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2013年11月12日 (火)

制度誕生と同時になくなりそうな特定看護師制度、最終案まとまる

先日以来一部方面で話題になっている看護師に認める医療行為の最終案ですが、まずはこちらの記事から紹介してみたいと思います。

看護師の医療行為解禁へ 研修受講で気管挿管など可能に(2013年11月9日朝日新聞)

 【辻外記子】厚生労働省は8日、医師の具体的な指示がなくても、看護師が一部の医療行為ができる制度の創設を決めた。国指定の研修を修了すれば自身の判断で、気管挿管や脱水患者への点滴などをできるようにする。医師がいなくても患者の変化に素早く対応できると期待される。

 この日の審議会の部会で最終案が了承された。次期通常国会に、保健師助産師看護師法の改正案を提出。対象の行為や研修内容を確定させ、2015年度の施行を目指す。

 最終案は、床ずれで壊死(えし)した部分の切除や点滴中の高カロリー輸液量の調整、抗不安薬をのませるなど、医師が主にしてきた41の行為を「特定行為」と位置づけた。研修を受けた看護師は、医師が事前に示した手順に従い、自身の判断でできるようにする。一般の看護師も、医師の具体的な指示があればできる、と明確にする。当初検討された「特定看護師」という資格は、日本医師会などの反対で見送られた


「特定看護師」最終案…チーム医療の要 骨抜き(2013年11月6日読売新聞)

 医師の具体的な指示なしで、気管挿管など高度な知識や技能が必要な医療行為(特定行為)ができる「特定看護師」の最終的な制度案がまとまった。日本医師会などの反対で二転三転し、推進派が「骨抜きにされた」と自嘲する最終案。導入を待ち望む医療現場からも改善を求める声が上がるほか、安全対策もいまだ明確ではなく、課題は山積だ。

 厚生労働省の検討会「チーム医療推進会議」は29日、3年半にわたる議論の末、作業部会が報告した特定看護師の制度案を了承した。来年の通常国会に「保健師助産師看護師法改正案」が提出され、通過後に設置される同省の審議会が同案をたたき台に制度を固める。

 最終案では、気管挿管や抗けいれん薬の投与など、これまで多くの場合に医師が行ってきた41種類の医療行為を「特定行為」に選定。分野ごとに14区分に分けた。「特定看護師」は、あらかじめ医師が指示した手順に従い、患者の容体を自分で判断しながら特定行為を実施できる。厚労省が区分ごとに指定した研修機関で、指定研修を受講することを義務づけるとした。

 元々、特定看護師は、高齢化や医療技術の高度化で医療スタッフの仕事量が限界を迎える中、打開策として国が推進するチーム医療の橋渡し役として導入が決まった。医師不足も後押しし、医師が手薄な在宅医療や高齢者施設などで、医師不在でも医療処置や薬の投与を行うことが期待される

 だが議論は、日本医師会、日本薬剤師会ら医療職団体の反発で曲折が続いた。先進諸国では診療や開業、薬の処方、麻酔まで行える看護師が医師と対等に活躍しており、医療界では「既得権益を守ろうとする力が働いた」との見方が専らだ。

 当初、国の資格として検討された制度は、「能力を国が認証する制度」に変わり、「特定看護師」の名称も削除。その後、「認証」さえも資格に近いとして、「研修制度」に変更された。

 さらに、当初は「老年」や「慢性期」など領域ごとに必要な医療行為を幅広く学ぶ制度が考えられていたが、最終案では訓練する特定行為を小さな区分に細切れにした。職場や患者全体を見渡しながら自立的に動く看護師というよりは、特定分野の技術に長(た)けた看護師を育てる制度に矮小(わいしょう)化された格好だ。

 高齢化の進む首都圏で、在宅医療を推進するための事業を進めている元厚労次官の辻哲夫氏は、「いわば狭い分野の熟練工を育てるようなこの制度では、看護師単独で慢性期や終末期といった幅広い状況に対応しなければならない在宅医療で、真に期待される看護師は育たない」と懸念する。

 また、今回示された「特定行為」は、一連の議論の中で一般の看護師も医師の具体的な指示があれば、実施できることになった。その場合の研修は努力義務とされ、具体的な安全対策は全く議論されなかった。

 国のモデル事業として先行して、「特定行為」を実施する看護師は、「一部の手技を中心に訓練した看護師や一般看護師が医学的な判断ができないまま高度な医療行為を実施できることになり、危険」と疑問を抱き、別の病院で同様に働く看護師も「医師や他の職種との橋渡し役になるには、医師と共通言語を持てるよう専門訓練が必須。すべての看護師に特定行為を開くことで、制度の信頼性が揺らぐことが不安」と語る。

 妥協を繰り返してきた日本看護協会などの推進派は「小さく生んで大きく育てる」と釈明する。だが、安全性に不安が残るこの制度がこのまま始まれば危険にさらされるのは患者で、チーム医療の要にという本来の目的も失われかねない。制度を固める今後は、患者や医療の未来を見据えた議論に立ち返るべきだ。(医療部 岩永直子)

特定看護師という名称が廃止されたので今後どう呼んだらいいのかも判らないのがこの制度なんですが、とりあえずここで注目しておきたいのは制度そのものが当初の予定からは大きく変わって何かしらちょっと偉いポジションの看護師を養成する制度ではなく、今までやっていなかった行為も研修を受ければ出来るようになりますよという制度に大きく様変わりしたという点です。
さらに医師の具体的指示があれば研修すら受ける必要なく誰でもやっていいと言うのでは、要するにこれら医療行為は看護教育の範疇で十分行うに足るものだと言う解釈がなされたのでしょうけれども、こうなりますと今まで以上に看護学生の質の高い実習教育の重要性が増すでしょうし、学校の教育内容によって卒業生の出来る、出来ないがはっきり別れてくるということにもなるでしょう。
研修医の教育も手技的な部分はどうしても法制度上卒後教育に依存する部分が多く、今まで直接の上司がマンツーマンで教えてきた部分ですが、今後看護師がこうした手技の一部を代替わりするのであればその教育は医師に委ねられることになると思われ、今まであまり行われてこなかった医師から看護師への実技教育の場をどう確保するかということも現場の課題となりそうです。

制度論的な面から考えてみると特定看護師という「ミニ医師」を認めるかどうかが推進派、反対派双方にとっての焦点となっていて、今回「チーム医療の要」としての特定看護師という実態が雲散霧消してしまう名ばかり制度改革であると推進派からは悪評高いようですけれども、そもそも特定看護師はチーム医療の要として期待されているのか?と言う議論もありますよね。
特定看護師を医師に代わって判断し指示を出す「要」の役に据えることを期待していた方々にとっては、今回の最終案は単に医師の下請けに過ぎない技術屋ではないか!と評判が悪いのも理解出来ますが、逆に多忙な医師が求めていたのは医師に代わって簡単な処置を代行してくれるスタッフであり、「点滴採血くらい看護師でやってくれよ…」と言う愚痴の延長線上にある発想であるとも言えます。
そういう要望に対しては今回の最終案は手技に特化すると言うなかなかによく出来た制度になっているし、そもそも手技的に習熟していった上で改めて「要」役としての頭脳を備えた特定看護師を上乗せすると言うことも可能だと思うのですが、推進派としては処置代行役を求める現場の声も込みで「こんなに特定看護師を求める意見は多いのです」とやっていたわけですから、これでは多いに推進力が削がれるという気持ちなのでしょう。
「それじゃ患者に危害が及ぶ可能性がある。知識も技術も備わってはじめて何不安無く手技も行えるのだ」と言うのもこれまた理想論なんですが、それでは日々当たり前に採血をしているそこらの看護師に予想されるリスクとその対処法を聞いても理論立てて答えられる人間など実はそれほど多くはないもので、あまりこの辺りの重箱の隅つつきをしていると思わぬやぶ蛇になりかねないですよね。

そもそも論として医師が医師であることによって得られる技術料が極端に低く、単に検査や処置をどれだけやったかで報酬が決まる日本の皆保険制度下においては、その安い技術料部分を医師が担おうが特定看護師が担おうが料金で差別化することが難しく、値段が大差ないなら患者にしたって看護師よりも医師にやってもらいたいと思うだろうと言う意見は根強いものがありました。
逆に医師からしても誰がやっても得られる報酬に大差ないし、なおかつ誰でもやれるということなのであれば「それじゃやっといて」で済ませられれば医師でなければ出来ない業務に専念出来るというもので肩書きにはあまり興味はないだろうし、それでも敢えて並みの看護師とは違うという肩書きが欲しいと言うのであれば医学部に入り直して医者になればいいじゃないかと言う意見ももっともではありますよね。
実際に昨今では他学部を卒業後に医学部に編入学する人が増えていて、短大卒でも編入試験に合格する人も出ていると言いますから特定看護師を狙っているような志の高い方々はどんどん挑戦したらいいんじゃないかと思うのですが、ただ看護師として働いていた職場に研修医として戻ってくるとスタッフとの関係が微妙に気まずくなると言うことはあるようですから、研修先には少しばかりの配慮は必要かと思いますね。
ともかくも特定行為は看護師にやらせるのが危ないのか危なくないのかと言う議論も未だ続いてはいますけれども、結局手技的な部分は理屈よりも数をこなす方が上というところがあって、誰だって下手くそな研修医におっかなびっくり針を刺されるよりはベテラン看護師に頼みたいと考えるのと同様、これも実際に当たり前に行われるようになれば皆の認識も自然に変わっていく部分が多々ありそうには感じています。
その上で改めて特定看護師という資格が必要と判ったならそれはそれで結構なことで、看護師なら誰でも出来る手技が多少不安無く出来るといったそれこそ枝葉のことではなく、特定看護師とは今までにないどういう患者サービスを提供出来る役職なのかと言う本質的な議論がはじめてそこで行えるようになりそうですよね。

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コメント

資格として認定しなかったことで逆にやりにくくなっちゃった気がしないでもないんですが。>特定行為
あぶないことやっちゃいけなさそうな看護師に限って無茶しないか心配になります。

投稿: ぽん太 | 2013年11月12日 (火) 08時38分

特定看護師が独自の判断で行動してミスしたら誰が責任とるんだ?w

投稿: aaa | 2013年11月12日 (火) 08時55分

誰も触れないのが不思議なんですが、株式会社が設立した訪問看護ステーションが
存在しています。
訪問看護では今でも採血や、点滴などの医療行為が行われています。
すでに医療に株式会社が参入しているということです。
この特定看護師制度が成立すれば、株式会社が行える医療行為が
かなり増加するということになるのですが、この点は全く論じられないですね。

投稿: 嫌われクン | 2013年11月12日 (火) 09時36分

>株式会社が行える医療行為がかなり増加する

なにか問題でも?
いまどき株式会社ガーなんてさわいでるのは日医の老人共だけだろうに

投稿: | 2013年11月12日 (火) 10時25分

>特定看護師が独自の判断で行動してミスしたら誰が責任とるんだ?w

特定看護師の行為に対する責任を誰が負うかと言えば、これは今と変わらず最終的には院長(施設の責任者)が負うことになるかと思います。
そもそも日本では未だに個人責任追及の機運が少なからずあることが問題として指摘されているわけですから、この制度がその風潮打破の一助となるなら瓢箪から駒ではありますよね。
とは言え実際には急にそこまでの意識改革も行えるものではないので、まずは実際にやってみてスタッフも患者も慣れていくということになるのだと思いますが。
一部病院の看護師が「点滴なんて危ないことは先生の仕事ですから!」なんて言ってるのを聞いてもっともだと思う医者がまずいないようなもので、何が危ない医療行為かという認識も次第に変わっていくものなのでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2013年11月12日 (火) 11時01分

>なにか問題でも?
 医療サービス供給株式会社が生命保険会社と同じ持ち株会社の下に入ったらどうなるか、モウソウ してみぃ。

 自由競争でサービス向上? 
 人の死は一人一回だから市場原理は働きにくい。
 グループ間での競争は 患者の利益と関係ないところで起こるよ。
 ある程度寡占になったらトラストで利益確保。 

 行き着くところは現行の官制皆保険と同じ(だから構わん)ってか
 ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

 ああ、給料で雇われてる医者には問題ないこっちゃ。

投稿: 医師会員ではありませんが | 2013年11月12日 (火) 11時23分

これって米国の、専門ナース、開業ナース、医師助手(physician assistant=PA)が混同された制度。
ごっちゃごっちゃな内容です。
何がやりたくて、なにが目的なの?

実施されたとしたら、先進国のどこにもない制度。

投稿: とある内科医 | 2013年11月12日 (火) 11時40分

今回の内容だけをみると特定看護師とかNPだとかそんな大それたものじゃ全然なくて、単なる看護師の業務拡大に過ぎません。
看護師だってここまでやっていいんだからましてや点滴採血くらい当然やっていいんだということなら大学病院の研修医は喜ぶでしょうけど、
じゃあ医療が何か変わるのかと言われるとどうなんでしょう?

投稿: たもちん | 2013年11月12日 (火) 12時01分

> 行き着くところは現行の官制皆保険と同じ(だから構わん)ってか
> ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

> ああ、給料で雇われてる医者には問題ないこっちゃ。

こわいこわいw
医者の脅迫こわいよーww

投稿: | 2013年11月12日 (火) 14時00分

株式会社ガー格差ガー

ビル・ゲイツも乞食も同じ医療を! というのが日本共産主義医師会の本旨ですwwwwwwwwwww

これからも既得権益医師会の能無しどもを叩きまっせ!

投稿: 記者 | 2013年11月15日 (金) 21時20分

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