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2013年9月 7日 (土)

拡大を続ける掲示板個人情報流出事件

先日もお伝えしたように現在進行形で大きな社会的影響が危惧されているネット巨大掲示板からの個人情報流出事件ですが、その影響の最たるものとして匿名性を売りにして成長してきた場において、匿名性を剥奪された個人情報が個々の発言と結びつけられてしまったということがあるかと思います。

2ちゃん情報流出 「匿名の暴言」が突きつけた闇(2013年9月6日ネットろんだん)より抜粋

(略)
 「僕は2ch上において暴言や誹謗(ひぼう)中傷を多数行っておりました」

 ある人気ライトノベル作家は8月27日、公式サイトに謝罪文を掲げた。匿名で同業作家らに対して「虚言癖持ち」「見栄を張るためだけに嘘をつき続ける人間」などの中傷を書き込んでいたことが、流出情報により明らかになったためだ。

 ◆自業自得なのか

 当然ながら、ネットでは猛批判を浴びて炎上。「完全に自業自得。今回みたいな希少すぎる偶然がなければこいつはずっとクズ行為を続けてたんだよ」(2ちゃんねる)と糾弾が続く中で、「太宰治が現代にいたら同じようなことしてたんじゃね」(同)と、やや同情的な意見も。中傷の対象となった作家自身はツイッターで「別に悪く思っていないし、過ぎたことです」と発言し、“大人の対応”を見せている。
(略)
 個人情報のネット流出はもはや珍しくないが、今回の事件が特異なのは、利用者の実名や住所、クレジットカード番号などと、2ちゃんねるの書き込み履歴が照応可能な形で流出したことだ。流出した書き込み履歴は約1カ月分にすぎないが、人によってはカード情報の流出よりも被害が大きいかもしれない。
(略)
 「書き込みが結構面白くて、好きだった住人が、別の板の特定のスレでは執拗(しつよう)な荒らしをしていたのは引いたわ…人間の心の闇を垣間見た気がして」(2ちゃんねる)

 今回の流出が突きつけたのは、ネット上に完全な匿名は存在しないという事実の確認はもちろん、人間が匿名を許された場合にどう振る舞うか、それが露見した場合にどんな社会的制裁が降りかかるかという、あまり愉快でない現実だった。(磨)

個人的には成りすましダブハン一向に構わないじゃないかと思うのですが、要するにネットにしろ実生活にしろ状況によって立場やキャラクターを変えていく必要があるのは当たり前で、例えば多くの人の前で理想的な人間像を見せつけて夢を売っている芸能人が実生活はドロドロでろくなものじゃないと言うことはままあるわけですよね。
それを「あの人は表の顔は良いけど本当は…」などと批判の種にするのか、それとも「あの人はプライベートの問題を公に持ち込まない。プロだ」と感心するのかということだと思いますが、ともかくも意識的に使い分けるのであれば徹底的に「その人格とこの人格は別物」で押し通すのは有りだと思います。
もちろん基本的に誰かが嫌いだと言う前提が先にあったりで、その材料として成りすまし等を取り上げ批判をするというのも当然有りなのですが、こうしたことを「人間の心の闇」などと深刻に受け止めてしまう人と言うのは個人としてはいい人なのでしょうが、複数の顔があって当たり前の人間社会で生きていくにはいささか線が細すぎるような気がしないでもありません。
まあそうした余談はともかくとしても、何かしら他人の秘密めいたことをかぎつければついつい探ってしまいたくなるのが人の常とは言え、あまりやり過ぎると他人を非難していたはずがいつの間にか自分が非難されるべき行為に手を染めてしまっていたということにもなりかねないと言うものですが、この辺り法律や社会ルール上はどうなっているのかということも最近話題になってきています。

匿名のはずの書き込みで個人特定、2ちゃんねる発の「犯人捜し」に問題はないか(2013年9月2日ITpro)より抜粋

(略)
 今回の●の利用者情報が漏えいしたことによって、既に様々な問題が発生している。なんといっても今回漏えいした情報の中に、個人を特定する情報が含まれていたことが最大のポイントである。

 名前や住所電話番号といった個人情報やクレジットカード情報に加え、IDや「コテハン」と呼ぶハンドルネームを固定化するためのアカウント情報など●に関するありとあらゆる情報が漏えいした。この漏えいによって、2ちゃんねる上の特定の書き込みについて誰が書き込んだかがわかるようになった。

企業が従業員の過去の書き込みを調べることの問題点

 これを受け、一部の企業ではこの個人情報を基に、従業員が企業情報を書き込んだとか、仕事中に2ちゃんねるを閲覧しているなど、服務規則に反した行為がないかを調べているといった報告がネット上の掲示板に書き込まれている。場合によっては当人を特定し、当人に対して解雇など何らかの懲罰を与えているといった内容もある。

 ネットの掲示板に書き込まれた情報のためその信憑性は気になるところだが、もしそこまでの対応をしている企業があると仮定すると、指摘したい問題がある。その企業が「プライバシーマーク(Pマーク)」を取得しているなら、これら第三者からもたらされた個人情報を利用して従業員に対して解雇や減俸などの懲罰を与えるのには問題はないのかということだ。

 Pマーク取得企業は、個人情報の取得目的や取得内容、取得した情報の運用方法、廃棄方法などをこと細かく決められている。こうした規定の下では、第三者からもたらされた「従業員を含むかもしれない」情報を使って個人を特定する行為に問題はないのだろうか。Pマーク取得に関するコンサルティングを手がけた筆者としてこの問題を提起したい。

 リストに従業員が含まれていなかった場合は当然のこととして従業員が含まれていたとしても、プライバシーポリシーの設置理念(Pマークで定めた、取得した情報の運用方法)から逸脱している可能性が十分にある。もしこうした行為を実際にしている、あるいはこれからしようとしている企業があるなら、本当にPプライバシーポリシーの理念に正しいことなのかを判断したうえで踏み切ってほしい。
(略)

ちなみに記事中にあるプライバシーマークとは日本情報経済社会推進協会が認定しているもので、もともとが個人情報の保護を目的に設定された制度ですからかなり利用者にとっては厳しめな内容になっているのですが、一般論としても今の時代個人情報の目的外使用ということに関しては非常に厳しく言われていますよね。
昨今では企業の内部告発事件というものも少なからずありますし、もちろん企業機密の流出だ、不当なブラック企業認定だと企業側もネット上の情報に気を遣うべきなのは当然なのですが、実際に誰がそれを書いているのかということが明らかになった場合にどう対処すべきなのかということは、社内規定さえも未整備なところもまだまだ多いのではないでしょうか。
もちろんあからさまな犯罪的あるいは反社会的行為を行ったという場合には社会的にも制裁を加えることが求められるというものでしょうが、記事にもあるように内部でペナルティを与えるにもそれなりのルールがあるのは当然で、現状では情報が広まり社会問題化した後であるならともかく、少なくとも企業側が自ら率先して流出情報を検索し炙り出すということまでやるのはやり過ぎと言う考えもありそうです。

最近はいわゆるまとめサイトなども情報拡散に荷担していると訴えられるケースが出てきているようですが、判断が難しいのは先の流出事件にしろこうしたまとめサイトにしろ炎上させている人々が取り扱っているのはあくまでもネット上のどこかですでに公開されている情報であって、誰も知らない他人の情報を勝手に表に出してしまうという実生活でよくある個人情報流出とはいささか事情が異なっていることです。
特にツイッター炎上事件などは本人が自らの意志で公開しているプロフィールなり過去の投稿なりをうまくつなぎ合わせることで個人情報が特定出来てしまうということがしばしば起こりますが、こうした場合本人は知られることを構わないと判断して公開したということですからプライバシー侵害等々の責任を問うのは難しいようで、時系列を無視して情報を総ざらえに出来るネットに法律が追いついていないとも言えそうですね。
今回の流出事件などではもちろん流出した情報は当事者によって認められたものではありませんから、それでは誰が責任を取ってくれるのかと言えば掲示板の運営管理者ではなく流出もとのビューワーを出していた会社側となるようですが、実は現行法ではどうも大した責任は追求出来そうにないらしいという話も出ています。

2ちゃん「情報流出」で悪口がばれた! 運営側に「責任とれ」と言える?(2013年9月5日弁護士ドットコム)より抜粋

匿名掲示板であるはずの「2ちゃんねる」に書き込んでいたユーザーの個人情報が流出した。これにより、あるライトノベル作家は、同業者などを誹謗中傷する書き込みをしていたことがバレて、公式サイトで謝罪するはめになった。
この作家は今回、故意に誹謗中傷の書き込みをしたことを認めており、場合によっては名誉毀損で訴えられる可能性もある。ただ、現実的には、身元がバレなければ、そんな事態に追い込まれることもなかっただろう。
そこで、この作家は、情報を流出させた運営側を訴えて、損害賠償を請求することができるのだろうか。ネット上での情報の取り扱いにくわしい清水陽平弁護士に話を聞いた。

●「誹謗中傷した人」が法的保護を受けることは難しい

誹謗中傷をしていたことが明らかになったということを理由に、損害賠償請求をすることは難しいと思います。自ら不法な行為をしていた以上、その者を保護するべき必要が乏しく、また、そもそもどういった権利が侵害されたのかということも必ずしも明らかでないからです」

――確かに、そういった発言をした責任は、あくまで本人がとるべきだろう。そう考えると、今回の運営側の責任は?

運営側がクレジットカードの情報を含む個人情報を流出させたということ自体は問題です。その件については、情報流出元に対して損害賠償請求をすることは可能です。
ただし、誤解している方が多いようですが、今回情報を流出させてしまったのは、2ちゃんねるの管理者ではなく、2ちゃんねるビューアの「●」を発行していたN.T.Technologyですから、あくまで同社に対する賠償請求ということになります」

――どんな「損害」が認められる?

「まずは、財産的損害です。これはカード情報を悪用されたとか、迷惑メールが増えたなどの二次被害を受けた場合に発生します。
もう一つが精神的損害で、いわゆる『慰謝料』に関わる部分です」

●慰謝料の金額は「想像よりもずっと少ない」

――どれぐらいの金額になる?

「慰謝料の『額』が気になるところだと思いますが、これは皆さんが想像されるよりもずっと少ないと思います」
(略)
このような判例から見ていくと、本件の慰謝料は1万円程度ということになるのではないかと思います。なお、カードの不正利用などの財産的損害の賠償額は、慰謝料とは別計算になります。不正利用分については、カード会社が補填することも多いでしょうが、仮に補填されないケースでも、相当因果関係の範囲で損害が認められる余地があります」
(略)

これだけ拡散された責任が1万円で終わりとは非常に生活感覚とずれるところではあるのですが、ネットの場合難しいのは情報を流出させた人間とそれを拡散させた人間、そしてそれを見て叩く人間とがそれぞれ別個になっていて、しかも各々の段階で特に悪意もなく(しばしば全く文字通り)機械的に転載しているだけの介在者も多くいる、それらのそれぞれでどの程度責任があるのかの判断が非常に難しそうだとは判りますよね。
特に流れの速い掲示板などではスレッド全体として見るとあからさまな悪意をもって情報が次々に晒されているようにしか見えなくても、個々の個人は「そう言えばどこそこでこんな話を見かけたんだけど関係ある?」程度のことを書いているだけと言うこともままあって、誰にどの程度責任を負わせるべきかと言われると裁判所も判断のしようがないでしょう。
ただ民事訴訟においては「取りやすいところから取る」の大原則がありますし、今回のようにそもそも最初の流出がなければ何も問題が起こらなかったということが明らかな場合で、しかもその流出元が社会的にもそれなりに責任を取れる(=お金を持っている)企業であるとするならば、流出によって個人の嗜好をバラされたという程度でなく実際に被害が出たといった場合にはそれなりに取れるのかも知れませんね。
それでは中間に介在して情報を拡散させただけの人間には責任はないのかということですが、例えばその情報が入っていないコミュニティーにわざわざ知らせて回った結果被害が拡大したといった場合のように行為と結果の因果関係が明らかであるならこれまた損害賠償請求の対象になるでしょうから、拡散する方も内容によってはそれなりのリスクはあるものと承知しておくべきではあるのでしょう。

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コメント

とりあえず全員きっちり損害賠償で取り立てていけばよろしいw

投稿: aaa | 2013年9月 7日 (土) 10時12分

いくらなんでも1万円って安すぎると思うんですが…
けど純然たる個人情報の値段ってどれくらいが妥当なのか難しいですね。
アメリカだったらこういうのも懲罰的賠償とかいうんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2013年9月 7日 (土) 12時02分

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