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2013年10月17日 (木)

生レバー提供による食中毒で初の逮捕者

本日の本題に入る前に、仕事をしていて思わず「やっちまった!」と真っ青になる瞬間というものは誰にでもあると思いますが、こちらかなり「やっちまった!」度が高かったのではないかなと想像出来る記事が出ていました。

結核発病の男性医師、マスクせず635人診察(2013年10月15日読売新聞)

 静岡県は15日、同県伊東市で診療所を開業する50歳代の男性医師が結核を発病したと発表した。

 医師は症状が表れた今年8月から9月26日まで、観光客も含めて10都道県の男女635人を診察した。同県は診察を受けた患者らに連絡し、説明会や健康診断を実施する。

 発表によると、医師は8月中旬頃からせき込み始めた。9月26日、診療所で自らレントゲン撮影したところ、肺に結核の症状を発見して休診。その後、病院を受診し、今月2日に結核と診断された。休診までマスクを使用せずに診察していたという。静岡県は今後、診察を受けた人のうち幼児や糖尿病患者ら392人については、健康診断を実施する。

 診療所名について、同県は公表しなかった。壁下敏弘・県医療健康局長は「診療所の医師は1人だけで、診療所イコール医師の個人名となるため」としている。

伊東の医師が結核発症(2013年10月16日中日新聞)

◆診察635人に健診実施へ

 静岡県は十五日、伊東市で診療所を開業する五十代の男性医師が十月二日に結核と診断されたと発表した。県疾病対策課によると、医師はせきなどの症状が出始めた八月中旬から診療を中止する九月二十六日までに六百三十五人を診察していた。同課は、六百三十五人を接触者として、十七日から伊東市観光会館などで順次、説明会を開き、健康診断を実施する。

 同課によると、医師はせきの症状があったため、九月二十六日に診療所で自らエックス線撮影し、左肺に異常を認めて診療を中止。結核専門病院で結核と診断されて入院した。医師は診療所で外科、内科などを一人で担当し、診察中にマスクを付けていなかった

 県は、接触者のうち乳幼児、糖尿病患者や二回以上診察を受けた三百八十六人と医師の家族、診療所職員ら六人を優先的に健康診断する。家族らは結核の症状は出ていない。

 接触者のうち県内は五百八十八人で、三十六人が東京、神奈川など九都道県。県はこれまでに説明会の実施などを連絡した。残る十一人は生命保険加入のための健診で個人住所は不明だが、生保会社が把握しているという。

これだけ広範囲に暴露されると後始末で大騒ぎになりそうですが、記事から注目すべきなのは8月に咳の症状が出てから9月末まで症状が続いていたにも関わらずマスクもせずに診察をしていたということで、別に一部ホームのように「咳や熱のある人間は一切出入り禁止」とまでは言いませんが、結核に限らず一般の呼吸器感染症として考えてもあまりにお粗末ではなかったかと言う気がします。
感染症患者が非常に多い小児科医などは感染予防対策も相当に神経質だったり、逆に「僕はもう大抵の風邪は免疫出来てるからね」などと妙に無神経だったりしますけれども、いずれも少なくとも自分がもらうことはあっても自分から他人に移さないように配慮しているのは当然で、全国多数の医療関係者はこの事件を以て他山の石と為していただきたいですよね。
さて、感染予防と言えば医療関係者よりもむしろ神経質なのが食品関係者で、特に加工食品の工場などは非常に厳しく管理をしているというのは法律上の規制はもちろん、ひとたび何かあれば後始末で会社が潰れかねないのですから当然と言えば当然なんですが、一方で末端飲食店レベルになるとかなりいい加減なところもあるようで、当然ながらたびたび食中毒事件が発生します。
基本的になんであれ十分加熱したものをすぐ食べてもらえばそうそう大きな問題はないと思いますが、いわゆるこだわりのお店ほど味や食感重視でぎりぎりの加熱で出そうとする、そしてもちろん日本人であれば上物はまずは生で食べるということを客の側も期待しているわけで、昨年「新鮮なものでも高率に汚染されている」とのエヴィデンスにより生食が禁止されたレバーでこんな事件があったそうです。

生レバー提供容疑で経営者ら逮捕(2013年10月15日NHK)

京都府八幡市にある焼き肉店で、牛の生レバーを客に提供したとして経営者ら2人が食品衛生法違反の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、去年、法律で禁止されたあと生レバーを提供した店が摘発されるのは全国で初めてだということです。
経営者は容疑を否認しているということです。

逮捕されたのは、大阪市の焼き肉チェーン店経営会社の社長、仲宗根孝之容疑者(53)と、京都府八幡市にある店の店長、白瀧信彦容疑者(45)の2人です。
警察の調べによりますと、2人はことし8月、八幡市の「焼肉牛宗まるなか京都男山店」で、生で食べることを前提として牛の生レバーを客に提供した食品衛生法違反の疑いが持たれています。
この店で食事をしたあと食中毒になった人がいたことから、警察が店を捜索するなどして捜査を進めていました。
警察によりますと、調べに対して仲宗根容疑者は、「生レバーは焼くことを客に伝えるように店員に指導していた」などと容疑を否認し、白瀧容疑者は「間違いありません」と容疑を認めているということです。
牛の生レバーを巡っては、おととし、富山県などの焼き肉店でユッケを食べた客が食中毒を起こして5人が死亡した事件をきっかけに、去年7月、生レバーの提供や販売が禁じられました
警察によりますと、法律の施行後、業者が摘発されるのは全国で初めてだということです。

専門家「消費者が命を落とす可能性も」

食品衛生が専門の奈良県立医科大学の今村知明教授は、「牛の生レバーは症状の重い食中毒を起こす危険性が高いため、法律で禁止する必要があると判断されたものだ。場合によっては消費者が命を落とす可能性もあるものなので、牛の生レバーの提供は絶対にやめるべきだ」と指摘しています。

生レバー:提供容疑で焼き肉店経営者ら逮捕 京都府警(2013年10月15日毎日新聞)

 2012年7月から禁止されている牛の生レバー(肝臓)を生食用として客に提供したとして、京都府警は15日、京都府八幡市男山の焼き肉店「焼肉牛宗(ぎゅうそう)まるなか京都男山店」の経営会社、丸中精肉店(大阪市阿倍野区)社長、仲宗根(なかそね)孝之(53)=大阪市旭区新森5=と焼き肉店長、白滝信彦(45)=大阪府枚方市東山1=の両容疑者を食品衛生法違反(規格基準違反)容疑で逮捕した。生レバーを提供した店が摘発されるのは全国で初めて。

 逮捕容疑は8月30日、男子高校生8人と引率の常連客の男性(26)に、コース料理の一部として生レバー166グラムを提供したとされる。実際に食べたのは6人で、数日後、生徒4人が食中毒症状を訴え、うち1人は1週間入院した。保健所は「因果関係は特定できなかった」としている。

 府警によると、両容疑者は当時、焼き肉店で調理をしていた。仲宗根容疑者は「普段から従業員に『焼いて食べてください』と客に伝えるよう指導している」と容疑を否認。白滝容疑者は「常連客に生食用として出した」と容疑を認めているという。生レバーを給仕した従業員は「客に『焼いて食べて』とは言っていない。指導も受けていない」と話しているという。

 経営会社のホームページによると、1958年に精肉店として創業。焼き肉店と精肉販売の本店(大阪市阿倍野区)のほか、八幡市と枚方市に焼き肉店があり、テレビ番組や雑誌にも取り上げられている

 11年に富山県などで起きた焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」での集団食中毒事件を受けて食品衛生法に基づく新たな基準が作られ、11年10月から生食用の牛肉(ユッケ、牛刺しなど)の調理方法などが厳格化された。生レバーは12年7月から販売、提供が禁止されている。【土本匡孝、村田拓也】

別記事によれば有名焼き肉店でコースを頼んでいたというこの高校生グループ、「メニューに掲載のない「生3種盛り」を注文」してこうした被害にあったと言いますから自ら呼び寄せた災害と言うしかありませんけれども、裁判の過程においてはまたそれぞれの証言などから判断されるだろうとは言え、事実関係としては出す方も食べる方も完全に承知の上でやっていることだと言ってよさそうですよね。
昨年の法的な禁止によってこの生レバーも各店で対応が分かれるところで、チェーン店などはこんにゃくなどの代用食品でそれらしく加工したものを出したりするケースがあるようですし、一方で個人店などでは今回のようにメニューには載せていないけれども常連客用に用意はしていると言うケースも多いようで、その場合はもちろん覚悟を決めている人間にしか出さないということなのでしょう。
一応はこの法律逃れのテクニックとして「お客様には焼いて食べるように言って生を出す」というやり方が広く知られていて、今回も表向きはそのやり方でやっていたようなのですけれども当の従業員が「そんな指導は受けていないし言ってもいない」とネタバレしてしまっているあたり、完全に形骸化していたと見て間違いないでしょう。

今回たまたま集団食中毒に発展し病院にかかったことから、当然病院の側も届け出の義務がありますから公にせざるを得なかったわけですけれども、一般論として出す方も食べる方もお互い承知の上で一定のリスクを冒すと言う場合にこれを第三者が強制的に規制するのが妥当なのかどうかという議論があると思いますし、事実生レバーに関しても各方面で激論が交わされたことは記憶に新しいですよね。
逆説的に言えば今回全国で始めて摘発されたと言うことですから、警察などは「大きなトラブルさえ起こさなければお目こぼし」の状態なのかなと推測するのですが、では「大きなトラブル」を起こさないようにどのような工夫が行われていたのかが重要で、今回のように団体客にぽんと出してしまうというのは当然ながらあまり賢いやり方とは思えません。
この点で大規模トラブルが懸念される大手通販サイトでも対応が分かれているようで、厚労省から生食は禁じられている旨明記しはっきり「中心部まで加熱後お召し上がりください」と書いてある(実際レバーをそこまで焼くかどうか微妙ですが)サイトもあれば、「食中毒やウィルス性肝炎の危険性もあるので、鮮度などに注意し、食して下さい。 [加熱用]と表記させて頂きます。」と何とも曖昧な表記をしているサイトまであるようです。
もちろん利用者のコメント欄を見ればこれも生食用として購入し利用していることは明らかなのですが、通販の場合は例え同じ出荷元から大規模食中毒が発生しても買う側はバラバラで集団発生と認識されないという利点?がありますから問題になる機会が少ないと思われ、今後出荷元としては飲食店よりもこちらの需要を狙った方が賢いのかも知れないですね。

今回の事件でも提供時に焼くように指示していなかったことが逮捕の直接的な理由となったのだとすれば、きちんと焼いて食べるように口頭注意をするなり掲示なりをしておけば食中毒を出しても罪に問われないのか?という疑問が当然に出てきますが、前述のように基本的に厳しくは取り締まっていないのであればあまりに大騒ぎにならない限りは通常の食中毒程度の対応で終わるのかも知れません。
もちろん法で決まっていることですから取り締まる側の判断によっては今回のように逮捕にまで至る可能性はありますが、世間の目線的には生では食べられないとあれだけ言われている中で敢えて生で食べた人間が悪いというものでしょうから、営業的なリスクという点ではかなり低めなのがこれまた未だに生での提供が続いている一因なのかも知れませんね。
ただ行政罰、刑事罰などはそれで済むとしても民事的なトラブルはまた別問題で、「生食が禁止されているのに生で食べられると誤解するようなものを出した!謝罪と賠償を要求します!」なんて言われるリスクは当然ながらあるわけですから、絶品レバーは食べてもらいたいが何かあっては困るというお店はくれぐれも相手をよく見てからの対応を考慮されるべきかと愚考致します。

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コメント

高校生のくせにぜいたくするから

投稿: | 2013年10月17日 (木) 08時09分

医療従事者はあらためて結核の怖さを再確認すべきですね。
患者からしても医師看護師にゴホゴホやられるのは気持ちわるいですしね。
でも一ヶ月あまりで患者600人って少ないですよね?

投稿: ぽん太 | 2013年10月17日 (木) 08時58分

好きな人が好きで食べてるんだから放っとけばいいのにって思うの自分だけ?

投稿: koma | 2013年10月17日 (木) 10時04分

個人的には自己責任だとは思うのですが、ただ発症した場合には当然病院にも来院して保険診療で多額の医療費とリソースを消費する以上、ある程度以上リスクが高いものに対しては規制する妥当性はありそうです。
例えば以前に貝割れ大根が騒動になりましたが、あれを規制しようという声が全く出ずむしろ風評被害だと騒がれたのは仮に汚染が起こるにしても無視出来るほど確率が低いからですよね。
これに対して肝臓生食の場合はきちんと手順を踏んで解体されフレッシュな状態で正しく提供されたものでも相当の内部汚染があるということですから、それだけ発症して世間の手を煩わせる可能性は高いわけです。
逆に言えば離島の一人暮らしなどで仮に食あたりして死ぬような目に遭っても絶対に病院になど行かないというケースではどうぞご自由にと言うことでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2013年10月17日 (木) 11時17分

>>焼肉牛宗まるなか京都男山店

ここホームページから食べログから情報全部削除されてない?

投稿: | 2013年10月17日 (木) 12時09分

管理人様へ

>日本人であれば上物はまずは生で食べるということを客の側も期待している
魚だと理解出来るのですが、肉ではどうでしょうか?
日本で生肉を食べる文化ってあってもごく一部じゃないかと思うのですが・・・

投稿: クマ | 2013年10月17日 (木) 14時16分

ここらだと鶏やら牛やらは生またはたたきが普通に出ますね
豚はさすがに見たことないですが

投稿: | 2013年10月17日 (木) 14時47分

時々咳が出るだけ(発熱なし倦怠感なし喀痰なし)の患者が2〜3ヶ月経って突然高熱だして、念のためレントゲン撮影したら結核だったという苦い経験があります。咳症状だけでもレントゲンは撮影しましょう。

投稿: 逃散前科者 | 2013年10月17日 (木) 18時05分

喫煙>>>>生レバ>>>>>>>>貝割れ大根
だと思うんですけど。

投稿: 嫌われクン | 2013年10月17日 (木) 18時24分

基本、医療従事者はマスク着用だと思うんですけど。話が上手く伝わらないなんてないですよ。これからの季節、結核菌だけじゃなくRSとかノロとか・・・・感染症はいっぱい出回ってます。

投稿: koma | 2013年10月17日 (木) 23時53分

やはり「脱法レバー」「闇レバー」は存在した…店と客“暗黙の了解”に「警察逮捕」の衝撃
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/131022/wlf13102207010000-n1.htm
男性店主は「長年店をやってきたが、レバーで食中毒になった人はいない。他にも食中毒の危険性がある食べ物はたくさんあるのに、なぜ生レバーだけここまで規制されるのか。国がもっと根拠を示してくれないと納得できない」と脱法レバーを提供する理由を説明する。

投稿: | 2013年10月22日 (火) 17時59分

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