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2013年10月18日 (金)

福島原発作業から読み取るべき教訓

本日の本題に入る前に、先日「新小児科医のつぶやき」さんのところで「月200時間の残業を容認する36協定書を受理した国を提訴した事件が結審」というびっくりするような記事が紹介されていたものですから興味深く拝見したのですが、まあしかし労基署というところもそれなりに大変であろうことは理解出来るにしてもあまりにあまりな話という印象は受けますよね。
昨今話題になることも多いブラック企業というものの鑑別法として、先日「弁護士ドットコム」の記事で「初任給が「残業代込み」だったら気をつけろ!」というそのものズバリな記事が載っていましたのでこれも興味深く拝見したのですが、注目すべきデータとしては「離職率」や「平均勤続年数」なども挙げられるのだそうで、ともかく企業の側が出したがる数字ばかりを漫然と見ていたのでは落とし穴にはまってしまうという困った時代です。
以前におもしろい記事があると紹介したことがありましたが、雇う側には雇う側で「不平不満も言わずまじめに働くいいやつだと思っていたのに有給を取りたいと言いだしたり、ついには残業代まで要求してきた。人間不信に陥る」なんて声もあるようですから、逆説的にブラック企業に勤める側もそろそろ最初から慰謝料をふんだくるくらいのつもりで入社してくる人間も出てきてもおかしくないのかなと言う気もします。
ただ根本的にはやはり他人の労働に対する正当な評価ということが社会に根付かなければブラック企業問題は解消しないはずで、外食大手が名ばかり管理職で残業代支払い命令を受けたなんて話を聞けば「ブラック企業ざまあw」と思う人が、ファミレス大手が消費税値上げ後もコスト削減につとめ日替わりランチの値段は死守したいと言っていると聞けばGJ!と手を叩いて喜ぶというのは、やはりおかしなことだと思わないといけないでしょうね。

さて、このところ原発事故の後始末と関連して福島原発で相次いでトラブルが発生していて、しかも報道から見る限りその多くがちょっと信じられないようなうっかりミスに端を発していることから東電はどこまで駄目なんだとか、こんな企業に任せていたのでは絶対にまともな作業など期待出来ないという声すら上がっています。
これに対して東電側が「作業は下請けがやっている。マニュアル通りに手順を守ってやっていれば支障はない」と答えたなどと報じられたことから「それなら高い給料もらってる東電社員が自分でやれよ!」と火に油を注いだ形なのですが、まさにマニュアル通りにやっていれば何も問題がないはずの単純作業の繰り返しで何故こうまで手順間違いが発生するのか非常に気になるところですよね。
思い返していただきたいのが事故発生直後、現場の状況を把握しようとしてロボットを突入させるということになり、通路を進ませていたところ図面と違う構造になっていたため結局途中で断念したということがあったと思いますが、東電に限らず多くの現場では構造や運用で現場の実情に合った形でモディファイしているのが普通であって、普段仕事をしている人間は皆知っていたり、見れば判るといった状況ですから支障はないわけです。
ところがたまに新しいスタッフが入ってくると知っていて当然と思い込んでいた共有知識を知らないものだから思ってもみない事故が発生する怖さがあって、よくある「消毒薬を飲み物の空き容器に小分けしていたところ誤って患者さんに注入してしまった」なんて馬鹿げた事故もこういった理由で起こることが多いのだと思いますね。

ともかくも当たり前に共有出来てきたはずの情報が受け継がれなくなった時の怖さをまざまざと示してくれたという点でも今回の事故は非常に大きな教訓をはらんでいると思うのですが、何故そうなったのかということを想像してみるに不詳管理人などはもちろん現場の状況は承知しないのですけれども、やはり放射能汚染の問題が大きく関わっているのではないかという気がしてなりません。
元々技術的な問題、あるいは保安上の問題などもあってそうそう誰にでも入って来られない閉鎖的な施設内で決まった人達だけが働いていた、ところがそうしたベテランは事故後もそこで危機対処をしていれば当然いつかは線量の限界を超えて立ち入り禁止になってしまいますから、それを補うのは後から入って来て事故前の本来の状況も何も知らない素人となってしまうのは当然です。
もともと構造が改変されたような現場で津波被害に遭い爆発事故も起こり、さらに応急の工事があちこちでなされているのですからもはや原型をとどめないような場所も多いと思いますけれども、こうした現場で次々と基礎的な情報も持っていない素人の下請け作業員が現場の空気を承知していない上司の指示通り働けと言われてまともな仕事が出来るのかどうかで、実際かなり悲惨な状況になってきているようです。

作業員「線量パンクでポイ捨て」 福島第一、下がる士気(2013年10月13日朝日新聞)

 【根岸拓朗、笠井哲也、岡本進、木村俊介】東京電力福島第一原発で9月以降、単純な作業ミスによるトラブルが続いている。放射線量の高い現場で働き、汚染水まで浴びた作業員もいる。ミスの背景に何があるのか。

 「浴びちゃったな」「きょうも高かったな」
 第一原発の出入り口「入退域管理棟」。その日の仕事を終えた作業員たちが、渡されたレシートのような紙を見てつぶやく。無言で数字を見つめる人もいる。
 記された数字は、被曝(ひばく)量。1日で2ミリシーベルト近く被曝する作業員もいるという。一般人の年間被曝限度の2倍近い。
 建屋周辺は今も毎時100ミリシーベルト超の場所がざら。作業ごとに浴びる線量を想定して計画を立てて現場に向かうが、1年間の被曝限度50ミリシーベルトを超えると、その年は現場では働けなくなる
 「被曝線量がパンクすれば、ポイ捨てされるだけ」。10年以上、第一原発などの原発で働いてきた30代の男性は、そう自嘲する。
 原発作業員が「ポイ捨て」されると語った男性は、事故前は原子炉建屋内などの作業でチームの責任者も務めた。事故直後、避難先から志願して戻り、原子炉に水を入れるために建屋にホースを運んだ。被曝(ひばく)量が1時間で10ミリシーベルトを超え、「死ぬかと思った」こともある。

 五輪に沸き返る東京の様子や、消費税増税がメディアをにぎわす一方で、第一原発の報道はトラブルばかりで、作業員の声はほとんど報じられない。被災地に著名人が慰問に訪れても、作業員には会わずに帰る。
 「今は社会全体で応援してくれる空気が感じられない。モチベーションがどんどんなくなる」とぼやく。
 入退域管理棟で働くベテランの男性は、汚染水絡みのトラブルが相次いだ夏ごろから、作業員の肌や下着の汚染が増えたと感じる。
 防護服に全面マスクを身につけてはいるが、マスクを外す際に汚れた手袋で首筋に触れる人もいるという。「事故後にゼネコンが集めた作業員は経験も知識も浅く、防護服も上手に脱げない
 しかも、第一原発は通常の発電所と違い、がれき撤去やタンクの据え付けなどで少しずつ様子が変わっていく。事故前の作業経験が通用しない現場もあるという。

現場の作業員は決して適当に手抜きをしているわけではなくて、むしろ労基法越えの過酷な労働をしているという報道もあるように精一杯努力しているのでしょうが、その貴重な努力がしばしば無駄になるどころかかえって問題を大きくしかねない状況にある、そして国民からは「何をのろのろやってるんだ馬鹿野郎!」と始終罵声を浴びせられているのですから、それはモチベーションも下がろうと言うものですよね。
それでも相応に報われているというのであればまだしもなんですが、以前にも取り上げましたように下請け会社の従業員とは名ばかりで名も知れぬ日雇いを一山幾らで連れてきて限度一杯まで働かせる、そして給料から作業手当までほとんどを中抜きしてしまうというのでは、到底真っ当な仕事をやろうという気にもならなければ出来ると言う状況でもなさそうです。
労働法規云々を離れてもこの伝わっていなければならないはずの知識の断絶する怖さは人ごとではなく、医療などは特に施設毎どころか医師一人一人が微妙に違った流儀で仕事をしているところがあって、ベテラン看護師などが「あの先生がこう言ったらこういう意味」などと翻訳しながら回している施設もあるようですが、これまた一朝事あるときはどんな齟齬が発生するか判らない危ない橋を渡っていると言えますよね。
最近は何でも医療の標準化と言われる時代ですが、それは単純にガイドラインを作ってその通りにすればいいと言ったレベルに留まるものではなくて、例えば日本全国いつどこに行こうがどんなスタッフの組み合わせだろうが当たり前に滞りなく仕事が出来るということも、日常診療にも還元出来る非常に重要な標準化の行程ではないかという気がします。

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コメント

今月に入り、福島第1原発で立て続けにトラブルが起きている。
ほとんどが「タンクにゴムパッドを置き忘れた」といった単純ミスだが、
原因は作業員の人手不足と士気の低下だ。事故の年は3万円近かった日当が今では半分以下に。
なのに、国と東電が「急げ、急げ」とプレッシャーをかけるから、ミスが増えるのも当然だ。

士気の低下はカネのせいだけじゃない。福利厚生面の待遇悪化が作業員のやる気をそいでいるという指摘がある。

以前は線量オーバーで離職した作業員は、無料で健康診断や人間ドックを受けられたが、
今ではよほどの高線量を被曝(ひばく)しなければ認められないという。
作業員の取材を続けているジャーナリストの布施祐仁氏が言う。

「東電のコストカットで、事故直後は温泉旅館やホテルだった作業員の宿がプレハブみたいな仮設住宅になりました。
しかも個室ではなく相部屋がほとんど。これではプライベートを保てないし、疲労回復は望めないでしょう」

作業員は床にマットを敷いただけのプレハブ内で雑魚寝をして休憩する。
全面マスクと防護服で包まれた作業員はいつも汗でビッショリ。
そんな男たちが集まれば、異臭もするし食事どころではなくなる。
しかも、以前は新品の下着が毎日支給されていたのに、今は洗濯して再利用するようになった。
他人の臭いが残っている場合があるという。

<ムワッと漂う男臭で仕事どころじゃない>

「作業員が口を揃えて『クサイ』と訴えるのがマスクにこびりついた臭いです。
呼吸口のフィルターは毎回交換しますが、ヘルメット部分は事故直後から使い回しているものがあるそうです。
かぶった瞬間、ムワッとした男の臭いで息苦しくなるといいます」(布施祐仁氏)

福島原発はただでさえ危険な現場だ。
給料が安いうえ環境が不衛生では、腕のいい働き手が集まらなくなるのは当然といえる。
蟹工船みたいな労働環境の改善は喫緊の課題だ。
http://news.infoseek.co.jp/article/17gendainet000195591

投稿: | 2013年10月18日 (金) 08時12分

日当が安くなっているそうですがちゃんと労働者の手にわたっているかも大事ですね。
国はこういうところでこそ中抜き規制なり考えればいいのに。
しかしこれはいずれ大事故がまた起きるかも知れないですね…
人手がいらないロボットが実用化されるのと作業が破綻するのとどっちが早いでしょう?

投稿: ぽん太 | 2013年10月18日 (金) 09時03分

 3.11の時点でわかっていたこと。
 人為的に封じ込めるのにどれだけのマンパワーが必要か、
 それをまともに既存の「働き方の基準」で達成しようとしたら、どれだけの銭がいるのか。
 もとより 今の日本にそれを支える力などない。
 対策する努力の「ふり」をしては破綻させて見せ、
 妥協で基準を劣化させる。 何度も繰り返して。
 ほかに働き場のないワープアはいくらでも作り出せるつもりだろう。彼らを投入して努力(の振り)をつづけるのだろう。  

 日本は落ち込まざるを得ない。国民生活は劣化せざるを得ない。アメリカよりひどくなる。当たり前だ。借金の額を見なさいよ。

 日本全体平等に貧しくなるより、一部の特権エリートを抜けださせて全体を引っ張れば、ましになる、とは
 経済界トップ連中の言い草(島本慈子 ルポ雇用 2003岩波新書)で、この10年(20年かも)続けている。

詐欺師の感性。日本で詐欺がはびこるわけだ。(ところで小泉は呆けたのかな?)

 積極的にワープアを作り出すようなやり方で、国民の不幸が減らせるのか、お手並み拝見w  

投稿: 事態の深刻さがわかってない | 2013年10月18日 (金) 10時10分

巷間では話題になるのが東電の責任問題ばかりで、責任を取れ責任を取れと言っていれば東電側に強制力を発揮できるかのように思っていますが、現場で働いている下請けには別に責任なんてものはないわけです。
それを働かせようとするなら別なインセンティブを提示しなければならないはずなんですが、今のところ全くそういう動きがないのは非常によくない傾向ですよね。
原発事故というと大事件ですが、時間が経つほど使命感や義務感といったものは薄れ単なる仕事になっていくのは仕方がないですし、それならば割がよくない仕事にまともな人が集まらないのも当たり前です。

投稿: 管理人nobu | 2013年10月18日 (金) 11時12分

残念ですが福島原発はもうコントロール不可能でしょうね。そう思って対応したほうがいいでしょう。
そもそも原発を人知でコントロールできると思っていること自体が間違いです。
普通の見識のある国民であればもはや誰でもわかってるんじゃないですか?
東電を解体したら責任のなすりつけ処がなくなる(批判は国にダイレクトに向かう)ので、意地でも解体しないのでしょうね。きわめて日本らしい姑息な責任回避手段ですね。
この手法は日本人には理解できても外国人には到底理解できないでしょうね。国は何をやってるんだ?とね。

投稿: 逃散前科者 | 2013年10月18日 (金) 14時31分

ところで全くコントロールできなくなったらどうなるんでしょう?
爆発して福島全域が汚染?もっと広範囲に被害が出る?
チェルノブイリみたいにコンクリで固めちゃったんじゃダメなんですか?

投稿: てんてん | 2013年10月18日 (金) 14時48分

>東電を解体したら責任のなすりつけ処がなくなる
>きわめて日本らしい責任回避
 そうそう。バブル崩壊もリーマンも、税金注入で案山子を存続させる手口。今度は東電に何兆つぎ込む?そろそろ玉切れだが。

 問題解を決する気などない。責任追及の矛先をかわし(いや、利用し)懐を肥やすものたちが、自らを国のリーダーだと嘯く。

 てんてん さん
 誰かさんが相当きっちり検討しただろうが、年金の破たんと同じで決して表に出てはこない。性根(しょうね)が詐欺師。
 ドイツ人なら最悪のケースを起点にして対策を考えるだろう。そして理念を守ったうえで最高のコスパを実現するだろうが。
 日本人は詐欺師の言うまま徒労をかさねた挙句、理念を捨てて生き延びることに汲々とすることになる。

管理人様
>今のところ全くそういう動きがないのは非常によくない傾向ですよね。
 シナリオ通りでしょ。
 労働基本法? 何それ? 食べられるの?

  

投稿: 今に始まったことじゃない | 2013年10月18日 (金) 16時20分

なに悲観主義に陥ってんの?もっと明るい未来を見つめようよ
ニッポンの未来は♪世界がうらやむ♪

投稿: | 2013年10月18日 (金) 16時59分

 心不全のため亡くなったマンガ家・やなせたかし氏が地方自治体などから無償で仕事を
依頼されていたことについて、マンガ家・吉田戦車氏が「そこに作品に対する敬意はあるのか?」と
Twitter上で言及している。

 数多くのご当地キャラクターの制作も手がけていたやなせ氏。コピーライター・糸井重里氏の
公式サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載されている対談によると、なんと高知県だけで50以上、
全国では200ものご当地キャラを生み出したという。さらに驚くべきことには、数件を除いて全て
ノーギャラで依頼された仕事だそうだ。

 やなせ氏は「俺は巨匠にならないと決めたんだから、くだらない仕事であろうとやらなくちゃいけない」と
フォローし、笑い話のように語ってはいるが、「原稿料なしなの。つまりですね、すごく軽く見られてるんだよ」と
衝撃的な事実を明かしている。

 吉田氏は17日、「ボランティアが適切である場合は、もちろん除いて」と補足しつつも、
「あの人の『タダ働き』に甘えてきた多くの自治体とか組織は恥じろ、と思いますね」と痛烈に批判。
無料で仕事を引き受け続けたやなせ氏も良くなかったと言えば良くなかったかもしれないが、
「そこに甘えて描かせたほうの気軽さはちょっといやだ」と語り、「そこに作品に対する敬意は
あるのか?ってことですよな」と怒りをあらわにした。

 ネット上では、「確かに個人レベルでもデザインやイラストの仕事を『ちょっとお願い』とプロに
無報酬で頼む人は多い」と吉田氏の怒りに同意する声が上がっている。また、今年4月には、
政府主催の第2回クールジャパン推進会議で、民間議員を務めるプロデューサー・秋元康氏が
クリエイターに無報酬で協力を求める趣旨の発言をしたとして、物議をかもした。

 やなせ氏は、13日に心不全により94歳で亡くなった。

RBB TODAY http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131018-00000018-rbb-ent

投稿: | 2013年10月19日 (土) 06時39分

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