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2013年9月 9日 (月)

ますます巨大になる近藤理論カルト 

先日よくある広告メールを何気なく見ていましたら、こんなことが書いてありました。

 今年6月にスタートした@niftyの新サービス「新おとなの学び場」。著名人が配信するメルマガですが、そのライター陣の顔ぶれは多彩です!
 このメールマガジンサービスの特長のひとつとしてご好評いただいているのが、購読者が著名人に「直接質問できる」という点。
 以下にこれまで実際に寄せられた質問とそれに対する回答をピックアップしてご紹介します。
(略)
【池田清彦さんへの質問と回答例】※「ほんまでっかTV」レギュラー評論家

 Q.「医者に殺されない47の心得」「ガン放置療法のすすめ」などを読みまして、今年より一切の検診を断り始めています。還暦を迎えましたがこの決断はありでしょうか?

 A.健康診断に行かないのはいい判断だと思います。症状がないのにがん検診や人間ドッグを受けるのは時間とお金のムダです。そのお金を使ってうまいもの食っていたほうがいいです。体にいいと誰かに言われたあるいは本で読んだという理由で、嫌いなものを無理して食べたり飲んだりするのも考え物です。自分の体に合っているかどうかは自分の体に聞いてみてください。・・・(以下略)

まあしかし、「誰かに言われたあるいは本で読んだという理由で」一切の検診を断るというのもそれはそれで考え物かと思いますが…
ともかくあのテレビでも有名な池田センセイがこんなふうにおっしゃってる!やっぱり検診など受けちゃいけないんだ!と考える人がどれだけ出るかは判りませんが、少なくとも世の中にはこういう考えを持つ人々がいて、それを各界の著名人としてヨイショする人もまたいるという事実は認めなければならないでしょうね。
ちなみにこの池田何某なる人物、早稲田大学国際教養学部教授の肩書きを持つ生物学者だと言うことですが、本業の業績については存じ上げませんが例によって専門外の領域でさんざん好き放題放言して回っているという点でもそこそこ有名な御仁ではあるようです。
うちのPCは別に変な電波を受信する設定にはしてないはずなのにな…と不審に思いながら件のサイトに行ってみましたら、こんなことも書いてありました。

池田清彦のやせ我慢日記 (Vol.3)                        {2013年7月12日}
(略)
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【1】がんはなぜ治らないのか
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 慶応大学講師の近藤誠が大分前から、がんは放置しておくのが一番いいと主張して、がんの治療で儲けている医療関係者から蛇蝎のように嫌われているようだ。
 手術をしても転移しているがんには無効だし、抗がん剤も血液のがんや睾丸がんといった特殊ながん以外の多くの固形がんには無効であるというのはほぼ正しいと思う
 最近近藤のアンチがん治療の本が軒並みベストセラーになっているのは、多くの人が現在のがん治療に疑問を抱いているからだと思う。
 身内や親しい友達で、がんであることがわかった後も比較的元気だった人が、治療を受けた途端に元気がなくなって、数ヶ月から数年後には死んでしまった事例を沢山見ていれば、がんの治療が本当に患者のためになっているのか疑問に感じるのは当然である。

まあよく言われることに先駆者はその多くが批判され嫌われるものであるかも知れませんけれども、批判され嫌われる者全てが先駆者というものでもなく単なるトンデモさんだったと言う場合が大多数であるわけですからねえ…
泥沼化しやすい癌の治療で儲けていると言う実感を抱いている臨床医もそう多くはいないと思いますが、ともかくも類は友を呼んだのか近藤理論の感染力がそれだけ強力であるということなのか、どうもこの池田センセイの最近の一押しが近藤氏であるようで、あちらこちらで宣伝に協力して回っていらっしゃるようです。
ご本人が信じて実行する分には別に個人の自由で構わないのですが、こうした話があちらこちらで大きく取り上げられるようになると中には「これだけ世間で言われてるんだから、本当にそうなんじゃ…」と信じたくなる人も出てくるかも知れずですよね。

池田清彦早大教授 「がんを治療せず放置する」メリットを語る(2013年7月20日週刊朝日)

 生物学者で早稲田大学国際教養学部教授の池田清彦氏は、朝日新聞の書評欄に近藤誠『がん放置療法のすすめ』(文春新書)が紹介されているのを見て「ちょっと愉快であった」という。その理由は、それが医学界の主流の説と全く異なる主張が書かれた本であり、「大新聞」の書評欄に載っていたからだ。池田氏は本の内容に触れ、「がん放置療法」のメリットについて次のように話している。

*  *  *
 大半の医者と厚生労働省はバカのひとつ覚えみたいに「がんの早期発見・早期治療」と言い続けてきたが、近藤の本の帯にあるように「乳がんで全摘手術を勧められたけど放置、22年経った今も元気です」(68歳女性)という人もいるのである。がんを放置するとどうなるか。(1)大して変化がない、(2)増大して治療をせざるを得なくなる、(3)縮小し、場合によっては消失する。(2)だけが悪性のがんで、(1)や(3)はがんもどきで治療する必要はないと近藤は言う。やっかいなのは(1)・(3)と(2)の違いは病理検査ではわからないことだ。

 わからない限り、すべて悪性度の高いがんとみなして治療しようというのが主流の考えなのだろうが、がんの手術や抗がん剤は決して安全な治療法ではない。(1)・(3)の人は治療により死ぬこともあろう。私の知人で膀胱がんと診断され抗がん剤治療を始めて二週間後に死んだ男がいる。抗がん剤は猛毒なのだ。治療のメリットがあるのは(2)の人だけだ(特に血液のがんは抗がん剤が良く効く)が、それとても治療をしない方が長生きしたかもしれない

池田早大教授「がんは放置するのが一番いい」(2013年5月17日週刊朝日)

「滅多に人を尊敬しない」と言い切る早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授。そんな彼が、最近「すごい人だ」と感じている近藤誠氏について語った。

*  *  *
 ここの所、近藤誠の本がすごい勢いで売れているようだ。アマゾンのベストセラーランキング等を見ると、『がん治療で殺されない七つの秘訣』(文春新書)、『医者に殺されない47の心得』(アスコム)、『「余命3カ月」のウソ』(ベスト新書)、中村仁一との共著『どうせ死ぬなら「がん」がいい』(宝島社新書)、『がん放置療法のすすめ』(文春新書)等々、最近出版された本は軒並みベストセラーである。

 近藤の主張は、血液のがんなどの特殊ながんを除き胃がん、肺がん、大腸がんなどのいわゆる固形がんは、治療をしても延命効果は期待できないというものだ。がんは基本的に放置しておくのが一番というのだから、医学界から蛇蝎のように嫌われるのは当然だ。近藤が一般書を積極的に書きはじめた1990年代の半ばから、私は近藤の主張を私なりに検討した結果、データの豊富さ、推論の正しさなどから、近藤説はほぼ正しいと確信するに至った。

『がんは切ればなおるのか』(新潮社)が1998年に文庫になった際には、この本の解説まで書いたくらいだ。それで、ここ20年くらい、がん検診は受けていないし、健康診断も9年ほど受けていないし、受ける気もない

 私は滅多に人を尊敬しないが、近藤誠はすごい人だとしみじみ思う。慶応の医学部を最優秀の成績で卒業した近藤は、アメリカに留学して放射線医学を学び、母校に帰って講師になり、同期で一番早く教授になるだろうと思われていたという。それが、当時医学界の主流であった乳がんの全摘手術に異を説え、乳房温存療法を公に主張して、出世コースから外れることとなった。近藤も万年講師で終わるであろうと覚悟したと述懐している。長い間医学界の主流から無視されていた温存療法は、しかし今や、乳がん治療のスタンダードになった。自らの出世と引き換えに乳がん治療のパラダイムを変えたのである。温存療法の優秀さが患者どうしの口コミで拡がったという事情もあったろう。

 本の売れ行きを見る限り、今また近藤の主張は多くの人に支持されて拡がりつつあるようだ。医学界は必死の抵抗を試みるだろう。がんは放置しておくのが一番いいということになれば、がんの手術に携わる外科医と抗がん剤を製造している製薬会社はおまんまの食い上げになるからだ。しかし、患者は医学界の金儲けのために存在するわけではない。がん患者が手術や抗がん剤で殺されることはあっても、外科医がおまんまの食い上げになって死ぬことはない。どちらがいいかは自明であろう

池田氏の言うように実際にきちんとしたエヴィデンスをも否定したというのであれば近藤氏もとうとう完全に道を踏み外したかと思いますけれども、近藤氏の主張自体は本来「癌は放置すべき」ではなく「治らない癌を治るかのように偽って積極治療すべきではない」と言うものであったという説もあって、それが事実であるとするならプレゼン能力という点で確かに万年講師に留め置かれているだけのことはあったのかという気もします。
いずれにしても世間の近藤教信者は「近藤という大学病院の偉い医者ががんは放置しておくのが一番いいと言っている!」と受け止めている、そして当の近藤氏自身もそう受け止められることに何ら反論しておらず是認していると認識されているのですから社会的に見れば近藤理論=がん放置療法となりますが、実際これほど熱心なシンパが各界に存在しているとなると不安に感じる人も多いかと思います。
20年以上も患者の集まる大学病院にいながら「近藤方式」を受け入れた患者が150例だと言うことからも、実はマスコミや一部電波芸者が大騒ぎしているだけで世間は案外冷静に受け止めているのではないかと言う考えもあり、実際影響力を過少評価してスルーされている側面も多々あるのでしょうが、これだけ社会的に話題になっている以上専門家達ももはや放置プレーはよろしくないと言う声も強まっているようですね。

近藤誠氏がん放置療法に医師反論「医療否定本に惑わされるな」(2013年8月29日NEWSポストセブン)

 近藤誠氏著『医者に殺されない47の心得』が100万部突破のベストセラーとなっているが、医師の中には、近藤氏が提唱するがん放置療法を否定する人も少なくない。日本尊厳死協会副理事長でもある長尾クリニック院長・長尾和宏医師と、翻訳業の傍らボランティアでがん患者の相談に乗っている藤野邦夫氏の2人は、共著となる新刊『がんの花道』(小学館)で、近藤氏による「早期発見、早期治療は意味がない」という主張に真っ向から反論している。

 * * *
長尾:最近、慶應義塾大学医学部放射線科の近藤誠先生が、がんの早期発見、早期治療は意味がないなどと複数の書籍で書いておられますが、私はそれは絶対に違う! と思っています。早期発見、早期治療はいくらでもあります。実際、私は早期発見して、早期治療した結果、助かっている患者さんをたくさん診ています。

 逆に、一部のそうした本で書いてあるような、手術はしない、放置すればいい、という主張を信じて、手術さえすれば助かったのに亡くなっていかれた患者さんもたくさん見てきました。同様に、抗がん剤は効かないと抗がん剤治療を否定する主張を信じて、最初は抗がん剤治療を拒否していた患者さんが、後からやっぱり抗がん剤治療を始めているケースも見かけます。このケースでは、「どうせやるなら、もっと早くからやっていればよかった」と患者さんは後悔されています。そのようにして失われた時間は本当にもったいないですね。

 こうした医療否定本というべき書籍が、医療界に一石を投じようとする意図は理解できます。しかし、残念ながら書いてあることの全部が正しいとはとても思えません。正解も大間違いも混在しているのが実態だと思います。こうした医療否定本を鵜呑みにして、助かる命をみすみすなくされないか、私はそれを心配しています。

藤野:早期発見の意味がなければ、ますますがんで苦しんで亡くなる人が増えますよ。近藤さんたちの説を信じて、定期検診や検査を受けなくなる蛮勇の持ち主は少ないでしょうが、心配な点は、もともと定期検診や検査を受けたくない人たちが、やっぱり受けなくていいんだと納得してしまうことです。そのような影響が出るとすれば、発言者の社会的責任には大きいですね。

 現在、薬物療法のおかげで、がん患者が元気で暮らせる生存率は大きく伸びています。薬は病気を治すためだけにあるのではなく、追いつめられた患者の病状を改善し、生きる希望を与える効力も持つのだと私は思います。

 さらに問題は、正統派のがん医療にたずさわる医師たちが、医療否定本にあまり反対しないことです。かれらはバカバカしいとあざ笑っているようですが、それは患者や一般市民に対する怠慢です。医師の特権意識がマイナスに作用しています。

長尾:本来、医者は患者さんを助けるのが仕事ですから、どうやったら助けられるかを日々模索して診療をしているわけです。そりゃあ、早期発見、早期治療でも亡くなる患者さんはいます。しかし、早期発見、早期治療で治る患者さんもいれば、残念ながら亡くなるにしても、現代医療、特に緩和ケアの恩恵を受けて、残された時間をご家族と快適に過ごされる患者さんもたくさんおられるのです。

 ですから、私は、患者さんやご家族には、ぜひとも勉強をして賢くなっていただきたいと思います。そうすれば、医療否定本に惑わされずにすむと思います。医療の現状を知って、進歩を知って、また欠点も知って、上手に「医療のいいとこ取り」を目指して使っていただくのがいいのではないかと私は思うのです。

藤野:がんを治療せずに放置しろという近藤誠さんの説は、健康で心に余裕のある人が読めば面白いのでしょうが、病気で追い詰められた治療中の患者や家族が読むと、混乱させられるか不安になるだけではないか私は危惧しています。

助けられる患者が近藤理論で放置された結果助けられなかった!とんでもない話だ!と言う考え方もまた医師の傲慢というべきもので、病気であると知りながらそれを受け入れるという選択肢も当然あっていいと思いますし、そうした大前提が最初から確たるものなのであれば余計な手間とコストがかかるだけの癌検診など最初から不要!という冒頭の意見のような立場もまた論理的にありだなと言う気はします。
実臨床で言えば人間80歳以上にもなれば体のどこかに癌細胞が潜んでいる、などと言いますけれども、それでは寝たきり超高齢者に片っ端から全身検索をしているかと言えばそんな施設はまずないでしょうし、またベストサポーティブケア(BSC)などと言う言葉が当たり前に臨床現場で使われているように癌と見れば何でもかんでも積極医療!などということももちろんないわけです。
その意味では現場に近い人間には今さら感と言うのでしょうか、「また近藤が風車に挑んでるなあ」と笑って見ていれば済むという感覚だったのでしょうが、それもこれもちゃんと知識も経験もあり癌診療の現実を知っているからこそと言うことであって、何の知識もない一般の患者や家族が近藤理論を真に受けることの怖さに対する危機感が乏しかったと言う見方は出来るでしょうね。

手術不能の固形腫瘍に対する放射線化学療法の限界など、癌治療に対して多くの臨床医が様々な思いを抱いているのは事実で、特に患者本人や家族の希望に基づいたものであったとしても泥沼の末期戦を何度も経験し、弓折れ矢尽きた状況を何度も経験した医師の抱く「後ろめたさ」が近藤理論に対する反論の舌鋒が鈍る一つの理由でもあったのかも知れません。
また近藤理論も多くのトンデモ主張と同様に特定の局面で見れば全否定し難い部分もあることは言うまでもありませんが、それを言い出したのが例え患者が手遅れになろうが最後まで寄り添って戦う内科・外科医ではなく、いわば外野からおいしいところ取りをしているだけの放射線科医であったということも感情的反発を抱かれやすい部分はあったかも知れないですね。
ともかくも患者の自己決定権が何よりも尊重され、癌は何もしないで放置する、そもそも早期発見など無意味だと言う考え方も当たり前に認められる時代なのですから患者もどんどん主張し希望すればよいのですが、ただしそれはきちんとしたエヴィデンスのあるソースに基づいた十分な検討の結果として選ばれるべきであって、怪しげなベストセラー本に乗せられて決めるようなことではないだろうとは思います。

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コメント

コンドーさんって本業の腕はどうなの?

投稿: | 2013年9月 9日 (月) 08時05分

近藤先生って決して癌が治るとは言わないし治るための治療もするなって言ってるんですね。
近藤先生のいう本物の癌になったら100%死ぬしかないってことですよね。
おっしゃるとおり医療費削減にはすごく効果的かもしれないです。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130710/dms1307101810022-n1.htm

投稿: ぽん太 | 2013年9月 9日 (月) 08時43分

色々と意見があるんですね。
参考になります。

投稿: 吉野@メンタル | 2013年9月 9日 (月) 09時03分

治療の進歩で予後が改善した結果ですが、5年生存率=癌の完治とは必ずしも言えなくなってますよね。
癌の予後を論じるにあたっては完治と単なる延命とを区別しなければ誤解を招くと思うのです。
その上で明らかに完治が見込めない末期患者さんに限っては近藤式の対応でもいいのでは?

投稿: コウ | 2013年9月 9日 (月) 10時31分

もちろん場合によっては近藤先生のやり方がいいということはあるわけで、医療関係者がその主張に反論してこなかったのもそうした場合を考えてということなのでしょう。
近藤先生が批判されるべきなのは専門家なら誰しも考えてしかるはずのそういう前提条件をすっぽかして、全例に当てはめるには明らかに無理のある結論だけを強調するやり方ではないでしょうか。
近藤先生の医学上の業績に関しては存じ上げませんが、こうした振る舞いを見ると少なくとも医学者としてはずいぶんと古いタイプの方なのかなと思ってしまいます。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月 9日 (月) 11時19分

>近藤も万年講師で終わるであろうと覚悟したと述懐している。

いまや大学のネームバリューにしがみついているようにしか見えないというw

投稿: aaa | 2013年9月 9日 (月) 13時50分

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