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2013年11月11日 (月)

「診療所は小さな病院ではない」は有りか無しか

先日は過酷な状況におかれていることが社会問題化している勤務医の労働環境を改善すべく、日医主催で全国連絡協議会が開催され日医勤務医部会の先生方がディスカッションをするという大変にありがたい催しがあったそうですが、国の方でもこうした勤務医過重労働は問題だと感じているのでしょう、昨今さかんに入院から自宅へだとか、総合病院から身近な家庭医へだとかいったことを言いだしていますよね。
ただその大前提として開業医や介護サービスも含めて地域社会全体が病院になりかわって患者の面倒をみるという体制構築も不可欠なのですが、残念ながら先日は厚労省調査で24時間介護はまだ全国自治体の1割にしか普及していないと判明してしまったように、今のところ自分一人あるいは家族とで何とか出来てしまう程度の元気の良い人でしか受け皿がないというのが正直なところのようです。
そもそも日本では病院に預けっぱなしにしておくことが一番安上がりで手間暇もかからないという歪な診療報酬体系も遅々としてこうした話が進まない根本原因の一つでもあるわけですが、特に家族にとってはいざというとき頼りになってもらいたいかかりつけ医の機能が未だ不十分であるということが「何かあったら病院(勤務医)頼り」を存続させる大きな要因となっていると思いますね。

かかりつけ医、夜間・休日の電話対応は22.8% 日医総研調査 (2013年11月8日日本経済新聞)

 患者に身近な「かかりつけ医」で、夜間・休日などの診療時間外に電話対応しているのは22.8%にとどまることが患者らへの意識調査で8日までに分かった。患者は気軽に相談したり、必要なときに専門医を紹介してもらったりすることを期待しているが、緊急時への対応は不十分な実情が示された。

 調査した日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は「医師の高齢化に伴い、医師会による急患センターの運営などが困難な場合もある。時間外の対応は課題だ」と指摘している。

 調査は40歳以上の男女4千人を対象に郵送で実施。約半数から回答を得た。

 かかりつけ医の有無では「いる」が65.1%。自分のかかりつけ医に当てはまることを複数回答で聞くと「なんでも相談できる」(65.1%)、「病歴を知っている」(61.5%)、「専門医や病院を紹介」(56.1%)などが多かった。

 夜間・休日については自分のかかりつけ医が電話対応や診療をするかどうか分からない人も4割強いた

 政府は、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、かかりつけ医など地域医療を強化する方針を示している。〔共同〕

こういう話を聞くと日医はどう言い訳するか?などとつい余計なことを考えてしまうのですが、もともと地域の開業医に24時間かかりつけ患者への対応機能を持たせるということで始まったはずの時間外対応過酸(旧:地域医療貢献加算)もあまりに報酬額が安すぎて機能しないしないと言われてはいましたが、やはり全国開業医の先生もわずかな報酬で24時間365日縛り付けられるのはあまりに馬鹿馬鹿しいとお考えなのでしょうか。
実際に制度の届け出をした施設が30%、実際に加算をとっていたのが10%ほどだったと言い、平均的な診療所の月600人の外来患者に一人50円の加算をとっても月3万円にしか過ぎないのでは…とお考えなのはごもっともだとは思いますが、しかし多くの勤務医はその加算すらもらえないまま24時間365日の対応を強いられているわけです。
勤務医の先生方はよくあることだと思いますが、特に休日前などになると開業医のかかりつけになっている患者さんが調子が悪いと言ってやってくる、どうしてかかりつけに行かないのかと言うと「いや電話したんですけど、万一のことがあるから総合病院に診てもらった方がいいと言われて」などと言うケースはままあることですよね。
開業医は一人なんだからそんなに常時の対応は出来ないと言うかも知れませんが、勤務医は自分のかかりつけ患者に関して24時間365日いつでも呼び出される可能性がある、そしてその上で当直もし入院患者の面倒もみているのに、さらにこのうえ開業医のかかりつけ患者まで面倒をみろと言うのはあまりに負担が偏り過ぎていないか?不公平だと言うのが勤務医側の素朴な感覚ではあるわけです。

無論開業医側からみるとそんな負担の押しつけに嫌気がさしたから開業したのに、また余計な負担を押しつけられてはたまらないという気持ちもあるでしょうが、ともかく日医などがこれ以上の医師数激増はまかりならん、それよりも労働力の偏在を何とかすべきであると言っている以上、少なくとも一部の方々においては今まで以上に働いてもらわないことには仕方がないということになるでしょう。
もちろん人間向き不向きのあることですから、当直が嫌で嫌で勤務医をドロップアウトした先生にまた24時間対応をさせるというのもあまりにむごいというもので、その意味では勤務医の側も外来患者を抱え込まず逆紹介をどんどん増やしていくなど仕事を手放す努力がいるでしょうし、経営陣が「先生方もっと沢山患者を引き受けてくださいよ」などと言わずともすむような診療報酬体系に改めることも必要でしょう。
そして勤務医開業医を問わず多忙にしている普通の臨床医であればあまりやりたがらないが必要な仕事というものも沢山あるもので、例えば時間ばかりかかって実労働密度の低い出張検診や学校医業務などはわざわざ忙しい先生に行かせるような業務ではないと思うのですが、そんな中で先日こういう話が出ていたということを紹介してみましょう。

外来なし在宅診療所の開設容認に賛意-規制改革WGで委員ら(2013年11月8日CBニュース)

 規制改革会議の健康・医療ワーキング・グループ(WG)は8日、在宅医療・在 宅介護の推進についての議論をスタートさせ、東京都世田谷区などで在宅医療を 行う診療所を運営する医療法人社団プラタナスの大石佳能子総事務長からヒアリ ングした。大石総事務長は、外来機能を持たない在宅医療専門の診療所の開設を 認める国の指針を出すよう要望。出席したWGの委員らの多くが賛意を示した。 【佐藤貴彦】

 大石総事務長は会合で、在宅医療専門の診療所の開設に対する地方厚生局の対 応が、統一されていないと指摘。所によっては、外来診療を行う時間を増やした り、診療所の看板を大きくして外来患者に分かるようにしたりするよう求められ ることもあると説明した。その上で、在宅医療専門の診療所の開設を認める指針 を国が出すべきだと訴えた。

 さらに、在宅医療に携わる診療所を増やすため、▽医療機関の住所地以外の場 所に在宅医療のための出張所を置き、医薬品を納品させる▽使用頻度の低い医療 材料を小分けで販売する▽短期入所生活介護を手掛ける施設やホテルで訪問診療 する-といったことも認めるよう求めた。

 WGは同日、厚生労働省からも聴取。同省は、在宅医療に携わる保険医療機関の 扱いが中央社会保険医療協議会でも論点に挙がっており、診療側の委員からは、 外来機能を担わせるべきとの声があるなどと報告した。

先日往診により医者がぼろ儲けをしている!厚労省も問題視している!とマスコミに叩かれたばかりなのにさらに往診ビジネスを流行らせるようなことを言うとは何事だ!?と言われるかも知れませんが、考えて見るとこの在宅医療専門クリニックというのもなかなかに興味深いと言うのでしょうか、いっそ潔くていいんじゃないかと思いますね。
一部で高すぎる、悪徳商売の温床だと言う声もある往診料問題など経営面を抜きにして考えると、そもそもいつ患者が来るか判らない外来をしながら往診をするというのは医師一人でやっている大多数の診療所ではどだい無理な話であるはずなのですが、そうかといって代診してくれる同僚がいる病院の勤務医にさせればいいかと言えば彼らは彼らで普通は多忙すぎて往診どころではないですよね。
勤務体系的に出来ない医師達に片手間にやらせるから高い往診料で誘導が必要なのであって、むしろ往診業務は片っ端から往診専門クリニックへ誘導しそちらで食べていける報酬を出していけば手を上げる人もいるでしょうし、結果として普通の診療をしている病院や診療所の先生方は多少なりとも多忙さが減じるということになると思います。

もちろん今の高い往診料だけを持って行かれたのでは業務負担と報酬のバランスが取れませんから診療報酬体系は総合的に弄っていく必要があるでしょうが、勤務医にしろ開業医にしろ結局皆が機能分化をすることなく同じ仕事をしているというのが「全国どこで受けても同じ料金同じ医療」の皆保険制度という建前の矛盾ではあるわけです。
日本では今のところイギリスのNHSなどのように専門的医療を行う病院とかかりつけ医として機能するクリニックとを制度的にもはっきり区別するということはやっていませんが、皆保険制度の建前によってそこらの町医者がミニ病院化した結果CT普及率の異常な高さ(狭い日本に米国の倍のCTがあると言います)など医療そのものがおかしなことになってしまっていることは否定出来ません。
医師は全てが同じ存在ではないという建前を崩すことはまたぞろ日医あたりの根強い反対が出るでしょうが、医師それぞれにやりたい医療も出来る医療も違うのに制度上は同じものとして扱う方が無理が出るというものであって、まずはそのとっかかりとして今までにない極端に特化した医療ということから始めて見るのはありだと思いますね。
眼科医が耳鼻科医をみて「あいつら白内障の手術一つ出来ないくせに一人前の医者面しやがって」なんて考えることは普通あまりないと思いますが、勤務医と開業医も機能分化が正しく進んでおらず多分に同じ領域を共有しているからこそ近親憎悪的感情も芽生えようと言うもので、最初からどこまで行っても別物の存在という認識があれば案外当たり前に共存できるのかも知れませんよね。

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コメント

往診専門クリは人数によってまるめになるのかしら?
それだったら形だけ普通のクリにして高い往診料とったほうがいいね

投稿: | 2013年11月11日 (月) 08時37分

仕事と報酬の関係は何の仕事をしていても永遠の課題だと思います。
これから総合医も含めて全部専門医扱いにすれば報酬に差をつける根拠にはなるんでしょうけど。
でもそうなっても必ず既得権益が~とかなにかしら文句言ってるでしょうねえ…
医者って基本的に団結には向かない人種なんですかね?

投稿: ぽん太 | 2013年11月11日 (月) 09時30分

基本的に国が診療報酬総額抑制としてパイの大きさを規定してしまっている中で年々参入者が増えてきているのですから、奪い合いは今まで以上に厳しくなるのは当然なんですよね。
一方で意外なほど多くの医師達が金銭的にはすでに十分報われていると答えていることから、それでは何が不満の元になっているかということを考える必要があると思います。
その一つが不公平感ということであればこれまた是正の対象になるはずなんですが、どうも今までは全体をひとまとめにして過労だ過重労働だと言うばかりでこういう感覚的なところは手当が薄かった気がします。
結局は法令がどうとか制度がどうとか言うよりもこういうのは職場内の業務割り振りをどうするかといった身近なことがほとんどなんでしょうけれどもね。

投稿: 管理人nobu | 2013年11月11日 (月) 10時55分

本給は出来高制にして当直料思いっきり高くすればいいのでは

投稿: ぼんたま | 2013年11月11日 (月) 11時19分

出来高制は乱診乱療を招くとこれまた反対派が根強いですから
もっとも徐々にではありますが広まってはいるようですが

当直手当の引き上げについては完全に同意いたします
そもそも常勤医の当直手当と非常近医のそれに格差があり過ぎるので

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年11月11日 (月) 16時57分

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