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2013年9月 5日 (木)

なんでもかんでも炎上させればいいというものではないので

先日も愚行の連鎖が起きていると紹介したばかりの馬鹿発見器騒動ですが、その後も相変わらず馬鹿発見器が有効にその機能を発揮しているようで、近頃ではむしろその後始末の方に世間の関心が向き始めているようです。

バカッターで「人生詰んでしまった」若者たち 続々損害賠償請求に踏み切る企業が…(2013年8月30日J-CASTニュース)

   この夏、「バカッター」騒動が各地で相次いだ。さすがに夏休みが終われば、多少は沈静化するだろう――とはITジャーナリストの井上トシユキさんの見立てだが、騒動を起こした当人たちにとってはむしろこれからが「針のむしろ」。企業からの重いペナルティーが待っている。
   ステーキレストラン「ブロンコビリー」が元従業員に損害賠償を求める方針を示したことが話題を呼んだが、これに限らず多くの「被害企業」が、「犯人」たちを厳しく追及する姿勢を見せる。

ステーキ店閉店で多額の損害賠償が…

   東京都のブロンコビリー足立梅島店の18歳従業員が、「バカッター」写真を投稿したのは2013年8月5日だ。キッチンの大型冷蔵庫に体を突っ込み、おどけた表情を浮かべた1枚はたちまちツイッター上で炎上、翌6日には店舗の休業、さらに12日には閉店が決まり、さらには、
    「不適切な行為を行ったアルバイト従業員に対し、本件に関する損害賠償の請求についても検討しております」
という発表までもが出た。迅速かつ厳しい対応に一部では「やりすぎ」との声も上がったが、ブロンコビリー側の姿勢は揺らがない。担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、「現在検討を続けている途中です。やるならば、すべてひっくるめて、という話になりますから」。ちなみに「女性セブン」の9月12日号によれば、問題の店員は「怖くて外に出られない」と、家に閉じこもっている状態だという。

ピザーラ&西友で暴れたバカッターも賠償検討

   このほか「悪質」との声が高かったのが、宅配ピザでおなじみの「ピザーラ」東大和店(東京都)で起こった騒動だ。ここでは複数の店員が、キッチンの冷蔵庫やシンクに入るなどの「ご乱行」を行っていたばかりか、近所のスーパー・西友河辺店にも乗り込み、商品棚に乗る、冷蔵庫に入る、買い物カゴに体を突っ込むなど、暴挙の限りを尽くした。
   問題発覚後の25日、ピザーラは東大和店の営業を停止、保存食材の廃棄や清掃消毒に追われる羽目となった。さて、この時点では「厳正な処分」としか発表されていなかった「バカッター」店員たちはどうなったかと尋ねてみると、
    「該当する関係者は全員解雇です」(運営会社フォーシーズの担当者)
ときっぱり。損害賠償も、当然検討しているという。
   西友も27日、「心ない若者が(中略)不適切行為を行い…」と、公式サイトで騒動について報告した。同様の騒動に巻き込まれた会社の多くが「お客様の不適切行為」と表現した中、なかなか厳しい表現だ。この「心ない若者」のおかげで、棚の撤去に買い物カゴの洗浄など今週一杯大忙しだったと、こちらの担当者はげんなり。対処もひと段落付いたということで、これから被害届の提出を考えるという。

損害賠償は最高2000万円説も

   18歳の男性客にアイスケースに寝そべられた群馬県のスーパー「カスミ」フードスクエア前橋店では、すでに所轄の警察に被害届を提出した。ケースの洗浄はもちろんのこと、アイス類の返金に応じるなど対応に追われた同社では、損害がいくらになったか計算の真っ最中だ。金額が確定し次第、男性への賠償請求を検討する。すでに男性は通っていた調理師学校を退学させられており、まさに「泣きっ面にハチ」か。
   東京スポーツなどはブロンコビリーのケースに関して、専門家の「請求額2000万円、実際には500万円前後を支払うのでは」という見方を紹介している。これはさすがに特殊だが、いずれにせよ「バカッター」若者たちの多くは当面眠れない夜が続きそうだ。

内田樹「ツイッターの炎上は出来の悪い芸へのブーイング」(2013年8月30日NEWSポストセブン)

 バイト先の冷凍庫に入るなどの“悪ふざけ”行為をネットで公開し、炎上するケースが相次いでいる。思想家の内田樹さんは、炎上をたきつける人たちの行為を「さらけ出すという芸に対するブーイング」だと見ている。

「リスクを冒して常識を逆なでするという“芸”にはそれなりの熟練と計算が要る。素人が簡単に真似できるものじゃない。出来の悪い芸に対して観客がブーイングしているのが炎上なんです。だから、炎上させる側にも加害者意識なんておそらくないです。“くだらない芸で受けると思うな”と見巧者のつもりで批評しているんです。個人情報をさらすというのも“演者”に生卵やトマトを投げつけるような気分でしていることではないんでしょうか」

 悪ふざけをする人たちの行為こそが問題であることは間違いない。しかし、精神科医の香山リカさんは、悪ふざけ画像を投稿する人と炎上させる人の心理は同じだと分析する。

「悪ふざけをする人は、自分を認めてもらいたいという願望がすごく強い。炎上させる側も、日常生活では優位に立ててなくて、自分に自信がない。だから、みんなで炎上させて、自分は多数派なんだということを確認したいんです」(香山さん)

 炎上した若者たちは、例外なくバイトをクビになり、社会的制裁を受けている。にもかかわらず、悪ふざけ投稿をする模倣犯が後を絶たないのはなぜなのか。教育学者の齋藤孝さんが言う。

「ツイッターやフェイスブックは大げさにいえば、世界中の人が見る可能性があります。でも自分たちにとっては、仲間内のツールでしかないから、その怖さがイメージできない。さらに、今の人は、影響を考えて行動する想像力が欠如しているんです。だから、気軽にアップする模倣犯が相次いでしまうのでしょう」

 内田さんは、そうしたネット社会の怖さへの想像力が欠如している原因は、今の社会から生きていくためのルールが失われているからだと訴える。

「食べ物をおもちゃにしてはいけないというのは、人類が何万年もかけて作ってきたルールであり、作法です。かつては家庭で徹底的に叩き込まれたそういう教えが、今はもう伝わっていない。だから、たとえば、アイスクリームの冷凍庫に入って何が悪いのか、実はよくわかっていないと思います。アイスは袋に入っているんだから、おもちゃにしたくらいで商品の価値が減ずるわけじゃない。なんで怒られるのかわからない、というのが若者たちの本音じゃないでしょうか。でも、それは人類学的ルールをきちんと教えてこなかった大人たちの責任なんです」(内田さん)

 彼らをただ「バカか?」と嘆き、溜飲を下げるのでは今後も同じような騒動が繰り返されるだけだろう。ただの「悪ふざけ」行動の後ろに透けて見える、親子の断絶や教育の弊害に思い至る理性と想像力こそが今、問われているのかもしれない。

祭りの後には粛々と後始末をするというのは当然のことなのですが、ここで注目していただきたいのは勝手に匿名性を信じて全世界に愚行を公表してしまった結果リアルでの情報が全てさらけ出されてしまった人々の予後で、「「怖くて外に出られない」と、家に閉じこもっている状態」と言うのはかつてマスコミなどにバッシングされた人々が辿った運命と全く同じ構図ですよね。
罪に対する罰はきちんとしたルールに基づいて行われるべきで、解雇や損害賠償請求などをした上にプライベートを晒して批判するのは二重処罰に当たるのではないかと思うのですが、「悪ふざけ画像を投稿する人と炎上させる人の心理は同じ」などと言う声が上がってくるのもその辺りにも理由の一端があるのでしょう。
もちろんネット上の炎上騒動などしょせん毎日幾らでも発生していることであって、しかもこうも同種事件が続発している中では特定個人への興味と関心がいつまでも続くとは思えませんが、今回の炎上騒動は改めてネット上の人格と実生活の人格とを結びつけられることの怖さを思い知らせたものであるということは言えると思います。
その意味で一連の馬鹿発見器騒動以上に大きな反響を呼びそうなのが先日某巨大掲示板で発生した個人情報大量流出事故なのですが、その悲惨極まる現状をこちらの記事から紹介してみましょう。

2chの個人情報流出 BL趣味の書き込み晒された女性准教授も(2013年9月2日NEWSポストセブン)

 巨大ネット掲示板「2ちゃんねる」の愛好者、“2ちゃんねらー”たちに戦慄が走った。同掲示板の有料閲覧サービスに登録していた3万人の実名や住所などがネット上に流出したのである。絶対に実名では言えないことを“言いたい放題”やってきた彼らの仮面が剥がされ、さぁ大変。実際に、今回の流出劇によって、ネット界に“晒される”ことになった被害者たちの悲劇を見てみよう。

 地方国立大学の名称が記されたドメインの主は、人文学部の女性准教授だった。彼女が好んで書き込んでいたのは同性愛をテーマとした漫画や小説などに関する投稿。さらに連続テレビ小説『あまちゃん』を見ながら、登場キャラクターたちの情交シーン(もちろん実際のドラマにはない)を妄想する投稿までバレてしまった。

 また大手家電メーカーに勤める男性の投稿からは、3人組の人気音楽ユニット「Perfume」の大ファンであることが窺える。朝から〈おはようかしゆか(※かしゆかはメンバーの名前)〉。

 テレビ放映がある日には、〈生で見たかったッス〉。この男性は書き込みごとにハンドルネームを変え、5人分の自作自演を繰り返して掲示板を盛り上げていた疑いがある。どうやらPerfume人気を下支えするために涙ぐましい努力をしていたようだが、こうした演出が行き過ぎたのが次のケースだ。

 人気男性ボーカルグループのアーティスト名がついたアドレス。この持ち主である女性は、仕事柄なのか所属タレントなどのテレビ出演をチェックしては投稿していた。掲示板の話題がこの男性ボーカルグループに至るや〈アルバムの曲順が決まったらしい〉といった活動情報の告知を投稿していた。もし音楽事務所の関係者がファンを装い、所属タレントへの応援や活動情報を書き込んでいるのだとしたら、営業活動を越えた一種のやらせと言えよう。

「ネット上の一個人を装って商品などを宣伝するステルスマーケティングは、これからどんどん発見されていく可能性があります」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏)

あちらこちらで著名人のカミングアウトが続いている現代の世情を考慮すれば、別にどんな個人的嗜好があろうが世間に迷惑をかけないのであればどうでもいいんじゃないかとも思うのですが、まあ教職などでは学生に対しては多少気まずいところもあるのでしょうかね…
それはともかく、今回の流出事故で個人が特定された人々は元より大変な騒動になりかねないのはもちろんですが、いわゆる成りすましや工作員など今まで様々な疑惑という形で語られていた諸問題が、少なくともその一部は全くの事実であったと言うのはそれなりに衝撃的で、かつて大いに話題になった「朝日新聞掲示板荒らし事件」にも匹敵するインパクトのある大事件であるとは言えそうです。
ただ今回の流出事故で注意していただきたいのは、個人情報が漏れてしまった人々の大多数は別に違法行為を行っている訳でもない単なる一利用者に過ぎないということで、それをわざわざ個人情報を追求しおもしろおかしく騒ぎ立てるというのはどう考えても道理の立たないやり過ぎというものでしょうね。

ネット上で何かしらトラブルが起こるたびに「実社会ではどうかと還元して考えて見る」ということが言われますが、日常生活で他人のいかにも世に知られたくなさそうな不都合な事情を知ってしまうということはままありますけれども、普通それを大騒ぎして街中の噂として広めたりはしないものだし、仮にそうしたことがあったとすれば大抵の場合は広めて回った側にもそれなりの批判を受ける可能性がありますよね。
ネット上の場合は自分の個人情報を隠したままで一方的に他人を批判出来るというポジションに立っていると考える人々が多く、それが過剰なバッシングや炎上騒動に結びついていると言う意見があって、その解消のためにもネット利用の実名義務化を推進しようなんて極論すらもありますけれども、基本的には先の実社会におけるケースと同様にルールというよりもマナーの問題ではないかなと言う気がします。
本人だけにそっと指摘してやればいいものを「あのおっさん社会の窓開けっ放しで歩いてるぞワッハッハ!」なんて大声で触れて回るのは言う方も恥ずかしいと感じるのが実社会における感覚だとすれば、今まで秘められたものはとにかく掘り尽くすまで掘り出さずにはいられないという態度で発展してきたネット社会もそろそろ一段階成熟し、時にはあえて突っ込まずに一歩引くということを覚えてもいい時期だとは思いますね。

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コメント

2ch情報流出 大手紙記者と思しき人物が指原莉乃ファン罵倒
http://www.news-postseven.com/archives/20130903_208764.html

投稿: やっちゃったw | 2013年9月 5日 (木) 08時25分

いや腐趣味バレはともかく二次創作投稿までバレちゃったらさすがにねえ。
ところで上の記事もそうですがマスコミがこういうことやっちゃうとステマとかなんとか言われませんかね?

投稿: ぽん太 | 2013年9月 5日 (木) 09時14分

香山リカって医籍検索しても載ってないよね?思わず「香山リカ 本名」でググっちゃったじゃないかw

投稿: | 2013年9月 5日 (木) 10時29分

マスコミ関係者がかなり目立っていて、しかもまんざら業務と無関係でもなさそうなのが気になりますね。
しかしわざわざ●を使わなくても…と言う気もするのですが、そこまでして書き込みたかった(書き込む必要があった)ということなのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月 5日 (木) 10時50分

とうとうバカッターと呼ばれるようになったか
珍走団みたいにバカっぽくして利用者減らす作戦?

投稿: | 2013年9月 5日 (木) 11時22分

子どもや学生が人生詰んでしまうって普通じゃないです。
こういう失敗になにか保険でもかけられないものでしょうか?

投稿: てんてん | 2013年9月 5日 (木) 14時14分

イジメの加害者と同じです。つまり、おふざけの範囲がわからない。小学生かそれ以前におふざけの範囲を教えてあげなかった大人の責任です。
幼少時にその範囲を体罰をもってしてでも叩き込まなければならないのですが、それを阻止されている母性優位社会の犠牲者ですね、こういう失敗をする若者たちは。

投稿: aaa | 2013年9月 5日 (木) 15時00分

注意!まとめサイト管理人も訴えられる時代です

ネット名誉毀損 再び不起訴

大津市の中学生が自殺した問題をめぐり、インターネット上に無関係の女性の実名などを
掲載したとして、名誉毀損の疑いで書類送検されたものの不起訴となり、
ことし6月、検察審査会で不起訴は不当だという議決を受けた東京の会社員の男性について、
大津地方検察庁は再び不起訴としました。

大津市の60代の女性は、自殺した中学生のいじめに関わったとされる同級生の親族だとして
インターネット上に実名などが掲載され、警察は、東京の会社員の男性を名誉棄損の疑いで
書類送検しましたが、大津地方検察庁は不起訴としました。

女性がこの処分を不服として大津検察審査会に審査の申し立てを行った結果、ことし6月に
不起訴は不当だと議決され、大津地方検察庁は再捜査を行っていました。

その結果、大津地方検察庁は、「書き込みは特殊なプログラムによって自動的に転用されたもので、
特定の人物の名誉を傷つける意図があったとは言い難い」などとして、再び不起訴としました。

被害を受けた女性は「自動的に転用された書き込みでも責任は免れないと思います。
良心の感じられない行為で不起訴になったのは残念です」と話しています。

ネット名誉毀損 再び不起訴 - NHK滋賀県のニュース
http://www.nhk.or.jp/lnews/otsu/2064252922.html?t=1378348270205

投稿: | 2013年9月 5日 (木) 16時53分

てんてんさまへ
殺人事件を起こした少年の場合、名前を変えて娑婆に戻すこともあるようですので、今後は氏名変更がもう少し軽い罪でも認められるようになるのかも・・・しれません。

投稿: クマ | 2013年9月 5日 (木) 18時03分

保険といえば普通は故意は対象外なので難しいのではないかと
そういうのが認められればむしろ炎上させて保険金搾取を狙う輩も増えそうですな
現実的には学校や会社の被害対策が精一杯では?

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年9月 5日 (木) 20時39分

2ちゃん情報流出 「匿名の暴言」が突きつけた闇
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130906/trd13090611160004-n1.htm

有名人も続々荒らしが発覚してビビッてんじゃない?

投稿: | 2013年9月 6日 (金) 11時40分

おふざけの範囲かあ・・・
小学校低学年のとき、誰もいない駐車場で一人で遊んでて、道路に落書きするのと同じ感覚で、十数台の車のボンネットに釘で落書きしまくって帰った。
後日、学校の全校集会で、名乗り出るようにと呼びかけがあった。
ただならない雰囲気に、これは絶対隠し通さなければならないと知らん顔をして、ばれなかった。

修理費とか代車とか、全額弁償してたらいくらかかったのかなあ・・・
家の車はボロボロで、車が傷つけたらいかんものだなんて、全く考え付かなかった。

投稿: | 2013年9月 9日 (月) 13時04分

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