« 制度誕生と同時になくなりそうな特定看護師制度、最終案まとまる | トップページ | 医療費抑制の議論と生活習慣病自己責任論 »

2013年11月13日 (水)

病床機能報告制度に根強い反対続く

先日少しばかり取り上げた「病床機能報告制度」というものが来年度からの導入を前に注目されるようになっていますが、何しろ地域の病床を機能面から四区分に分類しもっと強力に管理するというものですから、当然ながら医療系団体はそろって反対の声を上げているようです。

医療機能の病床規制、厚労省が修正案提示へ- 社保審医療部会に ? キャリアブレイン(2013年11月9日CBニュース)

 「病床機能報告制度」の4区分の医療機能ごとに、地域内の病床数をコント ロールする仕組みについて、厚生労働省が修正案の検討を進めている。当初は、 高度急性期などの区分ごとに病床数の上限を設けることも視野に入れていたが、 日本医師会や病院団体から批判が相次いでいた。同省は、早ければ社会保障審議 会医療部会の次の会合に修正案を提示する。【兼松昭夫】
 国際医療福祉大大学院と国際医療福祉総合研究所が9日、東京都内で開いた医 療シンポジウムのパネルディスカッションの中で、同省医政局の梶尾雅宏指導課 長が明らかにした。

 医療機関の機能分化を地域ごとにバランスを取りながら進めるため、厚労省は 10月11日の社保審医療部会に、▽現在の一般病床と療養病床を「高度急性期」 「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの医療機能に区分し、それぞれに病床数 の上限である「基準病床数」を設定▽手術件数などの基準を各区分に組み込み、 必要な機能に医療機関を誘導する―の2案を提示。しかし、医療機能ごとの供給量 を規制するこれらの内容に委員から批判が相次いだ
 梶尾課長はパネルディスカッションで、地域の医療ニーズに見合った機能分化 を促す何らかの仕組みが必要だとの認識を改めて示した。修正案の具体的な内容 には触れなかったが、社保審医療部会でのこれまでの議論を踏まえたものになる という。

 日本医師会と四病院団体協議会は8月、4区分の中から複数の機能を組み合わせ て報告できる仕組みを提言しており、修正案ではこうした内容も参考にするとみ られる。
 厚労省は、来年の通常国会に医療法の改正案を提出する方針を示しており、社 保審医療部会では、最終的な方向性を月内に固める。

知事権限強化で「壮絶ないす取りゲームに」-日慢協・武久氏が懸念表明(2013年11月11日CBニュース)

 国際医療福祉大大学院と国際医療福祉総合研究所が9日に開いた医療シンポジ ウムの講演で、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、地域での医療再編を促す ため、都道府県知事の権限を強化するという厚生労働省の提案に懸念を表明。 「これから壮絶ないす取りゲームが始まる」などと述べた。【兼松昭夫】

 厚労省が提案している都道府県知事の権限強化は、▽既存の病床数が「基準病 床数」を超える「病床過剰地域」で、正当な理由なしに一定期間、稼働していな い病床があれば、医療機関側に受け入れ再開か病床の削減を要請できる▽医療機 能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとの必要量を地域に確保するた め、過剰な医療機能から不足している機能への転換を医療機関に要請・指示でき る-などの内容。
 地域の医療ニーズに見合うように病床を有効利用する狙いだが、このうちの過 剰な医療機能からの転換について武久氏は、「指示ということは命令」と指摘。 その上で、「知事の選挙を応援しないと病院自体がなくなるという、土建政治の 二の舞いになる可能性がある」との見方を示した。

 武久氏はまた、国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に切り替える政 府の方針を受け、「国保の保険者が都道府県になると、知事は保険料制限に動く ことは必至」と語り、医療機能ごとの必要量を抑制する動きが各都道府県で起き る可能性も指摘した。

いや、すでに全国各地で基準病床数を突破して椅子取りが終わった段階になっている現実を無視して今さら椅子取りゲームが云々と言われても、すでに椅子をがっちり抱え込んでいる方々の既得権益としか受け取られないと思いますが、そう言えば四病協などは基準病床規制に引っかからない無床クリも強力に規制すべきだと開業規制論を唱えたりもしていましたが、自己矛盾は感じないのでしょうか?
そもそも彼ら医療系諸団体は国家権力による医師強制配置をもっと推進すべしと言う考えを公言してきたわけで、それはすなわち地域に必要な医療リソースは公的権力によって管理するのが当然であると考えていると言うことですから、管理される対象が医師個人なら問題ないが施設なら問題があると言う考えには世間の理解もいささか追いつけないものがあるように思います。
何故彼らがこうまで強力な反対論を繰り広げているかと言えば、要するに現在の施設・病床分布が地域の医療需要を適切に反映した妥当なものとなっていないことを自覚しているということなんだと思いますが、その結果やりたい医療と出来る医療が異なってきてしまうとすれば当然施設としての収益計画にも影響するでしょうし、最悪の場合「こんな仕事がしたいわけではないので」とスタッフの大量離脱も招きかねませんよね。
ただこれまた望みもしない医療に従事させるべく医師強制配置論を唱え、彼らの人生計画を破綻させようとしてきたことの裏返しでもあるわけですから、他人が不幸になるのは一向に構わないが自分がそうなるのは嫌だと言う発想はやはりこれまた世間の受け入れるところとはならないように思います。

いわゆる既得権益の絡む話はさておき、純粋に医療需要と供給体制のバランスということで考えれば、実のところ国内各地域それぞれで単に人口分布が異なるのみならず年齢階層分布も異なり、各疾患の有病率や求める医療サービスの方向性も異なるわけですから、本当に地域の医療ニーズに見合うように再編成を推し進めるとするとこれは大変な騒ぎになることが想像に難くありませんよね。
日本では病院というと公的あるいは非営利民間病院よりも民間病院が多いと言うことが一つの特徴になっていて、しかも標榜診療科の制約がないなど医療の供給に関してはかなり自由度が高かったため、言ってみれば手持ちのリソースで可能な範囲で最も儲かる医療サービスを各医療機関が好き放題やってきたと言う側面があります。
そうだからこそ国は診療報酬改定によって医療機関を誘導し社会的需要に適合するよう供給を操作してきたわけですが、「全国どこでも同じ値段で同じ医療を」と言う皆保険制度の性質上個々の地域の実情を考慮した細かい誘導などは到底出来ず、極論すれば大都会の真ん中でも人よりケモノが多いド田舎でも同じ医療をやっていると言うのは患者にとってもいささか具合の悪い状態ではあったと言えるでしょう。
この状況を変える手段として一つには昨今被災地や大都市圏を中心に注目されるようになった医療特区という制度があって、要するに全国一律ではなく地域内限定での特別な医療制度を認めましょうと言うことなんですが、うまく使えば様々な応用が利きそうなのは確かですが全国的に見れば未だごく例外的な存在に留まっているのも事実ですよね。

今回都道府県知事が地域の医療供給体制に大きな権限を持つことになり言わばそのビジョンが妥当なものなのかどうかが問われることになりますが、国であれば医療費の効率化がどうとか余計な雑念?も入るかも知れませんが、自治体の考える理想の医療供給体制とはやはり住民ニーズ主体になると思われますから、声の大きい人達の「あれも欲しい、これも必要」に引きずられて現場無視で話を進めるとどうなるのかです。
空きベッドが目立つような病院でもなかなか特養等に転換しないのも結局その方が儲けが出るからと言う側面が大きいというのと同じで、「地域ニーズが大きいのだからお宅は病院機能を転換してください」と言われてもそれでは経営的な担保はしてくれるのですか?と言いたくなるのは私立の医療機関が多くを占める日本である以上仕方のないことですけれども、現状ではそうした面にも配慮しているという話はあまり聞こえてきません。
当然ながら競合医療機関が減ることで今以上に勝ち組になる施設もあれば、いわば強制的にババを引かされて没落する医療機関も出るはずですが、「壮絶ないす取りゲーム」の結果医療機関の統廃合が進んだところでこれは国も推し進める既定の路線ということで無問題だと考えているのか、それとも単に何も考えていないだけなのかいずれであるのかですね。
ともかくも完璧な計画を策定し医療機関の割り振りも終えた、しかしその結果病院が潰れてしまって計画そのものも御破算になりましたでは何のことやらですから、各地の知事の方々は一歩間違うと蟻の一穴を穿つことになりかねないという危機感を抱いた上で、慎重に権限を振るっていただいた方が結局住民サービスに与える混乱が少なくなるんじゃないかという気がします。

|

« 制度誕生と同時になくなりそうな特定看護師制度、最終案まとまる | トップページ | 医療費抑制の議論と生活習慣病自己責任論 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

素人に権力あたえてまともなことになるはずがないのにバカだね

投稿: とんとん林 | 2013年11月13日 (水) 07時48分

知事は大学大病院に意見を聞いて計画をまとめるんですかね?
これは誰がブレインになるかでずいぶんと話が変わりそうな。
間接的に大学医局の支配力強化になる可能性も出てきますか?

投稿: ぽん太 | 2013年11月13日 (水) 08時22分

本来の仕事をしていないベッドを転換・削減するのは良い施策だと思います。
医師不足は、人口に対する不足という以上に病床数に対する不足なのだから。

病院経営者の自主的判断には期待できないし、経営者団体の談合にも期待はできないでしょう。
外の人間が強権をふるう形になるのも仕方ないと思います。

あとは、勝ち残った高度急性期・急性期病床では病床当たりの医師数を増やしていく施策をとってくれれば、厚労省には合格点をあげます。

まあ、目的は良くとも、結果が良くならないのはこの業界の常なので、不安を覚えるのも確かですが。

投稿: JSJ | 2013年11月13日 (水) 09時15分

理想的な地域医療体制にむけて環境を整備するための有力な手段になり得ると、前向きに捉えることは出来る話かと思います。
ただやはり実施段階でどうなのか?という不安は感じるところで、実際に都道府県毎に成功と失敗が別れそうに思いますが。
もちろん成功例をみてきちんとフィードバックが出来るのであればそれに超したことはないですが、下手すると知事が替わるたびに付け焼き刃の計画に現場が右往左往ということにもなりかねません。
ともかく医療内部からの自助努力には限界があると当事者が公言している以上、外部の誰かにお願いするのは仕方ないところではありますから、あとは行政次第ということですかね。

投稿: 管理人nobu | 2013年11月13日 (水) 10時55分

あんがい椅子の数より参加者の数の方が少なかったりしてなw

投稿: aaa | 2013年11月13日 (水) 11時30分

病院が多いと言うことはポストが多いということですから、統廃合ともなればその面の手当も欠かせないでしょうな
ただ今は昔ほどにはポストに執着する人間も多くないかという印象もあるのですが

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年11月13日 (水) 16時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/58561582

この記事へのトラックバック一覧です: 病床機能報告制度に根強い反対続く:

« 制度誕生と同時になくなりそうな特定看護師制度、最終案まとまる | トップページ | 医療費抑制の議論と生活習慣病自己責任論 »