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2013年8月29日 (木)

老人の在宅移行に向けて いざと言うときに慌てない

高齢者をなるべく在宅へ移行させるという国の方針もあってか昨今在宅サービスへの新規参入の話も増えている印象ですが、その中で先日はなかなか大きな話になったなと感じさせるニュースが出ていました。

日本郵便が高齢者事業、安否報告や買い物代行(2013年8月26日読売新聞)

 日本郵政グループの日本郵便は、郵便局員が高齢者世帯を訪問し、暮らしぶりを確認したり、買い物代行などを行ったりする生活支援サービス事業を10月から始める。

 高齢者の割合が高い北海道、宮城、山梨、石川、岡山、長崎の6道県の一部地域、計103郵便局で先行的に実施する。2014年4月から地域を順次拡大し、15年4月の全国展開を目指す。

 郵便局員が、郵便や貯金・保険の窓口業務以外を行うのは初めてだ。

 郵便局の営業活動の中で、都市部に住む人が過疎地などで暮らす高齢の両親らの暮らしぶりや、安否を把握したいという需要があることが分かった。日本郵便は、地域に密着した郵便局ネットワークの強みを生かせ、収益の拡大にもつながると判断した。

 新しい生活支援サービスは、郵便局員が、会員となった顧客から依頼された高齢者の自宅を訪問したり、郵便局を会場にした食事会に招いたりして、生活ぶりや健康状態を把握する。その上で、遠くに住む家族など、指定の届け先に月1回、リポートを送る

 医療機関の紹介や、生活の悩みに24時間いつでも電話で相談に応じるサービスも専門の業者に委託して提供する。会員の基本料金は、月額1000円程度になる見込みだ。

 このほか、流通企業などと提携し、水やコメ、生活必需品などを定期的に自宅に届ける買い物支援や、利用者の健康状態を毎日電話で確認するサービスも受けられる。これらのサービスは追加料金がかかる。

天下の日本郵政グループがついに!という感慨はこの際置くとしても、全国津々浦々にまでネットワークを構築している上に地域密着型でもある郵政グループならではのサービスとも言え、特に記事にもありますように過疎地における潜在需要はかなり大きなものがありそうですから期待したいところですね。
近年では湯沸かしポットを毎朝作働させているかを遠く離れた場所から携帯でチェック出来るといったサービスも話題になっていましたが、ともかくも高齢者を自宅へ送り返すということであれば自宅でどのようにフォローアップしていくかということと表裏一体であるわけで、特に多少お金はかかっても…と考える遠方の親族の多そうに思えるだけに今後この方面が大きなビジネスチャンスに結びつきそうに思えます。
ただ一方で安否確認を行った上でまさに何かがあった場合にどうするのかという点で異業種参入に不安を感じる方もいるかも知れませんが、実は在宅老人の急変時に関わる受け入れの問題で先日日本病院会会長がこんなことを言っているのが注目されます。

日病・堺会長「急性増悪の対応は急性期で」-慢性期病床の機能整備は困難(2013年8月26日CBニュース)

 日本病院会(日病)の堺常雄会長は26日の定例記者会見で、在宅や介護施設の患者の急性増悪には、急性期病床で対応すべきだとの認識を示した。在宅患者の急性増悪には慢性期の病床での対応を主張する声もあるが、堺氏は、慢性期病床による受け入れ機能を新たに整備するのは困難だと指摘した。

 日病など四病院団体協議会が日本医師会と合同でまとめた医療提供体制の提言では、在宅や介護施設での急性増悪への対応を、「急性期病床」の役割の一つに位置付けている。日病が24日に開いた常任理事会では、合同提言のこうした内容についても話し合ったという。

 堺氏は会見で、「医療資源の状況を考えると、慢性期の病床に急性期機能を持たせるのではなく、例えば2次救急を担っている病床や病棟が対応すれば一番いいということになった」とも明らかにした。【兼松昭夫】

ひと頃話題になった医療崩壊という現象の中で救急受け入れ患者のいわゆる「たらい回しbyマスコミ」問題も大きく取り上げられましたが、特に高齢者の中でもある程度引受先が決まっている方々はともかく、実際には長年病院にかかったことがないと自慢している方々が急変時に救急車の引受先がないと右往左往することがままあるわけですよね。
厚労省などは高齢者に限らず平素からかかりつけ医を持つようにと指導してきた経緯がありますが、一方でこうした場合のかかりつけ医的機能を担うことの多い開業クリニックでは救急車受け入れ機能を持たないという場合も多く、実質的に「何かあったら出たとこ勝負の運任せ」状態に放置されている老人は少なからずいて、当然ながら急変時の治療成績にも影響を及ぼしていることが予想されます。
全国津々浦々に医療機関があるとは言え救急車で送られてくるような急患を引き受けられる病院はある程度限られていて、しかも本当の急性期病院では病床回転率を上げ常時満床近くで何とかベッドをやりくりしていることから救急受け入れ不能というケースも多く、元より基礎的身体条件が悪く回復力も乏しいことから長期入院も予想される高齢患者ともなればどこも積極的には引き取りたがらないと言うことですよね。
本来的には例えば行政がお金を出して急患引き受け用に一定数のベッドをキープしておくとか、そうしたベッドを空けておいても経営が成り立つような診療報酬体系を用意しておくのが筋なのでしょうが、こうした状況への手っ取り早い解決策として全国に数多くある慢性期病床、いわゆる老人病院の類に一定の老人救急受け入れをさせてはどうかという話は以前から出ていたわけです。

患者さんからすると病院と言えば大きさが違うくらいでどこも同じように見えるかも知れませんが、急性期と慢性期と言えば同じ病院と名前がついていても設備も診療の内容も異なっていて、基本的には状態が横ばいになった患者を引き受けるのが慢性期病床ですから急変患者を受け入れるというのは筋が違うという主張にはそれなりの根拠があります。
ただ近年高齢者の看取り方が議論される中で、急変時に若壮年者と同様に急性期病床で目一杯頑張ってしまうのがいいかどうかという議論もされてきた中で、慢性期のベッドでやれる程度の医療で看取ってもいい方々も少なからずいるんじゃないかと言う話もあって、要するに積極的な治療が出来ないということを逆手に取ってほどほどの終末期医療につなげようという考え方もあるということですね。
この辺りは目的をどこに置き話を進めるかによって非常に手段にも差が出てくるところだと思いますが、いわゆる一般救急的に誰でもかれでも運び込むというのではなく、普段から関わりがあり病態も把握しているかかりつけ患者であれば例え慢性期の病院であってもまずは受けるのが筋であり、そこから必要であれば急性期の病院を手配したらいいんじゃないかという声はそれなりに大きいでしょう。
特に多忙な急性期の医師達にすれば「暇な老人病院の藪医者どもが自分たちの患者も全部送りつけやがって」と感情的反発もありますから、今後は急変と言えば何でも積極的対応一辺倒ではなく症例を選んで搬送すべきは搬送しそうでない場合は自分たちでそれなりの対応をし看取りもする、そしてそのためには普段から患者や家族との間できちんと急変時のコンセンサスを得ておくことが必要となりそうですね。

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コメント

おいしいところはさっさと押さえておかないと、外資が参入して食い散らかされるんだろうなと。

投稿: 哲 | 2013年8月29日 (木) 08時26分

郵便局にとっちゃさしてコストがかかることでもなしに固定収入が大きく増えるんだからいいところに目をつけましたね。
でもこれ田舎じゃバイトスタッフでも雇わないと手が足りなくなるんじゃ?

投稿: ぽん太 | 2013年8月29日 (木) 09時01分

もう親方日の丸じゃありませんが、こういうところで新たな雇用創出につながるのであれば願ったり適ったりです。
高齢者に関しては介護のディープな領域に踏み込まない、こういうライトな領域が一番取っつきも良く参入しやすいんだろうなと思いますね。
次はNTTあたりが高齢独居世帯に毎日のモーニングコールを、なんてサービスを始めるかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2013年8月29日 (木) 11時03分

超高齢老衰者、重症脳梗塞後遺症、神経変性疾患終末期などで長期に寝たきり状態の在宅や施設の患者とかは、まともに救急搬送して急性期対応をすると間違いなく焦げ付いて元の所へ帰れなくなりますので、急性期病院としては最も対応したくないケースです。現実的には通常の急性期対応をするべきではないでしょう。在宅医がそのまま看取るか、慢性期病院で看取るかしたほうがいいに決まっている。
ただ日本の場合は普段見たことの内音信不通の遠くの家族やら親戚やらが彗星のごとくカリフォルニアから参上して「見殺しにしただろ」とかほざくのが通例になっていますので、リスキーな看取りはいつまでも定着しないでしょうね。厚労省にとっては臨床現場に丸投げしとけば、医師が文句言われようが訴訟起こされようが
どうでもいいことですから。「どんな寝たきりでも急変したら救急対応」これしかありません。

投稿: 逃散前科者 | 2013年8月30日 (金) 13時06分

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