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2013年10月 1日 (火)

似非科学の蔓延 トンデモさんの鑑別法とは?

「漫然と大病院に行き、漫然と薬を常用する「自立できないおいしい患者」は「ダメ医者」を太らせ、病気とも縁が切れない」と言い、癌患者向けの情報提供サイト「e-クリニック」を立ち上げるなど患者への情報発信を積極的に行っている岡本裕医師が先日こんなことを書いていましたが、冒頭の一部なりと抜粋させていただきましょう。

40歳過ぎのランニングは「元気の浪費」 「患者リテラシー」の有無で健康寿命は決まる(2013年9月13日日経ビジネス)より抜粋

-岡本先生は、がん患者同士の情報交換や治療へのアドバイスを行うウェブサイト「e-クリニック」を運営されて12年になります。患者の自立度が治療結果を大きく左右すると以前から強調されています。患者の自立というのは、どういうことですか。

岡本:病気が治るというのは、医者が治すんじゃないんです。自分で治すという意志がないと治りません。患者自身が、何が正しく何が必要かを見極めていく力をつけることが一番大事です。それが自立です。
 医者というのは本来、活用するための存在なんです。医者の限界とか守備範囲を知って、患者がある程度対等にならないと活用できません。コンピューターと一緒です。いくら素晴らしくても使い方が分からなかったら使えないし、そもそも万能でもないでしょ。
(略)
-自立していないおいしい患者は高齢者に多いのかもしれませんが、ビジネスパーソンはどうでしょうか。特に現在の40代以下の人は若い頃からパソコンとインターネットを使っているので、情報収集能力の高い人は多いと思いますが。

岡本:情報収集よりも、大事なのは情報を取捨選択する力です。何が正しいか正しくないかという、見極めの力を持っているかどうか。
 例えば日本人ってダイエットの情報が好きですよね。最近だと糖質制限ダイエットなど、はまっている人は多いですね。でも、それを長く続けたらどうなるのかなと、それで健康になれるのかなと疑問に思うのが、リテラシーであり自立だと思うんですよ。

-「炭水化物を摂らないと、脂肪が燃えて痩せる」という説明で納得していましたが。

岡本:だとすると、人間の体は炭水化物を必要としないように進化しているはずですが、そうじゃないでしょう。
 基本的に、極端なところに真実はないと思います。生物の体というのは曖昧にできているので、糖を全く摂らないとか、不自然な極端なことをして健康になれるはずがない。自然から離れすぎると体に悪いんじゃないかと考えるのがリテラシーでしょう。薬も同じです。一時しのぎに使うのはよいけど、常用すると寿命を縮めます。
(略)

岡本氏の主張もかなり極端なところも多くて、必ずしも全面的に賛同できないという方もいらっしゃるかと思いますけれども(苦笑)、ただこの自立していない患者が多いという点は実感として大いに判るという意見も多いかと思います。
良い患者の定義というのも色々とあって、人によっては「黙って医師の言うことに黙々と従うのが良い患者だ」と言う人もいるかも知れませんけれども、やはり患者の自己決定がなければ一歩も進めなくなっている今の時代にあっては、医療側から見ても理解しようする意志と正しく決断する能力を備えている患者こそが良い患者であるという考え方が出てきておかしくないですよね。
その前提条件として正しい情報をきちんと必要なだけ仕入れるという作業が必要になってくることは自明である一方、多くの多忙な臨床医達が「そうは言っても理解力も千差万別な患者が大勢いるのに、全部が全部きちんと理解できるまで説明するのは無理だよ」とくじけそうになるところを、患者向けの情報サイト運営という形でボトルネックを解消しようとしたところに岡本氏の功績があるのかなという気がします。

さすがに新聞テレビしか情報源がないという、いわゆる「情弱」な方々はさておくとして、今の時代その気になれば幾らでも情報の量だけは揃いますけれども、怪しい代替医療の宣伝サイトなどといった例を出すまでもなく、過剰とも言えるほど山積している情報の中から必要かつ正しい情報を取り出していくという作業は確かに非常に重要性を増していると言えますよね。
例題としてしばしば取り上げられるDHMOなども個々を見れば嘘ではない情報が正しい結論を導くとは限らない好例だと思いますが、何しろ多くの場合商売が絡んで言わばプロが騙そうと思って騙しに来ているのですからタチが悪いと言うもので、多くの場合その方面の専門的知識がないだろう情報の利用者としてはある程度情報のソースに対する信用度によって情報の信頼性を判断するしかないわけです。
以前にホメオパシー問題を取り上げた際に、彼らホメオパスシンパが「多数の科学者がホメオパシーの有効性を認めている!」と言い張っている、そのソースを辿っていくと同類とも言うべき代替医療論者の論文ばかりだったというトンデモないオチがありましたが、やはり長年の試行錯誤の果てに成立してきた現代の真っ当な科学的検証の手法というものには一定の敬意を払うべきではないかと言う気がします。

「科学」にだまされないで 健康食品のウソ・ホント/有路昌彦(2013年9月24日日本経済新聞)

 「体にいい」とうたわれているものの多くには、いろいろと「非科学」の世界が広がっています。問題なのは、非科学であるにもかかわらず、科学のふりをするものが巷にあふれていることです。
 例えば比較的最近の例では、消費者庁からおとがめを受けたものとして「マイナスイオン」があります。マイナスイオンの効果については懐疑的な意見を持つ科学者が多いにもかかわらず、大手企業はあたかもそれが科学的に確立した機能のように商品を販売しているケースもあります。科学論文を読む機会がない人々の間では、効果があることの方が常識になっているような状態です。

■酵素は体内で分解される

 食品の世界はさらにいろいろなものがあり、しかも次から次へと生まれてくるのでキリがありません。今回は最近流行りの「酵素」について取り上げましょう。ここで言う酵素とは「酵素ドリンク」など健康食品の世界でブームになっているものです。
 そもそも酵素というのは高次のアミノ酸化合物(タンパク質)であり、代謝系に何らかの働きをもたらすものです。人の消化・代謝は酵素の働きによるものが多いことは広く知られています。
 酵素は生命の活動の重要な要素になっており、それゆえ植物や動物などの多くの生物が酵素を持っているわけです。そこから、「酵素を摂取すれば健康になる」とか、「アンチエイジング効果がある」という話が出てきているようです。

 ちょっと冷静に考えてみましょう。
 タンパク質は体内に入るとアミノ酸に分解されて小腸で吸収されるというのは、中学校までの生物で学んだとおりです。酵素もタンパク質の一種ですから、体内で分解され、体内で必要な分だけ必要な形に合成され、生命の活動に使われます
 酵素を口から飲むと、分解されるわけで、その酵素の効能が得られるという科学的根拠はどこにも存在しません

■「科学者」にだまされない

 こういった非科学で問題になるのは、それを科学のように見せる科学者の存在です。
 私も研究者としてこの点は特にはっきりしておきたいところですが、学会で発表したとか、研究しているという程度のものを科学と呼んではいけないと思っています。しっかりした学会の論文として、査読のプロセスを経て掲載され、手順を踏んだものを科学と呼ぶべきと考えています。
 例えばある食品を与えるグループと与えないグループの比較対象実験を行ったとします。そのグループの差異を生み出す要素が、その与えた食品以外、完全に同じにしてこそ実験の意味があります。しかし、その状況を整えることは、それほど簡単ではありません。
 また統計学を専門としている立場から見ていると、統計の数字を都合のいいようにいじる人が、残念ながら研究の世界には存在しています。そういったものを排除するのが査読というプロセスなのです。
 つまり、「○○大学の○○教授が効果があると言っている」は、科学的根拠にはなりません。その先生の論文が、査読を経てその学会で認められてこそ、初めて効果があるという科学的根拠になるでしょう。

■危険を煽ってるものこそ危険

 実は、簡単に非科学と科学を見分ける方法があります。「マッチポンプ」をしているかどうかです。
 「世の中の食べ物は何を使っているかわからないので危険。だけどこれを飲んだら健康になれる」というようなものです。「危ない」と危機感をあおって、これで危険から回避できると自社の商品を売り付けるマーケティングの方法を、マッチポンプ商法と言い、古くから使われています。
 そういう食品の大部分には、まず疑いの目を向けるのがよいでしょう。

 先進国において、食べ物に危険なものなどほとんど存在していません。食べ物のリスクは過去と異なり、現在は厳しい管理下に置かれ、細菌やヒスタミンなどの食中毒以外、リスクは極めて低いからです。欧州でリスク管理の目安となる、100万分の1以下のリスクに抑えられており、ほとんどが1億分の1以下です。
 「危険」という言葉がもつイメージは、食べたら50%くらいの確率で健康被害を受ける感じではないでしょうか。実際には、それとはかけ離れて小さなリスクなのです。
 それを「危ない!」と言いきって物を売る商法には、乗らないほうが賢明なのです。

こうした話が出ると一方では決まって「頑迷な科学界の無理解」だとか「御用学者の陰謀論」なんて反論が飛び出してきて収集がつかなくなりますけれども、科学者であれば誰であれ人が考えたこともないような画期的な 新しいアイデアを夢見ているのは当たり前のことで、ただその検証が正しい手法で行われているのでなければ世に数多く噴出するトンデモさんと区別できないの ですから、これはまともに相手にされないのは当たり前ではないでしょうか。
学問の話は難しいと言われる方には商売の話で考えてみれば判りやすいかも知れませんが、例えば健康食品などに関して言えば今時世界中の巨大製薬資本が少しでも有用そうな物質を実用化して大儲けしようと鵜の目鷹の目で探し回っている中で、そうした網の目にすら引っかかってこないようなものは大抵箸にも棒にもレベルと考えていいのかなという気がします。
とはいえそうした判断もある程度基礎知識がないと難しいところで、一般市民からすればいずれも聞いたこともない企業が出している何かと言う以上の知識もない以上、そこで自ら疑いをもって積極的に情報収集をするか、それとも判らないがとりあえず信じて疑わず大金を投じるかと言うことが詐欺紛い商法に引っかかる分かれ目になるということなのでしょう。
こうした詐欺紛い商法のもう一つの特徴として昨今気になるのが確かに体に悪いものではないし正しく使えばそれなりに効果もあるかも知れないが、しかしいくら何でもその単価はボり過ぎだろうと言う相場無視商法(仮称)の存在で、月数百円の血圧の薬を飲みたくないからと毎月数千円の健康食品を飲み続けていると言ったケースなども大きくはこの範疇に含まれるのかも知れませんね(ナニワのおばちゃんの健康食品利用率はどうなんでしょう…)。

そもそも科学的リテラシーがどうやって養われるかということを考えた場合に非常に気になるのが、昨今学校でまともな科学指導が出来る教員がいないと言う問題で、科学技術振興機構(JST)の調査によれば実に7割の中天文部や生物部のような科学系の部活動(科学部)がなく、こうした科学部に所属している生徒は全体のわずか1%に過ぎないという現実があります。
その理由として顧問となる指導者がいないことが7割に上ったと言いますから指導者層からして科学的リテラシーの欠如があり、それが世代を超えて伝播し始めていると言う可能性がありますけれども、この調子ですと科学立国日本などと胸を張っていられない悲しむべき未来絵図が想像されてしまいますよね。
冒頭の岡本氏のような個人レベルの努力に頼るのではなく公的な支援システムが望まれるところなのですが、例えば厚労省が難病に関する臨床医からの質問に専門家が答える「難病医療支援ネットワーク(仮称)」を設立することに決めたと言うニュースが出ていて、そうしたサービスの一般版が出来れば有用性が期待出来そうに思います。
今現在もネット上で自由回答の掲示板などが各所で稼働していますが、一つには回答者の質的担保(トンデモの鑑別をしたいのに答えるのがトンデモさんでは仕方ありません)と言う点と、もう一つは専門家を拘束するのであればコスト負担がどうなるかが問題になりますが、幸いにも今やスマホ全盛の時代ですから少額の課金で専用アプリを購入してもらうようにすればいいんじゃないかなと思いますね。

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コメント

この人自身がかなりトンデモさんに見えるのは気のせい?>岡本裕医師

投稿: | 2013年10月 1日 (火) 08時39分

悪い人じゃないんだろうけど大槻教授みたいなタイプなんですかね?
ただマッチポンプ論は商業主義鑑別には有用ですが科学非科学の鑑別にはどうかって気も。
薬屋絡みの講演会なんてまさに「だけどこれを飲んだら健康になれる」の世界ですが一応科学の範疇とされてますし。

投稿: ぽん太 | 2013年10月 1日 (火) 09時53分

極論に反論するのに極論を用いるということは結構ありがちなようで、それがいきすぎるとこれまた明示された根拠もなくとにかく否定という非科学的な態度になってしまいますね。
一方で世の中の人々は「医学博士は必ずしも医師ではない」といった当たり前のことも知らない場合が多いようで、騙されないための基礎知識のようなものは整備しておく必要があると思います。
ある程度パターンを把握してしまえば、「ああこの人達今日もがんばってるなあ」と楽しみながら生暖かく見守ることも出来るようになるのでしょうけどね。

投稿: 管理人nobu | 2013年10月 1日 (火) 11時37分

金儲け目的=悪という論旨には賛同しかねます。
利用者を健康にして自分も儲けることの何が悪いんですか?
一部の悪徳業者が嘘をついてだますから悪いってだけでしょう?

投稿: 富樫 | 2013年10月 1日 (火) 13時48分

>金儲け目的=悪という論旨
恐れながら、テストの解答なら×かと。

投稿: JSJ | 2013年10月 1日 (火) 16時18分

無駄な酵素を買わされたってたいした害ではないですよ。
一番危険なのは[がんもどき理論]とその理論で名前を
売っちゃったヒトでしょうね。

[がんもどき仮説]を提示したのは自由ですけど、
その後、ぜんぜん同仮説を証明していくための
実証研究をやった様子はないですよね。

反証しようにも提唱者が「もどき」か「もどきじゃないか」の
判定はつかない様子ですから、これはもう科学じゃないですね。

でも百万部以上売っちゃうんですよねーーー

投稿: 嫌われクン | 2013年10月 1日 (火) 21時42分

あれは科学ではなく信仰だから
そもそも検証の対象にはならない

投稿: | 2013年10月 1日 (火) 22時14分

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