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2013年9月13日 (金)

産科のある病院が22年間連続の減少 産科崩壊は深刻化する一方?!

先日以来厚労省の調査結果が各紙で報道されているのですが、病院が減り診療所が増え続けているという医療の担い手の変化が注目される一方で、相変わらず産科や小児科と言った「ハイリスク診療科」が減り続けているという傾向が見られると危機感と共に報じられているのですが、まずは記事を紹介してみましょう。

24年医療施設調査(2013年9月12日産経新聞)

 ■一般診療所数が初めて10万超え 病院に代わり地域医療の担い手

 歯科診療所を除く一般診療所(19床以下)の数が、昨年10月時点で10万152施設(前年比605増)となり、昭和28年の統計開始以降、初めて10万施設を超えたことが厚生労働省の平成24年医療施設調査で分かった。

 一方、病院(20床以上)は40減の8565施設だった。平均在院日数は31.2日で、前年より0.8日短くなった。

 同省は「地域医療の担い手が病院から診療所へと移ってきているのではないか」と分析している。

 病院のうち精神科専門などを除く7493施設中、小児科を掲げていたのは2702施設(前年比43減)、産婦人科を掲げていたのは1218施設(同21減)で、いずれも19年連続の減少。医師の労働環境の厳しさや、少子化が影響しているとみられる。

 調査によると、一般診療所のうち無床施設が前年から943増の9万556施設、有床施設は338減の9596施設だった。開設者は個人が46%と最も多く、次いで医療法人が38%だった。

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の影響が大きいとみられる福島県の一般診療所は1397施設で、震災前の22年10月と比べると60減。

 特に原発立地自治体を含む「相双医療圏」は震災前と比べて42減だった。

産科のある病院 22年連続で減少(2013年9月9日NHK)

産科や産婦人科がある病院の数は、訴訟のリスクが高く、医師不足が続いていることなどから、22年連続で減少したことが、厚生労働省の調査で分かりました。

厚生労働省は、全国の病院が設けている診療科を毎年調査していて、去年10月時点でおよそ8500施設を対象にした結果がまとまりました。
それによりますと、産科や産婦人科がある病院は1387施設で、前の年より8施設減りました。
産科や産婦人科のある病院が減るのは22年連続で、10年前と比べると363施設、率にして21%減っています
また、小児科がある病院は2702施設で、前の年より31施設減りました。
19年連続で前の年よりも減り、10年前と比べると20%減っています
厚生労働省は、訴訟のリスクが高いことなどから、産婦人科や小児科の医師不足が続いていることに加え、不足による労働環境の悪化を防ぐため、地域で拠点となる病院に医師を集約させているためだと分析しています。
厚生労働省は、小児科や産科などの診療報酬を加算したり、地域での医師の確保に補助金を出したりして、診療科による偏りを緩和していくことにしています。

産科婦人科のある病院が22年連続で減少と言われれば「産科崩壊は深刻の度を増している!直ちに対策を講じなければ!」と誰でも考えてしまいますし、実際に産科医が働きやすくなるよう労働環境を整備するということは最高裁までもつれ込んだ奈良の産科医時間外労働訴訟などを見ても喫緊の課題だと思うのですが、実はこうした傾向は産科に限らず各診療科で起こっていることのようです。
先日は愛知県で診療科制限を行っている病院が近年増える一方だという調査結果が出ていたのですが、医師数が年々増えている中で産科医などハイリスク診療科がそれほど忌避されているのであればその分他の診療科に流れていてもよさそうなのに、実際には産科はもちろんですが各診療科でも同じような傾向が見られると言うのですね。

診療制限なしの病院数、6年連続で減少-愛知県調査、「医師不足深刻な状態」(2013年9月11日CBニュース)

 愛知県内の全病院を対象にした医師不足に関する調査で、診療科の全面休止や時間外救急患者の受け入れ制限などの「診療制限」を行っていない病院が6年連続で減少していたことが分かった。11日に調査結果を公表した愛知県は「医師不足による県内病院の診療への影響は、深刻な状態が継続している」と分析している。

 調査は県内の325病院を対象に実施。2007年度から毎年行われており、今回で7回目。病院名を公表しないことを条件に回答を求めた。

 今年6月末現在、受診制限をしていない病院は、12年度比1施設減の254病院。「診療制限なし」の病院数は6年連続で減少。全病院数に占める「診療制限なし」の割合は、07年度の81.7%に比べ、今年度は3.5ポイント減の78.2%だった。

 診療制限の内容は、▽診療科の全面休止▽入院診療の休止・制限▽分娩対応の休止・制限▽時間外救急患者の受け入れ制限▽診療日・時間の縮小-など。診療科別では、「診療制限なし」の割合が最も低かったのは産婦人科だった。

 また、病床規模別の「診療制限なし」の割合は、20-99床が91.8%で最も高く、300-399床が35.0%で最も低かった。調査結果について、県は「医師不足による診療への影響は、300-399床病院で特に大きい」と指摘している。【新井哉】

産科や小児科と言った診療科はかねて人材不足による激務と訴訟リスクの高さから来る心的ストレス過多によって学生からも敬遠されているとも言われ、一見すると医師による「危ない診療科からの逃散」というリスクマネージメントが着々と進んでいるという構図なのですが、もちろんそうした事情もあるとしてこれだけ各科とも診療制限が進んでいるという現象を果たしてそれだけで説明出来るのかどうかということです。
産科などは崩壊があれだけ話題になり実際その根拠となるデータにも不自由しませんから色々と検討しやすいのですが、例えば産婦人科医会常任理事である中井章人先生の「産婦人科医師の地域偏在」という資料がありますが、これを見ますと単純に「産科から医師がどんどん逃散して言っている」と言う構図とも言い切れない側面もあって、他の診療科も実は同様の傾向があるんじゃないかと推測も出来そうなんですね。
資料によれば産科医の数は確かに2006年から2007年にかけて一気に1割近くも大きく減っているのですが、2006年と言えば大野病院事件で担当医が逮捕されたり、大淀病院事件で毎日新聞が大々的キャンペーンを張ったりと「産科崩壊元年」として大騒ぎになったことがよく知られていますから、その影響が多分にあったことは大いに想像出来ますよね。
ところがその後順調に崩壊が続いたのかと言えば再び産科医数は増加に転じていて翌2008年は元の水準を回復、2012年には2006年比で1割弱上回るまでに増えてきていると言うのですからなんだ、産科医が減ったと言っても一時的なことであって、実際にはそこまでの長期的な影響もなく着実に増えているじゃないかと考えてしまいそうにもなります。

その増え方について中井先生も検証しているのですが、2006年から2012年までで医師数全体が(推定)9.4%増えているのに対して産科医は8.8%の増加に過ぎない、さらには実際に分娩を取り扱っている施設で働いている産科医数は7.2%しか増えていない、その結果全国17の都道府県で分娩取り扱い医師数は減少してしまっていることが問題だと主張していて、それは確かに産科大人気というほどではないのは事実なのでしょう。
ただここで注意したいのがその間の分娩取り扱い施設数の推移で、産科医が徐々に増え特に分娩を扱う病院に勤務する医師が増えているのに対して分娩取り扱い病院数は減っている、この結果病院当たり医師数で見ると2006年の5057人/1223病院=4.1人/施設から2012年には5686人/1227施設=4.6人/施設とかなり増加し、「多くの自治体で病院医師の年間分娩数は減少している」状況にあるのですね。
ちなみに分娩取り扱い診療所も同様に減少しているのですが、こちらは基本的に1施設1人というケースが多いことから医師数もそれにほぼ見合った減少を続けていて、こうした事から読み取れるのは産科医の分娩対応病院への集約化が進み医師一人当たりの労働量がコントロールされつつある、そして訴訟リスク以前に少子化進行という将来不安が大きい中で見れば案外産科離れはさほどでもなさそうだということではないでしょうか。
先日は日本でも帝王切開率が20年で倍増したという話がありましたが、もちろん脳性麻痺など訴訟対策という側面もさることながら例の現場が対応困難だと言う緊急帝王切開30分ルールの存在などを考えますと、今の時代産科医一人だけの診療所で産むということは求められる医療水準の担保という観点からしてなかなか難しくなってきたのかなという気がしますし、このことも分娩施設数減少の大きな要因にもなっていそうです。

中井先生のデータからもう一つ取り上げてみますと分娩を取り扱わない純然たる婦人科医というものも当然にいるのですが、こちら病院で見ると392人/337施設から483人/397施設とこちらはいずれも2割前後と非常に大きな増加が続いていて、同じくクリニックの方も施設数こそ横ばいですが医師数は同様に2割増と大人気を呈しているということが見て取れます。
もともとひとくくりに産科婦人科と言っても実際には産科が好き、あるいは婦人科をやりたいと個々の医師の志向の違いも大きいのでしょうが、今まである程度は産科もやっていた婦人科志向の先生方が撤退して婦人科の方に特化してきている、一方で産科は産科で集約化によってマンパワー不足に対処しようとしていると言う状況を示しているのでしょうか。
社会的に見ると過去20年にもわたってお産を取り扱う施設がどんどん減っている、産もうと思っても近くに産める施設も見つからないという事実をもって「産科は壊滅的状況」だと言うのはキャッチーで確かに判りやすい話なのですが、こうして見ると産科医側ではもちろん危機感もあってのことでしょうが状況に対応してシステムを改変しつつあって、むしろ産科医の労働環境やリスク管理への意識を高めたというポジティブな捉え方も出来るかも知れません。
そう考えると本当に問題視すべきなのはむしろ産む側の意識で、ろくに検診も受けない「野良妊婦」の飛び込み出産などは論外にしても、昔ながらの里帰り出産なども地元の分娩施設の状況などをきちんと把握し早期に予約をしながら行うべきで、「こっちは高いお金を払うお客サマなのだからいつでもどこでも好きなときに好きなように産めて当然だ」という認識のままでは自ら産む自由の選択枝を狭めかねないということですね。

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コメント

たしか福島でもあれから集約化が進んだんですよね。
緊急手術があるような仕事はやはり人数そろえてないときついと思います。
産科はもうかるからって病院は手放したがらないですけど。

投稿: ぽん太 | 2013年9月13日 (金) 08時39分

リスクがイヤなら利便性を我慢するか高い料金払うかってのは当たり前だわな。
そのうえで日本じゃ高い料金払ってもホテルコスト以外今以上にいい医療は難しいからどうしたって利便性がどんどん悪くなる。
もっとも狭い日本にこれだけ病院クリニックがひしめいてるのに遠い遠い言ってたら外国人から笑われるけどね。

投稿: | 2013年9月13日 (金) 09時48分

近くで産めない 突然転院の通告・里帰り出産断る 大学派遣の産科医集約

2006年06月14日

 一人でも医師を確保したい自治体と、少人数体制でのリスクを避けたい大学の医局。産科医不足が深刻化するなか、そんな両者の思惑の違いが、お産の現場で色濃くなっている。「頼みの綱」だったはずの大学に背を向けられた地域では、妊婦たちが不安を募らせている。
http://www.asahi.com/special/obstetrician/TKY200606290381.html

さすが天下のアカヒ
2006年にこんな記事書いてた
こういうのマッチポンプって言うんじゃない?

投稿: アカヒのマッチポンプ | 2013年9月13日 (金) 11時15分

上の記事を見る限り朝日も問題点は把握しているようではあるのですけれども、これではいったい何が言いたいのか判らないという中途半端な記事になってますね。
タイトルを見る限りでは利用者である妊婦視点の記事にしようとしたが、取材してみてちょっとこれはまずいぞと気がついて書き直したといったところでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2013年9月13日 (金) 12時02分

人数増えるのはうれしいけどぶっちゃけ当直呼び出しお断りのJOYばっか増えても戦力にならないんだよね・・・

投稿: | 2013年9月13日 (金) 17時20分

当直呼び出しお断りのJOY問題こそが議論されるべきなのに
タブーだから触れてはならぬとされている現状に切り込むものはおらぬのか。

投稿: | 2013年9月14日 (土) 00時36分

私ぁ男ですが、当直呼び出しなしの病院にドロッポしましたんで、人のことはとやかく言えんです。

投稿: JSJ | 2013年9月14日 (土) 08時13分

>産科のある病院が22年間連続の減少 産科崩壊は深刻化する一方

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2013.asp?fname=T04-01.htm&title1=%87W%81D%8Fo%90%B6%81E%89%C6%91%B0%8Cv%89%E6&title2=%95%5C%82S%81%7C%82P+%90%AB%95%CA%8Fo%90%B6%90%94%82%A8%82%E6%82%D1%8Fo%90%B6%90%AB%94%E4%81F1873%81%602011%94N
出生数が最多だった1949年の269万人と比較して、2011年には105万人と、最多年度の39%に減っているので、
産科の医師数が市場の需要に応じて減っても、それが産科医療の質の低下や産科医療を受ける機会の減少は意味しない。


http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2013.asp?fname=T05-28.htm&title1=%87X%81D%8E%80%96S%81E%8E%F5%96%BD&title2=%95%5C%82T%81%7C28+%94D%8EY%95w%8E%80%96S%90%94%82%A8%82%E6%82%D1%97%A6%81F1899%81%602011%94N
厚生労働省は1899年以後の妊産婦死亡率を公開しいています。
妊産婦10万人中の死亡率は1899年には409.8人だった。、
妊産婦死亡率は時代の進行とともに減少し、2011年には3.8人まで減少した。


http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2013.asp?fname=T05-02.htm&title1=%87X%81D%8E%80%96S%81E%8E%F5%96%BD&title2=%95%5C%82T%81%7C%82Q+%90%AB%95%CA%93%FB%8E%99%8E%80%96S%90%94%81C%90V%90%B6%8E%99%8E%80%96S%90%94%81C%97%A6%82%A8%82%E6%82%D1%90%AB%94%E4%81F1900%81%602011%94N
新生児死亡率も史上最少である。


http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2013.asp?fname=T05-03.htm&title1=%87X%81D%8E%80%96S%81E%8E%F5%96%BD&title2=%95%5C%82T%81%7C%82R+%90%AB%95%CA%8E%FC%8EY%8A%FA%8E%80%96S%90%94%82%A8%82%E6%82%D1%97%A6%81F1980%81%602011%94N
周産期・胎児・早期新生児の死亡率も史上最少である。


http://www.who.int/gho/publications/world_health_statistics/EN_WHS2013_Full.pdf
WHOの年次報告書2013年版でも、2010年度のデータで、日本の妊産婦10万人中の死亡率は、
先進国の平均値14人の三分の一(61~81ページ)で世界の中でも最少グループである。
胎児・新生児・乳幼児の死亡率も世界の中で最少グループ(49~59ページ)である。


厚生労働省やWHOが公開している資料では、
今の日本は、史上最も、世界で最も、妊産婦・胎児・新生児・乳児の命が守られている国である。

医療崩壊・産科医療の崩壊という認識や言葉は、イエロージャーナリズムが捏造した、
虚偽・デマの宣伝報道、扇情的な宣伝報道用語以外の何物でもない。

著者は客観的な根拠なく政府やWHOの見解を否定し、
産科医療崩壊、産科医療が昔より悪くなったと批判しているのだから、
いつの時代の産科医療が最もよかったのですかね?
いつの時代の産科医療が妊産婦・胎児・新生児・乳児の命を最も守っていたのですかね?

ウソでないなら証拠は示せるでしょう?

投稿: カトリーナ | 2013年9月19日 (木) 14時10分

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