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2013年8月19日 (月)

ほとんどの患者はネットで情報を集めている?!

数年前に中国のクリニックが「自分で診断しちゃう人はお断りしますのでよそにいってください」と張り出したことがちょっとした話題になった記憶がありますが、実は大多数の患者が受診前に自己診断してしまっているということが判明したという調査結果が出ていました。

受診前に7割が「自己診断」、サイトなどで-GEヘルスケア調査(2013年8月15日CBニュース)

 体調が悪いと感じた時、少なくとも7割の人が、病院などを受診する前に症状について「自己診断」していることが、GEヘルスケアの意識調査で分かった。参考する媒体には、医療系ウェブサイトを挙げる人が最も多かった

 調査は、5月31日から6月5日までインターネットで実施。健康管理や生活習慣について、16-64歳の1034人が回答した。

 この中で、体調が悪いと感じて医師の診察を受ける前に、自分で症状について調べる方法を複数回答で尋ねたところ、61%が「医療系ウェブサイト」と回答。以下は、「医療系書籍・ジャーナル」(18%)、「新聞・雑誌」(17%)、「ソーシャルメディア」(8%)、「YouTube」(4%)などの順。該当する選択肢がないと答えたのは30%で、少なくとも70%が「自己診断」していることが分かった。

 また、誰の影響で生活習慣を改めるかも聞いた。最も多かったのは「家族」の71%で、「医療専門家」の62%を上回った。以下は、「友達・同僚」が48%、「政府によるキャンペーン」が22%、「著名人」が10%と続いた。【佐藤貴彦】

診断と言うと何かしらものすごく専門的な行為のようにも思えますが、誰であれ病院に受診すべきかどうかという決断を下す時点で何かしらの診断を行っているとも言えますから、厳密に言うと限りなく100%に近い自己診断率ということになるのかも知れませんが、注目すべきはその手段です。
テレビなどで「こんな症状の人はほんとは怖い病気が隠れてる」系の煽り番組があった直後に同様の症状を訴え来院する患者が急増するといった経験は多くの臨床医がお持ちではないかと思いますが、こうした旧来のマスコミによる自己診断というものは案外少数派で、実に過半数の人がウェブサイトで情報を手に入れているということが時代を反映していますよね。
ポジティブに考えるならばネット上できちんとした情報提供をしておけば医療機関の手間がかなり省けるという可能性がありますが、一般的に言えばネットのポジティブな役割よりもネガティブな役割の方がより大きな注目を受けるということが多く、一例としていかにも医療専門家の体を装ったホメオパシー系サイトなどでトンデモ理論に洗脳されてしまう人も後を絶たないわけです。
今回の調査でおもしろいのは生活習慣を改める動機として医療専門家の影響よりも家族の影響が大きかったという点で、とかく人間と言うものは専門家よりも素人の意見を重視したがるなどと嘆いた科学者は古来少なからず存在しているとは言え、いわゆるトンデモ系似非科学がそろって既存の正統派科学体系を否定するところからスタートしているということは非常に興味深い現象ではないかという気がします。

トンデモさんの話題はともかく、これだけネットでの情報収集ということが当たり前に社会に浸透している時代、これを積極的に有効活用しないのはもったいないのは当然ですし、むしろ不要不急の受診による医療崩壊などと言われている昨今医療現場の側からきちんと働きかけるべきではないかという気がしますが、当然ながら現状ではネットに医療情報を発信したところでお金が取れる訳でもなく手間暇がかかるだけですよね。
それだけならともかくそうしたサイト経由で相談した人々は当然そのサイトを運営している施設へ受診する機会が増えるでしょうから、経営者視点では喜ぶことかも知れませんが現場視点で見れば手間暇をかけて患者さんのためにサイトを整備したらさらに患者が増えて大忙しというもので、患者は多ければ多いほどうれしいという今時珍しいタイプの先生でもなければ積極的にやりたいことではないだろうと理解はできます。
現状では個人個人の医師がと言うよりも国や自治体なり保険者なりの公的な立場から(動機としては医療費節約の立場からでしょうが)きちんとした情報発信をするのが一番無難ということになるのでしょうが、そうした正しい医療情報発信のモデルケースとしても使えそうな制度が残念ながら十分に機能していないというニュースが先日出ていました。

薬のネット販売、4割が売りっぱなし 相談機能を徹底へ(2013年7月27日朝日新聞)

 【阿部彰芳】一般用医薬品(市販薬)をインターネット販売している201のウェブサイトのうち、4割が薬の相談に応じていないことが、厚生労働省の調査で分かった。薬事法は薬の販売業者に購入者からの相談に応じるよう義務づけている。厚労省は26日付で都道府県などに通知して、違法サイトを確認、指導するよう求めた。

 調査は民間に委託し、今年1~2月に実施。サイトに記載された相談先の電子メールアドレスに薬について問い合わせた。41・3%のサイトから回答が無く、2010年度調査の無回答26%、11年度の34・3%より対応が悪化していた。

 市販薬のネット販売について、最高裁が今年1月、現行の規制は無効だとする判決を出し、リスクが高い薬までネット販売が広がっている。厚労省は今秋までに新ルールを決める方針だ。

この医薬品ネット販売に関しては今年の初めに最高裁で通販規制への違憲判決が出たことで注目を集めていましたところ、先日最高裁判決を受けてほぼ全面的な解禁を行う方針だという政府決定が出されたばかりですが、そもそも反対論の主たる論点は対面販売でなければ十分な説明も出来ず安全性も確保出来ないということであったわけです。
それに対して通販推進派は実際の店頭販売状況から対面販売がきちんとした説明をしているとは言えない、これなら通販の方がよほど正しい説明を出来ると主張してきたわけですが、残念ながらネット販売においても十分な相談に応じられない「違法サイト」が根絶できていないというのは、通販規制派にとってはそれなりに意味のあるデータでしょうね。
実際のところ店頭販売と通販のどちらが安全というものでもなく、どちらもろくに説明などせず売るケースもあれば、利用者の側でも面倒な説明などいいからさっさと売れと要求する場合もありで、顧客側は自分の都合に応じて両者を適当に使い分けているというのが実情だと思うのですが、とりあえず法的に見れば店頭と通販とを問わずきちんとした説明や相談を行うことは販売者の義務となっています。
ちょうどこの15日から通販原則解禁へ向けたルール作りを議論する厚労省の検討会が始まったところですが、当然ながらこの場においても利用者からの相談受付をどのように義務づけるかということが議論の中心課題の一つとして取り上げられる予定となっているのですね。

一部の確信犯的な違法業者は何をどう言ったところで規制の網をくぐろうとするでしょうが、だからといって通販=許されざる悪という構図にはならないのは当然で、そんなことを言い出せば店頭販売にしてもろくに説明もなしに売りっぱなし、相談しようにもただいま薬剤師不在でお答えしかねますなんてケースが幾らでもあるわけです。
ネットの利点として各店舗に一人ずつ薬剤師を常駐させずとも中央に対応出来る窓口を用意しておけば済むという点があって、その意味では真面目な通販業者こそ自主的に常時相談受付のシステムを整備していただきたいと思いますが、その場合「疑問があれば何でも答えます」と言うのも重要だとは言え、主立ったFAQ的事項にはあらかじめ説明を加えておく方が思いがけない勘違いを与えずに済みますよね。
昨今では医療現場でもとにかく説明が長ったらしい、さっさと治療を始めてくれというクレームも多くて、それは確かに「緊急手術で大急ぎで始めないと命が危ないのに麻酔の説明だけで1時間」なんてのはやり過ぎだとは思いますけれども、専門的な業務内容の是非を日常知識の範囲内で判断出来るようなレベルにまでかみ砕いて説明することの重要性はどんな業界であれご理解いただけるかと思います。
保険や携帯の対面販売では誰にでも十分な情報を与えようと微に入り細に入り書き込もうとするあまり、あまりに長くなった契約書を誰も精読しないままサインしてしまい後日トラブルになるというケースが後を絶ちませんが、個々の患者の理解度に応じて説明内容を変えていくということは簡単なプログラムで対応出来る範囲であり、実はこのあたりの柔軟性こそネット通販最大の強みなんじゃないかと思いますね。

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コメント

このまえ手足口病の人が来たのですがネットで下調べしてましたね。
こっちもタブレット駆使してるのでどっちもどっちですが。
有益な情報が分散してるのでまとめてくれたら便利なのに…って思います。

投稿: ぽん太 | 2013年8月19日 (月) 08時31分

ネット調査だから盛大にバイアスかかってるのでは。
うちの患者がネットで症状病気の検索できるとはとてもとても。

投稿: 貫太郎 | 2013年8月19日 (月) 09時19分

ところが世の中まったく逆の方向に進んでるらしいぞw

和歌山労災病院(和歌山市木ノ本)の男性医師が、患者の頭部のCTスキャン画像を、
患者の了承を得ずに自分のフェイスブック(FB)で公開していたことがわかった。同病院は、
男性医師に厳重注意した。

 同病院によると、男性医師はスマートフォン(高機能携帯電話)で
CTスキャンの画像を撮影し、6月24日にFBで公開した。
公開範囲は医療関係者約150人に限定されていたという。

 この公開画像を印刷した紙が院内に置かれていたのを
職員が発見。翌25日に病院が男性医師から事情を聴くと、
「(画像に)名前が出ていないので問題ないと思った」と
掲載を認めた。画像は同日削除した。

 同病院では患者の画像を研究目的などで発表する場合、
患者の了承に加えて外部有識者が入る倫理委員会の了承を
得る必要があるが、男性医師は双方とも了承を取っていなかった。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130817/waf13081709050006-n1.htm

投稿: aaa | 2013年8月19日 (月) 10時37分

なんとなく意図は判るルールですが、実際問題これが問題になってくるとネットでの症例検討的なものがものすごく制約されそうですね。
といいますか、地域の勉強会などで「これこの前みた症例なんだけどどうでしょうね?」と相談することも難しくなりそうです。

投稿: 管理人nobu | 2013年8月19日 (月) 12時27分

ネットやら新聞やらであれだけ「ディオバン」についてニュースになっていたのに、問い合わせは
ほとんどありませんでした。

投稿: 浪速の勤務医 | 2013年8月19日 (月) 13時10分

うちは何人かきて一人は処方変更しました。>ディオバン
もともとディオバンは少ないので十人に一人くらいは事件を知ってたって印象ですね。

投稿: まる | 2013年8月19日 (月) 13時18分

>こっちもタブレット駆使してるのでどっちもどっちですが。

「いやあ、便利な時代になりましたねぇw」
患者の顔に、オマエ、要らんやんか…と描いてあるww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2013年8月19日 (月) 15時55分

>患者の顔に、オマエ、要らんやんか…と描いてあるww

むしろ潜在的不良Pをあぶり出す効果が期待できてよろしいかと

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年8月19日 (月) 16時33分

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