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2013年9月 3日 (火)

強まるブラック包囲網

最近流行りの言葉の一つに「ブラック企業」というものがあって、ちょうど今月1日から厚労省が全国のブラック企業4000社を対象に集中取り締まりをするそうですが、こうまで多数の企業が取り締まり対象になるともなればそもそもブラック企業とは何なのか?という疑問も湧いてきますよね。
ホワイト企業とブラック企業との境界線は非常に曖昧模糊としていてはっきりここからと言う断定は難しく、一方でちゃんとしたホワイト企業だと胸を張って入社できる人は全体の1%ほどに過ぎないという話もあるようですから大多数の人々は多かれ少なかれブラック企業的要素のある職場で働くことになる訳ですが、これだけ社会問題化してくると厳しいがまともな企業ほどブラック認定されないか戦々恐々とせざるを得ないでしょう。
実際に各方面でブラック企業に入社しない方法や安全確実に足抜けする方法と並んでブラック企業と認定されない方法が採り上げられるくらいですから、ひとたびブラック認定されてしまうと社員採用や取引先との関係においても影響無しとしないのでしょうが、少なくとも被雇用者側の視点で見ると相当に高い比率でブラック企業が存在しているということになりそうな調査結果が出ていました。

「自分の会社をブラック企業だと思う」会社員は3割--理由は"パワハラ""うつ病"(2013年8月29日マイナビニュース)

リビジェンは29日、全国の社会人男女を対象に実施した「ブラック企業」に関する調査の結果を発表した。それによると、「自分自身が所属する会社をブラック企業だと思う」と回答した人は約3割に上った

同調査は、2013年8月27日にインターネット上(スマートフォン)にて行われ、スマートサーベイモニター会員の男女500人から有効回答を得た。

まず、自分自身が所属している会社のことをブラック企業だと思うかと尋ねたところ、「非常に思う」が9.2%、「やや思う」が20.6%となり、合わせて約3割の29.8%が自分自身が所属する会社をブラック企業だと考えていることがわかった。それに対して、「あまり思わない」は22.8%、「全く思わない」は28.4%、「どちらともいえない」は19%となった。

「非常に思う」「やや思う」と回答した人に、その理由を聞いてみると、「自社の製品を強制的に買わせる」「パワハラ」「6時出勤、23時退社(残業代はつかない)」「昨年の年間休日50日」「うつ病の社員が何人かでているから」「上司が同僚を電卓で殴って怪我をさせたにも関わらずその上司を会社は守り、同僚は心を病んで退社」など、様々な意見が寄せられた。

将来の私生活に対し不安を抱えているかとの問いに対しては、「非常に不安である」が25.2%、「やや不安である」が43%となり、7割近い68.2%が将来に対して不安を感じていることが判明。反対に「あまり不安ではない」は11.6%、「全く不安ではない」は2.4%で、不安が少ない、または抱えていない人は14.0%にとどまった。「どちらともいえない」は17.8%だった。

今後、転職を考えているかと質問したところ、「とても考えている」が21.4%、「多少は考えている」が27.2%と、約半数の48.6%が転職を考えていた。一方、「あまり考えていない」は17.4%、「全く考えていない」は16.6%、「どちらともいえない」は17.4%となった。

先日も取り上げましたように「ブラックかどうかなんて、人それぞれ」と言い、ブラック企業からも学べることがあるという一つのスタンスがある一方で、世の中には労基法など労働関連法規の数々がはっきりと存在しているのですから、少なくとも常習的にそれらを無視することを強いるような企業は間違いなくブラックだと言って良さそうに思います。
ただここで注意していただきたいのは相当に多くの労働者が職場をブラックだとしている理由で、自社製品の押しつけや残業代無しなどはともかくパワハラなどはどちらかと言えば上司個人の資質によるところが大で、それを会社として容認しているかどうかが重要ではないかと思いますね。
その意味ではブラック企業になりたくない各社はブラックかどうかよりも、ブラックと受け取られかねない業務実態に対してどう対処するべきかが重要であって、平たく言えば社員のモラル(士気)を高い水準に維持出来ていれば多少の無理や無茶も許容されるんじゃないかと言うことです。

医療の世界では長年当たり前にブラックな慣習が行われていることがあまりに常態化し過ぎていて、ネットの発達によって異業種の方々と普通に交流出来る時代になって初めて「あれ?俺たちの業界って何か変じゃね?」と気付く医者が続出し、ひいてはそれが立ち去り型サポタージュだの医療崩壊だのと呼ばれる社会現象の引き金になったのではないかという声もあるようです。
いまだに全国ほとんどの病院が採用している「日勤-当直(と言う名の夜勤)-日勤」という30数時間連続勤務の態勢も法令違反云々以前にそんなことをやっていたのでは患者さまのお命をお預かりするに足るパフォーマンスを発揮出来ないのは明らかなのですから、黙ってそれに甘んじていると言うのは専門職としての責任放棄と言われかねないと言う考え方が次第に力を得てきているということですよね。
興味深いのは医師など高い学歴キャリアを持ち平均知的水準も高いだろうと思われる方々が長年漫然と搾取され続けてきたという事実ですが、先日も紹介したように有名大学が講師を使い潰しているという実態もあるように高学歴だからブラックから逃れられるというものでもなく、ブラック企業とは無知な人々をうまく騙して搾取しているという単純な図式だとは必ずしも言えないようです。
それだけ創意工夫をこらして立ち回っているくらいですから従業員に対してのみならず取引先に対してもそれなりの態度でやっているのだろうなと想像出来るのですが、他ならぬ学閥の頂点たる大学病院でこんな恥ずかしい事実が明るみに出たとニュースになっていたのを紹介してみましょう。

「琉大病院 早期支払いを」業者異例の要求(2013年8月30日沖縄タイムス)

 琉球大学付属病院(村山貞之院長)への医療材料の納入をめぐり、県内13社でつくる県医療機器協会(泰一会長)が、納品済み商品に多額の未払いがあるとして、早期支払いを求める文書を院長と学長宛てに送付していたことが29日までに分かった。本年度に着手した経費削減の値下げ交渉が背景にあるが、業者団体による要求文書は異例。琉大病院は到着数日後には全業者と妥結したことを強調した上で「信頼関係で交渉を進め了解していたと認識していたので驚いている」としている。

 医療材料は注射器や注射針、カテーテルなど。4月から積み重なった支払いの遅れは8月中旬で少なくとも約5億円だった。対象全15社との妥結を受けて今月中に約2・9億円、その後も支払いは進められることになるが、業者側の不満はくすぶったままだ。

 協会側代理人は「経済的な圧迫に耐えられずやむなく契約した社もある。独占禁止法の優越的地位を利用した支払い遅延や減額に抵触する可能性がある」と指摘。値下げ交渉自体は否定していないが、その手法の見直しを求めている。

 4月から8月上旬までの納品済み商品の未払い額は協会主張で「少なくとも6億8千万円」。一方、琉大病院によると、未払い額は20日現在で約5億円、双方が納得した交渉範囲内との見方だ。

 協会側は、送付文書で業者間の足並みをそろえるまでは、値下げに従うと認めた業者への支払いも実行されなかった、とも主張する。これに琉大病院は真っ向否定しており、双方の主張が食い違っている

 琉大病院は本年度から仕入れ値削減に着手した。医療材料の値下げ率は全国の国立病院で下から5番目と低く、今回の削減を実行しても全国平均を下回るとして削減の必要性を強調する。村山院長は「大学病院は独立採算。高度な医療を保つために削減に協力いただきたいと4月からお願いしてきた」と説明。一方で「時間がかかり支払いが滞ってしまった。小さな会社に負担になったことは反省している」と話している。(溝井洋輔)

あしき慣行再現

 医療ジャーナリスト田辺功さんの話 値段を決めず、先に納品し後で交渉することは全国的にも20年ほど前は当たり前に行われていたが徐々に減ってきた。力関係によって業者は支払いを延ばされると値引かざるを得ない。業者不利のあしき商取引の再現と言えるのではないか。

資材を納入させておいて払わない、もっと安くしろなどと無理難題を吹っかけるのも真っ当なやり方ではありませんが、医療業界の場合特に世間が狭く地域の医療機関と脳入業者との関係が密接ですから、大学病院のように高い材料をバンバン納入させる「お得意様」との関係を切られるというのは、特に中小業者にとっては死活問題なのは当然です。
元々狭い業界内のことですから多少のことはなあなあで済ませているところがあって、支払いが遅れるといったことも大概は黙って待ってくれるものなのですけれども、それが業界団体として抗議してくるというのはどれほど酷いことをやっているのかと言う話で、しかも「信頼関係で交渉を進め了解していたと認識していたので驚いている」とはいわゆる「病識がない」状態でしょうか。
業者側には粛々と法令に則って正当な債権の行使をしていただきたいと思いますけれども、恐らく今まで個別にこうした問題を起こしていたケースは琉球大に限らず全国数多あったはずで、ただ今回たまたまあまりに酷すぎると業者団体が抗議したということでニュースバリューが出てきたということでしょう。

医療機材や薬品の仕入れ値というものは確かに交渉次第というところもあり、また国公立病院などは施設の病床当たり建設単価も民間病院の2倍と言うほど漫然と言い値で取引してきたと言う歴史があって、このところの独法化でようやくその辺りがまともな交渉の対象となってきたという部分は確かにあります。
しかしそうであるならきちんと交渉するなり入札するなりで合意に達した上で契約を結ぶべきで、脳入はさせたがこちらの言い値でしか支払わないではどんなヤ○ザ者の論理かと言うことですから、万一同様の不法な取引で脳入コスト引き上げを図っている施設があれば今回の騒動を他山の石として改めていただきたいですね。
こうした業者との不公正な取引をしている大学がスタッフである医師達とどの程度公正な雇用契約を結んでいるのかと言うことですが、結局のところ不当な契約を強要してくる相手に対してはきちんと主張しなければそれを助長するだけに終わるということなのでしょうか。

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コメント

>未払い額は協会主張で「少なくとも6億8千万円」。一方、琉大病院によると、未払い額は20日現在で約5億円、双方が納得した交渉範囲内との見方だ。

これ大学が勝手に納得してるだけじゃない?

投稿: | 2013年9月 3日 (火) 08時33分

え〜とつまり、協会側「6億8千万円払え」
大学側「5億円にまけろ」てこと?

投稿: JSJ | 2013年9月 3日 (火) 08時58分

大学はもう値切りに納得してもらったつもりなんでしょうね。
でも納得してるんだったらこんな抗議出てこないはずじゃあ…
誰が主導してるのか知らないけど何かがおかしくないですか?

投稿: ぽん太 | 2013年9月 3日 (火) 09時09分

「ふ~食った食った。それで幾らだ?」
「ハンバーグセット800円になります」
「800円だと?高いじゃないか。隣町のマク○ナル○じゃポテトにドリンクつけて400円だぞ?」
「いやそう言われましても」
「それじゃこうしよう。600円支払えば俺も200円損だしあんたも200円の損で公平だ」
「そんな無茶な」
「あ、それと支払いは来年までにはすませるからな。それじゃ」
「ちょっとお客さん!待ってくださいよ!」

普通こんな好き放題やって文書で抗議されただけで終わるなんて超ラッキーだろjk

投稿: | 2013年9月 3日 (火) 09時17分

社会通念として事後交渉で押し通すのは無理筋だろうと思うのですが、規模の大小はどうあれ結構こういうことは各地で行われているのでしょう。
そういう慣習になれていた業者ですら容認できなかった暴挙と考えると、琉球大の偉業も更なる輝きを増すというものですが。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月 3日 (火) 10時45分

友人がブラック企業退職寸前だそうです。身近な被害者が出ると怖いですね。うちはブラックとまではいきませんが残業代でないし。

投稿: 幸太 | 2013年9月 3日 (火) 11時27分

長時間勤務など過酷な労働を強いるブラック企業の実態を把握するため、厚生労働省が
1日に設置した無料電話に全国から1042件の相談があったことが2日、分かった。
相談の7割近くは労働者本人から直接寄せられ、約半数が20~30代の若年層だった。

相談が多かった業種は、製造業がトップの213件(20%)、商業(卸・小売りなど)が
207件(19%)。「賃金不払残業」に関する相談が約半数の556件(53%)を占め、
ほかに「長時間労働・過重労働」414件(39%)、「パワーハラスメント」163件
(15%)-だった。

「月100時間超の残業をしているのに、手当てが3分の1しか払われない」(保健衛生業)
▽「深夜3時まで働いても年休取得を認めてもらえず、売り上げが悪いとたたかれる」(販売業)-
といった深刻な相談も寄せられたという。

厚労省は9月をブラック企業への集中監督月間に指定。離職率が極めて高い企業や
労働基準関係法令違反が疑われる約4千社を立ち入り調査する。

▼MSN産経ニュース[2013.9.2 21:46]
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130902/biz13090221480019-n1.htm

投稿: | 2013年9月 3日 (火) 15時16分

>うちはブラックとまではいきませんが残業代でないし。

どう見てもブラックです。本当に以下ry

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年9月 4日 (水) 09時25分

医師にとっては病院≒ブラックですからw

投稿: aaa | 2013年9月 4日 (水) 10時16分

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