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2013年11月26日 (火)

障害児産み分けは悪?

連日のように悲惨な児童虐待のニュースが続く悲しい世の中ですけれども、先日こういう記事が出ていたのをご存知でしょうか。

障害者虐待1500件、家族が8割・死亡3人(2013年11月11日読売新聞)

 昨年10月の障害者虐待防止法の施行後、今年3月末までの半年間で虐待の相談・通報が全国の自治体に計4502件寄せられ、このうち1524件で1699人が虐待を受けたと認定されたことが厚生労働省の初調査でわかった。

 家族や親族らによる虐待が8割を超え、3人が死亡していた。

 調査は、全国の1742市区町村と47都道府県を対象に実施。昨年10月からの半年間に寄せられた相談・通報件数や、自治体の対応状況などを聞いた。

 認定された1524件のうち、障害者の家族や親族ら身の回りの世話をする人によるものが1311件と86%を占めた。福祉施設の職員らによるものが5%、職場の雇用主らによるものが9%だった。

実のところ児童のみならず高齢者虐待ということもしばしば問題になるのですが、共通して真に悲しむべきなのはたまにやってきて「なんでこんなになるまで放っておいたんですか!?」などと好き放題騒ぐだけで去っていく遠い親戚などではなく、もっとも近しく日々の面倒を見てきた家族だからこそこうした虐待が起こるということではないかと言う気がします。
このままでは共倒れになるからと周囲が施設入所など介護サービスの利用を勧めても断固拒否されるご家族がいますけれども、「自分がこれだけ苦労しているのだから相手にも判ってもらいたい」という気持ちが増すほど、それを判ることの出来ない相手に対しては虐待や介護放棄と言った破綻的な結末に結びつきやすいと言う事ですね。
たまにやってくる親戚が優しいというのは無論普段面倒を見ていないことへの後ろめたさの裏返しでもあるでしょうが、こうした距離が近すぎることによる負の関係に陥りがたいということも関係していると思われ、自宅では介護疲れでギスギスしていた関係が施設入所で適切な距離が取れるようになるといい具合に柔らかいものに変化するということはままあることです。
よほどの聖人君子ならともかく、普通の人間であれば24時間365日いつでも優しい面だけを見せていられるなんてことはあり得ないわけで、だからこそ追い込まれ双方にとって悲劇的な状況に陥る前に施設などの介護サービスを是非積極的に利用して適切な距離感を維持しつつ優しさを温存していただきたいものだと思いますね。
さて、奈良・大淀病院事件報道などで判る通り、かねて産科医療に関しては並々ならぬ関心を寄せていることが知られている毎日新聞から先日こういう記事が出ていました。

<新出生前診断>羊水検査後陽性53人中絶 3500人解析(2013年11月22日毎日新聞)

 妊婦の血液から胎児の疾患の有無を判定する新型出生前(しゅっせいぜん)診断(NIPT)の臨床研究で、診断結果が陽性反応だった67人のうち、その後の羊水検査などで陽性が確定した少なくとも54人のうち53人が中絶を選んでいたことが分かった。臨床研究を実施する研究者らが参加する組織「NIPTコンソーシアム」(組織代表=北川道弘・山王病院副院長)が今年4月から9月末までに検査を受けた約3500人について解析した。仙台市で開催中の日本人類遺伝学会で22日、発表する。

 新型出生前診断は今年4月に開始。染色体異常によって起きるダウン症(21番染色体の数に異常がある21トリソミー)、いずれも重い心疾患などを伴う13番染色体異常の「13トリソミー」、18番染色体異常の「18トリソミー」の3疾患が対象。陽性と判定されても、35歳の妊婦では胎児がダウン症である確率は80%程度にとどまるため、羊水検査などを受ける必要がある

 解析結果を知る関係者によると、解析対象となった約3500人の妊婦の平均年齢は約38歳。3疾患のいずれかで陽性反応が出たのは全体の約1.9%にあたる67人。そのうち妊娠が継続し、羊水検査など確定診断を受けた62人の中で、陽性が確定し、流産もしなかった症例が少なくとも54人おり、そのうち53人が中絶を選んだ。1人は調査時、妊娠を継続するか否かを悩んでいたという。中絶を選んだ53人の内訳は、▽ダウン症33人▽13トリソミー4人▽18トリソミー16人--だった。新型出生前診断の開始にあたっては、簡便なため、妊婦が十分認識を持たずに受け、動揺する可能性がある▽染色体異常のある胎児の排除や生命の選別につながりかねない--などの問題が指摘された。この診断について、日本ダウン症協会の水戸川真由美理事は「命を選択する手段になっていいのかという議論が進まない中、出生前診断の技術ばかりが進んでいる」と危惧する。

 生命倫理に詳しい※島(ぬでしま)次郎・東京財団研究員は「新型出生前診断の眼目は、流産リスクのある羊水検査を回避できる点にあり、中絶の人数ばかりに注目すべきではない。検査の精度を検証するとともに、ほとんどが中絶を選んだことについてカウンセリングに問題があったのか、改善すべきかを明示しないと当初の臨床研究の目的にそぐわない」と話している。【須田桃子、斎藤広子、下桐実雅子】
(略)

いまのところこの新型出生前診断に関しては1)超音波検査などで染色体異常の可能性がある、2)染色体異常のある子を過去に妊娠、3)高齢妊娠(出産時35歳以上)の場合に限って行われているということなんですが、一回当たり20万円の費用がかかる上にその後の確定診断にもさらに追加のコストが必要ですから、そうおいそれと気軽に受けられるというものではありませんよね。
記事の解説によるとそうした事情からも検査を受ける人は高収入で事前に詳しく下調べをした上で異常があれば産むのはあきらめると決めた上で来院する傾向にあるということですから、「陽性が確定した少なくとも54人のうち53人が中絶を選んでいた」という非常に高い中絶率もそうしたバイアスがかかってのものだとは思われます。
逆に検査を実施する側にすれば陽性の結果が出れば中絶という確実な意志がある人であればまだしも、検査結果を見てああでもない、こうでもないと思い悩むようなタイプの方にリスクを負ってまで確定診断を受けさせようとも思わないでしょうから、これからも料金面も含めて新型出生前診断への高いハードルは維持していきたいんじゃないかという気がしますが、そうは言っても現実の技術進歩は急速ですよね。
妊娠検査薬なども今やそこらのドラッグストアで簡単に買える時代ですが、スクリーニングレベルででも出生前診断が唾液や尿、あるいは血糖簡易測定器程度の簡便さで行えるようになれば、仮にキットが外国産だとしても今時通販でいつでも買えるようになるでしょうから、一気に検査を受けることに対する閾値が引き下げられることになるでしょう。

他方で本来的には検査の閾値よりも中絶に対する閾値の方が高くあるべきだと思いますが、今の日本における中絶数の多さを考えると、ある程度高年齢で妊娠出産に対する危機感もあり、社会的階層も知識レベルも低くないという今の新型出生前診断受診者と違って「異常が出た?なら堕ろしちゃえばいいじゃん」レベルで過剰な「間引き」に走ってしまう可能性は高そうに思われます。
この辺りは子供を産み育てるという、今の時代にあって少なからず手間暇もコストもかかる作業に対する見返りがあまりないことにも理由が求められるという考え方もありそうですが、社会的にはどうしても持ち出しにならざるを得ない障害者の養育と言う事になると、言葉は悪いですが共働きでも日々の暮らしでかつかつという世帯よりも、生活に余裕もあって子供に手間暇かけられる世帯の方が向いているとは言えそうです。
今現在は新出生前診断のハードルを高く維持している結果、本来そうした障害児を養育するゆとりのあるはずの世帯からばかり障害児が減っていくという言わば逆転現象が起こっているとも言えますが、将来的に誰でも簡単に出生前のチェックが出来るようになるとこうした点がいずれ改まり、そうと知った上でなお養育する意志のある世帯だけが産み育てるという状況になるかも知れませんね。
産み分けということの是非がしばしば言われますけれども、産む方産まれる方双方にとっての最大の悲劇は望まれずに生まれた結果から発しているケースが多いように見える現実を思う時、結局どの道が子供と家族にとっての幸せにつながるのかということはなかなかに難しい問題ではないかなという気がします。

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コメント

やはり検査を受ける人は中絶前提ってことですね。
確かに結果が出てから迷われても担当医も困るでしょうが…
スクリーニングの範囲がどこまで広がるかによって社会的な影響も大きくなりそうな気がします。
癌のなりやすさなど遺伝的素因をどこまで突き詰めるべきなのかも判断が難しいです。

投稿: ぽん太 | 2013年11月26日 (火) 09時00分

 コンビニエンスストアの駐車場近くで女性の胸を触るなどしたとして、
強制わいせつ罪に問われた知的障害者の男性被告(51)=宮崎市=の判決で、宮崎地裁は19日、無罪(求刑懲役1年2月)を言い渡した。

 滝岡俊文裁判長は判決理由で
「知的障害者として的確な応答が困難であるという事情を踏まえても、同意があったとする被告の供述は信用性がある」と判断。
「合理的な疑いが残り、犯罪の証明がない」とした。

 公判で検察側は「女性が白昼、人目にさらされている場面で、
顔見知り程度の関係しかない男のわいせつ行為に同意することは通常、起こり得ない」と主張していた。

 判決によると、男性被告は2011年12月19日午後、宮崎市のコンビニ付近で20代の女性の服をまくり上げ
胸を触るなどのわいせつ行為をしたとしている。

 閉廷後、弁護人の山崎真一朗弁護士は「十分な捜査がなされていれば起訴されずに済んだ」と捜査を批判した。
宮崎地検は「判決を精査し、適切に対応する」とのコメントを出した。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20131119-OHT1T00067.htm

投稿: | 2013年11月26日 (火) 09時18分

↑の記事、詳細は不明ですが一般論としては検察側の主張の方に理がありそうな状況ではありますよね。
どのような経緯だったのか判らないので何とも言いようがありませんが、しばしば問題視されてきた知的障害者の社会的責任ということと絡めて議論を呼びそうな事件だとは思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年11月26日 (火) 11時19分

池沼だから何やってもいいと勘違いされても困るw

投稿: aaa | 2013年11月26日 (火) 13時18分

優生学の間違いを正したと言われる、ハーディー&ワインバーグの法則があります
ダウン症は羊水検査出来ても、劣勢遺伝による疾病予測までは難しい。

学生時代に習った法則ですが、まさか整数論で有名なGHハーディー、その人だったとは最近知ってビックリしてます

投稿: Med_Law | 2013年11月27日 (水) 14時43分

出生数100万人に対して、中絶数20万人でしたっけ
無差別殺人はやり放題だけど、選別する殺人には文句が付く、みたいでバランス悪いですね
生活に余裕もあって子供に手間暇かけられる世帯の方が向いているって・・・
ダウンの子を持つ母親に、「カミサマは乗り越えられる人にしか試練を与えないって言うよね、あなたは偉い」と、健常者の子を持つ母親が言い放ったって話を思い出してしまった

投稿: | 2013年12月 3日 (火) 13時54分

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