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2013年9月26日 (木)

いま卵活が密かなブーム?

先日卵子凍結保存ということに関してガイドラインが発表され、特に晩婚化によって卵子の老化という問題があれほど大騒ぎされただけに非常に大きな社会的関心を集めているのですが、中でも独身女性に対しても保存を容認するということが賛否両論を巻き起こしているようですね。

卵子凍結保存、独身も容認 晩婚化で学会が指針案 (2013年9月13日日本経済新聞)

 日本生殖医学会は13日、健康な独身女性が将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存することを認める指針案をまとめ、公表した。実施する病院などを学会で認定し、件数の報告を求める方向で検討しており、関連学会と連携して施設基準などを決める。認定施設による卵子凍結は早ければ年内にも始まる見通し。
 晩婚化の進行を背景に若い時の卵子を残したいという女性の要望に応える。仕事を持つ女性の選択肢が増え、キャリア形成に影響を与える可能性がある。ただ学会内には「指針に拘束力はなく、病院などに基準を守らせることができるか分からない」として実効性を疑問視する声もある。

 指針案は(1)健康な独身女性が将来、不妊になる可能性を懸念する場合、卵子を凍結保存できる(2)40歳以上の卵子の採取は推奨できない(3)保存卵子を使った45歳以上の不妊治療は推奨できない――とした。本人の妊娠以外の目的では使えない
 卵子凍結は従来、不妊治療をする夫婦やがん治療で卵巣機能を失う恐れのある患者を対象に実施するとされてきた。しかし近年、保存技術が向上したこともあり、一部の施設が独身女性を対象に実施。学会は無秩序に広がるのを防ぐため、ルールが必要と判断した。

 卵子の凍結保存によって、女性は妊娠しやすい若い時の卵子を保存し、仕事や婚期など、個人の事情に合わせて出産時期を調整できるメリットがある。だが「解凍後の受精卵を子宮に戻して出産できる確率は1割前後」(学会)で、必ずしも高い確率で出産できるわけではない。母体のリスクが大きくなる高齢出産を助長する恐れもある。
 吉村泰典・日本生殖医学会理事長(慶応大教授)は「指針案は独身女性の卵子凍結を推奨するものではない。30代半ばまでに自然妊娠するのが望ましい」と話している。

 学会によると、不妊治療を実施している病院・診療所は全国に約600施設。認定施設がどの程度になるかは「不明」としている。
 厚生労働省によると、2012年の女性の平均初婚年齢は29.2歳。母親の第1子出産時の平均年齢は30.3歳となり、晩婚化や晩産化が進んでいる。年齢を重ねれば妊娠できる確率が低くなるほか、卵子が老化して染色体異常などが発生しやすくなる

若い女性の「卵活」、注目の陰で… 費用高額、体にリスク [福岡県](2013年9月22日西日本新聞)

 「就活」「婚活」ならぬ「卵活」という言葉をご存じだろうか。健康な未婚女性が将来に備え、自分の卵子を凍結保存することをいい、若い女性の関心を集めている。卵子凍結はこれまで病気や不妊の治療が主な対象だったが、日本生殖医学会が13日、健康な未婚女性にも事実上容認する指針を公表したためだ。九州の専門医療機関にも問い合わせが相次いでいる。出産適齢期に仕事の実績・基盤づくりの時期が重なることや「卵子の老化」を意識する女性の増加が背景にあるようだ。

 「卵子凍結はできますか? 結婚や出産の予定はないんですが…」。不妊治療専門の蔵本ウイメンズクリニック(福岡市博多区)は9月に入り、卵活への女性の問い合わせ電話が10件続いた。卵子凍結は2004年から取り組んでいるが、日本産科婦人科学会などの指針に従い、対象者は治療で卵巣機能が失われる恐れがあるがん患者か、不妊治療中の夫婦に限ってきた。料金は採卵と1年の凍結保管で約18万円(がん患者は約15万円)、2年目以降は年約5万円の保管料がかかる。
 「健康な未婚女性の卵子凍結を行うには課題が多い」と蔵本武志院長は指摘。同クリニックで卵子を凍結保存している女性は18人。うち凍結卵子を使って出産した人は1人だけだ。連絡が途絶えた人もいる。「若いうちに凍結保存しても、結婚して自然妊娠すると忘れる人がいたり、転居した地域に保管施設がなかったりと、さまざまな問題が生じる可能性がある」
 蔵本院長は同学会の指針などを見極めて、卵活を受け入れるかどうかを検討するという。
 現在、九州で卵活に応じている医療機関は西日本新聞の取材では確認できなかった。

 「病気の人を助けるための技術なのに、とんでもないことだ」と卵活を批判するのはセント・ルカ産婦人科(大分市)の宇都宮隆史院長。卵活への問い合わせが、14日以降5件あったという。
 初めて実施した卵子凍結は07年、白血病の10代女性から「骨髄移植で閉経してしまう前に」と依頼されてのことだった。以降、約20人のがん患者の希望に応じてきたが、亡くなったり、結婚相手が現れなかったりして、卵子を使ったケースはなかった
 東京には卵活の手術に応じている医師と、凍結卵子を保存している業者がおり、採卵から凍結保存までに約100万円の費用が必要。宇都宮院長は「未婚女性の『将来の保険に』という気持ちを否定はしないが、商業ベースの一部業者に乗せられないで」と訴える。
 鹿児島県姶良市の竹内レディースクリニック(竹内一浩院長)にも「30歳を過ぎたけど、今は仕事を頑張りたいので結婚や出産はしたくない」といった問い合わせが4、5件寄せられたという。

 卵活が独身女性に注目される背景には、子育てしながら働き続けることに周囲の理解は乏しく、晩婚化が進んでいることも大きい。ここ数年、テレビや雑誌で「卵子の老化」が盛んに取り上げられ、焦りを感じている女性も少なくない
 「女性が働き続けにくい社会をまず正していくべきだ」と言い切るのは出産ジャーナリストの河合蘭さん。その上で「卵子凍結の選択肢はあっていいが、排卵誘発剤や採卵手術の体へのリスクや費用、必ず妊娠できるわけではないことも知ってほしい」と呼び掛けている。

 【ワードBOX】卵子の凍結保存

 排卵誘発剤などを使って卵巣を刺激し、手術で採取した卵子を液体窒素で瞬時に凍結させ、保存する。精子や受精卵の凍結保存に比べて難しかったが、近年の技術革新で可能になった。日本産科婦人科学会の2010年統計では、凍結卵子を使った受精卵を子宮に移植した女性で、出産できたのは約1割。日本生殖医学会が今月13日に公表した指針は、健康な未婚女性の卵子凍結について「40歳以上での採卵は推奨できない」「45歳以上での凍結卵子の使用は推奨できない」としている。

まさに賛否両論という感じで意見が分かれていますが、それなりの専門技術を要する手技とは言え採卵法など技術的には確立されてきたものではあるようで、そうなると産む側の都合で卵子を保存してまで出産コントロールをすることが是か非かと言った問題からの問題と、法外な費用をふっかける悪徳業者をどう排除するかといった問題が主な争点になってくるのでしょうか。
今はほとんど聞かなくなりましたが一昔前には家族計画と言う言葉があって、定義的には「家族全員の幸福のために,家族にとって最も適当な数の子どもを,最も適当な時期に適当な間隔で出産するように,妊娠,分娩に計画性をもたせること」と言うことになっているそうですが、実際上は無分別に産むな、きちんと避妊して産児制限しろといったニュアンスで使われる場合が多かったと記憶しています。
定義的に考えるならばこの卵子凍結による計画出産も「最も適当な時期に」産むためのものですから家族計画と言っていいと思いますが、何故それが今になって否定されるのかと言えば本当にそれが家族全員の幸福につながるのかという保証がないことが大きく、早い話が子供を育てることを考えるならばそんなに遅い分娩は勧められないということなんだと思いますね。
ただ「参観日でうちのママだけちょっと違う…」レベルの不都合は別として、今の時代若くてお金も余裕もない時代に無理して産むことが本当にいいのかどうかという指摘もあるわけで、コストや安全性、妊娠率など様々な要素を勘案した上で最終的に卵子凍結の方がメリットがあるということであれば、これは個人に許された選択の自由の行使というしかないかなと言う気がします。

一方でいささか厄介なのが悪徳業者問題ですが、原則的にこうした行為を行うのは医師に限られるはずですから何らかの事情で闇で頼むといったことでなければ無資格な人間に無茶をやられるということもないでしょうし、また後々まで保存した卵子を最終的にまた戻すことまで考えるならばきちんとした永続性の高い施設で対応してもらうのが当然ですよね。
ただこうしたことになると「施術していい施設を認定すべきだ」とか言ったことはともかく、「費用もきちんとした目安を出せ」といった要求が学会等へ向かう可能性が高まってくると思いますが、出産費用などもそうですが本来きちんと行っていればこれくらいのコストはかかると言った計算に基づく数字に比べて、現在の医療における相場は総じて安売りし過ぎているということはあるわけですね。
また予防接種費用などにも見られるように、それを行いたくない施設では敢えて高い値付けをすることで利用者を減らすということをやっている場合があって、特に今回のように賛否両論が分かれポリシーとしてそれはやりたくないという先生ほど、法外な値段を吹っかけて実質的にお断りしているということをやっている可能性もあります。
悪徳と言えば恐らく次の段階では卵子は保存しておいたけれども結局産む機会もなく母体が高齢化してしまった、それでも借り腹してでも産んでもらいたいという人が必ず出てくるはずで、今のところ卵子を取った本人にしか戻さないという運用でやるようですけれども、別に法的拘束力もない学会の指針と言うに留まるだけにどこかが抜け駆けした時にどうするのかということが問われるようになるのかなという気がします。

それにしても元々化学療法などやむを得ない場合に用いるための技術だったとは言っても、「病気の人を助けるための技術なのに、とんでもないこと」などと言われては技術の目的外利用の拡大によって医療の新たな地平を切り開いてきた数多の先駆者達の立つ瀬がありませんし、それを言うなら文化圏によっては子供は神からの授かり物で、避妊など計画出産そのものがとんでもないという立場もあるわけです。
晩婚化と出産年齢の高まりによって卵子の老化などなくても妊娠がハイリスクになっていくのに、この上技術の進歩によって避けられる危険があるのに敢えて甘受せよというのもおかしな話で、実際に卵子を取りに来た人がいない等々の問題は卵子凍結保存の是非とはまた別な問題ではないかと思いますね。
もちろん身体的にも金銭的にもそれなりのリスクを負って行うべき処置であることは言うまでもありませんから、きちんと勉強をしてリスクやデメリットも十二分に把握した上で行われるべきなのは当然であって、卵活などと新しい流行か何かのように軽々しく取り上げる風潮にはどうなのかなと感じないではいられません。

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コメント

これって同じ卵子保存を18万でやる施設と100万でやる施設があるってことですか?
よほど下調べしとかないと費用に雲泥の差が出そうですね。

あと気になったのが凍結卵子での妊娠率が低いって点です。
いい加減な保存しててもどうせ大多数は失敗するからバレないって考える業者が出るかも?
あとで受精をさせる施設が卵子の品質もちゃんとチェックしてくれればいいですけど。

投稿: ぽん太 | 2013年9月26日 (木) 09時19分

若い頃にぽんと大金出せる人はいいんですけど、けっきょくお金ない人は卵子保存もできずに後で困りそうですね

投稿: | 2013年9月26日 (木) 09時52分

業者が入っているとやはりコストは余計にかかるのでしょうかね。
こういうことは大きな病院ではあまりやりたがらなさそうで、どこまで保存がなされるのかはっきりしないのが難点でしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月26日 (木) 11時02分

いくらでも詐欺の手段が思いつく商売w週刊誌に乗せられる女も女だしww

投稿: aaa | 2013年9月26日 (木) 12時18分

>いくらでも詐欺の手段が思いつく商売w

便利な紙切れの悪用法がまた増えたw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年9月27日 (金) 09時39分

その昔あったという「月の土地権利証」的な商売も出来るわけですねこれは

投稿: | 2013年9月27日 (金) 10時07分

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