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2013年9月27日 (金)

特区活用による医学部新設が決定?

本日の本題に入る前に、先日こんな話が出ていたのをご覧になりましたでしょうか?

「解雇しやすい特区」検討 秋の臨時国会に法案提出へ(2013年9月20日朝日新聞)

 【山本知弘、清井聡】政府は企業が従業員を解雇しやすい「特区」をつくる検討に入った。労働時間を規制せず、残業代をゼロにすることも認める。秋の臨時国会に出す国家戦略特区関連法案に盛り込む。働かせ方の自由度を広げてベンチャーの起業や海外企業の進出を促す狙いだが、実現すれば働き手を守る仕組みは大きく後退する

 特区は安倍政権がすすめる成長戦略の柱の一つ。20日の産業競争力会議の課題別会合で、安倍晋三首相は「国家戦略特区は規制改革の突破口だ。実現する方向で検討してほしい」と発言。田村憲久・厚生労働相に検討を指示した。

 特区で導入する解雇ルールや労働時間規制の緩和は、特区内にある開業5年以内の事業所や、外国人労働者が3割以上いる事業所が対象だ。

最近いわゆるブラック企業というものが大いに社会問題化していることは周知の通りで、今回の「解雇しやすい特区」もしんぶん赤旗あたりに言わせると「労働のルールが及ばない無法地帯」と手厳しいですけれども、他方では逆説的に「解雇できない特区」を仮想することで朝日の記事を批判する者もいたりと、なかなかに賛否両論あるようです。
今の時代は100%完全終身雇用制の強要がかえって失業者を増やし、正社員の長期労働を招きかねないということが理解されるようになってきている、他方では名目管理職に祭り上げられ残業代も出ない奴隷労働を強いられているといったケースが問題になるなど、労働の問題というものはこれが絶対の正解というものではなくケースバイケースや程度の問題で様々な最適解があるものなんだと思います。
逆に言えば全国均一なシステムでああしろ、こうしろと決めてかかることは失敗したときのリスクが大きすぎるのですから、特区という形で色々なやり方を取り入れてみて試していけばいいじゃないかと思うのですが、どうも良心的な報道機関の方々は世の中には全ての人間が諸手を挙げて賛同する100%の正解というものが隠されていて、それ以外のものは全て否定してかからなければならないと固い決意を固めていらっしゃるのでしょうか。

いささか話が脱線しましたが医療の世界でも昨今特区というものが注目されていて、既存の医療システムが破壊された東北被災地で各種特区が創設されたことは周知の通りですし、東京からは外国人医師が診療を行える特区を創ってみてはどうか?というアイデアも出ていましたよね。
先日は関西特区で高度な不妊医療を提供している医療機関に優遇税制が適用されたというニュースがあって、こういう話を聞くと今まで診療報酬上の采配で行われてきた医療機関への誘導が特区によっても行えるものなのかも注目されるのですけれども、これなども全国一律に診療報酬改定なり厚労省通達なりでやるよりはまず特区でやってみてというのは手早く安全なお試し方法だと思います。
その考え方で行くといずれ混合診療解禁特区だとかもありかなと思っているのですが、先日今度は国の方からなかなかに議論を呼びそうな新たな特区の提案が出てきたと注目されています。

政府、特区活用で医学部2校新設へ 1校は宮城が最有力(2013年9月26日河北新報)

 政府が医学部新設を認めないとしてきた従来の方針を転換し、特例的に2校を新設する意向を固めたことが25日分かった。東日本大震災復興特区や新たに創設される国家戦略特区を活用する。新医学部の一つは、宮城県への立地が最有力。残る1校は、千葉県成田市や静岡県を軸に選定が進むとみられる。

 医学部の新設は、1979年の琉球大を最後に凍結されてきた。
 2003年には文部科学省告示で医学部を新設しないことを明記し、政府方針として確認。文科省告示との整合性を図るため政府は、地域を限定して規制緩和や税制の優遇措置を講じる特区制度を適用する意向だ。
 政府関係者によると、安倍晋三首相周辺が被災地への新医学部の優先配置に強い意欲を示している。村井嘉浩宮城県知事が政府の復興構想会議で医学部新設を提案した経緯などを踏まえ、宮城県に絞って特区申請するよう働き掛けている
 ただ、宮城県が特区申請した場合は、県主導で新医学部を設置する大学や医療機関の選定を進めなければならない。開学に必要な資金の確保などが課題になる。
 文科省は、与党の要請を待って宮城県と正式協議を始める。自民党は近く、東北への医学部新設要請を党政務調査会などで機関決定する。併せて公明党と協議する。
 宮城県内では、財団法人厚生会仙台厚生病院(仙台市)が11年1月、地元大学と連携して地域医療の充実に特化した医学部の設置構想を発表。東北市長会なども震災後、医学部誘致を決議した。
 宮城県以外では、国家戦略特区に医大の設置を提案していた成田市と静岡市への医学部新設が有力視されている。ともに海外から患者を受け入れる「医療ツーリズム」を設置構想に盛り込むなど、政府が4月に発表した成長戦略のうち「国際医療協力の新たな態勢構築」と歩調を合わせている。

医学部新設に関する議論はもはや完全に煮詰まって平行線で、これはもう考え方の違いだと言うしかありませんけれども、新設するにしても最低限の数だけにとどめ、それも設置母体がどこかという教育論的観点だけでなく人口動態や既存医学部の定員、医師充足率など様々な社会的条件を慎重に検討して最も求められている場所につくるべきだとは思います。
そのどこにという議論で一つは人口対の医学部定員で極端に不足が言われている千葉あたりにどうかと言う声があり、他方では医療過疎が深刻化している東北がいいという声があって、特に今回宮城が最有力とされているのはやはり震災被災との合わせ技で一本ということなのでしょうが、これまた実際に地域に残るのは何人か…と考えると地域内の医師充足ということへの実効性が懸念されるところですよね。
そんな中でかねて医学部新設に強固な反対姿勢をとってきた日医がこれまた反対意見を表明するのは当然と言えば当然なのですが、またぞろ日医らしいことを言い出したなと感じさせるのがこちらのニュースです。

日医、国家戦略特区の医学部新設に反対表明- 「医師不足には政治主導で偏在解消を」(2013年9月25日CBニュース)

 日本医師会(日医)は25日、政府が成長戦略で打ち出した「国家戦略特区」構想に対し、規制改革への要望として、医学部新設を求める動きがあることについて、「医学部が新設されれば、教員確保のために医療現場から医師を引き揚げざるを得ず、地域医療の崩壊が加速する」などと、改めて反対する意向を表明した。

 政府は国家戦略特区を推進するために、国家戦略特区ワーキンググループを設置。11日に規制改革についての第1次提案募集を締め切ったが、そこには千葉県成田市と国際医療福祉大(栃木県大田原市)の共同提案による国際医療学園都市構想と、静岡県の医科大誘致などを通じた医学部新設の要望があった。

 日医はこれまでも医学部新設には反対する姿勢を貫いており、医師不足問題に対しては、「今こそ政治主導で医師偏在の解消を強力に推進すべき」と強調している。25日の記者会見で日医の横倉義武会長は、「日医が医学部新設に同意したとの話も出ているようだが、そういうことはない。日医は以前より、医学部新設に明確に反対し、(国家戦略特区にも)同様に対応する」と述べた。【君塚靖】

また日医が「医師不足?お前らが行って働きゃいいじゃんw俺は知ったこっちゃないけどねww」の医師売り渡し政策を推進しようとしているようですが、若手医師や勤務医らを売り渡して我が身の安泰を図る日医のやり方はいつものことだとは言え、問題は一応は業界団体と言うべき組織が国家権力に業界内にどんどん介入してくれと言い出すことの背景ですね。
日医と言えばこのところ一生懸命「医師は全員日医に加入すべき」などと妄言を弄していますが、何しろこんな組織に全医師が自主的に加入するなど夢のまた夢であることから保険医指定の要件に日医加入を義務づけるだとか、例の新専門医認定制度に日医が公的に関与出来るようにしようだとか、何かと言うとお上の威光に頼って自己の権力基盤を強化しようとする姿勢が目立っています。
国にしてみればすっかり政治力の衰えた日医をそれでも医師の意見の代弁者として重用しているという事情があって、文字通りこの組織が全医師を傘下に収めたならばますますその発言を根拠にしやすくなるという計算も成り立つでしょうから、あるいはさらにセットで何らかの裏条件も上乗せして日医の腹案に乗ってみるという可能性もなくはなさそうですよね。
日医と言う組織が会員の意見など反映しない非民主的組織であることは言うまでもありませんが、仮にある程度意見を求めたとしても病院管理職や開業医などすでに身動きできない地位にある日医会員は政治主導での医師偏在の解消に協力出来ないと言い張るでしょうから、喜んで非会員の勤務医達を人身御供に差し出すことでしょう。

こうした日医の自分勝手な主張に対してどのような対抗策を講じるかと言うことですが、最も簡単な策としては勤務医を辞めて開業するということが考えられますけれども、これまた昨今の診療報酬設定では継承開業などではない限り新規開業で黒字化することは非常に難しくなってきていることは周知の通りです。
今春に日医を外した病院経営者側の医療系団体が参加した社会保障制度改革国民会議の席で「自由開業制は規制すべきだ」とこれまた医療業界からの声として政府に要望されたことがありましたが、考えて見るとこれも既存開業医を規制するというのではなく新規開業医を参入させないようにしろと言う話で、必ずしも日医の利益とバッティングするものではないのかなと言う気もしてきます。
日医がこうした話にも仮に乗ってくるようであれば新規開業規制で逃げ道を塞ぎ、一方で医学部定員をどんどん増やして流入してきた若手勤務医を僻地に強制的に送り込むという素晴らしいシステムが完成するということになりますが、「それが嫌なら君も日医に加入して一緒に甘い汁を吸おうじゃないか」と言う壮大な勧誘活動の一環であるのだとすればなかなかの深慮遠謀と言うべきでしょうか。

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コメント

宮城に新設してどうするんでしょうか?

受験生が首都圏の子ばかりだと結局東北には残らないし
例東北大

地域医療を謳ってもこの子達が戦力になる頃には東北の自治体の多くは無人地帯だろうしw
もちろん各県庁所在地に集約化した病院に医師を手厚く配置するってのは理解できるけど
政治家が建前かもしれないけど言ってるのは僻地勤務医の養成の為に新設するって事でしょ?
意味ないよなwまぁ何かの利権orぐりさんが言うように若手医師の出口を塞ぐ為なのかどっちか
あるいはどちらもでしょうね

投稿: | 2013年9月27日 (金) 07時55分

いまさら都会のための国試予備校つくってどうするつもり?w

投稿: aaa | 2013年9月27日 (金) 09時28分

>労働の問題というものはこれが絶対の正解というものではなくケースバイケースや程度の問題で様々な最適解があるものなんだと思います。

コレに関しては正直嫌な予感しかしねぇw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年9月27日 (金) 09時33分

医師会は全医師を統制する強力な組織を目指してるんだと思ってました。
そういう業界団体が自分から国に介入を求めるってのは自己否定に思えるんですが。
そういえば最近は医師は不足してるか偏在してるだけかって論争もあまりないですね。
医師会としては医師不足は解消されてるって考えなんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2013年9月27日 (金) 10時22分

とりあえず多めにつくっておいて、余ってきたら定員へらすとか試験厳しくするとかじゃだめなの?
全国に医者があまるほど増えるまでは医学部も多いほうがいいんじゃない?

投稿: | 2013年9月27日 (金) 10時27分

医師数をとこまで増やすのか、どの診療科目の医師を増やすのか、病院勤務の専門医を増やすのか、入院患者を診ない診療所の医師を増やすのか、どの地域の医師を増やすのか。

人口が一定以上あって、患者数も一定以上いないと、医業が成立しない。
患者数が少ないと、医師のスキルの取得や維持にもメリットがない。
なので、今後、人口が減少する地域、医療需要が減る地域、に医大を新設して、そのメリットがあるかどうか不明。

人口が減っていく地方よりも、人口が集中し、高齢者も増え、(地方と比べて)労働世代の人口も多い、三大都市圏の医師をもっと増やすべき、という意見がありますが。
そういう地域にこそ医学部の定員を増やしたほうが良いのでは?

地方の場合は、希薄な人口に、広く薄くではなく、病院も医師も集約化させたほうが、医師の教育条件、労働条件も改善し、結果として患者層に提供できる医療の質もあがるという意見もある。

投稿: とある内科医 | 2013年9月27日 (金) 11時05分

医師をどの程度まで増やすべきかはそれぞれの立場や考え方によって違いがあって、医師の中でもどんどん医学部を新設して増やすべきだと主張する方がいらっしゃるのは事実です。
とりあえずそうやって増やした結果どうなったかの実例として、最低限弁護士や歯科医の現状は知っておく必要があると思いますね。
出来高払いの日本の医療が非常に安上がりに済んでいるということを考えた場合、何であれもっともよくないことは現場のモラルを引き下げる方向への変化なのかなという気がします。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月27日 (金) 11時08分

ところで、特区の医学部て、どういう特典(特徴)があるんでしょうね?
特区限定医師養成とかだとかなり画期的なことだと思いますが、まあ普通に考えると税制とか大学設置基準の緩和とかなのでしょうか。

投稿: JSJ | 2013年9月27日 (金) 12時09分

まあ都道府県内限定免許は無理でしょうが、将来は道州内限定免許だったらありえるのかな?

投稿: たもやん | 2013年9月27日 (金) 12時50分

他地区の病院大学に呼ばれていくのに困るのでヒアリングに呼ばれるような偉い先生方は間違いなく反対しそうですな>地区内限定免許

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年9月27日 (金) 16時41分

結局医療じゃなくて政治なんですよこれ

「東北に医学部新設を」 自民復興本部が提言
 自民党の東日本大震災復興加速化本部(本部長・大島理森前副総裁)は27日、震災復興の象徴として、東北に大学医学部の新設を求める緊急提言を取りまとめた。文部科学省は今回の提言や東北からの要望を踏まえ、本格的な検討を開始する見通し。
 同本部の福島第1原発事故に伴う被害者の生活支援や事故収束に関する委員会の冒頭、大島氏が震災復興と東北の医師不足解消に向けた医学部新設を提案。委員会は同本部の緊急提言として、政府に働き掛ける方針を了承した。
 河北新報社の取材に対し、大島氏は「政府も東北への医学部新設を前向きに考えている。被災地に希望を与えるため、新設の必要性を伝えていく」と述べた。
 医学部新設は1979年の琉球大を最後に凍結されてきたが、政府は新設を認めないとしてきた従来の方針を転換。特例的に2校を新設する意向で、東日本大震災復興特区や新たに創設される国家戦略特区を活用する。
 新医学部の一つは、宮城県への立地が最有力とされ、残る1校は千葉県成田市や静岡県を軸に選定が進むとみられる。
 自民党所属の国会議員有志でつくる「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」は今年2月、東北への医学部新設を政府に要請する方針を全会一致で決議している。

投稿: | 2013年9月28日 (土) 09時59分

それ以前の問題として、すでに医学部全体の定員が1000人以上増えている現状で、医学部をいっこ増やした程度(せいぜい定員120人くらい)ではほとんどメリットがないというのを偉いさんたちが突っ込まないのが不思議です。
医学部定員を増やしても、教員をあまり増員する必要がない(いや実際には相当増やさなきゃ、質の低下が止めれてないんですが)のに比べ、新設すると相当数の教員を集める必要があり、しかも補助金などの金もかなりかかりますから、コストパフォーマンスを考えるのなら、今の各医大の定員増の方が、よほどいいとは思うんですけどねぇ。

まあ、弁護士などと同様医師もワープア化させて低賃金でこき使うシステムに転換しようと考えているのかもしれませんが。

多分、一つ新設が認められたら、法科大学院のごとく、雪崩を打って新設ラッシュが起こるんじゃないかなぁ。

投稿: | 2013年9月28日 (土) 10時00分

もうここまで来たら実際新設してみて失敗してみないと引っ込みがつかないんじゃ?
全面解禁じゃなくて特区での特例ってのが最後の良心だと信じたい気持ちです。

投稿: ぽん太 | 2013年9月28日 (土) 10時12分

>弁護士などと同様医師もワープア化させて低賃金でこき使うシステムに転換

昔からあり、偏差値も高い大学のロースクール出身者で司法試験合格の場合、弁護士になっても有名ローファームあるいは、基盤のしっかりした弁護士事務所に就職できるとお聞きしました。
反面、新設、底辺、無名のロースクール出身者は、まともな仕事にもありつけず、仕事もほかの人が嫌がるクズ仕事をたまーに回してもらえる、ともお聞きしました。

新設医大卒医師が、どのような状況に陥るかはわかりませんけれど。

新設ではなく、既存の医学部定員を増減したほうが、将来の人口あたりの医師数の変化に対応しやすいのは確かです。

投稿: とある内科医 | 2013年9月28日 (土) 17時04分

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