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2013年10月23日 (水)

コネ人事はいくら否定しようがなくならない

本日まずは本題に入る前に、久しぶりに病院崩壊ネタが出たようなので紹介してみましょう。

常勤医、10人中7人辞意 町立松前病院院長に追随 前事務局長人事で町、議会と対立(2013年10月22日北海道新聞)

 【松前】地域医療の先駆的な取り組みで知られる町立松前病院(渡島管内松前町)で、その中心的存在の木村真司院長(49)が先月末、辞職願を提出したのに続き、21日までに副院長ら6人も追随し、常勤医10人中7人が来春で退職の意向を示す異例の事態となっている。石山英雄町長は慰留に努めるとしているが、院長らの町や町議会への不信感は根深く、渡島西部の地域医療を揺るがしかねない状況だ。

 木村院長の辞意の原因は、同病院の前事務局長の人事をめぐる町議会や町との対立。院長は、病院経営の黒字化などに尽力した前事務局長を評価し、今年3月末の定年の際、継続雇用を望んだが、町議会や町はこれに反対した。「資質に疑問がある」などが理由としているが、背景には前事務局長と町議会の一部との人間関係の摩擦があるとされている。

 院長は4月、自らの裁量で前事務局長を非常勤嘱託員として再雇用。撤回を求める町議会との溝は深まり道が仲裁に入ったものの、処遇を明確化する条例改正案を町議会が否決したため、前事務局長は9月末で任期切れのため退職となり、院長は同月27日、石山町長に辞職願を提出した。

 これを受け今月4日には八木田一雄副院長(42)ら2人も辞職願を提出。その後も外科部長(60)ら4人が続き、来年3月末で退職の意向を示したのは院長を含め計7人となった。

町立松前病院 医師10人中6人辞職の意向…北海道(2013年10月11日読売新聞)

 北海道松前町の町立松前病院の医師6人が2014年3月末で辞職する意向であることが10日、分かった。

 同病院の前事務局長の人事を巡り、町・町議会と医師側の意見対立が先鋭化したことが原因。同病院は渡島西部の拠点病院で、現在、常勤医10人態勢となっている。このまま6医師が退職すると、来年度からの病院運営に支障が出かねない情勢だ。

 辞職の意向を抱いているのは木村真司院長(49)ら6医師。木村院長は05年11月に同院の院長に就任し、08年から内科や整形外科といった診療科の枠を超えて患者を診る「全科診療医(家庭医、総合医)」制度を導入して注目を集めた。

 木村院長は今年3月末で定年退職となった前事務局長の雇用継続を求めて町や町議会と対立。道が仲裁役となり、石山英雄町長と木村院長との間で前事務局長を「経営アドバイザー」として雇用することなどを柱とした条例改正を行う内容の覚書が4月に交わされた。しかし、6月定例町議会で条例改正案は否決され、前事務局長はいったんは臨時職員として再任用されたが、9月末に6か月の任期切れによって退職した。

 木村院長は「覚書すら十分に履行されなかった」と、9月27日に石山町長に年度末で辞職することを伝え、10日までに副院長や内科部長ら医師5人が木村院長に追随して辞職願を提出した。

 木村院長は「前事務局長は病院運営に欠かせない優秀な人材だった。病院運営に町や町議会から全く協力を得られない以上、ここで医療を続けられない」と話している。石山町長は「町民の医療を守るため、辞職願を撤回していただけるよう、話し合いを続けたい」と、慰留する考えだ。

 同病院で入退院を繰り返している同町在住の小野寺澄子さん(78)は「遠くの病院に頻繁に通うことになるのは困る。どうしたらいいのか」と、不安げに語っていた。

崩壊のスタイルとしては舞鶴市民病院タイプという感じなのでしょうか、今回事件そのものには深く突っ込むつもりはないのですけれども、こうした田舎の自治体病院の運営がどこも様々な意味で厳しいことが誰の目にも明らかになっている今の時代にあって、自治体側もよく突っ張り通したものだなという気はしますでしょうか。
10人中7人が辞表を提出すると言えばこれはすでに大変な事態ですけれども、中の人が語るところでは残る3人についても一人はもともと研修医であり来春卒業の予定、そしてもう一人は現在留学中でこれも想像するにこうした状況で残るということもなさそうな気配ですから、下手をすると以前から勤務されている小児科医一人という「病院運営に支障が出かねない」どころではない状況になりそうですよね。
中の人も語っているように地域住民はもう少し危機感がないようなのですが、ちょうど「新小児科医のつぶやき」さんのところで考察されているような状況が事実あったのだとすればこれはかなりの部分が町議会側の逆恨みにも近いような印象を受けますし、いずれにしても今の医療現場が人治によって采配されている部分が多々ある以上こんな小さな所帯でこうまで人治を乱した町議会は下手を打ったなとしか言いようがありません。

医療崩壊の話はともかくとして今回のバックグラウンドなどは抜きで現象面だけを書き出して見ると、町立病院院長が町議会という上位組織の意向を無視してお気に入りの人材を院長権限で雇用するという行為が非常に思い切っているなと思ったのですが、言ってみれば本来雇用に関して平等であるべき公的組織のルールを個人的縁故によって横車を押したという言い方も出来ることではありますね。
最近この縁故採用という問題があちらこちらで話題になる機会が多くて興味深く見ているところなのですが、とりわけ公務員の場合は個人の所有物でもなく公的組織であるのにあってはならぬことだと批判を浴びる傾向が強いようで、昨今の特権に対する社会的反感の高まりとも相まって批判的な記事が出ているようですが、興味深いのはこれに対する反論すなわちコネ擁護論も一定数あるという点です。

公務員のコネ採用 清掃員やバス運転手、教員など多岐に亘る(2013年10月15日NEWSポストセブン)

 日本では政界、官界、財界のトップ人事から、これから本格化する学生の就職活動戦線まで、日本社会ではあらゆる場面に「コネ」という“見えざる力”が働いている。そして、国家公務員でも「グレーゾーン」の採用がまかり通っている。人事院の内部資料によると、2011年度に国家公務員に採用されたのは1万6808人。そのうちキャリアと呼ばれるl種を始めとした試験合格組は4281人に過ぎない。

 残りの1万2527人、全体の70%超は「選考採用」と呼ばれる試験によらない面接などで採用されているのだ。これは学力試験などではないから、当然コネがものをいうことは容易に想像できる。

 地方行政でも同様だ。橋下徹・市長のお膝元である大阪市では、昨年3月に提出された報告書において、コネ採用の実態が詳らかにされた。大阪市の職員労働組合関係者がいう。

「地方公務員の中でも、清掃作業員やバス運転手など現業系の部門に縁故採用が多い。報告書には、採用面接の際に履歴書に市会議員、人事部局幹部などの名前が記されていた痕跡が多数見つかったと記されていた。コネが横行する実態は大阪市に限ったことではなく、どの地方行政にも少なからずある」

 また、教職員採用におけるコネも目立つ。埼玉県内の小学校教師が打ち明ける。

「この業界では“親子2代で教師”というパターンが異常なほど多い。表向きは“親の背中を見て教師を目指した”ということになっているが、実際のところは教員の採用において“関係者の口利き”が非常に重要であることが大きい。

 教員免許をとっても何年も教員に採用されない人が多い中、親が教師の人間でそんな話は聞いたことがない。地元国立大学卒業者も有利ですが、成績にゲタを履かせるほどのことはない。人柄や性格、学歴より、まずは縁故がものをいうのがこの業界の常識です」

 公務員の既得権益は、こうして人事面でも温存されている。

コネ採用社員 恵まれた環境で質良い教育受けたため優秀の評(2013年10月17日NEWS)

 日本では政界、官界、財界のトップ人事から、これから本格化する学生の就職活動戦線まで、日本社会ではあらゆる場面に「コネ」という“見えざる力”が働いている。コネはもはや、日本社会のシステムに当然のように組み込まれている。就職活動に苦しむ若者、またその親であれば不平等への怒りを感じざるを得ない。

 しかし一方で、人事関係者の中には「コネ採用は得意先との関係を良好にするためだけでなく、優秀な人材を獲得するための有効な手段」だと断言する者も多い。ある地方テレビ局の幹部が明かす。

「もちろん親のスネをかじることに麻痺してしまったダメなコネ社員もいるが、一方で縁故のある社員に優秀な人が多いことも事実です。恵まれた環境で質の高い教育を受け、いろんな世界を経験していることが大きい。

 ウチの社長は、系列新聞の幹部の息子だったが、ジャーナリズム感覚に優れ、並み居る優秀な“コネなし社員”に出世レースで打ち勝った。また身元がわかっていることで会社側は安心して採用できるし、問題を起こすことも少ない。みのもんた事件はレアケースですよ」

記事を読んでいておもしろいなと思ったのは、やたらに日本社会ではコネが云々と日本の悪しき島国根性の現れか何かのようにかき立てていますけれども、例えばアメリカ人などは人生全てコネでやっているような側面が濃厚にあって、彼らがやたらとパーティー好きで初対面の相手にもすぐ親しげに振るまいファーストネームで呼びたがるのもそうしたコネを重視する社会文化の表れであるという見方もありますよね。
前述の町立松前病院のケースなども、町議会から言わば罷免に近い扱いを受けた一職員が町長との個人的コネによって病院内に居座っている!これは問題だ!と週刊誌的書き方をすることも出来るかと思いますけれども、コネがあるということは面識があり人物を知っているということにもつながりますからよく言えば「雇ってみないとどんな人間か判らない」というリスクを回避する手段として有効であるとは言えるのでしょう。
事実個人的にはコネ入社と言えばあまり良い印象は抱いていなかったのですが、コネの場合身元がしっかりしているということもあるのでしょうが、中の人に言わせるとやはり昨今雇っても仕事を覚えたと思ったらすぐ辞めてしまう人間が非常に多いことも原因だと言い、コネ入社ならば紹介元の顔を潰さないように頑張るので少々きつめに追い込んでも踏ん張りが利く、結果として戦力になる率が高いと言う評価もあるようですね。
だからコネがいいんだ…とまではさすがに言いませんけれども、やはり日本では未だに正規採用すればそうそうは辞めさせられないと言う傾向が特に公務員には強い以上、これも単純にケシカラン!即座に廃止すべき悪習だとバッシングするだけでなく実際にそれがどのような損得勘定になっているのかということを、一度見極めてみるべきなのかも知れませんね。

究極的なコネ社会と言えば近年話題に上ることの多い中国などでは共産党関係者など社会的有力階層に連なるかどうかが人生行路の大きな部分を占めていると言い、有力者の師弟であれば犯罪行為であっても見て見ぬふりをされると言いますから社会的反感も相当なものですし、当然ながら汚職の横行など社会にとってのネガティブ面が多すぎてさすがに共産党幹部も是正の必要性を感じているようです。
日本の場合そこまでひどい状況にはないにしても社会的不満が高まる原因になっていることの一つに「公平な競争の場という建前なのに実際はそうじゃなかった」という事情があるからだと思うのですが、例えば推薦入試なども教師の覚えめでたき品行方正な学生でなければ推薦を受けられないという意味で一種のコネとも言えますが、一般入試と別枠で推薦枠を設けることで社会的には許容されていますよね。
そう考えると現実的にコネ根絶など不可能である以上、就職活動においても一般枠とコネ枠とははっきり区別して募集するという考え方がありかと思いますが、その結果選ばれた双方の人材がその後どのように働き成長していくのかということを比較検討することで最終的なコネの功罪も見えてくるのかも知れません。

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コメント

>採用面接の際に履歴書に市会議員、人事部局幹部などの名前が記されていた痕跡
コネ=悪と考えるのではなく、こういう情報を消さずに、その人の人事情報として退職するまで公的に保存するのがよいんじゃないでしょうか。

投稿: JSJ | 2013年10月23日 (水) 08時40分

コネ入社じゃなくてスカウト入社とか呼んでみたらちょっとかっこいいかも。
でもほんとコネとそうでない人とでどっちが優秀なのか比べてみたらいいんじゃないかと。
あと失礼だけどコネ反対!って叫んでる人ってボーダーライン間際の人?ってイメージあるんですが…

投稿: ぽん太 | 2013年10月23日 (水) 08時53分

大分の教員採用取り消しがらみの裁判はまだ継続中のようですね。
これだけ時間をかけて県の処分を取り消す判決が出てしまったら、影響が甚大な気がします。

投稿: クマ | 2013年10月23日 (水) 09時13分

今の時代企業なり組織なりへの帰属意識だけでは業務が円滑に回らないというケースが多いようで、改めてコネというものが見直されているようにも感じます。
もちろん明らかに客観的指標上は能力劣悪な人材をコネだけを理由にして雇用するだとか、平等性が求められる職場でコネばかりがまかり通るということは問題がありそうですが。
しかし高給利権の代表格として自治体の清掃作業員がよくやり玉に挙がりますが、あれはそんなに競争率が高いものなのでしょうかね?
求人をかけても来ないものだから給料が高くなっていったものだとばかり思っていたのですが。

投稿: 管理人nobu | 2013年10月23日 (水) 10時49分

コネっていったらどうしても否定的に捉えちゃうけど、いっしょに仕事するにあたってたしかに個人的つながりって大事ですよね・・・
公募で来た知らない大学出身で二年で消えちゃう研修医より、学生時代から顔見知りの後輩で同じ医局に入局決まってるやつのほうが指導にも力入りますもん。
それでそういうやつのほうが手間ひまかけてるだけやっぱり伸びていくんですよね・・・

投稿: こだわりの一葉 | 2013年10月23日 (水) 13時31分

>町立松前病院の件
あーあ、やっちゃたな。という感じですかね。残念。院長が辞めるって一大事。
日本の地方ってこういう体質あるから、医者が逃散するんだよという典型的パターン踏襲で笑えない。
町議会などたぶん上から目線で自分たちが町立病院の院長以下の医者を養ってやってるんだという態度が見え見えなんでしょうね。自分たちの町のために病院の勤務医は全人的医療で奴隷奉公しろよとか。
病院の勤務医に「全科診療制(家庭医・総合医)」など求めるとか、変な理想など追い求めたのは一体誰の指図なんでしょうね。首都圏の病院でも総合診療科の医者が退職したから、開業医が応援で総診外来ヘルプしているとかいう笑えない話もある。無理に背伸びしてやろうとすれば、殆どの医者は最後は辞めるしかないという好例

投稿: 逃散前科者 | 2013年10月23日 (水) 14時27分

コネというからややこしくなるんですが、要するにその人物像を何も知らずに、採用試験だけで採用するのか、成育歴を含めた人物像が把握できている人間を採用するのか、どっちがいいですか?という話なんですよね。アメリカでもそれがあるから、逆にコネを使って自己PRをすることで就職につなげる。そのためなおのこと「自分のキャリアの構築」に必死になるんですよ。

コネ採用がダメだというのなら、学歴もキャリアも何も要りませんよ。

つーか、大手マスコミでも、東大や一橋大卒をとる、っていうのは、「東大出身者を優先する」コネ採用に他ならないわけで。

投稿: | 2013年10月24日 (木) 09時59分

 ■院長、辞任方針変えず

 【植村隆】松前町立松前病院の運営をめぐり町と院長らが対立している問題で、町側は妥協策となる条例案を成立させた。ただ事態打開の見通しはたっておらず、地域医療の拠点病院に頼ってきた住民は不安を募らせている。

投稿: | 2013年10月29日 (火) 09時09分

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