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2013年8月22日 (木)

応召義務に囚われすぎることの弊害

今日はまたどうでもいいことを書いてみますけれども、ネット上では様々な質問に対して回答を受けられるサイトが人気ですが、先日何気なく見ていましたらこういう気になる質問がありました。

診療時間内にもかかわらず患者がいっぱいなので診察出来ない。他に行ってください...(Yahoo!知恵袋)

診療時間内にもかかわらず患者がいっぱいなので診察出来ない。他に行ってくださいという病院どう思いますか?
喘息があり1カ月に一度定期的に通っている病院です。先生の評判がよくいつも混んでいます

予約が満員でとれず電話のガイダンスが「診療希望の方は直接病院の方に電話して下さい」と流れたので直接電話したら診療時間が17時までなのに「もう今日は診察希望のかたがたくさんいらっしゃるので皆さんお断りさせてもらってます」と言われ何を言ってもだめなのであきらめました。他の病院に行こうと思います。
診療時間内でも診察を断ることは別に法などにふれないんですか?
夜間や休日や診療時間外に断られるのは納得いきますが、診療時間内に先生もいらっしゃるのに断られるのはいかがなものかと・・・すごく混んでいる病院に行っても待ち時間が2~3時間と長く待たされることがあっても診察を断られたことは初めてです。皆さんの意見聴かせて下さい

ちなみに内容からするとリアルタイムで書き込まれているのでしょうか、質問が掲載されたのが事件のあった当日であるとすれば書き込み時間が14時27分ですから午後の診療時間が始まって間もないくらいの時間帯と思われ、この時間帯ですでにお断りするほど夕方まで一杯になっているのだとすれば繁盛しているのは確かなのでしょうね。
質問者が「法などにふれないんですか?」と言っているのは応召義務のことだと思いますが、有名な医師法第19条には「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」というシンプルな規定があり、古来この条文が様々な議論を呼んでいるのは周知の通りですよね。
これに対して様々な解釈が行われていますけれども、しばしば議論の対象になる「正当な事由とは何か」ということは今回置くとして、あまり注目されることのない「診療に従事する医師は」という文言にこの場合着目すべきだと思うのですが、例えば道を歩いていて「あなたお医者さんでしょ?ちょっと具合が悪いんですが」なんて言われたときに診療に応じる義務はないということは常識的に理解出来るかと思います。
しばしば24時間365日常在戦場を求められることから混乱していますけれども、本来医師と言えども診療に従事する時間帯の区切りというものはあり、それが対外的に公式に表示されたものがいわゆる診療時間であるわけですから、それこそ「正当な事由」でもない限りはこれに外れる時間帯にまでは応召義務はないと考えるべきでしょう。
一般的な解釈によってもその医師でなければならないとか、直ちに応急的な処置を施さなければならないといった特別な事情がないのであれば、他の施設に受診するよう指示する等々常識的な対応をしておけば問題ないとされているようですから、今回どうしてもこちらでなければ…という理由もなければ明らかな診療時間外となる受診を断ることは問題なさそうですし、回答も同様で応召義務違反ではないとして決着しています。

ただ法律の文言以前に社会常識的に考えるならば、予約客が一杯で飛び込みもすでに多数行列待ちをしていて明らかに今日中の受け入れキャパシティーを越えているという状況でさらに飛び込み客を受ける方が無責任ですし、そうした状況で「まだ営業してるのに何で駄目なんですか?」と言う方が非常識だと思われますから、やはりここでも「医者の常識は社会の非常識」という構図が現れているのかも知れません。
一部には「オレなら何時になろうが診るぞ」とばかりに文字通り真夜中まで診療を続けられている先生もいらっしゃるようですが、つきあわされるスタッフには目をつぶるとしても患者様全てにその時間までかかるということを了承いただいているとも思えず、むしろ「こんなに待たせるならもっと早く言えば他にかかれたのに…」と思っている患者も少なからず…かも知れないですね。
ともかくも法律的な文言もさることながら、やはり医療とは患者と医者とが診療契約を結び行うものである以上単に片方の意志のみによって行われるのではなく、きちんとした双方の合意の元に行われるべきであるし、そうでなければまともな医療など出来ないということは近年これだけインフォームドコンセントなどと騒いでいることから見ても明らかではないかと思います。
逆に言えば双方合意に達せないほどの齟齬がある場合には診療契約を結ばないということがむしろ専門家たる医師に課せられた職業的責務であるとも言えそうですが、その辺りは保険診療よりも自由診療の方がしっかりしているということなのでしょうか、これまたおもしろい記事がありましたので紹介しておきます。

日本語のわからない方は治療できません(美容皮膚科クリニック院長ブログ)より抜粋

先日から、外国人の方の飛び込みや問い合わせが続いています
なにか、つながりのある方々なんでしょうか。。。
当院は、日本語でしか説明はしません。同意書も説明書もしかりです。
なぜかというと、私が日本語しか話せないからです。

最初は、飛び込み(予約なしで、いきなり来院)で来られて、アジア人の女性(中国人か台湾人か韓国人か、どこの方かはわかりません。顔は日本人と変わらなかったそうです)だったそうです。
ココハ、キュウケイジョデスカ?」と言われたそうです。
スタッフも意味がわからなかったそうで、「休憩所ではありません。クリニックです。」と言って対応したそうで、帰っていかれたんですが、しばらくして、電話をしてこられたようで(恐らく、声の感じで同じ方)、予約?診察希望なんですが、どうも傷跡を診てほしい、らしいです。
でも、日本語がかみ合わず、(コミュニケーションが取れず)、当院は、日本語ができない方は、美容医療は全てお断りしていますから、お断りしたそうです。

数日して、外国人(カタコトの日本語だったそうです)で、赤ら顔?を診てほしい、と電話があり、日本語のイントネーションが流暢でなくても、日本語ばっちり!という方はいらっしゃいますから、しばらく予約を取るための確認事項を聞いていると、なんか話がかみ合わない。。。やっぱり日本語わかってないよね。。
「失礼ですけれど、日本語はわかっていらっしゃいますか?」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ」
「診察カウンセリングも、全て日本語ですし、問診票・同意書も、全て日本語で、理解されていないと、希望されても治療はお断わりしていますよ。」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ」
「その場合、初診料の5250円は、お返しもしませんよ。」
「5250エン?」
「そうです。初診料は5250円です。」と言うと、
後ろで、英語で、5250円は、自分の国のお金でいくらくらいなのか?というのを誰かに聞いている声がして、その後で、
「ダイジョーブ、ツウヤク ツレテイクカラ。」
当院は、通訳は一切認めていません
だって、うちが雇った通訳じゃありませんからね。
正しく、訳しているなんて、保障は全くありませんし、それに、イザ処置、となって、処置室には、ご本人以外、入れません
(レーザー室には、医療者と患者さんのみ、です。そういう決まりです。目にレーザーが入ったら危ないので、患者さんはゴーグルなどで、目を保護してじっとしたままですし、第三者は入れません。
レーザーを扱う医療では、常識です。当院も同じです。)
レーザーをあてながら、細かく、どんな感じか聞いていくのに、微妙な感じなど、私も聞き出せないし、患者さんも表現できません
そうなると、とても危ないです。我慢したら、火傷のリスクが上がります。
ご本人が日本語をちゃんとわからないので、お断りしました。
(略)
うちの診察・カウンセリングというのは、とても時間が長いです。
他院で受けたことのある方は、ビックリされることがあります。
そういう話はいいから(聞きたくない・聞いてもわからない、というか、わかろうとしない)、さっさとやってください、という方は、全て治療をお断りしています。治療する側として、説明義務がもちろんあるのと、理解もしようとされない方に、美容医療は絶対うちではやりません。)
その長い説明を、例えば英語で、母国語のように訳して話すなんて、私にはできません。
スキンケアの指導なども、微妙~な話もしますのに、そんなの、英語でなんていうのか、私は知りません。
英語以外で、さらに話せ、って無理でしょう~。
他院では、英語なり、中国語・ハングル語など、旅先英会話みたいな本をちょっと見て、簡単に説明して、お金とりあえずもらって、やっちゃう、というのが大半でしょう。
それって、詐欺と似たり寄ったりだし、実際、韓国やタイなどに行って手術や処置を受けてくる医療ツアーなど、言葉の問題に、かなり深刻な被害(副作用がちゃんと説明されていない・そこまでひどい副作用とは思わなかった、などなど)が多発しているというのに、うちで、同じことを外国の人にやって、どうする!と言う感じです。
(略)
国籍や人種の問題ではありません。
日本語で、私と話ができるかどうか。コミュニケーションが取れるかどうか、問診票や同意書・説明書を読んで意味がわかるかどうか、が争点です。
だから、生粋の日本人でも、帰国子女(今でも言います?)で、日本語がわからない方は、日本人でもダメです。
日本人かどうかが問題じゃないから。
帰国子女とかではなさそうなんですが、(確率からいって、の話ですが)、日本語が全然かみ合わない方が、たま~にいらっしゃいます。
(略)
まず、根本的に、日本語の意味が、違う、というのか、ホントの別の次元から来たのかな、という人が、たま~にいらっしゃいます。
具体的なことは、今思いつきませんが、コミュニケーションが取れない方は、こちらの常識とかけ離れていることも多く、まあ、治療してもうまくいきませんね。
スキンケアとか言っても、自分で違約されて、真逆のことを勝手にしたりされますから、治療は、そういう方は、全てお断りしています。
(略)
「素人だから」「知らなかったから」と言い訳されますが、大半の患者さんが素人なわけで、それでも、皆さんの質問って、大体似たようなことで、ああ、そこでやっぱり引っかかるんだな、というある程度決まっているわけです。
日本語のわからない方は、もうどう説明していいんだか、というこちらが返答に困るような(素人の人からしても、当たり前すぎて。。。極端な話で説明すると、「頭はどうして、頭というんですか?ここは首じゃないんですか?」みたいな質問です、わかりやすく言うと。
(略)
やぱり説明は、全部じゃなくても、最低限、ある程度は理解していないと、ダメですよね~。
少なくとも、私は、理解していない方に、同じ質の医療を提供できる自信がないので、お断りしていますので、ご了承ください。

いきなり外国人患者が来るようになったというのはそれこそどこぞの外国人向けサイトなどに「これが日本の名医だ!」なんて紹介されてしまったのかも知れませんが、注意すべきはそうした情報が全て正しいことだけを書いているという保証などどこにもなく、むしろ間違った情報、嘘の情報が書き込まれている可能性の方がはるかに高いということです。
よく言われることに地方公立病院などで受診料不払いなどに積極的な請求をしない施設があると、無保険者が何故か集中して来院するようになるという現象がありますけれども、そうしたケースでもネット上で「ここはある時払いの催促無し」なんてことが書かれているという可能性は大いにあるわけですよね。
この場合きちんと対応をし誤情報を正すようにしていけばいずれ「これは嘘だった」という情報の上書きが行われる可能性がありますけれども、それを怠ると「噂は本当だった!」とばかりにますます誤情報が一人歩きしてしまうというもので、今の時代医療と言うものは目の前の患者一人を相手にやっていられるものではないということを現場スタッフそれぞれが認識しておく必要があると思いますね。

ところで冒頭に取り上げました事例に立ち戻っていただきたいと思いますが、医師法は別に保険診療に従事する医師に限って、などと言うものではなく全ての医師を対象としているわけですから、これまた診療時間内でも診察を断ることは別に法などにふれないんですか?といった類の疑問は出てくるはずですよね。
この場合先に言いましたように緊急でその時その医師にかからなければ…といった必然性が美容整形の場合はまず認められることがありませんから、仮に裁判になってもその点で罪に問われることはない(そもそも応召義務には罰則規定はありませんが)でしょうが、院長先生も書いているようにきちんと説明と同意を経ずに形ばかりの診療契約を結んでも「簡単に説明して、お金とりあえずもらって、やっちゃう」ということに他なりません。
応召義務ということが医師として決して踏み外してはならない不磨の聖典のように一部で過剰に言われているところがありますが、医療専門の弁護士の皆さんが言うように実際にはそれが問われるというケースは極めて限られていて、少なくとも今ここで直ちに対応しなければ命に関わるという緊急事態ででも無い限りは適切な他の医療機関への受診を促しておくといった対応で問題ないと思われます。
逆に明らかにそれは診療契約を結ぶのは無理だろうと言うケースでも対応しなければ問題だと診療契約を結んだとしても、そうした無理な契約に基づく医療行為は肝心の医療の質自体の低下を来しやすく、また顧客満足度を決して向上させるものではないということをもう一度考え直してみる必要がありそうですね。

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コメント

一通り定型的な説明を用意して、それでゴネるならよそにいってもらうのが簡単な選別方法なのかも。
理解力の低い人に時間とられるくらいならその時間で普通の人を何人か相手したほうがいいわけで。

投稿: | 2013年8月22日 (木) 08時06分

冒頭の病院の開設者は、外来患者のお断りが常態化しているのなら、医師を増員する義務があるんじゃないかしらん。
応召義務て、そういうものだと理解していたのですが。

投稿: JSJ | 2013年8月22日 (木) 09時09分

美容にいった友人の話だと医師はほとんど説明とかしてないらしいです(そこだけがそうなのかも知れないですが)。
予約とか説明とかそういうのは全部コメディカル任せで医師はひたすら手術するだけなんだそうで。
だからコメディカルにあとあと面倒が増えないノークレームの手術をする先生が評価されて給料もあがっていくんだとか。
これはこれで合理的なのかなとも感じたんですがここのクリニックはちょっと違うんですね。

投稿: ぽん太 | 2013年8月22日 (木) 09時40分

>冒頭の病院の開設者は、外来患者のお断りが常態化しているのなら、医師を増員する義務があるんじゃないかしらん。

それが出来ればいちばんいいけど、増員できないならみられない患者はちゃんとよそに行かせるのも責任だと思います。

投稿: | 2013年8月22日 (木) 10時25分

応召義務とはそもそも何かということについて、もう一度基本に立ち戻って考えてみる必要があるように思います。
患者が医療を受ける権利を保証するものとして生まれたルールなのであれば、それに固執してかえって患者の権利を損なうようなことは本末転倒ですからね。
医療の給付抑制が現実的に言われ始めているのですから、患者側でも自分が優先したいものは何なのかということを考えて要求しなければならないですね。

投稿: 管理人nobu | 2013年8月22日 (木) 10時43分

ちょっと話はずれますが、「患者は自由に医者を選ぶことが出来る」と勘違いされる方が意外と多くて困ります。
今のルールであれば、病院なら好きなところを選んでいただいて結構なのですが・・・

投稿: クマ | 2013年8月22日 (木) 13時50分

最初からわかりやすい問題患者はいいんですが、最初はまともそうに見えてだんだんといろいろ要求してくるタイプって対処が難しくないですか?

投稿: tama | 2013年8月22日 (木) 16時51分

自分なりのボーダーラインをきちんと持つことが大事かと
かかりつけならまずは警告くらいは与えるが後は万人平等で当たるがよろしい

投稿: 元僻地勤務医 | 2013年8月22日 (木) 22時32分

フリーアクセスであるがゆえに患者(家族)の医療に対する過剰な期待が時にうざいですね。
理解力が極めて悪い患者(家族)には「納得いかなかったらよそへ」と言えますが、そういう患者は大体ドクターショッパーになる。初診でここが5件目ですとか言われると引きますね。

投稿: 逃散前科者 | 2013年8月23日 (金) 12時15分

ところで大学とか大病院の先生は次はどこに患者さんまわすんですか?

投稿: 太郎ちゃん | 2013年8月23日 (金) 15時19分

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