や名前などを記入し、事務局に連絡するよう求めている。この要請について、ある会員は、「思想信条の自由を損なう恐れがある」と指摘する。

医師会の関わる政治的活動と言えば、かつて特区制度を活用した神奈川県の「医療のグランドデザイン」のパブリックコメント募集に対して、同県医師会が会員に反対意見を提出するよう文書で求めていたという事例があり、反対意見のうち同じ様式すなわちコピペが196件あったことから知事も「非常な違和感を覚える」と皮肉めいたコメントを出していましたよね。
医師会に強制加入させられるということは今後こうしたことが当たり前に強いられるようになるということなのでしょうが、もちろん現状でさえ全く求心力を発揮出来ていない守旧的な組織がそうした強権を発揮出来る特権的地位を占めるようになればますます独善的振る舞いに加速がつくと容易に想像されることから、今のところは平たく言って論外の一言で断じられるべき夢想と言うしかありません。
そうした幻想に浸りたくなる背景には医師数が年々増加している中で、日医会員数は21世紀に入ってから完全に横ばいになってしまっているという危機感があるのだと思いますが、思想信条の自由さえも認めないような前時代的組織が全医師強制加入を云々するようでは、21世紀の日本の医療はお先真っ暗と言われても仕方がないでしょうね。
ただ弁護士会などに見られるような職能集団としての全員加入を求める組織という発想は医療の世界にも以前からあって、今年の夏には日本学術会議の「医師の専門職自律の在り方に関する検討委員会」から「全員加盟制医師組織による専門職自律の確立-国民に信頼される医療の実現のために-」なる報告書が出ています。

専門職自律の確立、実は「徴医制」 - 平岡 諦(2013年12月26日医療ガバナンス学会)

日本学術会議は、本年(2013年)8月30日、「全員加盟制医師組織による専門職自律の確立-国民に信頼される医療の実現のために」というタイトルの報 告書を公表しました。法律によって「全員加盟医師組織」を作り、「専門職自律(プロフェッショナル・オートノミー)」を確立し、「国民に信頼される医療の 実現」を図ろうとするものであると謳っています。しかし、狙っているのは、「医療を崩壊させないために」、「専門医を含めた医師の地域・診療科による偏在 を是正する」ための、全員強制加入で懲罰機能を持たせた新医師会制度(いわば「徴医制」)といっていいでしょう。その内容は拙論(1)で予想した通りのも のです。
(略)
本来の意味を確認したところで、報告書にもどります。報告書は全員加入の新組織を作って「専門職自律(プロフェッショナル・オートノミー)」を確立すると 言っています。しかし、新組織が「何から自立(independence)するのか」、「何から自立(independence)する必要があるのか」を 示していません。これが新組織の在り方を変えてしまいます。自立(independence)を明らかにしていない組織は自律した組織ではありません。自 律していない組織の懲罰(処罰)システムは単に強制のためのシステムとなります。その結果、新組織の狙いは、全員強制加入で懲罰機能を働かせるための新医 師会制度(いわば「徴医制」)となってしまうのです。
(略)
「世界の非常識」を基本的考えにして作ろうとしている新医師組織、その狙いは報告書の中には出てきません。隠されています。厚労省の「専門医の在り方に関 する検討会」(会長は高久史麿・日本医学会会長)の報告書の中でも、「新たな専門医の仕組みは、プロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)を 基盤として設計」するとしています。ここでも「何からの自立(independence)が必要か」ということは述べられていません。専門医の在り方を 「自律的に」決めようとするなら、本来は日本医学会が決めるべきです。それを厚労省の検討会で(すなわち、他律的に)決めようとしています。「プロフェッ ショナルオートノミー(専門家による自律性)」という言葉を、誤魔化して使っていることを意味します。

医療が崩壊すれば、社会から非難されるのは厚労省です。医療崩壊は現場からの医師の「立ち去り」から起きます。医療崩壊を起こしている(起こしそうな)現 場に医師を強制的に張り付けるためにはどのようにすればよいか、厚労省は考えました。その一つが専門医制度を利用した「医師の偏在の是正」です(「専門医 の在り方に関する検討会」報告書)。もう一つが官僚統制の強化が図れる新医師会制度です(日本学術会議からの報告書)。すでに日本医学会は法人化により日 本医師会からの独立をきめました。これら一連の動きから考えられる新組織とは、「医療を崩壊させないために」、「専門医を含めた医師の地域・診療科による 偏在を是正する」ための、日本医師会から独立した日本医学会を中心とした、全員強制加入で懲罰機能を持たせた新医師会制度(いわば「徴医制」)と言う事に なります。

厚労省の下、日本学術会議、日本医学会、日本医師会、それぞれの上層部が一団となって、現場の医師の孤立を招く医療不信を利用しながら(3)、現場の医師 の官僚統制の強化を図ろうとしています。その手段は「専門職の自律(プロフェッショナル・オートノミー)」という言葉の誤魔化した使い方です。これに誤魔 化されないことです。
(略)

ま、医師の自律だとか難しい話は抜きにしても、厚労省からすれば現場医師から総スカン状態となりつつある日医のような団体だけが医師の代表顔で交渉の場に出てくるのでは何かとやりづらいでしょうし、全医師強制加入の組織があってそちら経由で簡単に強制力を発揮出来ると言うことになれば話がよほど判りやすくなるのは事実でしょうね。
現場の側からするとこうした組織の必要性がどうなのかですが、例えばかねて事故調議論などとも絡めて医療現場への司法介入ということが非常に大きなトピックスになってきている中で、例えば現状では刑事罰の追認的に行われている行政処分というものを刑事罰などに代わってもっと活用してはどうかという意見があったわけですが、それを行う主体が日医会長らからなる現状の医道審議会ではどうなのかですよね。
医師自らが自分達の処分を判断し決めるというのであれば我々は介入する必要はないんだよ、という悪魔のささやきが耳に心地よく聞こえる時もあるのでしょうが、医療訴訟における明らかに不的確な鑑定人問題などとも同様に、個々のケースで適切な判断を行える人物とは誰なのか、その適切な人物が正しく登用されるのかということを担保出来なければどんな形の組織であっても意味のないことでしょう。
その意味では例の医療事故調なども未だに根強い反対論があって難航していますけれども、誰が聞いても「この人なら」と納得出来る人選が行われ科学的に妥当な判断がなされるようになると言う慣行を根付かせていくという道筋においては、こうしたものが先導的なケースとして果たしていく役割は決して小さなものではないように思いますね。

いずれにせよ現状において新医師会であれ第二医師会であれ全医師強制加入の組織なるものは、医師自身にとって必要というよりも医師を管理したい側にとっての必要性が高いと考えるべきだと思いますが、当然ながら先行する弁護士会や日弁連などの現状がどうなっているのかということを知らずして賛成も反対もしようがないというものだと思います。
全くの門外漢ですのであまり組織の内情などについてどうこうと言うことは出来ませんけれども、少なくとも外から見ている限りでは日弁連と言う組織も日医に輪をかけて「濃い」組織のようで、新医師会(仮称)がこうした組織へと発展していくということであれば今以上に全国医師の方々も何かと生きにくい世の中になっていくんじゃないかと言う気がしてなりません。
何より不満を覚えるのがそうした活動を支えるのが自分達が強制的に徴収される会費になるだろうと言うことなのですが、これまた日弁連の収支などを見る限り「何もそんなことにそんな大金を…」と思うようなことに湯水の如き大金をつぎ込まれることになりそうで、下手をすると自分達と真逆の主張を続ける組織のために毎年高いお金を巻き上げられるということにもなりかねませんよね。
なお興味深いことに全員強制加入の弁護士の世界では自律に対する不満が鬱積しているようで、こちらはいっそコストと手間ばかりかかる弁護士自治など放棄してしまって処分なども行政に丸投げしてしまえばいいんじゃないかという意見も出ているというのですから、人間の世界でなかなか理想的な組織など実現できないものなんだろうと思います。

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コメント

いらない

投稿: | 2013年12月30日 (月) 08時47分

処分を下すだけの組織ならまだしもですけど第二の医師会なんてあっても仕方ないでしょうに。
専門医認定だとか保険医指定だとかもからめて不必要に巨大化するのが目に見えてますよ。

投稿: ぽん太 | 2013年12月30日 (月) 09時40分

いやいや、第二の医師会って必要だと思いますよ。

かつての労働組合の如く、お上にとっては、ね。

投稿: 名無子 | 2013年12月30日 (月) 11時31分

医師労組と言えば、全医連がああなってしまったのは惜しいことをしたと今でも思いますね。
いずれにせよ医師側から見てあまり必要性がなさそうだと言うより、より積極的に強制性によるデメリットの方が大きいという気がします。

投稿: 管理人nobu | 2013年12月30日 (月) 12時05分

医師の自律とは 厚労省からの自律以外の道はないと思います。
これがないとすべて茶番と思います。 ただ、無理だとは思いますが・・・

投稿: 京都の小児科医 | 2014年1月 3日 (金) 05時57分

「第一回12誘導心電図伝送を考える会」
http://clcard.umin.jp/gate/comingmeeting/
開催日 2月23日(日)午前10時半から4時
場所  TKP品川カンファレンスセンタ
出席者 救急循環器医、消防署、技師、関連者
主催  12誘導心電図伝送を考える会
会費  医師など直接関係者 1,000円

投稿: | 2014年1月15日 (水) 14時24分

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