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2013年8月15日 (木)

医療現場の新技術導入はいいことなのですが

先日は史上初めて全てのオーダーをツイートで行うホテルが登場したと話題になりましたが、昨今では日常診療においても手元のスマホ、タブレット等を活用することが当たり前になってきましたよね。
こうしたデバイスを使用する上で医療業界では一般向けとは異なり、特有の専門用語を網羅した医学辞書というものの必要性が高かったわけですが、こちら手書き入力用の入力システムとして専門用語もタブレット等で簡単に入力できるという便利そうなものが登場したというニュースをお伝えしましょう。

医療版手書き入力システム「Medical 7notes Pad+WC」を販売開始(2013年8月9日産経ニュース)

株式会社MetaMoJi(本社:東京都港区、代表取締役社長:浮川和宣、以下:MetaMoJi)は、iPadで動作する医療用語辞書を登載した手書き認識入力システム「Medical 7notes Pad+WC」を、2013年8月9日より販売開始いたします。

「Medical 7notes Pad+WC」は、医療現場でのiPadによる手書き入力のご要望に応え、標準病名、医薬品名、検査・医歯薬用語、看護・介護などの医療用語に対応した医療用語辞書を登載することにより、難しい医療用語も簡単に手書き入力することができるようになりました。医療辞書は、医療システムへの多くの導入実績の持つキヤノンエスキースシステム株式会社が販売する「医用辞書」を使用しています。
(略)
「Medical 7notes Pad+WC」の販売開始について、ソフトバンクテレコム株式会社ヘルスケアプロジェクト推進室より以下のような賛同支援コメントをいただいています。

「医療現場へiPadを導入するにあたり、ソフトウェアキーボードでの入力はいつも課題となってきます。手書き入力と推測変換機能付医療辞書を持つMedical 7notes Pad+WCは、入力問題を解決する強力なツールであると確信しております。また、ソフトバンクテレコムでは、医療・介護関係者向けSNS『メディカルケアステーション*』の普及を図っており、MetaMoJi社の協力のもと、手書きによるメッセージ入力環境を用意して、IT機器に不慣れな利用者でも、サービスに参加できるように利便性を高めていきたいと考えています。」
(略)
【「Medical 7notes Pad+WC」概要】

<主な特徴>
 ・手書き入力ブラウザーにより、お客様のWebアプリケーションを変更することなく、手書き入力ができます。
 ・難しい医療用語が書けなくても交ぜ書き変換で漢字入力ができます。
 ・長い医療用語も推測変換で簡単に入力ができます。
 ・20万語以上登載し、各医療分野を網羅しています。

<価格>
iPad 1台あたり年額 6,500円

■7notes Pad+WCについて
MetaMoJiが開発したタブレット向け文字入力エンジンにより、iPad上で手書き入力を求めるユーザーや、キーボードに不慣れなお客様のニーズに合わせて、ストレスの少ない手書き入力を実現するアプリケーションです。これまで、キーボードの操作がボトルネックとなりシステム化が困難だった業務システムを簡単に実現します。 http://product.metamoji.com/enterprise/product/padwc/
(略)

ところでこの種のシステムと言うと以前から「専門用語○○単語収録!」といったうたい文句が一種の売りになっていましたが、これだけ医療も標準化が進んでいるわけですから、厚労省なり医療系団体なりが音頭を取って標準医学辞書というものを制定するようにすれば、手間やコスト面でもずいぶんと違ってくるように思うのですがどうでしょうね?
それはともかく、最近では流行の3Dプリンターを使って各人にぴったりと合う人工骨を簡単かつ低コストで作れるようになっただとか、世間で「おもしろそうだ、何か出来そう」と思える様々な道具が実際に医療現場で役に立つと言うケースが増えてきていますよね。
もちろんロボット手術のように未だごく狭い専門領域に留まって数としては大きく普及してはいないものもありますけれども、かつては職人技の手作業で行われていたことが機械によって簡単に出来るようになるだとか、ひたすら面倒な繰り返し作業だったものがPCで簡単に出来るようになるだとか、様々な恩恵も感じられるようになったのはよい傾向だと思います。
ただ逆に言えば様々なデジタルガジェットが当たり前に普及した結果、「ツイート出来なければ利用しにくいホテル」のように必ずしも以前のように「全ての人が支障なく使える」環境でなくともそれが導入されてしまうというケースもあるわけで、よく言うように「電子カルテを導入したら年配看護師がそろって辞めた」などと言うことがままあることなどはその典型例だと思います。

医療者にも迫る!?「テクノロジー失業」(2013年8月12日日経メディカル)

(略)
 最近、「テクノロジー失業」という言葉を時々耳にする。テクノロジー失業とは、通信技術や機械技術などの発展によってこれまで人間が行っていた作業が機械や装置に取って代わられてしまい、働き手が職を失うことを指す。科学技術の発展は人間の仕事を助ける半面、人から仕事を奪うという面を持っている。

 薬局薬剤師の仕事にもじわじわと科学技術が入り込んできている。処方内容や患者さんの様子、服薬指導の内容などを書き込む薬歴も電子化されている。また、愛知県豊田市にあるグッドライフファーマシーでは、調剤室のマシンが自動で薬のピッキングから鑑査、薬袋に入れるまでの一連の作業をすることが知られている。記憶に新しい、一般用医薬品(OTC薬)がインターネット経由で購入できるようになったこともITの進歩によるものだろう。薬剤師によるOTC薬の対面販売は、いつかパソコン上の画面に取って代わられてしまうのかもしれない。

 いわゆるルーチンワークはコンピュータやマシンが得意とする仕事で、人間の作業よりミスが少ないと言われている。それらに「仕事を奪われる」と言うと良からぬことのように聞こえるが、そこは発想を転換してコンピュータやマシンに「仕事を預けて」、私たちはこれから人間にしかできない仕事を突き詰めるべきではないだろうか。

 科学技術がどんなに発達しても、コンピュータの処理能力がどんなに速くなっても、「五感を使い、人が人のために、人のことを思ってする医療はコンピュータやマシンにはできない」と私は信じている。効率化や標準化のために技術革新を追う一方で、人間がやるべきこと、やらなければならないことを追求することが、医療を血の通ったものとし続けるために不可欠なのだと思う。

基本的に医療現場は典型的な労働集約型産業であって、しかも常時多忙すぎて人材流出も著しい人手不足産業の一方の雄でもありますから省力化は大歓迎なのですが、今現在は昔ながらの手作業が必須の仕事とデジタル化された仕事とがモザイクのように入り乱れ不可分の状態になってきているわけです。
少し以前には大学の外科系講座で神の手として鳴らした偉い教授先生が「ボクは腹腔鏡は出来ないからね。そういうのは若い先生に任せてるんだよ。ははは」などとどこか寂しそうに笑っていた時代もありましたけれども、こうまで技術革新の速度が上がると医療専門職のように技術習得に長年の修行を要する仕事では年代によって出来ること、出来ないことの格差が顕在化してきそうですよね。
それでも「出来ないことは出来る人に任せて、出来ることをやればいい」でうまく仕事が均等化できれば皆がハッピーになれますけれども、今時そろばんしか使えない事務職がオフィスで仕事がないのと同様あれも出来ない、これも出来ないで何一つ出来ることがない先生が医局で暇を囲っている、一方努力して様々なスキルを身につけた先生ほど仕事が集中して休む間もないとなれば不公平感は高まるでしょう。
悪いことに医師の給与体系は長年医師免許取得後年数によってほぼ決まる典型的年功序列なやり方が続いていましたから、長く勤めれば勤めるほど給料が跳ね上がる公務員という身分によって何のスキルもない永年勤続の老先生ばかりが暇を持て余しながら高給を取っているというよくある田舎公立病院の光景が、下手をすれば全国的に拡大再生産される可能性もありそうです。

医師などは基本的に技術ヲタクが多いですからまだしも学習意欲が高い方ですが、看護師などはいわゆる手に職をつける系でやってきた方々も相応にいて、どんどん新しいシステムを導入していく病院から相も変わらず紙カルテと手書き伝票でまわしている病院へとこうした方々が流出していくとなれば、病院毎の年齢分布にずいぶんと格差が生まれてくる可能性もあります。
もちろん病院に限らず給料の高くなってきたベテランはさっさと辞めてもらって若い者に入れ替えた方がいいという雇用の考え方もあって、いわゆるブラック企業などはその典型で若く体力のある人間しか雇っていないという場合がありますが、医療のような専門職の場合長く修練してようやく身につく技術も少なくありませんから、下手をするとどこかで技術的継承が絶たれてしまうという恐れも出てくるはずです。
それを避けるためにはある程度アナログな人間も残しておくか、それとも通常なら10年かかって覚える仕事を一生懸命努力して5年で覚えてもらうくらいでしょうが、現代のように新規技術導入が加速度的に進んでいる状況では、いずれ誰であれ習得の速度が技術の更新に追いつかない瞬間は来るはずですよね。
今現在は現場の人々が「こんなものが欲しい」「こんなものを作れないか」とアイデアを出し、それをメーカーが実現するといった二人三脚のスタイルでの開発が多い印象ですが、この結果同じような仕事をこなすための道具が各社操作法もデザインもバラバラになってしまっているというのはよく無い傾向で、自動車やオーディオの操作体系のように車が変わっても同じように使える操作性の統一感が望まれるところです。
こういうことは国がある程度インターフェースの統一基準を作っておけば…などと言い始めるとこのご時世に規制強化とは何事だと叱られそうですが、技術の中身はそれぞれ独自性を大いに発揮していただいて構わないし発揮すべきだとしても、その使い方までもハイテクを要する必要性は全くないはずなんですけれどもね。

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コメント

>通信技術や機械技術などの発展によってこれまで人間が行っていた作業が機械や装置に取って代わられてしまい、働き手が職を失う

コンピューター診断システムの発達で放射線科読影医や病理医なんかは失業しそうな気が
病理医はDNA診断などもしてるがこれも機械が取って代わりそう。
あくまで予想ですがどうなんでしょう?

投稿: | 2013年8月15日 (木) 07時28分

機械がというより安い外国の読影センターに仕事が流れつつあるところでは。
しかもあちらは24時間対応なんだから勝てっこない。

投稿: tomo | 2013年8月15日 (木) 08時14分

そういえば中国で読影サービスやってましたね。
外国の医師免許も許可とかすると読影医は間違いなく淘汰されるだろうな。
ただ移民の国のアメリカでも自国の医師免許しか認めてないのに
中国のも認めるなんてしたら大変なことになりそう。

診断系なら病理のが安泰って事か。

投稿: | 2013年8月15日 (木) 09時06分

病理医は潜在需要が大きいですし術中迅速などリアルタイムの需要もありますしね。
でもそれも遠隔でできないかと言うとまるっきりできないわけじゃなさそうなんですが。
もう外科系もその気になったらロボットの遠隔手術でかなりやれるんじゃないですか?
最後まで残りそうな科ってどこなんだろ?

投稿: ぽん太 | 2013年8月15日 (木) 10時35分

カテや内視鏡は当面安泰かと思いますが、一般外来などは技術的には大多数遠隔でできそうですがどうなんでしょうね?
例のNP制度と組み合わせてでも遠いが名のある大先生に遠隔診療してもらう、どうしても目の前に先生がいないと嫌なら週二日の出張になると言われると結構迷いそうですが。

投稿: 管理人nobu | 2013年8月15日 (木) 11時42分

>外国の読影センターに仕事が流れつつある
この場合再質問や他の臨床医との議論はどうするんでしょう?
あと放射線科の場合レポートが証拠としてバッチリ残るし誤診があったら誰が責任は取るんですかね?
日本人医師の最終確認とかやってるとは言ってるけど.......

投稿: | 2013年8月16日 (金) 04時04分

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