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2013年9月 2日 (月)

医療費削減政策ふたたび?!

予算の概算要求が史上最大規模だと言い、この調子ですと消費税をいくら上げようが全部右から左へ使い果たしてしまうんじゃないかと言う懸念の声もありますけれども、その中で特に大きな比率を占めている医療費の分野では何となく増税分が主にこちらに回ってくるのかなという妙なゆとりも感じられるところですよね。
もちろん社会保障費増大に対応するために消費税を引き上げなければならないという文脈で話を進めてきた側面がありますから、それなりの部分は医療他の社会保障に回ってくるのも確かなのでしょうが、だからといって医療費を聖域化しないと言うことなのでしょうか、久しぶりに「医療費削減政策」が叫ばれているとニュースになっています。

医療・介護費 5兆円削減 習慣病予防を推進(2013年8月30日東京新聞)

 田村憲久厚生労働相は三十日午前の記者会見で、二〇二五年度に八十三兆円に達すると見込まれる医療・介護費に関し、介護の予防や健康づくり対策の推進により、五兆円規模での削減を目指す計画を発表した。

 医療・介護費は一一年度で約四十八兆円。厚労省は「団塊の世代」が七十五歳以上となる二五年度には、今より約三十五兆円増えると推計している。そのうち五兆円を、介護や医療にかかる人を減らすことで抑制する計画。財政が厳しい医療、介護保険の負担を軽くする狙いだ。ただ、既に取り組んできた施策が多く削減効果は未知数だ。

 医療では(1)糖尿病の重症化予防やメタボリック症候群対策などの生活習慣病予防や禁煙指導の強化などで二兆四千億円強(2)後発医薬品(ジェネリック)の使用促進で約一兆円(3)重複受診などの防止で約一千億円-の削減を見込んでいる。

 介護では、重症化すると治療が難しい認知症の早期発見・支援体制の強化や高齢者の肺炎予防対策で約九千億円の抑制を目指す。

 また介護や医療のデータを効果的に活用できる態勢づくりを進め、自治体などが効率的に介護予防・保健支援事業を展開できるようにすることで約六千億円を圧縮する。

レセプト活用などで医療・介護費5兆円削減-厚労省、予防・健康管理推進の概要(2013年8月30日CBニュース)

 厚生労働省は30日、「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取り組みの概要を公表した。高齢者の介護予防や現役世代の健康づくり対策などを推進し、5兆円規模の医療・介護費の削減効果を目指すというものだ。

 取り組みの概要では、高齢者の介護予防として、各自治体が地域の実情に応じて効果的な介護予防や保健事業を行えるよう、地域単位で医療・介護情報の「見える化」を推進する。また、認知症の人が住み慣れた環境で暮らし続けられるよう早期の支援体制を構築。高齢者の肺炎予防の推進や、高齢者と地域ニーズのマッチングの仕組み整備の支援なども行っていく。

 現役世代に対しては、▽医療保険者のレセプト・健診情報を活用したデータヘルス▽特定健診・特定保健指導などを通じた生活習慣病予防▽禁煙希望者を支援するたばこ対策―を推進し、3つの取り組みで約2兆4000億円の医療費削減効果を目指すという。そのほか、がん検診の受診率向上による早期発見や、こころの健康づくり、妊産婦や乳幼児期からの健康づくりも行う。

 一方、後発医薬品の使用促進や、ICT活用による重複受診・検査の防止にも力を入れ、医療資源の有効活用を図っていくという。

 同日の閣議後の記者会見で田村憲久厚労相は、今回示した予防・健康管理の取り組みにより、「5兆円規模の医療費、介護費の削減効果を目標としている」と述べた。併せて最大の目的は医療費削減ではなく、病気や重症化の予防であることも強調した。

 また、予防・健康管理の推進で国民が幸せになるだけでなく、医療資源の効率使用により医療機関に利益をもたらし、医療費財源の削減で国の財政負担も減ることを説明し、「厚生労働省として非常にやりがいのある仕事になる」と意気込みを示した。

 厚労省は省内で横断的に検討するための「健康づくり推進本部」を9月中に設置し、本部長に田村厚労相が就任する予定。【松村秀士】

しかしどれもこれも以前から懸案となっているものばかりという気がしますけれども、何故それが進まなかったかと言えば初期導入コストがかなりかかりそうな施策もかなりあるわけで、そのコストを誰がどう負担するのかということも今後改めて議論になるのでしょうね。
それはともかく、数年前まで強力に推進されてきた医療費削減政策と言えば、診療報酬の切り下げによって医療機関を締め上げ強制的に医療費削減を目指すというもので、おかげで医療崩壊などと世間でもすっかり医療業界の荒廃が知れ渡るようになった結果ようやく撤回されたという経緯があります。
今回言うところの医療費削減とはこれとはいささか方向性を意にしていて、医療の効率化を推進するとともに無駄を省くことによって医療費の削減を目指すというものですから、一見するとかつて行われたそれとは違って医療機関への直接的なダメージはないようにも思えますが、実のところ医療費総額が減るのですから最終的な医療機関の取り分もまた減ってしまうという計算が容易になり立つわけですよね。
これに対する代替収入の道としてメタボ検診や保健指導といった、保険診療の範疇から外れる予防医療にリソースを投じることで診療報酬以外の収入を確保すればいいじゃないかと言うことなのでしょうが、すでに全国労働者にメタボ検診が義務化されるなど一通りの需要喚起は行われてきた訳ですから、今後は未受診者を拾い上げ検診を受けさせるという地道な作業によってパイを大きくするしかないのでしょうか。

このメタボ検診なるものも元々は早期発見早期治療が医療費を抑制するという、どこかの団体が長年主張してきたような理屈に基づいて行われてきたものであって、コストも手間もかかっても将来的には医療費がそれ以上に抑制できるという皮算用に基づいて行われてきた訳ですが、実のところ当初から「かえって患者を掘り出し医療費を増加させるのではないか?」と懸念されてきたところですよね。
仮に国の言うように健康に過ごせる期間が延び長生き出来るようになったとしても、有病高齢者にかかる介護等のコストを単に何年か先送りするだけになる可能性もありますし、今までであれば「見つかった時には手の施しようがなく…」短期間で亡くなっていた方々も早期発見によって長い闘病生活を送るようになれば、むしろ医療費は増えるんじゃないかという懸念すら指摘されています。
それ以上に気になっているのがそもそも検診を受けない人々とはどのような人なのかということで、平素から健康に関心があり自ら努力して健康になろうとしているような方々が検診を忌避する可能性よりも、普段から健康のことなど二の次三の次、不健康な生活だと判っちゃいるけどやめられないと言うタイプの方が未受診者に多いんじゃないかと言う可能性があるということです。
特に特定健診になってから単に受けるだけでは駄目で、受けた結果異常があればそれを改善していかなければ会社側にペナルティがあると言うことでひどくうるさく言われることが増えていると思いますが、実は企業側としてはちゃんと検診受診の機会を提供したのに社員が自主的に受けなかったという場合には直接のペナルティがないのですから、表向きはともかく自主的未受診は願ったりかなったりという側面もあるかも知れません。

実際のところ特定健診の強力な推進によって医療費が増えるのか減るのかということはもう少し年月が経ってみなければ判りませんけれども、国としては医療および関連産業にどれだけのコストがかかろうが公的な支出が減らせればそれでよい訳ですから、保険診療外で行われる部分が大きくなり保険診療の一部なりとも代替できればこれにこしたことはないということになるのでしょう。
今まで何となく体調が悪いという人が病院を受診すれば、全身を一通り調べて「いやあ、特に異常ありませんよ。ただちょっと血圧が高いようですから薬を飲んでみますか」と言うことが普通に行われてきましたが、そうするために医師は沢山の保険病名をつけて保険診療にしてしまうことで患者の自己負担分を減らす努力をしてきた、しかし保険者側からすれば余計な検査ばかりして支出を増やしやがって…と言うことにもなりますよね。
今後はこうしたケースではまずは検診なりドックなりを受診していただく、そして引っかかったところだけを保険診療で行うという方向になっていくのかも知れませんが、そういう拾い上げ目的で見ると今の検診項目はいわゆる生活習慣病に偏りすぎているところがありますから、今後どのような項目がスクリーニングとして妥当なのかという議論ももう少しあっていいんじゃないかという気がします。

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コメント

特定健診で医療費減ってますか?
どんどん患者が増えてるだけって印象があるんですが…

投稿: ぽん太 | 2013年9月 2日 (月) 08時50分

ていうかマルチでひっかかってるメタボバリバリの奴ほど診断書だけ書かせて雲隠れってケースが多すぎる
ああいうのはちゃんと累積でペナルティつけないとダメだろ

投稿: tama | 2013年9月 2日 (月) 09時39分

メタボ基準治の妥当性も含めて、そのあたりはいずれきっちりとした検証結果を公表していただけるものと期待しています。>特定健診による医療費削減効果
しかし今さらあんなものには何の効果もなかったとは言えないでしょうから、下手するとまた妙な統計学的操作が行われたりするのでしょうかね。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月 2日 (月) 11時48分

ジェネリックで一兆円削減なら全部ジェネリックにすればいいのに

投稿: | 2013年9月 2日 (月) 15時46分

どんなやり方であっても医療費を削減したら病院の実入りは減ると思うのだけど。
病院や医師を減らすって言うならともかく医師はどんどん増やしてるんだから貧乏確定だよね?

投稿: よくわからない | 2013年9月 2日 (月) 21時06分

医師会がどこでねをあげて混合診療させてくれって言い出すか見ものw
そういやあいつら消費税非課税主張したの謝罪したっけ?

投稿: | 2013年9月 3日 (火) 19時37分

もう成人の予防医学、やめね?
そのほうが平均寿命が低下して、結果としての医療介護費が安くなるんじゃないだろうか。

投稿: | 2013年9月 4日 (水) 11時15分

極論ですが健康寿命延長策は、高齢者の延命的処置原則廃止とセットで扱われるべきものかとも思います。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月 4日 (水) 11時36分

同じような病態でも高齢となるほど治療への反応が悪くなり、肺炎一つでも大騒ぎすることになる
故に長く健康でいられてもその後の治療費はむしろ余計にかかる可能性があるがコスト比較はできているのだろうか

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年9月 4日 (水) 14時11分

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