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2013年8月26日 (月)

進む不妊治療関連の議論 各々重視すべきものは何か

先日は厚労省の検討会で不妊治療への公費助成に年齢上限を導入するという話が出ていることを紹介しましたが、どうやらその詳細が固まってきたようで各社から報道がなされています。
全般的な報道ぶりを見てみますと意外にと言うのでしょうか、積極的に賛同するというわけではないものの批判的論調も相応に抑制が効いているのかなと言う印象を受けるのですが、まずは記事を紹介してみましょう。

不妊治療助成、医療機関の要件厳格化へ(2013年8月23日CBニュース)

 不妊治療患者への公的助成のあり方を議論していた厚生労働省の検討会は23日、報告書をまとめた。特定不妊治療に対する助成事業の指定医療機関の要件を厳格化し、対象となる女性に年齢制限を設ける内容。治療の安全性を高め、妊娠・出産のリスクが相対的に少ない年齢での治療を促す。厚労省の担当者は、「来年度の予算要求や要綱の改正に反映させたい」と話している。

 同事業では、助成対象となる医療機関の要件として、▽実施責任者(実施医師)▽看護師▽胚を取り扱える技術者▽泌尿器科医師▽コーディネーター▽カウンセラー-について、人数や資格などを定めている。これまで、胚を取り扱える技術者(胚培養士・エンブリオロジスト)の配置は「望ましい」となっていたが、報告書では配置を義務付けた。医師も兼ねることができるが、年間採卵件数が100件以上の施設では、「実施責任者・実施医師と同一人でないことが望ましい」とする。要件の変更は、新規指定の場合は来年度から、既存の指定医療機関は2015年度から。

 このほかの要件でも、治療件数の多い施設で、新たな要件を加える。医師については、年間採卵件数100件以上の施設で、生殖医療専門医の配置が「望ましい」とする。看護師も年間治療件数が500周期以上の施設で、不妊症看護認定看護師または母性看護専門看護師の配置を「望ましい」とし、これらの要件は「将来的には義務とすることも検討すべき」ことを盛り込んだ。

■対象女性の年齢は42歳以下、通算回数は6回

 患者の対象も変更になる。これまで制限のなかった女性の対象年齢は、「42歳以下」とする。通算回数は現行の10回から6回に減らし、年間回数や通算期間の制限はなくす。通算回数は、40歳以降に治療を始めた場合には3回とする。高齢での不妊治療では生産分娩率が低くなり、43歳以上では流産率が50%を超えることや、分娩に至った治療のうちの90%は治療回数6回までであることなどが勘案された。対象の年齢や回数の変更は、女性の年齢や新規の申請かどうかなどで、異なる移行期間を設ける。【大島迪子】

[不妊治療] 「妊娠」しやすい環境へ(2013年8月22日南日本新聞社)

 厚生労働省は、不妊治療で体外受精を受ける女性患者に対する公費助成を、42歳までに制限する方針を決めた。2016年度から実施する。
 現行制度に年齢制限はないが、40歳以上で治療を実施しても成功率が低く、妊娠・出産時のリスクが上昇することを踏まえた措置だ。背景には、助成予算の増加に歯止めをかける狙いもある。
 母胎への影響が大きい流産率が年を重ねるほど高くなるなどのデータを考えれば、年齢制限には一定の妥当性があろう。ただ、年齢を区切ることで、政府が適切と考える年代での出産を強いることになるとの指摘もある。実施に当たっては丁寧な説明が必要だ。

 1回に30万~50万円かかる不妊治療の助成事業は、患者の経済的負担を軽減するため、04年度に始まった。夫婦合わせた所得が730万円未満の人を対象に、最大15万円の助成を通算5年、10回まで受けられる。
 初年度に助成を受けた人は延べ1万7000人だったが、その後右肩上がりで増加し、12年度には延べ13万4000人を突破した。国と都道府県などが折半する予算は200億円にまで拡大した。高齢出産は現在も増加傾向にあり、今後も確実に増え続けるとみられる。
 見直しのきっかけになったのは年齢と不妊治療の成績などをまとめた厚労省研究班の調査結果だ。体外受精などの治療1回当たりでどれくらいの割合で出産に至ったかを調べると、32歳までは約20%と安定しているが、それより高齢になると低下し、40歳で7.7%、44歳では1.3%にまで下がることが判明した。40歳以上だと流産率が高いことも分かった。
 こうしたデータに加え、同様の支援制度のある先進諸国でも年齢制限を設けている場合が多いことなどから導入を決定した。新制度では、期間の制限なく上限6回(40歳以上は上限3回)の助成が可能となり、短期間に集中的に治療を受けられるようになる。

 忘れてならないのは、今回の見直しをプレッシャーと受け止め、不快に感じる人たちがいることだ。共働きでなければ生活を支えられず、ようやく妊娠を考える余裕が出てきたときに不妊に直面したという女性は少なくない。結婚や妊娠を先送りする人にはやむを得ない理由がある場合が多い。
 こうした反発を和らげるためには、若いうちに子どもを産み育てやすい社会を実現する施策を併せて行うことが不可欠だ。時間がかかる不妊治療の成績を高めるため医療機関のレベルを向上させることも検討すべきだろう。

繰り返しますがあくまでも公費による助成に対する制限であって何歳であっても不妊治療を受ける自由は確保されていますし、むしろ年間2回までという今までの制限を撤廃したことで少しでも可能性の高いうちに短期集中型で不妊治療を重ねることも可能になったわけですから、今までのように「いつまでこれを続けるのか」と迷うことは減ったと肯定的に評価することも出来そうです。
出生率も低くなっている現代日本で子供が増えた方が国にとっても自治体にとっても良いことであることはほぼコンセンサスを得られていると思いますが、ただそれに対してコストパフォーマンスを無視して何でも努力すべきだということではなく、子供が増えることによる社会のメリットとそのために要する経費の双方を十分に比較検討し、少なくとも明らかに後者がはるかに上回っていない場合に公費で助成する意味がある理屈ですよね。
自治体レベルでは今後も独自の補助に含みを持たせているところもあるようですが、例えば記録上ではそうした出産が行われたことがあるとは言え限りなく妊娠・出産可能性が低い60歳以上になっても無制限に不妊治療助成を行うべきだと主張する人はいないはずで、医学的・社会経済的な裏付けを勘案しながらどこかで公費による支援の線引きをすることは妥当な判断ではないかと思います。
それよりもむしろ議論を呼びそうだなと思ったのがほぼ同時に発表された卵子凍結保存に関するガイドラインなのですが、本来医学的妥当性に基づいて判断されているだろうこちらの方がむしろより大きな社会的議論を呼びそうな気がしますね。

卵子凍結、40歳以上は推奨せず 学会が将来の妊娠希望で歯止め(2013年8月23日47ニュース)

 将来の妊娠に向けた卵子の凍結保存について、日本生殖医学会は23日、妊娠の確率が低くなる40歳以上には勧められないとのガイドラインをまとめた。

 女性の晩婚化と晩産化が進む中、妊娠の可能性がより高い、若い時の卵子を保存したいという女性の要望に応じ、一部の不妊治療施設で卵子凍結が広まりつつあるが、現状では法的な規制がない。同学会は「何らかの道しるべを定め、無秩序に広がるのを防ぎたい」としている。

 卵子凍結は、女性の体内から卵子を採取し、液体窒素などで凍結保存。必要に応じ、解凍して体外受精に使う不妊治療の技術だ。

未婚女性も卵子保存、学会容認へ…指針案で(2013年8月24日読売新聞)

 日本生殖医学会(理事長・吉村泰典慶応大産婦人科教授)は23日、健康な未婚の成人女性が、将来の出産に備えるために行う卵子の凍結保存を容認する指針案をまとめた。

 晩婚化で出産年齢が遅くなっている現状を踏まえ、今後、実施施設が増えることが予想されることから、一定の歯止めとなる指針案を作成したとしている。

 卵子の凍結保存については、不妊治療を目的とした夫婦と、治療で卵巣機能が失われる恐れのあるがん患者にのみ、日本産科婦人科学会の指針などで認められているが、未婚の女性に対する見解が示されたのは初めて。

 指針案では、健康な女性の卵子の凍結保存を認めた上で、採卵時の年齢が40歳以上は推奨できないと定めた。凍結した卵子を解凍して受精させ、子宮に戻す年齢については、高齢出産のリスクを避けるため45歳以上は勧めない

近頃では高齢妊娠のリスク要因として母体の高齢化による各種合併症増加に加えて卵子の老化ということが大きく取り上げられるようになっていて、とりわけ妊娠がしにくくなってくることの理由として卵子の老化が半数に及ぶということですから、独身女性が当面結婚や妊娠の予定はないけれども、まだ若い今のうちに卵子だけでも保存をと考える心情は理解出来るところですよね。
実際に日本国内でも「卵子の老化対策は卵子保存」などとうたって商売している施設もあるようですし、海外などではむしろ積極的に保存をしておくべきとキャンペーンまで張られて卵子保存が普及してきていると言いますが、精子保存に比べれば相応に身体的負担も大きいにも関わらず今まではそのガイドラインが存在しなかったということが普及の妨げになっているという指摘もあったわけです。
その意味では高齢妊娠ということに社会的注目が集まってきている中で学会から未婚女性に対する指針案が出たことは待ち望まれていたとも言えますが、問題となりそうなのは卵子の老化が進んでいるだろう採卵時年齢40歳未満を推奨という縛りはまあ仕方ないとしても、高齢出産による各種合併症が増加する45歳以上での使用制限という一項が加えられている点でしょうか。

前述の通り高齢妊娠に伴う各種合併症の増加は明らかになっているわけですから医学的には妥当な考え方だと言うことになるのでしょうが、そもそも社会的背景を考えて見れば高齢妊娠になればリスクが上がると判っているのだから、せめて若いうちに卵子だけでも保存しておこうという方々がこの未婚者向け卵子保存の対象者であるはずですよね。
そうしたターゲット顧客がいざ利用しようとした時にそれは出来ませんでは何だそれはと言いたくもなるはずで、もちろん案ですから今後まだまだ改変の余地はあることですし、あくまでも勧めないというだけでリスクも何もかもきちんと説明を受け理解した上で行われる分には構わないという運用になるのかも知れませんが、やはり何か釈然としないものがあるように思います。
自治体レベルでの独自助成ではまた異なるのかも知れませんが、今のところ不妊治療での公費助成と言えば体外受精や顕微授精に限られてのこととなっていて、若いときから卵子を保存すると言うのは本来の不妊治療ではない予防的なものであることもあって、おそらく今後も助成対象とはならないでしょう。
となると先の公費助成の話と異なりこちらの場合はあくまでも私費で個人の意志に基づいて行われるものですから、医学的妥当性と対比されるべきものは社会的なコストパフォーマンスの代わりに顧客満足度ということになると思いますが、現状その一方からの視点で定められているように見える指針案が今後どう練り上げられていくのかに注目したいところですね。

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コメント

再生医療による卵子若返りができたとしてどれくらい需要ありますかね?
けっこう大金を投じてる人も多いから研究開発費くらい元は取れそうな気もしますけど。

投稿: ぽん太 | 2013年8月26日 (月) 08時54分

未婚女性が卵子保存しておくってすごい時代だね
優秀な卵子が商取引の対象になるのも近いね

投稿: take | 2013年8月26日 (月) 09時56分

ちょうど今年から国内でも卵子バンクがスタートしていますが、今のところ表立ってドナーを選ばせるようなことはしていないようですね。
ただ法律的にはっきりしたルールもない上に海外ではノーベル賞受賞者の精子を売買していたりもするので、いずれ国内でも同種のサービが始まるかも知れません。
こういうことも遺伝的素因と環境素因とどちらが人間の形成上重要なのかという命題を考えた場合、きちんと追跡調査出来ればそれなりにおもしろいデータは出そうなのですけどね。

投稿: 管理人nobu | 2013年8月26日 (月) 12時51分

こういうのは実質的なドナーのえり好みじゃないのかな?

>ドナーはホームページで募集。ドナーと、卵子購入を希望する夫婦が面会した後、一緒に韓国へ行き、ソウル近辺の病院で採卵する。夫の精子と体外受精し、妻の子宮に移植する。帰国後、妊娠してもしなくても報酬100万円を払う。韓国では、両国で生殖ビジネスの経験がある女性が、病院紹介や通訳を務めるという。
>ドナーは、身長や体重、学歴などを申告し、写真を提出。要望があれば、体のスリーサイズも教える。ドナーと、生まれた子どもの間には、一切の権利義務関係はないことを、双方の契約書で確認する。夫婦側の負担は、ドナーへの報酬のほか、契約金180万円、病院での費用約30万円などを含め、400万円近くになる。米国の場合、500万~600万円という。
http://medical-today.seesaa.net/article/32011030.html

投稿: | 2013年8月26日 (月) 15時27分

↑のやつの社長みるからに怪しげだってワイドショーで有名になった人ね
http://morunikki3.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_ca0e.html
http://www.youtube.com/watch?v=eKH1PCAJ1K0
つか汚部屋どころの騒ぎじゃねえだろこれw

投稿: 鎌田 | 2013年8月27日 (火) 13時40分

ダウン症治りそう‼中絶しなくてもよくなるよ‼
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130905-00000029-jij_afp-int

投稿: ダウン症治りそう‼ | 2013年9月 5日 (木) 22時33分

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