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2013年10月10日 (木)

東北への医学部新設は蟻の一穴になるのか?

東北地方に医学部新設をという声に対して安倍総理直々に検討を指示した話が先日出ていましたが、文科省側でも前向きに検討するとして何やら実質新設が決まったかのような報道が出ています。

東北の医学部新設、文科省が具体的検討へ- 1か所前提、地域の医師引き抜きも配慮(2013年10月8日CBニュース)

東北地方への大学医学部の新設について、安倍晋三首相から正式に検討するよう指示が出たことを受け、下村博文文部科学相は8日の閣議後の記者会見で、「今後、具体的な検討を進めていきたい」と述べ、1か所の新設を前提に検討する方向性を示した。

医学部新設をめぐっては、1979年の琉球大への設置以降、事実上凍結されていた。下村文科相も同日の会見で、「新設は約40年行われていない。現在の医学に対応して、教員の体制や、附属病院の規模や内容などを検討していく必要がある」と指摘。東日本大震災で被害を受けた東北地方の復興の観点から、関係自治体が一つにまとまる必要性を挙げ、1か所に新設することが望ましいとした。

一方、新設医学部の教員や附属病院の医師・看護師の確保に伴い、地域の病院の医師らが引き抜かれ、医師不足を招くとの懸念に対しては、「地域医療に支障を来たすようでは意味がない」として、新設体制の構築時に配慮が必要との考えを示した。今後、関係自治体などの意見を踏まえ、文部科学省は関係省庁と連携し、医学部の設置場所や附属病院のあり方などを検討する見通し。

記事を見る限りではあくまでも被災地特例というのでしょうか、無制限に新設を認めるのではなく被災地東北だから特別ということで新設反対派と要望派の双方に配慮しているような印象を受けますけれども、逆に言えば一つ新設してどうこうなる問題なのか?と言うことでもありますよね。
医学部新設がコストや人材確保の面で効率が悪いということはすでに言われている通りなんですが、もう一つの論点である地域の医師不足解消手段としての新設という話ももちろん観念的には理解出来るのですが、東北各県の医学部を卒業して地元に残る人間が半数以下という現実を見るにつけ単に都市部学生向けに新たな国試予備校を提供するようなものではないかという気がしてなりません。
この対策として仮に自治医などにならって全定員を地域枠的な縛りをかけると言った強固な縛りをした場合にどのような学生が集まるのかも興味があるのですが、いずれにしてもほぼ新設が決まりということであれば今後はいかにその悪影響を減らすのかが課題となってくる理屈で、とりわけ多数の教職員スタッフをどこから確保するかということが気になりますよね。
その意味で既存の大病院を抱えている運営母体が誘致レース上非常に有利であることは言うまでもないのですが、以前から気になっていたのですが新設が一大学だけということになると改めて問題になってきそうなのがどこがその新設先として指定されるのかということです。

東北薬科大が医学部新設へ 定員100人、総合医養成(2013年10月5日河北新報)

 東北薬科大(仙台市青葉区)は4日までに、医学部新設を目指す方向で最終調整に入った。旧東北厚生年金病院(宮城野区)を取得し、ことし4月に付属病院として開院させるなど準備を進めてきた。近く正式に発表する。
 東北への医学部新設をめぐっては2011年、財団法人厚生会仙台厚生病院(青葉区)が地元大学との連携による医学部設置構想を発表。東北薬科大の参入で、宮城県内から二つのグループが医学部設置に手を挙げることになる。
 関係者によると、東北薬科大は医学部定員を100人程度と想定。校舎を新設し、臨床実習は付属病院や連携病院の活用を見込む。新設に必要とされる約230億円は自己資金で工面するとみられる。
 東日本大震災を踏まえ災害医療に対応できる人材の育成を最重視し、急性期から慢性期まで対応可能な「総合医」の養成に取り組む。医師の養成には、薬剤師育成のノウハウを活用する方針。
 単科の東北薬科大は10年秋から医学部設置の準備に乗りだした。震災を経て、学内に第三者を交えた医学部設置準備懇話会を設置。11年末に最終報告書をまとめた。厚生労働省所管の独立行政法人から東北厚生年金病院の土地建物を取得し、看護師らスタッフも引き継いだ。
 東北薬科大病院(466床)は22診療科を備え、急性期対応型の総合医療を提供。薬学生の臨床実習にも活用している。

[東北薬科大]1933年創設の東北・北海道初の薬学教育機関「東北薬学専門学校」を母体に49年開設。6年制の薬学科と4年制の生命薬学学科に、院生を含め2139人(5月1日現在)が在籍する。キャンパスは仙台市青葉区小松島、付属病院は宮城野区福室にある。

記事にもあるように仙台厚生病院が久しく以前からすでに東北福祉大と組んで医学部開設の準備を進めていることが知られていて、いずれも大学病院に相当する基幹病院もあれば医療系学部もありと非常に条件的には似通っていると言えそうなのですが、もちろん両方ともが新設を認められるというのはちょっと考えがたいところですよね。
どちらも既存リソースを活用しなるべくお金をかけずにやる方針のようで、基本的には一方が選から漏れても決定的な大損害というわけでもないのでしょうが、国から指名を受けるためにはあらかじめどんどん準備を進めていつでもいけますとアピールする方がいいという考え方もあるでしょうから、下手をすると競争で開設準備を進めるしかないということにもなるのでしょうか。
ちなみに現地の地理的なことには明るくないのですが、仙台厚生病院というのは東北大医学部のまさにお隣と言うべき立地にあって、一方薬科大の付属病院はその数km東の仙台港近くで震災の際には玄関先まで津波が押し寄せたと言いますから東北への特例、被災地のシンボル性というメッセージ性を考慮するとやや薬科大の方が有利なのか?と思えなくもありません。

今回は新設そのものの是非は改めて議論しませんが、いずれにしても数十年ぶりの医学部新設ともなればその意味は決して小さなものではなく、特に千葉や埼玉などかねて医師不足に悩まされてきた地域からはデータも添えて「東北も深刻かも知れないがこっちの方が医師不足はもっと深刻なんだぞ!」と言ってくるに決まっていますから、さらに追加の医学部新設を認めるのか認めないのかと言うことが必ず問題になると思います。
もともと大都市周辺地域としてのこれら地域の方がまだしも東北よりも学生にとっては魅力的だと思えますが、事実文科省の調査によっても卒業後の地元定着率において東北諸県の医学部よりも埼玉、千葉の方がより高い数字を残しているということで、要するに地域での医師不足を鑑みた必要性からも卒後の地元定着という効率面からも東北諸県に対してより新設の必要性が高そうだと言うことになってしまいます。
実は人口増加率においても千葉や埼玉がトップクラスに高い数字を示しているのに対して東北諸県は軒並みマイナスの人口減少地域で、2040年には現在より3割方は人口が減少しているだろうと予測されているのですから、実のところ今現在は医師不足だと言っても将来的にはそれ以上に人口の方が減ってむしろ放っておいても医師不足は改善しているかも知れない、などと言われかねないですよね。
そうであるからこそあくまで被災地特区の一環であり、東北は復興のシンボルとして特例だから認めるのだということを繰り返し強調しているのでしょうが、しかしこうまでデータをそろえて「我が県にも医学部を」と主張してこられれば国としてもどこまで突っぱねることが出来るものなのか、あるいは東北復興のシンボルが後の世に蟻の一穴と呼ばれることにもなるのでしょうか。

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コメント

もういくつかはつくってみないと収まりがつかないってことなんじゃ?
それで気がすむなら仮に失敗だったとしてもダメージも最低限にとどまるでしょうし。
ところで千葉はどこか一つとなったらやっぱり亀田になるんですかね?

投稿: ぽん太 | 2013年10月10日 (木) 08時59分

全国で定員増やしてやっとたくさんの学生が卒業してくるタイミングで何考えてんだろう・・・
今じゃないといらないって言われるから駆け込みで言ってるようにみえる・・・

投稿: あめんぼ | 2013年10月10日 (木) 09時14分

この場合は全額自己負担でやりますと言っているのですから、国としては認可するだけで地元からも感謝され懐もさほど痛まずいい話じゃないかと言う考え方もありそうです。
ただ法科大学院に見られるように国試も通らず学費詐欺だと言われるような状況になりますと、こうした新設医大も一気に不良債権化する可能性もありますから、今度はいつ定員を絞るかという判断が問われそうですね。
その意味でもこの問題は大学を管理している文科省だけではなく、いわば出口である国試を管理する厚労省の判断も非常に重要になってくる案件だと思うのですが、先日来同省筋からは医師は十分足りる見通し的なコメントが出ていることが気になります。

投稿: 管理人nobu | 2013年10月10日 (木) 11時07分

宮城県 大学偏差値一覧 2013
東北大学[医医]73
東北大学[医保]59
東北大学[歯]63
東北大学[薬]65


東北福祉大学[総合福祉]50
東北福祉大学[総合マネジメント]44
東北福祉大学[子ども科]51
東北福祉大学[健康科]52
東北薬科大学[薬]47

どう見ても底辺にしかなりません本当にありがとうございましたw

投稿: aaa | 2013年10月10日 (木) 11時52分

全国的にはまったくなんの影響もないと思うけどね

投稿: やっさん | 2013年10月10日 (木) 14時29分

医学部新設 「地域勤務」条件にしたい
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131011/edc13101103390000-n1.htm

当然こうなるわな

投稿: | 2013年10月11日 (金) 12時15分

新設だけでなくいっそ全国各都道府県の医学部/医科大学の卒後をすべて地域勤務奴隷化にしたらどうなるか?
奴隷開放の時期も5年か10年か20年か
今のままだと東北に医大作ってもムダでしょう。
東北出身者でも首都圏出身者でも卒後は首都圏で仕事したがるだろうから、医者も東北にはほとんど残らないから何も変わらないわけで。まして仙台〜東京まで新幹線で90分ですからね。ストロー現象が加速して哀れなだけ。
医師不足云々を語る前に、地方が東京に何もかも吸い上げられる今の社会構造を何とかしろよと言いたいです。

投稿: 逃散前科者 | 2013年10月11日 (金) 17時12分

http://sankei.jp.msn.com/region/news/131012/myg13101202340001-n1.htm
東北薬科大が医学部構想 定員100人、27年度開設を視野 宮城

東北薬科大学の高柳元明学長は11日、仙台市青葉区の同大キャンパスで会見し、学年定員100人の医学部を新設して「東北医科薬科大学」(仮称)の実現を目指す医学部設置構想を発表した。

平成27年度の開設を視野に、専任教員147人を確保、付属病院の東北薬科大学病院(仙台市宮城野区)を全面的に建て替え、新キャンパスを整備、
研究棟や講義棟なども建設する計画で、総投資額は約229億円を見込んでいる。

東北地方の医師不足解消が開設理由の大きな柱で、財団法人厚生会仙台厚生病院が23年1月に発表した東北福祉大学と連携して医学部を開設する構想と基本的に同じ内容だ。
文部科学省が開設を1校に絞る方向と伝えられる中、高柳学長は「たぶん私どもの大学が認められると確信している」と、開設に向け、強い自信をのぞかせた。

投稿: | 2013年10月12日 (土) 11時52分

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