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2013年9月25日 (水)

資格試験は何を担保しているのか?

昨今制度改定を巡る議論で何かと話題になっているのが専門医資格というものですが、先日その専門医資格を書類を偽造して取得していた医師が資格を取り消されたそうです。

女性医師が捏造書類で専門医資格 札幌、取り消し処分(2013年9月21日47ニュース)

 患者が医師や医療機関を選ぶ判断材料の一つになる「専門医」をめぐり、札幌市内の病院に勤務する40代の女性医師が書類を捏造して資格試験を受験し、一定レベル以上の実力を持つ医師に与えられる「認定内科医」と「総合内科専門医」の資格を不正に取得していたことが21日、日本内科学会などへの取材で分かった。

 学会は今月、この医師の両方の資格を取り消すとともに、認定内科医は3年間、総合内科専門医は永久に再受験を認めないとの処分を決めた。

どうしてばれたのか?とも思うのですが、この書類捏造というのは突き詰めて考えると実は大きな波紋を呼びかねない問題でもあって、例えば症例数を捏造してやったこともない手技を沢山こなしたような顔をして専門医を取っている先生方も少なからずいる結果、「内視鏡専門医なのにカメラもろくにできない」と言う不思議な現象が発生しているわけですね。
医師が将来どんな資格を取得するか判らないのですから、研修医時代からありとあらゆる手技や経験をすべてデータベース化し管理するといったちょっと非現実的なことを行っているというのでない以上、基本的には申請書類はあくまでも自己申告であり、それだけを担保として知識も経験もありと保証するというやり方に一定の限界はあるのかなという気はします。
ところで学会によっても取り扱いが違うのでしょうが、いわゆる専門医資格の二階建て構造化で認定の際には内科や外科など基礎学会の認定医資格を必要としても、更新においては特に記載がないという場合も少なからずあるようで、この歳になってから基礎学会資格を取り消されてもさほど大きなペナルティーにはならないのかも知れませんね。

専門医などはなければないで別に医師として働けないわけではありませんが、その大本ともなる医師免許などはさすがに厳密さが要求される国家試験で、以前は一部旧帝系大学などでは学生時代は基本放置、国試の勉強は勝手にやってくれで通っていたようなところがありましたが、最近はさすがに学生の質を保つ必要があると言う考えからか進級チェックも厳しくなってきているのは先日もお伝えした通りですよね。
その国試に関してはかねて合格基準など非公開で、問題としての難易度と合格率に相関がなさそうに見えること、医学部学生が大きく増え質の低下が叫ばれている中でも合格率は顕著な変化がないなど、かねて様々な要因を加味して合否判定が行われているのではとささやかれていましたが、先日こういう話が出ているということでやはり皆気になっていたんだなと言うことでしょうか。

「国試の情報公開や質の高い問題を」-医学部長病院長会議が要望(2013年9月20日CBニュース)

 全国医学部長病院長会議はこのほど、医師国家試験について情報公開や質の高い問題の出題などを求めた要望書を厚生労働省と文部科学省に提出した。これに対して、両省の担当者は前向きな姿勢を示したという。19日に開かれた記者会見で明らかにした。

 要望書は、今年2月に実施された医師国家試験の受験生や大学医学部、医科大の教員・教官を対象にした国試に関する感想や問題の質、要望、大学での学習と国試の関連性などのアンケート調査の結果に基づき作成した。

 調査では、現状の国試について、「透明性が維持され、不適切な問題は受験生の不利にならないようになっている」「合否が在学中の学業成績と相関している」ことなどが評価点に挙がった。

 一方で検討事項として、「本質的に臨床実習の成果を問う問題として機能していない」「必修問題の内容や難易度は、他の問題と十分に差別化できていない」などが挙がった。

 調査結果を踏まえて同会議は、▽国試に関する情報公開や臨床実習の成果を問う良質な問題の出題▽受験環境の整備▽難易度が高く、正解率の低い問題を採点から削除―などを要望した。【松村秀士】

広範な臨床能力を維持するために毎年国試問題を解いているという先生もいるくらいで、怪しげな学会の専門医試験問題などよりはよほど国試問題の方がしっかりしているという声もあるでしょうが、やはり専門医レベルの先生であっても解答について見解が分かれるという場合が散見されるというのは困ったものですし、そうした微妙な問題が医師国試に適切なのかという疑問もあって当然だと思います。
昨今では専門医試験でもきちんと詳細な採点結果が帰ってきて弱点がわかるようになっていたりもしますが、合格するにしても落ちるにしても基礎的な臨床に関わる知識を問うのであれば何が足りていて何が足りないのかを教えてやらなければその後の研修にも苦労するでしょうし、そもそも採点や合否の基準も判らなければどういう学習をしていけばよいかも判らないということになります。
一方で他の国家試験ではそこまでのことはやっていない、それは国試の役割ではないという考え方も当然にあって、それでは医学教育というものの到達点を図る妥当な基準とは何かと言うことを考えた結果がCBTやOSCEといった共用試験なのだろうし、昨今その基準を全国統一でやろうとしているのも国試というものに頼った質的担保の限界を示しているということなのでしょう。
実際に一部で学部教育が国試予備校化していると言う話もあり、単に国試に通れば大手を振って医者として十分な能力を持っていると言えないんじゃないか?という考え方が出てきてもおかしくないのですが、そうなるとこういう話はどうなってしまうのだろうかという疑問も湧いてくるのが以前に少し話題になっていた件の顛末です。

海外医学部卒業生 医師国家試験受験資格認定の書類審査を通過(2013年9月19日ハンガリー国立大学医学部)

7名の卒業生のうち6名が日本に帰国し、7月末に医師国家試験の受験資格を得るために厚生労働省へ申請をしましたところ、6名全員が書類審査を通過したことを確認しました。今後は、10月に日本語診療能力調査が行われ、それに通れば、正式に医師国家試験の受験資格を得られ、来年2月の医師国家試験に臨みます

この外国の医学部に通って国試受験資格を得るという話、数年前に募集が始まった時に一部方面で「医師になるための抜け道登場?!」と大いに話題になったことが未だ記憶に新しいですが、このハンガリー国立大はかなり本格的な体制を組んで学生を受け入れ、今回送り出してきたようですよね。
ご存知のように医学部というところは一般大学よりも年数も長いですし、資格取得という目的が明確な以上はそれなりに優秀で熱心な学生も集まってくると想像されますから、下手に留学生募集などと盲撃ちして玉石混淆で人を集めるよりはよほどに手堅く運営できるうまいことを考えたなと思うのですが、さてこの場合医学教育の質的担保をどのように行うのかです。
ハンガリー国立大学などはHPなどを見てもかなり本格的にやっていらっしゃるようなのですが、名誉学位を何十何百と抱え込んでいらっしゃるという著名人も世の中にはいるというくらいで、怪しげな国の怪しげな医学部を卒業したという経歴などはどこまで国試受験資格として認めるべきか、そもそも国試合格が質的担保ではないとするなら学部教育のレベルを国が確認し担保しなければならないはずですよね。

よく言うところで医師国試などしょせん9割が通るザル試験で選抜方法として機能していない、だから医学部は入試や進級で厳しくやっているのだと言う声が以前からありましたが、ご存知のように入試は地域枠などによって年々形骸化し学生の質が落ちたと嘆く教官が増えている、そして進級を厳しくしようにもしょせん相対的な評価ですから全体のレベルが低下していれば結局はすり抜けていってしまうことになるでしょう。
さらにそもそも外国の医学部に通えばいいということになればもはや何を信用したらいいのかということですが、そもそも医師としての能力をどう判断すべきかということには明らかな正解など存在しないし、さらに患者からの評価ともなれば時折出現する偽医者の方がよほど患者受けがいいと言われることなどからしてももはや何が何やらというものですよね。
昔の学部学生の頃から先輩後輩関係を築きあげ、それがそのまま医局同門の先輩後輩関係につながっていくという「白い巨塔」システムはそういう点からすると長年の付き合いがあるだけに、とにかく体育会的な暑苦しさや窮屈さはあるにしても「こいつはどの程度出来るのだろう?」と判断に迷うことだけは少なかったと言えるのかも知れません。
しかし考えて見れば昔は医師の質がどうとか質的担保はだとか面倒なことなど誰も考えてはいなかったわけですが、それでも日本の医療は世界最優秀のレベルにまで達するくらいにはきちんと運営されていたわけですから、あまり資格だ資質だと小難しく考えても仕方がないことなのかも知れませんけれどもね。

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コメント

あんな国試でも底辺私大の半分をふるい落とせるからな
もうちょっと難易度上げたらちょうどいいハードルになるんじゃね?

投稿: | 2013年9月25日 (水) 08時28分

ハンガリーの医大ねえ…
教育は何語でやってたんでしょうね?
英語教育だったらそれなりに需要はあるのかな?
最近の学生はどんどん世界に飛び出して行きますね。

投稿: ぽん太 | 2013年9月25日 (水) 09時02分

>医師国試などしょせん9割が通るザル試験

米国の医師資格試験USMLE(http://www.usmle.org/)も米国人・カナダ人の医学生の合格率は9割。
外国医学校卒の外国人医師の合格率は、もっと下がるようですが。
カナダ、オーストラリア、英国も外国医学校卒医師向けの医師資格試験を全国統一で行っています。

もともと、学力的に上位グループのなかで更に入試で選抜された学生が、必死に勉強して受かるのが医師国家試験なので、合格率が高くても不思議ではありません。
ただし、どの国でも専門医試験の合格率は、医師資格試験ほど高くはありません。

米国の医師資格試験の場合、ただ受かれば良いというわけでもなく、高得点で受からないと、研修医の募集試験で良いプログラムに採用されないみたいなところがあります。

フランスも卒業時の医師資格試験の成績で、研修先・診療科目の選択が決まるので(当然、高得点の医学生が、良い研修先、人気のある診療科目を選べる。家庭医学専攻は、成績下位の医学生の選択先とか)。


投稿: とある内科医 | 2013年9月25日 (水) 09時07分

個人的には医師が特別な才能を持った人間にしかなれない集団となって欲しくないので、医師国試については最低限度の選抜機能があればいいと思っています。
それよりも気になるのが卒後教育のあり方で、現状では国試に通りさえすれば何の勉強も修行もしないでいる方が中途半端に頑張るよりも医師の座が安泰なのですね。
別に医師免許更新制導入論者でもありませんが、最低限必要なアップデートの努力をきちんと評価できる仕組みは必要かなという気がしています。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月25日 (水) 11時28分

医師になってからのスキルアップこそが評価されるべきではないでしょうか?
専門医として学会などで大活躍している先生方でも実際の臨床現場での患者への対応に問題のある方々は少なくないようです。特に名医としてテレビや雑誌などメデイアで紹介されて患者が殺到しすぎると1人1人がかなり粗雑な診療になるようです。著しく期待外れだったという声もたくさん聞かれます。
一旦祭り上げられてしまうと、誰も意見できなくなるので、裸の王様状態になっている名医も少なくない
外来診療における薄利多売システムのおかげで本来はレベルが高いはずの専門医の診療すら劣化しているのが現実です。専門医有資格者の診療にはそれなりの技術料が支払われるべきです。
診療科が自由標榜で非専門医でも専門医も技術料は同じというのではいつまでも診療のレベルは上がらない。

投稿: 逃散前科者 | 2013年9月25日 (水) 12時01分

>医師国試については最低限度の選抜機能

大学入試でそれなりの情報処理能力と根性があった時代なら、それも良かったんでしょう

地域枠、推薦で、将来を売り渡すような根性なし、能力ナシが研修医になり、独り立ちするなんて、考えると悪寒がします

投稿: Med_Law | 2013年9月25日 (水) 17時21分

根性なしが標準になれば自然と医者への要求水準が下がって出来る親父のQOMLが上がるんですわ
おかげさまで近頃は楽させてもろうてますわ

投稿: たぬき親父 | 2013年9月25日 (水) 17時41分

国試に合格してもどうしようもない馬○な人ってどれくらいいるんでしょう?
あんまり低レベルでも通る試験だったらみてもらうの怖いなって思うんですが・・・

投稿: 素人ですが | 2013年9月25日 (水) 18時55分

記憶力さえ優れていれば通る試験だから、他の部分は何にも保証はできない
じっさい学生実習で患者の前には絶対出すなと言われてた糖質も普通に通ってたし

投稿: | 2013年9月26日 (木) 15時26分

>個人的には医師が特別な才能を持った人間にしかなれない集団となって欲しくないので、医師国試については最低限度の選抜機能があればいいと思っています。

医業は相当数の需要に応じなければならない「実業」であって、極少数の異能者がいれば事足りる「芸術」ではないですからねぇ。

>診療科が自由標榜で非専門医でも専門医も技術料は同じというのではいつまでも診療のレベルは上がらない。

診療科が自由標榜で非専門医でも専門医も技術料は同じなのに苦労して専門医を取得&維持する奴が資格商法に引っかかったマヌケってだけかとw。

>じっさい学生実習で患者の前には絶対出すなと言われてた糖質も普通に通ってたし

かってはそういうのは教授陪席専門医だったけど今はどうしてるんでしょうねぇ?
*まぁ明らかにおかしいのには患者も来ないでしょうから実害は案外ないのかもしれませんが。


投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年9月27日 (金) 10時14分

本当の悪人は、、、見た目ではわかならない。
えー、あの人が、専門医を不正?
女医は、、私、知らなかったのですよ と芝居。
永久追放、初めてじゃない?
そうじゃなきゃ、ほかの内科学会員許さないだろ。

投稿: | 2013年12月 7日 (土) 16時43分

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